ただ、今は宝くじが当たると評判の「聖神社」と露天掘り跡が残るのみです。
宝くじに当たるので是非お越しください。
露天掘りでもって、技術者が地表をひっぺがしているところを初めて見た。
遺跡跡は見たことある。ただ、そこを作業しているのは見たことある人はほぼいないだろうが、この露天掘りは生きている。
ただ、驚いたのは、みんな銀次さんのような動物の格好をしている。
そして、その動物がするであろうな動きをしている。例えば、モグラや、犬の格好をした人が崖を砕き、馬や牛の格好の人が壊した岩や石を運び出している。
動物の格好をした人たちに話しかけると、あっさり聖神社に通された。
ちなみに、この切り出した岩石を粉々に砕き、精錬する施設もなんと神社にあった。
採掘場から伸びる川を降った先に神社と精錬所がある。
神社は、山肌にへばりつくように、ひっそりあるが、精錬所は川向こうの川沿いにあった。
精錬所は巨大な建物で、金槌で石を砂にする工程。
石臼のお化けのようなものをみんなでまわし、砂をもっと細かくする工程。
長い布に水を流し、上記の砂をその流れの上流から流す工程。
その布に、石より重い鉱物が残るから、それを集めて、一つの塊にする。すなわち、フイゴたたらを用いた精錬の工程など。大きな建物で全て精錬していた。
そして、その石臼を動物たちと混ざってやっていた女性がなんとお妙様だと言う。
「で、どんなよう?」
まさかあの冷血な女性とは思えない優しい口調で話しかけてきたのが、この黒谷銅山を取り仕切るお妙様だという。
火避けのため頭巾を被っているがそれより長い髪が頭巾より下から見えている。
そしてこの女性。目が紅い。
精錬所で会った人(狼を被っていた人)に聞いたのだが、「目の色が違うのは、炉の様子を見るため、火を見続けたら目が変色してしまった。頭の姐御も目が悪いのはそのせいだ。そしてそのことを気にしているからあまり目線を動かすな。」
と言われていた。
「本当なら、俺たちがやるところなんだが、『あなた方が片目をやられたら、タタラという仕事が怖い存在になってしまう。違う土地では、フイゴを踏み抜き、一本足になり、片目になったものを[イッポンタタラ]という化け物呼ばわりしている所もあるという。そのような厄害は私が引き受けて当然。』と言ってくれるんだ。そりゃみんなついていくよ。」
とも言っていた。
稲荷が喋る。
「お妙様。申し訳ございません。異宗教が三峠を超えて三沢まで侵略したようです。残念ですが、撤退が得策かと言うことで、オオカミ様の命を受け参上仕りました。」
「うんうん。でオオカミは?」
「はっ!オオカミ様は三沢を通り、三沢の者たちを激励しながら秩父神社まで撤退するとのこと。」
「だから、私たちは取り残されると?」
「はい。その異宗教は、数は少ないですが、巨人、日御碕、天神の能力を吸い取り、自分で使いこなし、攻撃してきます。これではいくらお妙様とはいえ、巨人、日御碕、天神が前線に復帰するまで堪え切るのは…」
「うん。そうだね。」
「では!」
「ちょっと待って。」
「(ドキドキ)」
「秩父神社まで戻って策はあるの?」
「!(しまった…)…領民を、退避させることぐらいしか…」
「そんなことだろうと思った。」
「………。」
「ところで、その子は?」
「この者ですか?この者は…」
稲荷が頭を下げた。
「お、お妙様。お初にお目にかかります。は、ハハソと言います。」
「ハハソくんか。変わった名前だね。君はオオカミになんか言われたの?」
「えっ!?あっ…はい。…お妙様を説得して欲しい。と」
「オオカミが?私が反対すると思ったのかな?」
「…お妙様は。」
「うん?」
「オオカミ様を裏切らないでください。」
「うん?」
「うん?」
キョトーン…
「このたびの敗北は、オオカミ様や大切な人を誰か…これは言えないんですけど、ある特定の人がその人の期待を裏切ったからこうなったんです。」
「ほうほう。」
「だから、お妙様はオオカミ様を信じてください。たとえどんなことがあっても、オオカミ様を攻撃しないでください。」
あなたが千年後、オオカミ様を襲いませんように。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
オッドアイがこちらを見る。
「分かった。そんなことならますます私たちがなんとかしないとじゃない。」
そういうと、お妙様は立ち上がり、神社の扉を開けた。
「みんな!銅を持って宮地まで撤退するよ!」
「「「「「おー!」」」」
凄い。
外には、釈迦の涅槃図のようなほどの動物、いや、動物の皮を被ったお妙様に忠誠を誓った人たちが集まっていた。
雄叫びの後、われ先にと石階段を下り、自分の道具や、銅、鉄などまとめて、秩父市内の方向に走り出している。
「彼らは、家に居場所がなくって、飛び出した人たちなんだけど、本当は愛に飢えていただけなの。だから家でも孤立して喧嘩、騒動を起こすの。だから、私が面倒見てあげたらみんな良い人だったよ。」
「…なぜ動物の皮を?」
「それが不思議なんけど、みんな動物みたいな力を持ってるの。人間なのに空を飛べたり、千里の道を往来したり、体重の何倍もある石を動かしたり。それが家族から気味悪がられてここに来た人も大勢いるよ。」
「なるほど。」
「で、私も撤退するけど。あなたたちは?」
「この後、諏訪城へ。」
「お諏訪様のところ?」
「はい。」
「気をつけてね。どっから敵が来るか分からないから。」
「お妙様もお気をつけて。」
「そうそう。ハハソくん。」
「はい。」
「変な名前なんて言ってごめんね。お詫びと言っちゃなんだけど、オオカミのことは任せといて。」
「…!ありがとうございます。」
それじゃあ!と言って、お妙様も撤退して行った。
ちなみにだが、人力車で撤退したのだが、亀の甲羅を背負い、蛇の頭が尻尾のように何匹も生えているまるで玄武のようであった。
「さて、我々は諏訪城なち向かうとするか。」
「はい。」
「行かせねえよ。」
「なに?」
ドン!
稲荷が振り返ろうとした瞬間、僕は「禿頭だ!」と思い、稲荷様を押した。
後ろ向きにぺたん!と尻餅をついた。
しかしそれで良かった。
二人がいたところには鉄で出来た矢が僕の右腕ごと、地面に突き刺さっていた。
地面も若干割れていた。
まあ、気を張ってれば、ピッコロ大魔王のように一瞬で生えるんだけど…
「ちっ…まぁたお前らかよ!お前ら三沢を取られたってのにまだのこのこ美の山に残ってるもんだから、攻めてみたらよ…旗ばっかりで兵士なんか人っ子一人、『猫の子一匹いなかったぞ!』」
とりあえず、オオカミ様とカジカさんは脱出に成功したようだ。
「それで美の山の下をみたら、ドサドサ逃げてるじゃないか!お前らだけでも…」
矢をつがえた。
「死ねぇ!」
しかし、当たらない。
神に、発射してからまっすぐにしか飛ばない矢など当たるわけがない。
しかも力を使っているのだから、発射してからで十分に対応できる。
「ちくしょう!なんで当たらないんだ!俺だって、箱の力を使ってんだぞ!」
…それはない。ただ、力の使い方が違うのだ。
あの鉄弓を引くのにフルパワーを使ってるから、僕たちがどんな動きをするか予想する力が残ってないんだ。
「………。(あるいは、予想するということが出来ない馬鹿か…)」
「なにか言ったか!?」
「なんも…いや、鬼さんこちら。手のなる方へって言ったんだ。」
「(ブチッ!)小馬鹿にしやがって!」
三本もいっぺんに引く。
「稲荷様。」
「わかってる。諏訪城と逆方向に引っ張っていくぞ!」
「死ねぇ!」
雄叫びを上げながら、禿頭は鉄矢を撃つ。しかし、向かってくるならまだしも、逃げてる相手に当たるわけがない。
カーブやフォークならまだしも、ストレートじゃ、矢の軌道が読めるのだから、当たるわけがない。
「…それなら、手加減していたが、あの若造を吹き飛ばしたあの技でいくぞ!」
「なに!?」
「それは辞めろ!」
「稲荷様!聞くな!」
「仏教繁栄のために!」
雷のような光が矢に集まる。
「まずい!」
「この辺一帯全て吹き飛ばされる!うん?」
「威羅夢の神よ!」
「稲荷様!伏せて!」
「えっ!?逃げないと…」
「いいから!」
「グワっ!」
二人はその場に伏せる。
「!?我に!なに!?」
ビュアァン!という雷が鳴ったような音がした。
パッと顔を開けると、あの鉄矢が彗星や流星のように尾を振って飛んでいった。
しかしそれより驚いたのは、無数。それこそ数え切れないほどの矢が反対方向。禿頭に向かって飛んでいっている。
「あれは?」
ビィン!
「わっ!」
「危な…」
ビャィン!
木の矢だが、威力は先程の鉄矢のようだ。地面に突き刺さる。
「なんだ!伏兵がいたのか…ぐわ!」
一本当たったら、一瞬でタワシやハリネズミ、やまあらしのように矢だらけになった。
真っ逆さまに落ちてきた。
「ヴゥおのれ…」
しかし死ななかった。
寸前のところで意識を取り戻し、体制を立て直すと、超低空でどこかに飛んでいった。
「あれは?と、いうか、どうして分かった?」
「敵が矢を撃つ瞬間、なにか声が聞こえたんです。」
「声?」
「たしか…オオカミ様の使者よ。助けるからその場に倒れなさい。
栗のイガのようになりますよ。と言われました。」
「どういうことだ?この上流にはもう人家はないぞ…」
世界が凶変するまであと20日