(ほぼ私の趣味ですね。ただ、このネタを出すために書いていたような感じです。)
「おはようございます!」
普通の人間なら全身使ってあける雨戸を銅三は片手の人差し指と中指だけで全て開けた。
太陽光線が眩しい。
「お、おはようございます。」
「ハハソさん。昨日は夜遅くまでカジカ姉さんと歩き回っていたようですが、なにかやらしいことでも…」
「あ、ありません。徳栄さんの家に急遽行っただけです。それと、そんなことを大声で言わないでください。恥ずかしい。」
「恥ずかしいことなどなにもありません。そうだ!もしあれなら、もとまちに連れて行きますよ。」
「本町?本町になにか?」
「?なにかもなにも、もとまちに揃ってるじゃないですか。」
また手を伸ばしてきた。
「あっ!一個お願いがあります。二階に連れてってください。」
「なんかあるんですか?」
「約束を果たすんです。」
「なら。」
また、鷲掴みにされ、二階に放り込まれた。
「ネブッチョウ!どこですか?」
「あちゃー。ネブッチョウとも契約しちゃったんですね。」
外から銅三さんが喋った。
「そういうことになります…ネブッチョウ、約束を守りに来たぞ。」
梁を丁寧に見る。
「ハハソさん。」
「なんですか?銅三さん?」
「後ろに違和感ありませんか?」
「えっ?」
銅三さんの方を振り向く。
すると昨日梁に座っていた女性が目の前にいた。
驚いたけど、声は出さなかった。
「あぁ、昨日はオーサキを助けてくれてありがとうございます。僕はハハソって言います。あなたは?」
「………。」
「?…ネブッチョウ?」
うなずいた。
「喋れないの?」
うん
「えっと…字は書けるの?」
首を横に振る
「僕は…君になにが出来るのかな?」
ジーっとこちらを見る。
昨日を思い出す。
布団に入ったところで、カジカさんが入ってきて、枕元でこんなことを言ってた。
「ハハソく〜ん。明日の〜ネブッチョウのことなんだけどぉ〜、多分ひっさしぶりに人と喋れるから〜楽しみだと思うんだよね〜。だけど〜彼女は〜喋れないから〜うまく引き出してあげてね〜。それと〜ネブッチョウは〜人の喜ぶことが好きらしいから〜…あれ〜?寝ちゃってる〜。色々疲れたよね〜。まだ小さいのに〜。じゃあ〜また明日〜。」
そう言って、カジカは出て行った。
その状況はどういうことだったのか意味が分からないが、なにを言っていたのかは分かった。
そして今
「じゃあ、僕は人に報告したりするのが好きなので、その話を聞いてもらえますか?」
顔がパッと明るくなり、うんうんとうなずいた。
「今日は、銅三さんとぶ…妙見山に行ってくるから。なにか面白いことがあったらまた明日言うよ。」
うんうん
「じゃあまた明日。」
そういうと、ネブッチョウは、右手をゆっくり伸ばして、僕の頭を撫でた。すごく久しぶりに誰かに頭を撫でられた。
僕が呆気にとられてる間に、ネブッチョウはまた梁に登っていった。
すると下から、青い服、ヤマメさんが上がってきた。
「ハハソ。ここにいたんだ。もうすぐご飯だよ。今日はとってなげだから。」
「ヤマメさん。おはようございます。実はネブッチョウと約束してしまってました。」
「それは大変。だけど、オーサキより簡単だから良いよね。」
「………。」
とてもオーサキとも契約してて、それを助けてもらったとは言えなかった。
「もしかして、オーサキと契約したんですか?」
「契約したっていうか、打ち負かして、契約逆にさせた感じだね。」
「えっ?」
「大昔にオーサキに君はなんなの?って聞いたら夜に人間みたいな格好になってやってきたけど、麺棒でボコボコにしたら泣いて謝ってきたから、家を守ることを条件に許してあげた。なにかオーサキがちょっかい出してきたら、私に言ってね。わたしから注意しておくから。」
なんということだ。ネブッチョウだけでなく、ヤマメさんに相談してもなんとかなったと、今ではなく、夜に一度家を出る前に聞きたかった。
すいとんを食べて、おにぎりを握ってもらい、銅三さんの手に乗せてもらい、武甲山の山頂の神社を目指して出発した。
「銅三さん。一応お願いなんですけど…」
「大丈夫です。カジカ姉さんに『妙見宮から向かえ』って言われたから、その通りにしますよ。」
「ありがとうございます。」
「何度も言いますが、カジカ姉さんはとても良い人です。気周りも早いし、優しいし、頭は良いし、だけど、結婚したがらないんですよ。」
「…なにか、ご自身で考えがあるんじゃないんですか?」
「ですけどね、金一兄さんが生きてる時に、どんな人なら結婚したいか聞いたら、『遠くの人と話せる箱』『動物や人を必要としない車』を持ってる人なら結婚したいと言ったらしいです。そんな人いるんですかね?」
「………。」
遠くの人と話せる箱と、動物を必要としない車…それを僕は知っている。読者も分かるはず…だけど、この時代の人は絶対知らない物。だけど、それをカジカさんは知ってた…これは後で聞いてみる必要がありそうだ…
そんなこと話していると、妙見宮の通り、今では秩父神社の門前町である番場通りに出た。
「ここが妙見宮ですからね。ハハソさん。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですよ。…大丈夫というか、銅三さんも大丈夫ですか?」
「なぜです?」
「家や建物が密集してる場所じゃないですか。」
「大丈夫ですよ。なぜなら、体重を自由に変えられますから。例え建物を踏んでも建物は雀が乗ったぐらいにしか感じませんし、人を踏んでも、葉っぱが落ちてきたぐらいにしか感じません。」
「それなら安心です。」
「では急ぎますよ。」
音をつけるなら、ドシドシ歩いているはずですが、ほぼ音がしないで、移動していった。
時たま
「巨人さん!」「珍しく巨人がここを通ってる!」
という声が下から聞こえた。
それに一人一人挨拶しながら銅三さんも進む。これは、秩父の人に巨人が受け入れらる訳だ。
「そういえば、銅三さんはずっと巨人なんですか?」
「気がついた時には銀次兄さん達より大きくなっていたけど、ぐんぐん大きくなった感じです。カジカ姉さんが一時食事を取らなくなったことがあったんですが、体重が重くなるとこが悩みだと言っていましたが、普通の人は体重を操れないってのもそれまで気がつかなかったてすよ。みんな体重が操れると思っていましたから。」
「なるほど。…なにか、他にも巨人はいるのですか?」
「土木工事を一緒にする人たちはいますが、身近なところはいません。しかしみんな仲良くしてくれますよ。
そういえば、ハハソさんは琵琶湖というものを見たことはありますか?」
「…みたことはないですが、知ってます。日本で一番大きな湖だと」
「秩父で一番大きな巨人は、富士の山に座り、琵琶湖の水で顔を洗ったと聞いたことがあります。富士の山は見たことあるのですが琵琶湖はありません。どこにあるのでしょう?」
「…直線に歩いて、秩父から富士山に行くことの、倍以上奥にあるそうですよ。」
「わたしも是非見てみたいんですよ。それと、こんな話があります。
ある巨人が、白い石と土をモッコで運んでいたら、足を窪みに落としてしまい、石と土を落としたらしいんです。慌てて足を窪みから引き抜き、石と土を見ると、土は元々あった山のすぐ隣に落ちて、まるで双子のような山になり、白い石も良い感じに連山の端に落ちたのでそのままにしたらしいんです。それが、足が落ちて窪みになったから『芦ヶ久保』、双子に見えるから『二子山』、白い石が『妙見山』の最初と言われてます。しかし、芦ヶ久保と二子山は分かるのですが、妙見山は本当に白いんですかね?今は木が生えてますから分かりませんけど。」
と言った。
「初めて知りました。…」
五百年ぐらい経った妙見山は、爆破され真っ白なピラミッドが出来てるとはとてもじゃないがこんな優しい人に言えなかった。
「他にもあるんですか?」
「荒川が氾濫した時、護岸工事をした巨人が、菅笠を置いた『笠山』、ミノを置いた『美の山』、お腹が空いてお粥を煮た『粥新田峠』、使った箸を突き刺した『二本木峠』、釜を伏せた『釜伏峠』と言われている他、大昔の両神山は、富士山のように山頂付近に雪が積もっていたのですが、巨人がゲンコツで吹き飛ばしたとも、殴って縮めたとも言われています。
そんなことを言っていたら、もう山頂ですよ。」
「もうですか!」
今まで手の中にいたのですが、ここで外に出させてもらった。たしかに秩父盆地を見渡せる高い山の頂上にいる。
下を見ると、現代の秩父より家が少なく、田んぼや畑、そもそもなにもない平原まである。あとはぐるりと山に囲まれ、進撃の巨人や異世界物語の街を彷彿とされる。ただ、進撃の巨人と違い、この壁(山)は巨人がなっているのではなく、巨人がつくったのである。
「これが、妙見山の山頂御岳神社ですよ。」
銅三さんが山頂の木に囲まれた社殿の目の前に下ろしてくれた。
社殿は、二つの建物が連結したような形で、三方は雨戸が閉まっていた。
「ごめんください。」
「はい。」
すると中から雨戸を開けて神職の格好をした人が出てきた。
「宮地の人ですね?」
「えっ!?なんで?」
「ここから秩父を見てて、秩父神社から真っ直ぐにやってくる人間は、宮地の妙な夢を見た人だけですからね。お入りなさい。すぐに始めましょう。」
「ハハソさん。あまり構えず、行ってきてください。わたしはここで待ってますから。」
銅三さんに急かされ、中にはいる。
神社の中は畳張で、中央に扉がある。
「あなたは、どんな夢を?」
座りながら、宮司が聞く。
「実は…と言った通りです。」
と僕は夢を話した。
「なんと…妙見山の爆発の中から人が?…それは…ちょっとお待ちを」
そういうと、立ち上がり、奥の扉に近づいた。
そして、一礼し、かんぬきを外し、開けてくれた。すると、中に夢で見た鎧を着た人の木像が入っていた。」
「このような姿をしていましたか?」
「…はい。まさに、この人です。」
「そうですか…」
ゆっくり扉を閉じて、目の前に座った。
「あの木像は、『秩父大神』と伝わっています。」
「あれが…僕が秩父大神に?なぜ?」
「…それはなんとも申せません。大体の宮地の方。特に新婦は、屏風岩の前の『歌垣』の夢を見ると言われて、お祓いならびに、報告をするのですが、大神様がお現れになったというのは…はじめての経験です。」
「…大神様にまつわる伝説も?」
「わたしが知っているのは、太古の昔に仏教勢力に押され、秩父ヶ嶽に隠れましたが、秩父ヶ嶽も妙見山と改名させられましたから…もしかしたら、その当時の無念を訴えたのかもしれません。」
「なぜ僕なんですか?」
「…それも、なにも…」
「………。」
しばらく沈黙してしまった。
「宮司はいますかの?」
急に外から声をかけられた。
「どうぞ。」
宮司が答えると、障子を開けて、男が入ってきた。服装からして農民のようだ。
「あぁ、六兵衛さんか。また、競争かい?」
「どうしても見たいと言う人が集まっちまったもんで、また勝手にやらせてもらいますよ。」
「いいよ。どうぞ。」
「では。」
そういうと男は障子を閉めてしまった。
しかしすぐに、ゴーン!ゴーン!と釣鐘を突く音がした。庭の隅にあったあの鐘だろう。
「今の人は?」
「大宮郷と妙見山を挟んで裏側にある荒川上田野の六兵衛という人だ。なにせ足が早いことで有名で、今は、上田野で湯が湧くのが早いか、自分がここの鐘を突いて帰ってくるのが速いか競争してるんだ。」
「ここまで、千メートル…いや、そうとう高いでしょう?」
石灰の採掘で山頂が削られているから正しい高さが分からなかったし、メートル法が通じないだろう…
「しかし、彼は出来るんだ。上田野で結婚した夫婦に鯛の刺身を江戸から運んだという話を聞いて、嘘だろと思ったが、たしかに刺身を食べたという村人を何人も知っている。しかも力が強い。大人が抱き抱えるような巨石を富士の山から運んだと言われ、たしかになかった場所に新たに巨石があった。」
「六兵衛さんか…」
「君と銅三はこれからどうするんだい?」
「これから、ち…妙見宮にも話を聞きにいかないといけません。」
秩父神社って言いそうになった。
「そうか。なら、悪夢除けの札を授けよう。ただ、大神様の謎が解けん。なにか不思議なことがあればまたきて欲しい。」
そう言いながら、新しくお札を書いて渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「逆にわたしからも礼を言わせてくれ。新しいことが知れたし、力にもなれた気がせんからな。」
ガラガラと障子を開ける。
すると、指先を濡らした銅三がぼんやりしていた。
「銅三さん!終わりましたよ!」
「あぁ、ハハソさんか。」
「どうしました?ボーッとして。」
「いや、さっきのお爺さんは変わった人だと思いまして。」
「なぜ?」
「山を登ってきた時に、右手にザルを持っていたんですが、中に水が溜まっていたんです。『不思議なことがあるもんだな〜』と見てたら、『ちょっと持っててくれ。』と言われたから、受け取ったら、なんせザルだから一瞬で地面に水が落ちちゃったのですが、出てきた爺さんに謝りながら渡したのに、『大丈夫じゃ。見ろ。』とザルを覗き込むとまた水が溜まってたんです。そしてその人は小走りに去って行きました。」
「………。」
「………。」
「お二人ともどうなさった?まさか、ザルがそんなに気になったのですか?」
「銅三さん。先程社殿に入ってきたのは、黒髪の男性でしたよ。」
六兵衛は剃髪して即道と名乗り、足が速いだけでなく力持ちであったり、仏像をつくるのがはやかったという伝説や、彼の最後は、石室に入り即身仏になろうとしたが、三年後掘り出したら姿がなかったという超能力者のようなことをしていた人と言われています。
ちなみに、銅三のザルは六兵衛がやったのではなく、横瀬町に伝わる昔話で、武甲山の神様が酒をザルで買いに来る酒屋があったという話をベースにしています。