ただ、本当のオーサキとネブッチョウかと聞かれたら違うと思います…
「ギャー!」
と、声を上げたのは、カジカさんではない。ただ、僕でもない。
枝から飛び、僕に飛びかかろうとしたオーサキが不自然に地面に落ちた音だった。
僕たちもシルエットは見えた。まるで、空中で急になにか重い石を背負わされたような落ち方をした。
手足を伸ばして、僕たちを泣きそうな目で見ている。
「た…助けて。助けて。」
「カジカさん…」
「ハハソくん〜。襲わないと約束してあげなよ〜。」
耳元でカジカさんが囁く。
「これはね〜。ネブッチョウが上に乗ってるんだよ〜。」
「ネブッチョウって?」
「オーサキの背中にちっちゃい蛇が乗ってるはずなんだよ〜。それがネブッチョウ〜。」
「それは、僕を襲わないのでしょうか?」
「家の二階に、なんも喋らない人がいたでしょ?あれがネブッチョウの昼の姿。あれも〜ハハソくんが〜気になっちゃったから〜取り憑いたみたいだね〜。ネブッチョウは、ご主人の危険や、気持ちを読み取って行動するから〜、先にオーサキと〜契約した方が良いかもね〜。」
「はい。」
「にゃ、ニャーを早く、助け…て…」
「オーサキ。助けてやるから、僕を襲わないので欲しい。」
「お、おミャえ…」
「僕は、君を助けたい。だから、早く契約してくれ。僕を襲わないと。」
「…分かった、にゃ。約束してやるにゃ…」
「良し。ネブッチョウ。退いてやってくれ。」
「は、早くして欲しいにゃ…」
「?…ネブッチョウ。早く退いてくれ。この子が死んじゃう。」
「も、もう…」
「…ネブッチョウ。もしも、僕が君に驚いたことに怒っているんなら謝る。姿を見て、姿だけを見て驚いてごめんなさい。」
「は…ニャア…」
「…ネブッチョウ。さっきは、話ができなかったりけど、朝になったらしようよ。それならしゃべれるでしょ?」
「ニャー!楽になったニャー!」
「………!」
ゾワっ!
なにかが、背中を駆け上がった。
まるで、蛇が駆け上がったような。
「ニャハハハハ!おい、ニャンゲン。しょうがにゃいから、これで勘弁してやるにゃ。その代わり…」
「まだなにかあるの〜?」
「うるさいにゃ。カジカ。変なこと言うとお前の秘密をハハソに喋るにゃ。」
「ふぇぇ〜。」
「おい、ハハソ。俺がオーサキに戻ったら、昼間と同じく俺をかまうのにゃ。分かったにゃ?」
「そ…そんなことなら、良いよ。」
「ニャハハハハ!じゃあ、朝にまたにゃ。ニャハハハハ!」
そう言って、オーサキはどこかにジャンプして行った。
「ハハソくん〜大丈夫?」
「あっ!…はい。大丈夫です。」
「いま〜、背中をなにか這いついたでしょ〜?」
「えっ!…まぁ、はい。」
「懐を〜見てごらん〜。」
右手を恐る恐る懐に入れる。
するとなにかが、腕に這ついた。
「わっ!」
パッと手を振り払おうとしたが、絡みつき離れない。
見ると、蛇が巻きついていた。
「きっと〜話しかけてくれたのが嬉しかったんだね〜。」
蛇が、ペロペロと舌を出し入れした。
「ニャハハハハ!」
「オーサキ、急に動いて大丈夫なのかな〜」
「カジカさん。ネブッチョウってのは…」
「改めて説明すると〜この子も憑物で〜オーサキが太陽がなくなるとぉ〜化けるように、太陽があるとぉ〜この子は化けるの〜ちなみにぃ〜聞いた話だとぉ〜オーサキ、ネブッチョウ、なまだんごっていう〜憑物三つを〜『秩父の三害』って〜言うんだって〜。」
「なまだんごも家に?」
「なまだんごは見たことないかな〜。ただ、もう見たとしても無視した方が良いよ〜」
「はい。気をつけます。」
「ただ〜なまだんごってのは〜石で出来た人の形をしたもので〜草鞋を〜片足は履いて〜片方は手に持ってるらしいよ〜」
「道端にあるお地蔵様みたいなものですかね?」
「うん〜?そう考えていいかもね〜。」
そう話していたが、誰かの家の前に誰か立っていた。しかし暗がりだったので分からずぶつかってしまった。
ドン!
「あっ!ごめんなさい。ボーッとしてました。」
「いえいえ、こちらこそボーッとしてました。申し訳ございません。大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思います。ありがとうございます。」
「そうですか。おやすみなさいませ。」
「お、おやすみなさい。」
そう言って別れた。
「今日はなんだか盛りだくさんで疲れました…さっきもぶつかってしまったし…」
「遅くなっちゃったけどぉ〜早く休も〜。明日も色々あるからね〜。」
さっきぶつかった人、片足は素足で、片足の草鞋を手に持っていたとは、カジカもハハソも気がつかなかった。
なんだかんだ「生団子仏」も出しました。
ここまでは楽しく書いています。