鎮守の森~元祖異世界時代劇~   作:仲村大輝

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この三名の名字は使いたかったので使いました。(矛盾が起きますが…)



田代、加藤、井上

「ぎゃー!鰐だー!」

どうしてこうなったのか説明しよう。

五分前

天狗が最も古参であり、新たな囚人がどこから来ていたのか聞いたところ、自分の部屋側に木の戸があり、そこからビショビショの人が入ってくる。という。

「馬、やってくれるか?」

「分かった。」

馬と呼ばれたのに、顔が丸い男性が扉に背を向けて立った。すると、バーン!と戸を蹴り外し、戸板が飛んでいき、ボチャン!と音がした。

「今の音が、濡れている原因だな。」

みんなゾロゾロと牢屋部屋から出ていった。

伸びて寝ている看守をがんじがらめにして。

入った部屋はだいたい奥行き10メートルだが、水があるので、陸地は5メートル四方であった。

「河童。悪いが…」

「泳ぎは任せろ!」

加藤さんが言い終わる前に河童は飛び込むと

すぐに出てきた。

奥の壁を指し、

「見てきたぞ。えっとあの壁の下あたりに鉄格子がある。あれを破らないと…それと、なにか水が大量に落ちる音がした。多分、滝だと思う。

「滝か…」

「秩父に滝があったか?」

「日野沢の方にあるが、大量の水とは言えないな…」

「みんな。とりあえず、その鉄格子を外せば外に出られるんだ。外に出てからここはどこか考えよう。」

「田代さんの言う通りだ。それと河童、なにか他に報告事項はあるか?」

「あっ!鉄格子の近くになにかいた。」

「なにかとは?」

「分かんない。だけど、やたら大きいトカゲみたいなやつだった。全身鱗で、尻尾が長く、顔が長く、トカゲと比べて脚が太っといやつで、あれじゃ水の中にいたほうが楽そうだったな。話しかけたんだけど知らん顔だった。

「?トカゲの大きくなったような生き物?それがこんな長時間潜っていられるのか?」

「亀なら出来るけど、さっきのは甲羅がなかった。」

「うーん…そんな生き物がいるのか?」

「あの…」

いままで黙ってたツキノワグマの毛皮を被った人が話しかけてきた。

「もしかして、その生き物って…」

声が高いから女性だと思う。

毛皮から突き出た鋭い爪を水面に向けた。

「あの水面にいるやつですか?」

「「うん?」」

「あっ!そうだよ!あ…れ…」

その時、なんだか分からないけど、みんな凍りついた。その生き物は水面から目と鼻のみ出してこちらを見ている。

その目がジィーッとこちらを見ている。

その暗がりでも分かるほどキラキラとした目からは、「お前ら、ここへなにしに来た?」というオーラが満々と満ち溢れ、誰一人として声を出せなくさせていた。

その沈黙を破ったのは田代さんだった。

いきなり、河童をつかんだ。

すると、その生き物も動いた。

河童に食いかかった。

なんとも大きな口だった。

河童を文字通り丸呑みにできるほど大きな口を開いた。

この瞬間に声を上げたのは僕だけだった。

「ぎゃー鰐だー!」

「鰐!?これが?」

「みんな、いったん退却だ!牢屋部屋に戻れ!」

田代さんの号令と共に我先にと戻ろうとする。

鰐がノシノシと陸に上がる。

「鰐は…因幡の白兎に出てくる鰐は、手足がないんじゃないのか?」

「それは、フカです。これが鰐なんです。」

「手足があって、陸も移動するなら余計ぼやぼやしている暇はない。みんな早く中に戻るんだ!」

田代さんが最後になるようだ。

「早く、ハハソも戻…」

鰐から田代さんが目を離した瞬間、鰐が田代さんに襲いかかる。

「危ない!」

僕は田代さんを押した。

右肩をバックリと食べられた。

鰐の噛む力は1トンを超えるというが恐ろしいのはここから。

鰐が体を横回転させ始め、水の中に戻ろうとし始めた。

これがデスロール。

噛み付いた部分を引きちぎる。もしくは敵をパニックに追いやり、水死させるまさに必殺技。

「「ハハソ!」」みんなが叫び、田代さんが腕を伸ばしてくれたのが見れたが、僕は水の中に引き摺り込まれた。

土の中を引き摺り回された次は水の中を引き摺り回され…いや、死の回転をかけられている。

急速な再生によって、腕がちぎれないのだ。

しかも、肺に水が入ろうが、大量に水を飲もうが、致死量に達すると身体が自動的に再生してしまい、気絶することも出来ない。

鰐も死んでもらわないとどうにもならないから、デスロールをやめられない。

「なにか、携帯しているものは…あの短刀か…」

左手で、着物の中を探るのは非常に難しいが、時間はたっぷりある。最悪、服を脱げば刀は取れるし。

十五分ぐらいたった。

地上では、真っ暗な水をみんなが覗き込んでいる。

少量の血は上がってくるが、鰐も、ハハソも上がってこない。

「どうなっているんだ?」

水は、水中で暴れている生き物が二ついるので、風呂水をかき回したように大波が静かに出来ている。

「ハハソが死んだ場合、俺は銀次って人を命がけで救わないとだな…」

「まぁ、あいつが死ぬとは俺は思ってないけどな…あの肉の再生を見たろ?」

「だけど、聞いた話なら、土の擦り傷、俺たちがやったあれは外傷だったろ?今度は水が肺に入ったらどうなるかは分からないぞ。」

「………しかし、あれだけ男気のある少年だ。どうであれ、銀次は助けなきゃならないな。」

その時、水面に血が濃くなったら、傷だらけの鰐が水面から顔を出した。

目と鼻だけでなく、顔全部。

「「あっ…。」」

ため息が漏れた。

鰐が勝ったのか…

鰐はヘリに近づくと、頭を乗せて、次に、腕をかけた。

ふた呼吸置いて、ガバッと鰐が立ち上がった。

「なに?鰐は二足歩行もするのか?」

「ち…ちはいますよ…」

鰐の腹にハハソが刀を咥えて立っていた。

右肩は再生している。

「ハハソ!?…生きていたのか!」

「うわ…」

またガクン…とハハソは気を失った。

大太刀は地面に落ちる。

ハハソを鰐ごと田代さんが受け止める。

「河童…この鰐以外に障害は?」

「なかったよ。」

「そうか…」

田代さんは鰐を手で払い、ハハソからはなした。鰐の腹は大太刀で斬られ、突かれた傷が無数にあった。

「男気ある少年よ。しばし眠れ。あとは…」

田代さんは大太刀を拾い上げた。

「この妙見宮、椋神社、城峰山の神人衆に任せてもらう。」

 

秩父事件総理、田代栄助は大地主である傍ら、領民に耳を傾け、貧困を嘆いた農民のために立ち上がり、逮捕され処刑された。

彼のやったことは、弱きを助け、強きを挫く正真正銘日本のヤクザ。最後の侠客呼ばれたこの男の先祖もまた、弱きを助け、強きを挫く。義理と人情に生きた男であった。

 

異世界の架空の人物だけど…

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