トレセン学園生徒会室、生徒会長シンボリルドルフは一人黙々と書類のチェックをしていた。学園に来てからただ一人で延々と長い時間集中して業務を行っている。
気が付いた時には昼の時間、可愛らしい音がお腹から鳴った。
「もうこんな時間か………ふむ、食事をとりたくとも時間が惜しいな、何か簡単に摘まめる物はなかったかな」
引き出しの中を探るも普段はあるであろうチョコなどのお菓子が切れてしまっていた。来客用のお菓子も同様になく、あるのは紅茶やコーヒーなどの飲料のパックや粉のみであった。
「……………これは、流石に困ったな」
万策尽きたと思われた。今から食堂やカフェテリアに向かおうとも早急に仕上げなければいけない書類のことを考えると行こうにも行けない、かといって食べなければお腹が鳴り続ける。
「入るぞ~」
「え?」
どうするか考えていたとき生徒会室にトレーナーが入ってきた。片手に大きめの箱を持ちながら、昔のラーメン屋の出前で使っていそうなやつだ。
「飯食ってないんだろ、持ってきたぞ」
「ああ、ありがとうトレーナー」
「あんまり詰めすぎるとエアグルーヴに怒られんぞ」
「ははは、確かにそうだな」
机に置かれるサラダや汁物、そして炊き立てご飯であろう温かく湯気が立っている。そして卵のそぼろみたいなやつ。
「これは?」
「ふりかけ」
「ふ、ふりかけ?」
「漫画見て作ってみた」
マンガを見て作ってみたと言われ少し不安ではあるがほかほかのご飯に卵を振りかけた。すると薄い金色で半透明の物体が一緒に現れる。
その物体はご飯に乗っかると熱で溶けて卵にコーティングされていく、そこから薫匂いにルドルフは気が付いた。
「これは鳥だね」
「そう、手羽先の煮凝り、結構難しかった」
煮凝りとはゼラチン質の多い肉や魚の煮汁が冷えてゼリー状に凝固したものである。
「手羽先を鰹だし・酒・薄口醤油で煮込んだり、手羽先のゼラチンや旨味を抽出してその煮汁を冷やしたりして固めて切った感じだな」
さっそく一口、今まで食べたことがない美味しさが口いっぱいに広がる。とろりとした煮汁のコクと塩っ気がふわふわの卵そぼろのやさしい甘さを引き立てている。
そして噛むたびにふわふわと、とろとろが口の中を撫でまわしていく、溶けた煮凝りが卵の美味しさを格段に跳ね上げている!
付け合わせのサラダや汁物も一緒に食べ進めていく口の中に広がる美味さ、気が付いた時には容器の中身はすでに空っぽであった。しかし身体はまだこのふりかけご飯を求めていた。
「ほら」
コトリと、同じものが目の前に置かれた。ありがたくもう一度同じようにして食べ進めていく。3杯、4杯、5杯と食べ進めていき、ようやく満足したのか満腹感がやってきた。食後のお茶を飲みながら一息つく。
「トレーナー、最高だったよ」
「え~と、おそまつ!でいいんだっけなあのセリフ」
「ふふ、そこまで真似をするのかい?」
「なんかやってみたかった」
片付けをしながら満足そうなルドルフの顔を見る。どうしたのかという表情であったが、あるものが目の前に差し出されると耳が反応した。
「これは!」
「りんご、よく冷やしてある食後のデザート」
綺麗にカットされたリンゴを爪楊枝で刺し、シャリシャリとした食感を楽しみながら味を堪能しつつ食べ進めていく、時間をかけゆっくりと食べ進めていく、
最後の一つを食べ終えると満足感と心が満たされていた。
「ふぅ~、もう流石に食べられないな」
「これ以上喰われるとなると俺がしんどいな」
「おや、そうなのかい?」
「あ~、材料がもうなくてな」
「なるほど、丁度良かったという事か」
「オグリとかスぺとかだと腕がやられる」
「確かに、彼女たちの胃袋はまさしく怪物級だからな」
「さて、俺は行くから、あんまり頑張りすぎるなよ」
「ああ、ありがとう」
その後の業務ではかなり捗ったようで早めに帰ることができたらしく次の日も元気に登校していた。しかし結局は頑張りすぎたとのこと、エアグルーヴからすべて聞いたので軽く説教をしつつ、物凄く甘やかしの刑に処した。
膝枕に耳かき、頭をなでなでにマッサージ、顔を真っ赤に染めながら恥ずかしがるルドルフを見れて満足ではあった。
あのふりかけご飯は一度でいいから食べてみたい、というか真っ赤なルナちゃんはこっちも見たい!