ただ、どんどん現実離れが進みます。(もう宗教のところが良く分かりません…)
「不思議なことがあるもんですね。」
そう言いながら、銅三さんはもう番場通りまで戻ってきた。
秩父神社。この世界では妙見宮と呼ばれる施設で、妙見大菩薩の札をもらえば、今日のやることは終わる。
「じゃあここで。」
鳥居の前で銅三さんが言った。
「またここで待つのですか?」
「いや、ちょっと、まぁ、はい。」
なんか急に曖昧な返事になる。
「じゃあ、終わったらどこかに合流って感じで」
「うーん…」
銅三さんが僕を見下げる。
「神社を背にして右手に進み、柿原に行ってください。」
「柿原?」
「そこの辻のところですよ。本町の柿原と言ってわからない事はないでしょう?なにせ、300年はもつはずですよ。ハハハハ!」
そう言って小走りに行ってしまった。
「どうしたんだろう?」
ニャー!
足元から急に猫が鳴いた。
その瞬間ヒョイヒョイと肩に乗ってきた。
よく見たらオーサキであった。
まだ太陽があるため、殺される心配はない。
「さて、」
と、神社の敷地内に入っていった。
ただ、ここで異変に気づくべきだった。
狛犬ではなく、仁王像が祀られていたことに。
江戸時代に秩父神社は再建され、日光東照宮を造る大工達が試作で造ったとされ、左甚五郎作の『子育ての虎』を始め、見ざる言わざる聞かざるの逆である、よく見て、よく聞いて、よく喋る『お元気三猿』、夜な夜な動き、農民を苦しめたため、鎖で繋がれた『つなぎの龍』を筆頭に、さまざまな彫刻で彩られている神社である。
はずだったが、妙見宮は異様な神社だった。
本殿の隅を囲むように四箇所お寺みたいな施設がくっついている。
秩父神社の本殿の裏には末社が30社近く壁伝いに祀られ、上手には神輿が収蔵してある。
しかし、この妙見宮には、末社ではなく、仏像や羅漢像が祀られていた。
神輿はあるが、左右一つずつで、実在する神社より派手で大きくなっている。
「秩父神社って、こんなに仏教色強かったんだ…」
ニャー。
神社は、神職や巫女が働いているはずだが、袴を履いている男女は見当たらない。
みんな、銀次さんやカジカさんのような格好をしている。
その人たちは、掃除をしたり物を運んだり、忙しなくあちらこちらに動いている。
「ずいぶん驚かれてますな。」
急に話しかけられた。
振り向くと、スキンヘッドのおじさんだった。
「もう一つの太陽が光っているのが驚いたかい?」
「………。」
ニャー!
なにか喋ろうとしたが声が出ない。
「…君もオサキ持ちかい?しかも猫に擬態してるとは珍しい。」
ニャー!
「まあ、良い。すぐ話に入ろう。来なさい。ハハソくん。」
スタスタとおじさんは本殿に入る。
「どうして僕の名前を?」
僕は追いかける。
「徳栄に聞いただけさ。ハハソくん。」
ピシャリ!と入り口を閉めた。
「わしは法範。徳栄が新井組組頭だとすると、わしは斎藤組組頭。そうだとすれば、全て分かるかい?」
「徳栄さんがおっしゃってくれたのですか?」
「そういうことだ。」
「薗田がバカやって、宮地の組頭が交代で宮司をやることになった最初の仕事が君の相手というわけだ。」
「実は…というわけです。」
「徳栄に聞いて、だいたい把握はしてたが、本当だったとはな。では教えてやろう。この神社の宮司が、宝物を質屋に出しちまったせいで、君の知ってる田畑の家を始め、フクロウとして奉仕してた連中はひでえ目に会ってる。だけど、思わんか?仮に、質屋に出したんなら、金を返せば良いって。」
「確かに。」
ニャー!
「…質屋に出したってのは、建前だ。確かに質屋に出したんもあるが、逃げ出した宝物もある。」
そう言って、四隅のお寺のうち、一つの扉を開けた。
「仏具だ。」
中に、仏像も鐘や木魚もなかった。
「また、御岳の宮司に聞いただろうが、大昔に秩父大神が山に逃げたと言われただろうが、じゃあ、ここにはなにが残ったと思う?」
「…なんだか分かりませんが、」
「仏教がおそれるもの?」
「!…はい。仏教が見てるもの。」
「なかなかな推理だ。だが、違う。」
ニャー!
「ハハソくん。君は、この妙見宮の仏教どう思う?」
「はい。はい?…えっと…強引というか、必死というか…」
「うん。わしもそう思う。ただの信仰の対象でなく、なにか見張っているように感じる。」
ニャー!
「まるで…神社の中心を見張っているような…」
「薗田が仏具を持ち出したのは?」
「そうだ!じゃあ、両方持ち出したのは意味が分からない。」
「ハハソくん。君は…」
そういうと法藩さんは自分の見事なスキンヘッドを触った。
「まるで、仏と神が別の宗教のように話すな。」
「……………。彼は、薗田さんは全て仏具を持ち出したと…」
「そう。神道も仏教も関係なしに、大神を解放するためにやった。だけどだまってないのもいた。仏教信者達だ。」
「その人達が、薗田さんを…」
「なかなか近づいてきたな。」
「…法藩さんは、なぜそれを教えてくれたんですか?」
「徳栄に聞いてピンときた。薗田が、仏具を出したことと被るように屏風岩の夢を見た人間。ただ、それだけでなく、君を助けようとした大神。」
こちらを法藩がジッと見る。
「疑わないほうがおかしい。君は、なにかこの世の人には出来ないことをやってのけそうだ。」
「……………。」
超小さい声で、「異世界から来たことを見破られたのかと思った…」
と言った。
法藩は出ていこうとしている。
「あの、お札かなにか…」
こちらを振り向く。
「…大神とまた会ってなにか聞いて欲しい。それが分かってからでも良いかい?」
バシャン!と扉を閉めた。
「ちょっと待ってください!」
バラバラ!と開けたが、スキンヘッドを見つけることは出来なかった。
いそいそと出て、少し探したが見つからなかったので、銅三さんと合流しようと、妙見宮を出て、右に進み、交差点に出た。
すると、現代の秩父にもある建物があった。
現代で見たときは、交流館になっていたが、造りはそのままで、男の人の威勢の良い声や、お客を引く女の人の声がする。
「僕。そんなところにボーっとしてどうしたの?」
「えっ!?あっ!ここが、柿崎商店ですか?」
「そうよ。」
「あの、銅三さんは?巨人の。」
「あぁ!銅三さんのお知り合いね。ちょっと待っててください。」
そう言って、建物に入っていった。
すると、屋根が持ち上がった。
「うわぁ!」
僕は思わず後ろにさがり、腕を顔の前まで上げた。
そこから、ヒョイっと銅三さんが顔を出した。
「あぁ。ハハソさん。終わりましたか?」
「あ、…はい。」
「そうですか。では、皆さん。わたしはこれで。」
そういうと、銅三さんは立ち上がり、屋根を慎重に被せると、通りに立った。
そうするとみんな「なんだ、巨人か。」など言いながらみんな作業や仕事に戻っていった。
「あんな曲芸をやってたってのは、カジカ姉さんと、ヤマメ姉さんには内緒にしてください。」
「は…はい…」
「で、妙見宮の宮司とはどんな話をしたんですか?」
「え、あっ…あっ!」
「どうも、驚いて忘れたようですね。」
頭に拳骨を当てて、
「どうもすいません。」と言った。
秩父神社と柿崎商店の建物はまだ残っています。是非遊びに行ってください。
元々は、女の人と遊べる場所にいる予定だったのですが、ややこしそうなので、柿崎商店でお茶を飲んでいることにしました。
(カジカとヤマメが怒ったのはその名残です。)