鎮守の森~元祖異世界時代劇~   作:仲村大輝

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羊山残滓戦線

上も下も分からず、ただただ真っ暗なところに四方八方から重圧がかかっている。

「これが…地獄…」

「まだ地獄じゃない。喋れるんならまだこの世だ。早く死ねば地獄に行けるぜ。」

「僕は…僕が死ねばみんなまた仲良く暮らせるのでしょうか?」

「いや、お前が生きようが死のうがあれではもうダメだ。だから早く死ね。」

「僕が死ぬとどうなるんでしょう?」

「仏教側が喜ぶ。だから早く死ね。」

「…そんなことさせるか!」

地面の中を引き摺られているため、両腕を万歳していたが、無理やり、肘を曲げて抵抗してみた。

「馬鹿野郎!そんなことしたら、進行方向を見誤るだろうがよ!早く死ね。」

「うるさい!あなたに殺されてたまるか!」

その時、パッと身体中が軽くなった。土から解放された感じだ。

それと同時にまた地面に落っこちた。

「うわっ!」「なんだ!?」

木も5、6本の丸太が落ちてきた。

「貴様!暴れるなと言ったろ?早く死ねって…」

持国天が僕に馬乗りになった。しかし、前を見て動かなくなった。

僕もゆっくり上を見上げた。つまり、持国天と同じ方向を見た。

するとそこには、壁に向かって、ノミと金槌を突き立てる人、くわやすきで石を後ろに下げる人、石を背負い、運んでいる人がびっくり顔でこちらを見ていた。

その人達、紺色の和装に、頭にワラで出来た鍋敷のようなものを乗せている。そして、皆、現代で言うところの赤いスカーフで口や目を守っている。

「妙見が率いてた山犬か…まだいたのか…」

そう言うと、持国天は後ろに下がり、

「今は俺の部が悪い。命拾いしたな。死ね。」

と言って、地面に消えていった。

後ろから声が聞こえる。

「あんた。人間なのに四天王に引き摺られてよく生きてたな。」

後ろを振り向く。

そこには、感心しきった男の人たちが僕を覗き込んでいた。

「あなた達は?」

「俺たちは、ここでオタエ様を待っているのだ。」

「オタエ様とは?」

「?妙見宮の真の神。知らないのか?」

「知らな……」

あっ!また…

「おい!急に死ぬな!おい!あんた!大丈夫か!あんた!?」

「おい!急にどうした?」

「急にマジで死んだみたいに…」

「息もしてないじゃないか!おい!どうしたんだ!?」

鬱陶しい…みんな静かにして…

 

ハッ!と目が覚める。

また銀次さんの家の天井…ではなかった。

薄暗いトンネルのようなところに鉄柵があり、天然の洞窟の牢屋のようなところの壁に貼り付けにされていた。

手首足首は鎖、ではなくお札だった。

ポスターをテープで貼ると、ポスターの端っこをテープで貼り付けるのと同じ要領でぺたりと貼り付けられていた。

「ここは…誰かいませんか!」

叫んでみた。

「おぉ!一番奥のあんたか!大丈夫か?」

鉄格子の奥から声がした。

どうやら洞窟は学校の廊下のように直線になっていて、教室に相当する場所に牢屋があるらしい。

「どなたか存じ上げませんが、先ほどはありがとうございました。」

「先程?まぁ無理もないか…君は3日ぐらい寝てたぞ。」

「えっ!…(今度はそんなに寝てたのか…再生能力の使いすぎか…)ぁ、あっ、助けていただきありがとうございました。」

「きちんと助けられた訳じゃないけどな。」

確かに、助けられたというより捕まった感がする。

「どうしてこうなったのですか?」

「あの後、右往左往してたら、逃げたあの男が仲間を連れてやってきたもんだからみんな捕まってここに入れられた。」

「ここはどこでしょうか?」

「分からない。目隠しされたから。ただ、水が落ちてる音がして、一回水の中に入った。」

「それは?」

「つまり、滝の裏の洞窟だろうな。」

「秩父にそんな場所ありますか?」

「分からん。ただ、大滝や荒川、吉田、小鹿野の方だったら、完全に分からない。なにせ俺たちは行ったことないからな。」

「?あなたたちは?そうだ!あなたたちはどうしてあそこにいたのですか?」

「うーん…君、生まれは?」

名乗るべきだった。生まれは?と聞かれては大変だが、

「…実は記憶喪失で、宮地の田畑の銀次さんに助けられていました。」

「なに?田畑の?」

そこで、答えていた声が小さくなり誰かに話しかけた。

「田畑の銀次って、妙見宮の?」

違う声になった。

「そ、そうです。」

「銀次は宮司と…」

「お願いです。銀次さんが大変なことになっているんです!銀次さんを助けてください!」

「なに?」

「銀次さんが、おかしくなって大暴れしたんです。」

「君。いったん落ち着いて訳を話してくれ。そうだ!息を吸って!…吐いて〜…吸って〜吐いて〜吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて…息を止める!1、2、3。はい吸って〜。……どうだ?落ち着いたろ?」

たしかに、落ち着いた。

「では、話を聞こうか?…というか、銀次はなにか会ったのかい?」

「そ!…そうです!牛の様な…牛の頭を被った人のようなものに会いました。」

「やはりな。君は、大宮郷の生まれかい?」

大宮郷。昔の秩父の言われ方だが、秩父市生まれであって、大宮郷生まれではない。

「…(…には、「ちょっと」と言っている。)違います。」

「そうか…そうなると言いづらいな…」

「なにか言いづらいことでも…うっ!…」

お札に強く触れた瞬間、急激に体が疲れた。スゥッと寝落ちする感覚だ。

「どうした?うっ!って言ったぞ?どうした?」

首を振り、無理やり起きる。

「すみません。お札に触れたようで力がスッと抜けてしまいました。」

「えっ?…君、いまどうなっているんだ?」

「手足がお札で壁に貼り付けられています。」

「それで触れたら力が抜けたのか。ちょっと待っててくれ。」

そういうと、なにか小さい声で相談している。

「おい!君!」

「はい!」

「君は、本当に銀次を助けるのか?」

僕は力強く答える。

「死んでも助けます。あの人を…あの家族をバラバラにしたのは僕なんです。僕がなんとかします。ここはなんなんですか!?それとあなたは何という方ですか!?」

そうに言った時、足の真正面に大穴が空いた。

中からガスマスク、否、動物の皮で顔を覆った人が5、6名出てきた。

「我々は、お妙様に忠誠を誓う番衆『播磨組』だ。」




まあ、実際にはないことがてんこ盛りになってきました。
播磨組はかつて小鹿野の飯田周辺を治めていた播磨一族と聞いています。(鉄砲祭に出る大名行列が播磨と書いてあります。)
とくに知らなくても大丈夫です。名前が格好良いので使いました。
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