「…僕はこんなところでこんなことをしてて良いのか?僕は、お妙様が妙見大菩薩になって、オオカミ様を…」
日がくれて、カジカさんに頼まれた鍋を回しながらそれこそぐるぐる考えていた。
カジカさんは少し出かけると言ってどっか行ってしまった。
ガサガサ…ドンドンドン!「ごめん!…ここに…ハハソさんはいるか?…」
「はい!?…どうしたんですか?」
表に出ると、蛙と狸の格好をしたフクロウがうつ伏せになっていた。
「み…水、水を」
「水!」
急いで小屋に入り、茶碗二つに水を汲み、二人に渡した。
二人は半分くらいこぼしながら、飲み干した。
「…ハァ、ハァ。カジカさんが。」
「カジカさんがどうしたんだ!?」
「ぶ、仏教徒に…」
「どこに!?どこにいた?」
「…下宮地、広見寺参道。」
「!」
バッ!と走り出した。
銀次さんの服で超低空飛行を行い、一瞬で五本松のところに飛んでった。
ぐったりと、小脇に抱えられたカジカさんがいた。
小脇に抱えているのは、武装した男。その男をハハソは知っている。
「何やってんだ!多聞天!」
「なに?…なんで俺を?知ってる?」
ボン!
「えっ!?」
首が宙を飛ぶ。
血が宙を舞う。
前戦った時はなかった血が吹き出した。
カジカさんを抱えている腕を斬って、抱き抱えようとした。
ようとした。
あるものを見た。
目の前の造りかけ?の建物。
その中に、見たことある人がいる。
「…お妙様?」
「誰だお前!」
転がってる首が喋った。
「……!(知ってて…いや、知らないか。今は昔なんだから。)知り合いの女性だったもんで。」
「いきなり現れた猫を始末しようとしただけだ。しかも口を聞く。」
「頭のいい猫はなにを見たんですか?お堂の中ですか?」
「小僧…」
「このお堂の中の人もとても苦しそうだ。出して連れて行きます。」
「そんなこと、」
「させる、」
「訳が、」
「ない!」
急に上からネットをかけられた。
「ハハソくん。逃げて…そいつらは、強い…」
お堂の中のお妙様が喋る。
「お妙様…」
「いいから…逃げて!これは、わたしのまいた種だから…ハハソくんとの約束を守れないかもしれないけど…ズズゥ……私は…大丈…夫」
「少年!」
「大人しく、」
「捕まり、」
「我々に協力しなさい!」
「…断る!」
短刀を逆手で引き抜き、網を斬る。腕を振り、羽を四天王に刺す。
四天王達はわずかに残った人間の皮膚に次々と刺さる羽によって段々血で染まる。
「逃げなさい!…ウッ…」
「…お妙様!すみません!」
僕はカジカさんを抱え直すと、空に飛び上がる。
「待て!」
「逃、」
「すか!」
武装した三人が飛ぼうとするが、目をやられたらしく、動けず、ジッとしたままだった…
僕は大急ぎで、ボロ屋に戻った。
布団を敷き、カジカさんを入れた。
大丈夫か心配なのか、蛙と狸のフクロウが僕の後ろから覗いている。
「そう言えばどうして、二人はそこに?」
カジカさんは、失神しているだけで、傷つけられたわけでないようだった。
帰ってきた頃には、カエルも狸も喋れるぐらいにはなっていた。
「はい。実は、カジカさんは下宮地の2の井戸付近を、広見寺方面に歩いていたんです。」
「えっ?」
「我々は2の井戸当番フクロウなのですが、一般人、彼女の場合、憑物なので、一般人ではないですが、とにかく、軍人でないものが、1の井戸、広見寺方面に行くのは危険だったため追いかけたのですが、本当に最前線、敵の仏教の新造施設までいったら、武装した男達に襲われてしまったんです。」
「男『たち』?」
「はい。正しくは2名ですが、あっという間に捕まり、一人は広見寺方面に行って、このままだと殺されると思い、ここまで一気にやってきたんです。」
「…どうしてカジカさんが?」
「…ハハソくん?」
「カジカさん!動かないで。」
「大丈夫。なにもされてないはずだから、」
「けど、」
「じゃあ、動かないから、このまましばらくいさせて。」
「はい。…あの、なんで広見寺へ?」
「…ハハソくん。もしかしたら、前線に出たいんじゃないかと思って、大丈夫かな?って見に行ったんだけど…」
「どうしてそんなに危険なことをしたんですか?」
「…ごめんなさい。ただ、…あのお妙様と、なにか約束してるんでしょ?それだったら、それを達成するための努力をハハソくんはするはずじゃない。だとしたら、ここに大人しくいるのは、ハハソくんじゃない。ハハソくんにこうなってほしいっていうわたしのエゴがここにいるんだ。だとしたら、私がなんとかしないと…」
「カジカさん!」
「はい。」
「ありがとうございます。僕のために。」
「…?……いや、これはわたしのエゴで…」
「カジカさんが命がけで調査してくれたのは、事実です。ならば、僕はその頑張りに答えます。」
「いいんだよ。ハハソくん。…私が、私が悪いんだから…私がやりたくてやったんだから、わたしのわがままあなたを止めたんだから。「絶対にオオカミを裏切らないでほしい。」そして彼女は戦ってた。わたしもあの建物の中を見た。あの箱の能力を食らってて正常でいられる訳がない。」
「……(そんな状況で彼女は喋ったのか!)」
「だから、お妙様を助けて。わたしも協力するから。」
「…カジカさん。」
「…まさか…こんなこのになるなんて、思っても見なかったの。あの時は、あの時一番追い詰められてるのは、ハハソくんだと思ってたの。」
たしかにあの時ほど余裕があれば、僕が神の力を使うと気絶するということが一番やばい現象だったろう。
「もう、遅いかもしれない。けど、カジカさん…ベストは尽くしましょう。」
「ごめんなさい。」
「いえ、やり直しましょう。そして、みんなでここを平和にして、未来に戻りましょう。」
夜が更ける。あと4日…