ただ、うちわネタすぎるかなとも思います。
(地名がややこしすぎるかな?)
「つまり君は遠い未来から、もっと言えば、この世界がずっと続いていった先とも違う世界からやって来たってことかい?」
「…おそらく。」
「そりゃ、君のお父さんの実家が、『でくち』って言い切ったのに、「見覚えがない」って言われれば、そんなふうに考えるけどな。」
そう。僕のお父さんの実家、おじいさんの家はこの付近の近くであったはずだ。
それは「でぐち」という屋号で呼ばれてた。それなら通じると思い、その屋号を言うと、速攻で連れて行ってくれた。ただ、絶対に違うと言い切れた。
なぜなら、おじいさんの家には高さ1メートルぐらいの塚の上に、『妙見の腰掛石』という石と、それを祀る小さなほこらがあるはずである。
しかし、そこにあったのは、大きな寺のような建物であった。
「これは、見覚えがない。」
「しかし、『でぐち』の一族はあの建物を守り、時を待つとされているぞ。じゃあ、……仮に、この時代には寺がここにあって、ハハソが来た時代には用がなくなって、規模が小さくなったってことはないか?」
「…それもないと思う。
だって、敷地に沿って塀があるなんて聞いたことないし、仮にそんなものがあったっていう事実があるなら、発掘とかされてるはずだから…」
「…また、君の世界に存在してるのは、人間と、『喋らない』動物と、『動かない』植物と、人間のふりをしない『生物』だけなのか…な?」
「…そうです。けして、お寺の中で酒盛りなんかもしない。」
「そうなのか。じゃあ、一旦家に帰ってこれからどうするか決めるか。」
「よろしくお願いします。ただ銀次さん、家を出てから足元をぐるぐる身体をすり寄せてる猫はなんですか?」
「気にするな。踏みつけても噛み付いたり引っ掻いたりしないからな。気になるんなら、肩を二回叩いてみろ。乗ってくるぞ。」
そう言われて、僕は中腰になり、猫を見つめながら肩を二回ポンポンと叩いた。すると、猫は膝、腰、背中を廻って肩に乗った。
「!初めて会った人間に乗るとは思わなかった…噛み付いたり、引っ掻くと思った。」
「銀次さん!?そりゃないですよ。」
そうして、二人は『でぐち』の寺で酒盛りをしている体が人間で、顔が酉、子、卯の妖怪に見送られて、銀次さんの家に帰った。
銀次さんの家は改めて見ると、大きな木造の総二階の建物である。
雨戸が閉まっていると、窓もない箱に見えるが、雨戸を全て外すと、家の向かい側の木が見えるほど風通しの良い家になる。
しかも、だいたい昼間はこんな感じである。しかし安心して欲しいのは、一応しょうじはあるので、丸見えというわけではない。(特に妹の部屋のところは閉まってることもある。)
見取り図で言うと、東西が長い長方形の形をしている。
その長方形を六等分して、一室を正方形にする感じで部屋がある。
そのうち、一番東の南側が玄関(土間)で、その奥が台所。南の真ん中が僕の寝ていた部屋、その奥が銀次さんの部屋(元兄夫婦の部屋)、西側の二つが妹とお母さんの部屋、義理のお姉さんは、気を使ってはなれに住んでいるらしい。
では、二階はどうなっているのか。
「二階は、」
と銀次さんに案内してもらおうと土間の階段に足をかけたら、上から誰か降りて来た。
「あっ!兄さん。帰ってきたんですか?」
赤い銘仙を着た女の子が降りてきた。
「あぁ。ハハソ。紹介しよう。上の妹の、カジカだ。掃除、裁縫などみっちり仕込んだため、近くの娘たちに指南させている。養蚕の技術支援なんてのも出来るんだ。」
「兄さん。お手紙が妙見宮から。」
歳は15歳ぐらいだけど、銀次さんより大人びた印象を受ける。
やはり、技術を持って、人に教えているから、大人びるのだろうか…僕はとても自分がなにもないような気がした。
「そうか。妙見宮から至急の呼び出しか。分かった。カジカ。申し訳ないが、こちらのハハソくんはさっき道で倒れている人がいると言ったがその人だ。……残念なことに、倒れる前の記憶が部分的に欠落して、家が分からなくなってしまっている。だから何日か過ごすことになったから、母さんと、義姉さんと、ヤマメと、銅三に紹介してやってくれ。」
「分かりました。」
じゃあ行ってくる。と銀次さんは出て行った。
「そろそろ銅三が帰ってきますから、出迎えましょう。」
そういうと、二階に向かい出した。
「えっ?一階じゃ…」
「銅三は二階から入ってくるんです。」
「?」
二階に上がる。
柱があるだけで一階分のスペース全てが区切られていない空間があった。
また、ものすごく暑い。
ただ、天井からあるものがぶら下がって、部屋中を覆い隠している。
あるものは、木枠(30+55センチぐらい)を等間隔で10個の一組にする。
木枠の縁の真ん中四箇所を板でつなぎ合わせ、端は板を内側に曲げ、対角線上に棒を挿し、天井から吊るしてある紐に引っ掛ける。そうすると、水車のように木枠が回転するようになる。
木枠は、12×12の長細い枠に区切ってあり、一つの枠に一つ白い楕円形の球が入っている。
それが部屋中を埋め尽くしている。
「…これは?…」
「回転まぶしと言いますぅ。」
「回転まぶし?」
「見てみぃ?蚕がいるだろぅ?」
なんか急におっとりとしたというか、ねっとりとしたというかな話しかたになった。
確かに木枠の上を目指して登っている白い芋虫や、枠の中に入って白い糸を吐いて繭を作っている。
すると、カラカラとまぶしが回転した。
見ると蚕達が下にたまっている。
「蚕はぁ〜、繭になる前はぁ、上に向かう習性があるからぁ〜、それを利用してぇ、気にいった部屋を見つけてあげるんだよ〜。」
「へ、へぇー。」
その時、「にゃーん!」と肩の猫が鳴いた。
鳴いただけならまだしも、頭の上に手を置いてきた。
斜め上を見た。
すると、梁の上に女の人が乗っている。
「わっ!あんなところに人が!」
「?あぁ、あれ?あれは気にしなくて良ぃよぉ〜」
「えっ?」
「あれはぁ〜、居候しているよぅなぁもんだからぁ〜。」
「…だけど、危なくないですか?」
「大丈夫ぅ〜なぜならぁ…」
そう言ったら急にズシン!ズシン!と音が聞こえてきた。救急車や消防車が急に音が聞こえるように、大きな音が急に聞こえてきて、話どころではなくなった。
「な!?…なにごとですか?」
「銅三が帰ってきたんですよ。」
「か、帰ってきたって…」
梁から埃が落ち、回転まぶしが回って、蚕がボタボタ落ちた。
「よっこいしょ。兄さん、姉さん、母さん、ただいま!」
二階の窓から人の身長ほどある目ん玉がこちらを見ている。
「やぁ!銅三。おかえりー。今日はなにをしたのぉ?」
「カジカ姉さん。大昔に偉い人が通ったっていう峠の修理をやっているんです。」
「そぉなん!?じぁあ、夕食の時聞かせてねぇ。」
「そうだ!親方がお土産に鮎をたくさんくれたんです。」
「ヘェ〜。じゃあ、銅三が好きな串焼きにするよう、ヤマメに言っとくねぇ〜そうだぁ〜!こっちの男の子はぁ、ハハソくんって言って〜、銀次兄さんが畑で助けたんだけどぉ〜記憶が飛んじゃって〜、しばらく家に置くことにしたんだってぇ〜」
「おぉ!お客様。いらっしゃい。不安でしょうがあんまり気を使わずお過ごし下さい。この家は変な人はいませんから!」
そういうと、銅三はにゅっと手を二階に突っ込んでくると、僕とカジカさんを掴んで台所の目の前まで運んだ。
布団や寝袋を被ったような感覚だ。全身がしっとりと重く、体温で暖かい。
「ヤマメ姉さん!今日は人が来たで。『ハンゴロシ』にしよう。」
「!!!」
「銅三、おかえりー!兄さんから聞いてる。だから、『手打ち』でって話しだったから…」
「そうか。じゃあ『手打ち』にしよう。御客人。この中へどうぞ。」
「いや、ちょっ…半殺しと、手打ちって…」
暗くなりかけている台所に問答無用と、鷲掴みの状態で押し込まれた。
「えっ!?僕、こんな異世界どころか、昔話でも聞いたことないような展開で、手打ちでもって首をはねられたり、半殺しにされるの?」
「なにをおっしゃっているのですか?」
おぉ、なんということだ。中にいた女性は、カジカさんと瓜二つだが、ついになるような美しい青い着物を着ている。
ただ、それだけなら良かったが、トゲのついた鉄球に鎖がついたモーニングスターいな、長い棒を持っている。
こんな時に余計な知識が頭をよぎる。
「キャー!半殺しどころか、全殺しにされて、もう一回似たような展開にさせられるー!どこで間違えたんだー!」
「…ハハソさん。もしかして、『ハンゴロシ』や『手打ち』のことを、本当に人を殺める行為だと思っています?」
「えっ?」
蚕のくだりは完全に養蚕で使われる技術です。調べました。
また、この『手打ち』『半殺し』『取って投げ』も調べてあります。お楽しみに。