ただ、これで過去に行ったことが伝わるでしょうか?
「キェー!」
と、牛男が大声を上げた。脇差が額に刺さっている。
この前と同じ光景だ。
鋼太郎さんが数歩下がった。下がったところで、僕はぐいっともっと牛男から引き離した。
オオカミが牛男と対峙している。
「なんだ?…君は?」
「…鋼太郎さん。あなたが宮地を一番に考えているのは分かります。ただ、あれに味方することは、宮地だけでなく、大宮郷の人が不幸になります。」
「なに?」
「もっと、落ち着いて考えてください。大宮郷の人たちはあんな化け物に負けるわけないじゃないですか!」
「しかし、あんな化け物に…」
「あれは、牛の顔をして筋骨優流ですが、宮地の人たちはそんな見掛け倒しに負けるんですか?」
「んっ…」
「宮地の大行事がこんなことでは、徳栄さんにもなんて言うんですか!もっとしっかりしてください!あなたが宮地を引っ張るんでしょ!」
「そうだったな、若いの…オラは負けるところだった。」
そういうと、鋼太郎さんは徳栄さんの家の方に向かって行った。
「よし!」
田畑の家を見る。
牛の男は、透明なオオカミにズタズタにされて満身創痍でふらふらと立っている。
銅三さんが、右手を大きく引いて、南の方向を向いた。
「僕を投げるんだ。」
僕は素早く風呂敷を広げて翼を着て、頭にクチバシを乗せて顎紐で縛り、クチバシを引き下げて、顔を隠そうとしたとき、後ろから何者かの太い腕で刃がいじめにされた。
「ぐっ!息が…」
僕はなんとか外そうとしたがどうにもならない。それどころか体が宙に浮いた。
「…この、フクロウめ。生きて帰さんぞ!貴様がいるから、我々『イラム』がこの大宮郷で栄えられんのだ。」
「なんだ?と…」イラム?イラムってなんだ?それが、仏教のフリをしている連中なのか?…しかし、畜生…息が出来ないから考えがまとまらない…
「あと、10秒」
オオカミの声だ。
10秒…
カジカさんも、銅三さんもまだ助けてないのに、もうあと10秒しかないの?
「離せ!」
すると、背中の羽が鋭利になり、牛男に刺さる。
見えないが、僕の背中に羽が生えていて、それが逆立ったような感覚があった。
「うわっ!」
腕のロックが緩んだ。
地面に足がつく。
「いまだ!」
腰に差してある脇差を右手で逆持ちで握る。
「邪魔するな!」
身体を反転させながら、目の前の肉体を脇差で斬りつける。
「うがぁぁぁ…」
牛男が倒れる。
「よし!」
牛男が倒れるより前に銅三さんを見る。
銅三さんの右肩にカジカさんが乗っている。
左手首を見る。
なんと、銀次さんが僕のやったようなやり方、すなわち、手の甲から鳥の羽がゲゲゲの鬼太郎の髪の毛バリのように鋭く、何万本も突き破って、手をズタズタにしている。
そしてそのまま、全力で急降下。
手は爪をきらめかせ、銅三さんの足を引っ掻き、どす黒い血を吹き出させていく。
「このままだと、飛び上がって、カジカさんも狙われる!」
「あと8秒。」
「分かってる!」
僕はやったことないけど、夢中で、銅三さんの右肩を目指す。
「あと少し。」
銅三さんの肩甲骨ぐらいまで来た。
しかし、風の風圧を後ろから感じた。
「銀次さんがカジカさんを狙ってる!?間に合ってくれ!」
カジカさんにそのまま突っ込み、両腕で包み込む。
しかし、右肩に強烈な痛み。
まるで、初日の夢でフクロウ変身した銀次さんに掴まれたかのように。
「?ぎゃー!ってあれ?ハハソくん?なんで!?」
「カジカさん…生きてる?…死んだんじゃないかと思った…」
そのまま自由落下。
「えっ?それより、さっき投げたのは?」
「説明は後。わかりやすく言えば、ここで死ぬはずだったカジカさんを未来から助けに来た。僕にこのまましっかり捕まって!これから、銅三さんと未来に逃げるよ!」
「う、うん。」
カジカさんって、こんな流暢に日本語喋ったっけ?
「あと、5秒。」
「そうだ!うわっ!」
「きゃ!」
銅三さんが倒れる。
あたりがまるで地震でも起きたかのように揺れる。
家からも、ガラガラと家財道具が外に飛び出す。
「銀次さんは?」
空を見る。
太陽が眩しい以外なにも分からない。
庭には、銅三さんがうつ伏せで倒れている。
どこか近くでお経みたいな低い男性の声が響く。
「…痛い。急に…痛い!」
急にカジカさんが痛みを訴えた。
「カジカさん!」
「私の腕が…腕が…!」
「あと3秒。」
二人で抱きついてる状態なのでカジカさんが見ているのは僕の真後ろになる。
しかし、なにか取ろうと、前屈みになったのは分かった。
後ろを向く。
カジカさんの腕が銅三さんの顔の近くに落ちている。
「2秒。」
「くそ!こんなのってあるか!」
右腕が一気に生えて元どおりにする。まるでピッコロ大魔王みたい。
走る!銀次さんの衣装の力も最大にして。
カジカさんの腕を掴む。
その時、耳にキーン!となにか高速で突っ込んでくる音が聞こえた。
パッと上を見る。
太陽の中からグングンなにか近づいてくる。
銀次さんだ。
右腕を爪をきらめかせて突っ込んでくる。
「1秒。」
「うわぁぁぁ!銅三さんを殺すな!銀次さぁん!」
銅三さんの首元にジャンプ。
銀次さんが右腕を振り下ろす。
僕が勝った。
銅三さんの首元に、僕がうつ伏せの状態でしがみ付くと、羽を最大に広げた。
すると外傷だけでなく、ウィルス性の病気になったときのような内臓の痛みまでが襲ってきた。
銀次さんは、体操競技の後方伸身宙返り4回ひねり通常、「シライ」で地面に降りた。
しかし、その瞬間。
また、僕をいや、カジカさんと銅三さんも含めた三人が紫に光ったかと思うと、消えた。
「なんだ?」
銀次は自分の右手を見た。
自分の衣装の羽が何本も刺さっている。
銀次はだんだん頭がはっきり、冷静になってきた。
「オラは、なにを…カジカ?銅三?…ゔぁ!…」
その時、頭に衝撃を食らって倒れ込んだ。
牛男が庭の巨石を担いでいた。
それでぶん殴ったらしい。
「…あれは…ハハソくんが…やったのか…フフ……二人を助けてくれて…」
巨石が落とされ、意識が飛んだ。
「これは…処刑されるかもと思いながら。」