鎮守の森~元祖異世界時代劇~   作:仲村大輝

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異世界を独自に解釈して、作品の根幹に迫る回です。
ぜひ熟読ください。(難しいのでw)


真実とは残酷だ

「諸君!我々は日野沢に逃げた人々を救出し、安全を保障することが出来た!

しかし、残念なことに、巨人族は憎き仏教にやり込められ、自然に帰ってしまった。

我々は巨人族のためにも、仏教を長瀞から追い出さねばならない!

それに賛同してくれた三峰神社が巨人族壊滅地付近まで来てくれているようだ!我々は今から、三峰神社と連携し、宝登山と巨人族最大進撃地である峠を奪還する。

ちなみに、我々はこれから巨人族に敬意を表し、三つの峠に命名する。

最大進撃地であり、我らの同属、稲荷を助ける判断をした結果、兜がわりにしていた釜を置いた峠を「釜伏峠」、決起するため、箸を刺した峠を「二本木峠」、粥を炊いて備えた峠を「粥仁田峠」と呼ぶように!」

「「「おー!」」」

ハハソが飛んで行った隙に、日野沢方面に進撃した日御碕と稲荷は、日野沢周辺に逃れた人々を日野沢の反対にある吉田、秩父市街方面へ逃す算段を実行に移し、日が暮れた頃、日野沢大神社に陣を張り、改めて上記の演説を部下たちに行った。

「これで、部下たちの士気も上がりますね。」

後から合流し、退却を指示していた、天神が、日御碕に話しかけた。

「嫌味か?部下たちも本当はあのハハソが一番の功労者だと思ってるだろうが、ハハソは行方不明になっちまったから、代わりの士気を上げる生贄が必要だったのさ。」

「それで、巨人と峠を?」

「頭の良い天神様なら分かってくれるかな?」

「…はい。」

「ところで、本当にハハソさんは?」

「下手したら、あのまま仏教と、どっか遠いところまで飛んでいって、過去や未来にいっちまってたりして…」

「…笑えませんよ。…実際、彼がいないと我々、壊滅したじゃないですか。」

「……こうなったら、ますます負けられなくなったな。一刻も早く宝登山を奪還しなくては…」

日御碕と天神は、次の作戦に向けて、社殿に入った。

稲荷は宝登山の方向を見る。

夜であるが、山全体がボヤ〜と明るく光っていた。

まるで燃えているように。

「ハハソさん…申し訳ありません…」

宝登山が笑っているように見えた。

 

「ハッ!」

宝登山神社は、仏教の攻撃を受けて焼失してしまった。

そこに急遽、仏教が施設をつくった。

その寺で、ハハソは目覚めた。

その寺は急遽作られたとはいえ、天井が高い。

天井の梁にお経のように漢字がたくさん書いてある。

左手を動かす。

なにか違和感がある。

布団をはいで、左手を見る。

がんじがらめに縛られている。

ものすごく怠い。

何んか…グローブを長時間はめているから、鬱陶しくてしょうがない感じだ。

「ハハソくん。」

足元から声がした。

「…カジカさん?」

「起きたの?」

やってきて、顔の近くで座ってくれた。

「いまは?」

「ハハソくんが飛んできてから、3日経った…」

「3日!?」

「慌てないで。まだ宝登山と釜伏峠しか仏教…威羅夢は進行してないから。」

「…威羅夢?」

「…ハハソくん。会ってもらいたい人がいるの。この世界や私そして、ハハソくんの秘密や謎を知ってる人に会わせてあげる。」

「僕らの秘密?…異世界からきたっていう…」

「ここだと他の人も寝てるから、ついてきて。」

確かに、ここにはまだ傷ついたのか布団が何枚もあり寝ている人がいる。

それと、起き上がってみたから気づいたが、岩畳まで飛んできた時、一緒に飛んできた禿頭はなにかぶつぶつ言いながら、布団を掻きむしるような動きをしている。

「彼は?」

「…ハハソくんに殺され続けてるの。夢の中で。」

「…悪夢を見てるんですか。」

「夢だか、思い出して気が狂いそうになってるんだか…しかも、彼は神の力を使ってたから、死ぬことも出来ないって。」

「…そうですか。」

僕は本当に悪いことをしたと思った。

しかし、同時に自業自得という言葉と、先に仕掛けたのはそっちじゃないかとも思った。

この寺は本堂のようなところはなかった。僕たちが寝ている部屋と、奥の仏教を率いる仏様が控える部屋だけという変わった部屋だった。

奥の部屋は、昼間だというのに暗くなっていて、とくにジメジメした奥の方に誰かあぐらをかいていた。

「あの人が、宝登山攻撃を…」

「そう。そして、この世界も分かってる人。」

「!この世界が分かってる人?」

「その通り。」

奥の人が喋る。

「カジカさん。ありがとう。二人とも、中に入って、そこを閉めて。神の力を操る…ハハソくん。君と私は境遇が似ているようだ。君に知って欲しいことと教えてほしいことがあるんだ。」

カジカさんは外に出されるんじゃないかと思ったが一緒に入れると言うことで、右足から中に入った。

続いてカジカさんが中に入って、扉を閉めた。

真っ暗になると思ったが、隙間が多く、真っ暗になるということはなかった。

「さて、ハハソくん。君は、この世界の人ではないね?」

「…はい。しかし…」

「大丈夫。私もこの世界の人ではない。だけど、おそらく、君のいた世界の人でもないんだよ。」

「はぁ?」

喧嘩を売る感じではなく、ため息をついたら、音が出たような「はぁ?」と言った。

「頭を使うんだが、この世界が未来まで続いても君は生まれない。もっといえば、君も、私も、カジカさんも習った歴史の教科書に沿った世界を歩んでるんじゃなく、違う世界の違う国の歴史の教科書を歩いている状態だ。」

「…それは、ここが異世界…すなわち、違う時間軸で動いている世界ということが言いたのですか?」

「ほう!…異世界がなにか理解しているのか。ありがたい世界から来てくれた。…君の世界がどんな世界なのか分からないけど、どんな『死に方』をしたんだい?」

「死に方…死に方は、ある日突然、く…車に轢かれました。」

「…それは大八車じゃなく、自動車でいいのかな?」

「は!はい。」

「…自動車のある世界からか…いやこっちの話だ。」

「あの、」

「うん?」

「あなたは?」

「私か?…『何回目のがいい?』」

「えっ!?」

「何回目に死んだ時がいいかい?」

「何回目とは?」

「私は7回経験してる。」

「7回…死んだと…」

「そう。7回死んで、今8回目。」

「…なんで、そんなに生き返れたのですか?」

「うーん…生き返ったと言うより、移った…すなわち、違う世界を7回移動してる。」

「あぁ、そういうことか…」

納得した「あぁ」が出た。

「全部共通してるのは、志半ばってことかな?」

「志半ば…」

「うーん…嬉しかった直後とか、なにか決心した直後とか、とにかく、「このまま死にたくない!」と思ったら、どこかに寝てて、違う世界に移ってた。」

「………。」

僕はとくに「死にたくない」とそこまで強くは願わなかったし、そもそも死ぬとも思ってなかったぞ…

「それで、4回目あたりかな?その時に、他の世界から来た人と出会った。それで、私一人が転生してるんじゃないとわかった。それから、私は仲間を集めることにした。」

「はい。」

話に引き込まれて、頷いている。

「また、志半ばで挫折した人も引っ張るようになった。そして完成させたのがとある願い方だ。」

「ね、願い方?」

「希望。信念。すがり方。宗教という言葉が通じるかな?」

「宗教…」

「私は『威羅夢』と名付けたのだが、この世界では『仏教』と呼ばれるようになった。未来での幸福を約束するという内容としてな。」

「…では、あの箱は?」

「うん。…どうもな、これはまだ仮説なんだが、君は、元々いた世界から自分の身に変わったことは起こってないか?」

「えっ?」

「…例えば、たぶん…傷がめちゃくちゃ早く治るとか。」

「うん!?…」

「空が飛べるとか…」

「えっ!…はい。あの…」

「どうしたい?」

「あなたの普通と僕の普通に違いがあると思いますが、元の世界では、人間は、自力で空は飛べなくて、傷も小さな傷をめちゃくちゃゆっくり治って、簡単に死んでしまって、刀が伸びたり、水が出たりしないんです。」

「………。」

小さく、細かく頷いている。

「私のいた世界に似てるな…私の世界では意思疎通を手でやっていたのだが…まあそれは良い。この世界の人間も神でなければ空を飛んだり、傷が速攻で治ったりはしない。ただ、異世界から来た人には、なにか力が与えられているのは間違いない。それが、君にとって、箱だったわけだな。」

「は?」

「うーん…なんて言えばいいのだろうか………

私たちはこの世界の人ではない。よって、周りからしたら、我々こそ神のようなのだろうな。

しかし、神や奇跡を与える者は別にいる。その別の者や神が、私たちがこの世界で生きていくのに都合良くなる道具や力を授けてくれているのではないか?という仮説だ。」

「すなわち…この異世界転生は、能力付き?」

「そうのようだが、違う気もする。なぜなら、自分が本当にほしい能力は手に入らない。」

「はぁ?」

今度はため息のような「はぁ」

「私は、この世界でこの威羅夢を広めたかっただけなのに、この、神の能力を吸い取る箱が手に入った。

しかも、ただ吸い取るだけじゃなく、誰かに能力を押し付ける代物だ。お陰で、信者は増えたが狂信的な信者が、他の元々あった宗教を攻撃し始めたわけだ。」

「…それが、今回の宝登山焼き討ち。」

「本当に申し訳ないことをしたと思っている。必ず、社殿を直して、亡くなった方の菩提を弔い、遺族にも謝罪したい。」

僕に頭を下げてきた。だいぶこの人も参っているのだろう。

僕は急に哀れに思った。

最初は、この騒動を巻き起こしている加害者だと思っていた。

しかし、どうも彼も被害者のようだ。

鬼滅の刃の鬼のように。

「どうして、異世界から来た人はみんながみんな能力が使えるのでしょうか?ひょっとすると、異世界の人が僕らの普通が彼らにとってスーパーマンな場所もあるかもしれないじゃないですか。」

「たしかに君の言うとうりだ。…うーん、これも私のもう一つの仮説なんだが、我々空間旅行者は、なにか一つ願いが叶えてもらえるというより、自分で世界を構築して、自分に都合の良いように世界を動かしているんじゃないかというものだ。」

「はぁ?」

どういうこと?

「つまり、数多くの世界が、物語のあらすじや登場人物紹介、世界設定などが決まっていて、我々空間旅行者が自分で都合の良いように動かしている。

しかし、こういう風に空間旅行者同士が語り合っている。

すなわち、世界の初期設定は同じで、各自いろんな物語を並行して書いている二次創作のような世界なんだ。だから、物語の主人公である我々、空間旅行者はスーパーマンのような力が備わっているんだ。」

「そうか、元々ある初期設定だけの世界に飛び込んで、主人公が活躍するにはなにか他の人より優ってないといけないから、ほぼ自動的に能力が…そうか。」

「私もいろんなところに行った。

大戦争の後若者が残らずその国、その地域らしさが徐々に失われていく世界。

大人は魔法が使えるが、子供は使えなくなってゆく世界。

銀河鉄道や宇宙戦艦、宇宙海賊が跋扈する世界。

天人、地人、人間が殺し合いをする修羅の世界云々…」

「で、これから僕はどうしたらいいのですか?あの箱は?」

「あの箱はここだ。」

そういうと、彼は後ろから箱を出した。

しかしそれはカジカさんが目を背けるような物だった。

なんと、僕が切り取った両腕がそのままくっついているだけしゃなく、僕の左手ががっちり箱を鷲掴みにしていたのだ。

「申し訳ないが、君の左手をこの封印の一部に使わせてもらったよ。こうでもしないと、禿たちに開けられてしまう…」

開ける動作をするが、どうにもならない様だ。

「びくともしない。ただ、君の左手が再生しない…」

「…少し開いてて、左手に力を加え続けている。」

「そうだ。しかし、力がもうすぐなくなる。そしたら、この箱もひらける。そしたら、この箱を開けて君の能力を封印して、この世界の神々に能力を返上するんだ。そして、君は未来に帰れ。」

「そうすると?」

「神が力を盛り返し、箱はないから夷羅夢、仏教は力を失って秩父から去る。」

「そうすれば、僕はもとき…タイムスリップする前の世界がもう少し過ごしやすくなって、君も大人になって、歳をとって死ねるだろう。」

「…この組織に属してる人たちは、」

「それは…(プス)がだ!…」

急に後ろ向きに倒れた。

喉元を見ると矢が刺さっている。

「そういうことだったのか。」

後ろの扉があいて禿頭が二人現れた。

一人は弓を持っている。

「貴様!よくも我ら四天王のうち、二人をあそこまで廃人にしてくれたな!」

先に入ってきた男が腰の刀を抜いた。

カジカさんは倒れた彼に駆け寄ったので自分より後ろにいる。

「お!…ニヤリ…どうやら尊師…いやあの男は違う世界に行ってしまったらしいぞ。」

一瞬後ろを見る。

カジカさんが抱きかかえたはずだが、そこには誰もいなくなっていた。

「お前らも、違う世界に行っちまえよ!」

「そんなことさせるか!」

この言葉を使ったのは僕じゃない。カジカさんだ。

僕の首根っこと箱を掴むと、ジャンプして、天井を突き破って外に出る。

「逃すか!」

弓を持っていた男が、目一杯引っ張ると、矢を飛ばす。

「ぎゃ!」

カジカさんの右肩に刺さる。

思わず箱を落とす。下の池にボチャン!と音を立てて沈んだ。

「カジカさん!」

僕は体勢を立て直すと、カジカさんを抱えて、口に脇差を持って、宝登山を後にした。

宝登山はまだまだ焼け野原で、だいぶ灰だらけになったが、まだ煙は上がっていた。

「…消えてしまえ!」

噛んでいるのでうまく言えないが、僕が言うと、脇差の刃から天空に向かって光が伸びて、雲をつくった。すると雨になった。

これで早く煙もなくなると思った。

僕らは雨にうたれる。

「僕たちは、帰れないのか。」

雨なのか涙なのか、頬を水がつたった。

残り、25日

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