最初に「これは夢」と書けば良いんじゃ!?
おっと。急に場面が変わった。
多分現代だ…というか秩父だ。
誰かが、警察署の裏でパトカーと救急車に囲まれている。
どっかの馬鹿が轢かれたみたいだ。
どんな馬鹿だか覗き込んでみようと思ったところで、急に両肩を掴まれた。
ただ、肩をポンと叩かれた感じではなく、肩を揉むようにガッツリ掴まれた。
そして天空に飛び上がった。
「嘘だろ!」
空から救急車に運び込まれる馬鹿を見た。
僕だった。
次に上を見た。
大きな翼。
大きな手で肩を掴んでいる。
ただ、顔は仮面武道会で使うような鼻頭まで隠せる鳥をデザインしたような仮面をつけているから分からない。
秩父神社上空まで高く飛んだが、秩父神社の参道めがけて急降下し、足がつくスレスレでまた全速力で武甲山に向かって飛び始めた。
車が走り、観光客がいるなかで、秩父神社の参道をまさに飛びながら、風を切り飛ぶ。
避ける動作などない。周りが反応するより先に飛ぶ。
市役所の庭に出る。秩父夜祭りの際の御旅所になっている社に飛び込む。
「叩きつけられぺしゃんこになって死ぬ!」
そう思ったが、まるで隙間をすり抜けたように視界が一度狭まっただけで、また武甲山に向かって飛ぶ。
国道だろうが市道だろうが関係なしに超特急で飛ぶ。
山道に入る。
考えてみればほぼ秩父神社からまっすぐ飛んできた。
山道…いや獣道もまっすぐ山に向かっている。
草だろうが木だろうがお構いなしに飛ぶ。
「そうか…多分…これは…この世界は現実だろうが、僕はこの世界の人じゃないんだろう。だからこんなことが出来るんだ…そうか…僕はどうなったんだ…僕は…」
いつの間にか、獣道の上というより、木の上、緑の絨毯の上を飛んでいる。
すると、大きな、人が登れそうもない二枚の岩が現れた。
その麓は、少し広場になり男女10人ぐらいが歌を歌ったりダンスをしたり、挙げ句の果てに裸になってくっついている人までいる。
「なんだあれ…」
言った瞬間、パッと肩を掴んでた手が離れて僕は武甲山に引っ張られた。
霧揉みしながら落ちる。緑の壁、山、秩父の街並み、山、緑の壁…グルグル廻る。
上を見る。
太陽を背に鳥人が見ている。
「なんでこんなことをするんですか!銀次さん!
…銀次さん?
…銀次さんって言った?
…顔も見てないのに、銀次さんって言った?
…なんで…どういう…これはどういうこと…」
ドカン!
急に屏風岩が爆発した。
時計を、時間を見る。
12時30分。
「なに!?…これは…どういう…」
下を見る。
男女がこちらを見てる。
その人たちの足元もダイナマイトで爆発した。地面が持ち上がり、火を吹き、煙が立ち込めた。
「僕も死ぬ…やだ!まだ死にたくない!誰か…誰か助けて!死にたくない!銀次さん!」
すると、煙の中から馬に乗った人が飛び上がって僕に手を伸ばした。
銀次さんも昔の格好をしているが、その人物はもっと古い…まるで平安時代や飛鳥時代のような服装をしていた。
しかも、兜をしていない、ドラマで見た源義経がしていたような大鎧の格好だった。
「あなたは…」
「…すぐ分かる。ただ、助けてくれ。後で話す。」
その人の手を掴もうとした瞬間。
ハッと、目を覚ました。
見たことある天井。
残念だが自分の家でも病院の天井でもなかった。
木で出来た、銀次さんの家の天井だった。
「ハァ、ハァ…あれが、夢か…」
寝ていた布団に手を置く。
湿っている。凄い汗だったんだろう…
「さっき見たのは…」
「ハハソくん。大丈夫ぅ〜?」
声がした方向を向く。
夕食を食べた部屋からする。
ちょっと光が漏れている。
「カジカさんですか?…大丈夫です。ちょっと、変な悪夢を見ていたようで…」
「お水かなにか飲むぅ〜」
「あ、はい。」
起き上がって、光がさす部屋に入る。
庭に銅三さんが座っている。
「銀次兄さんがぁ〜急にぃ〜旅に出ないといけなくなっちゃって〜、準備してたんよぉ〜」
湯呑みを持ってきてくれつつ、カジカさんが言う。
「ヤマメがぁ〜着替えを手伝ってるんだよぉ〜悪夢は大丈夫ぅ〜?」
「はい。ただ、ちょっと気になることが…」
「ハハソくん。」
銀次さんの声が奥の間から聞こえた。
「急にこんなことになって本当にすまない。」
「いえ。今日泊めていただけたのは銀次さんのおかげじゃないですか。感謝してます。」
「そうか。すまないが、少し旅に出ることになってな。」
そういうと銀次さんが部屋に入ってきた。
「悪いな。」
ガチャン!
思わず湯呑みを落とした。
水がかかる。
冷たい。
「大丈夫か?ハハソ!」
さっき夢で見た銀次さんと同じ格好をしていた。
背中まで冷たいのは、冷や汗が出たからだろう。
夢の中の銀地と、鎧の男は一体?
武甲山では『歌垣』(かがい)が行なわれていたという伝説があり、それを引用しました。
歌垣はまあ、書いた通りのことを山でやることです。