誕生日、それは産まれた者にとって一年に一度産まれてきたことを祝われる日だ。今日はミスターシービーの誕生日、本人はいつも通りでいいと言うがせっかくだからちゃんと祝いたい。契約してから毎年行ってはいるが本人はあまり大きな催しは好きではないらしい。
なので毎年2人でお祝いしているが、渡しているプレゼントはその時に欲しいと思った物を渡している。問題はどのタイミングで言うかがわからないことだけだ。今年はすでに用意することにした。
今年渡すプレゼントはもうできあがっているので渡すだけだが、今年はシービーハウスで過ごさずこっちの家で過ごすらしいので、その時に渡そうかなと思う。毎年かなりのプレゼントを貰っているので持って帰るのが大変そうだが、それだけ人気である証だ。
「トレーナー、今年はシービーにどのような物を渡すつもりかい?」
「今年は気合い入れたぞ何年持っていてもトレセン学園で過ごしたことを思い出させるプレゼントだからな」
「そうか、それはシービーも喜ぶだろう」
「私が誕生日の時ルンバを買ってきたときはしばきたくなったがな」
「その節はすまん、エアグルーヴは掃除が好きだし少しでも負担を減らせる物にしたんだけど」
「そんな気遣いはいらん、むしろお前が使えと言いたかった」
「まぁ結局俺が使ってるしな」
「それならばエアグルーヴは貰っていないのか?」
「後日ちゃんとドレスをプレゼントしました、なのでにらまないでください」
だってしょうがないじゃん、何渡したらいいのか分からないんだよ、ルドルフはダジャレ本とか著名人の本とか、メガネとか実用性があるようなものを渡せばいいけど、エアグルーヴは結構難しいんだよ、後輩からも結構貰うし、被ったらなんか気まずいだろ
他は別に渡しやすいし、好みが明確になってるから、テイオーとか甘いの好きだからスイパラ連れて行ったり、フジはコンサート、ブライアンは取れたてのさばいた肉をワイルドに食べて貰うとか、ハッキリしてないと難しいんだとな~
言い訳を並べながら仕方ないと納得する。2人から用意したプレゼントを見せろと言われたので鞄から箱を取り出し中身を見せた。その瞬間2人から目の光が消えた。
「これはシービーが使っていた蹄鉄をリングにした物だ!中にはシービーの勝負服をイメージさせる緑の宝石!リングの色は白!どうだ!」
「うん、そうだね凄くいいと思うよ」
「ああ、私たちにはあんな物なのに凄くいい物を用意したな」
「だろう?身につけてもよし、飾ってもよし、最高じゃないか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙が重い、異様な空気を察知しなぜか冷や汗が流れる。目にハイライトがない、一体どこで選択肢を間違えた!
「トレーナー」
「あ、はい」
「今年は私たちにもこういった物を期待しているよ」
「ああ、たわけが」
「・・・・はいプレゼントします」
凄く怖かったので言われた通りにすることにした。思わず泣きそうになったさ、凄く怖かったもん、無言で途中から見てくるし!耐えきれない空間はブライアンが帰ってくるまで続いた。
放課後にやってきたシービーと一緒に出かけながら時間を潰す。夜になれば毎年他の担当が誕生日の時に食べに行くレストランに行くことにした。去年まではシービーの家で一緒にメシを食べていたが今日はレストランの気分だったらしいので急遽予約した。
のんびりとただ目的もなく時間を潰す。この時間でさえ楽しいと思えたのは彼女と出会ってからだろう。振り回されるときもあればただただ自由に過ごす日もある。充実している感じがする。
夜になり目的のレストランへとやってくる。夜景の見えるレストランでコース料理を楽しみながら談笑する。今日あったことや今までのこと、くだらないことでも笑い合いながらこの時間を楽しむ。デザートまで食べ終え食後のコーヒーを飲みながらプレゼントを渡す。
「え?」
「ん?」
箱を取り出した瞬間固まるシービー、次第に少し顔を赤くしていくシービー、受け取った箱を開けると中から現れたリング、それを見た瞬間完全に固まった。もしかして気に入らなかったのか不安になるが、再起してから完全に顔を真っ赤にし、うつむいた。
「あれ?もしかして気に入らなかったのか?」
「あ、ううん。そうじゃないけど・・・」
「ん?」
「これってもしかして」
「ああ、シービーの蹄鉄をリングにしたんだよ、トレセン学園の思い出を思い出してもらえるようにって」
「あ~うん、そうだったトレーナーはそういう人だって」
ため息をつきながらこちらを見てくる。お礼の言葉を言い、プレゼントをしまうシービー、喜んでもらえたら何よりと思っていると別のテーブルで彼女にプロポーズをする男性の姿が見えた。もしかしてプロポーズすると思って顔を赤くしたのか!
男性の方を見てから視線をシービーに戻すとなぜか笑顔でこちらを見ていた。
「トレーナー、いや、ミスター」
「なに?」
「このプレゼント、そういうことって捉えていいんだね?」
「捉えないで、学生に求婚するとか社会的にやばいから」
「でもこのリングを渡すってそういう風に捉えちゃうよ」
「付き合ってすらいないんだ、勘弁してくれ」
「じゃあ付き合っちゃおうか」
「こらこら、調子に乗らない」
「でもうちの両親のこと知ってるでしょ?」
「それでも駄目だぞ、そういうのは将来ちゃんと好きな人が出来たら付き合いなさい」
「・・・・・バカ」
不機嫌になるシービー、流石に学生と付き合うのはまずい、ライトハローさんはともかく卒業していないウマ娘に手を出すのは・・・・・・駄目だ学園に結構いた!もしかして問題ないのか?流石に駄目だな理事長に怒られる。
不機嫌のまま帰る中なかなか機嫌を直してくれないシービー、いろいろ話しても素っ気ない反応ばかりでどうすればいいのか、このままでは良くないので最終手段を使うことにした。
「出来る範囲ならなんでも聞くから」
「ん?なんでも?」
「ああ、なんでもいいぞ!」
「なら、トレーナーの家に泊まるね」
「え?」
いやさすがにそれはちょっと、泊まるのはどうかと言うとまた不機嫌になるシービー、恐らくこれ以上何を言っても駄目だと悟ったので泊まることを許可した。そうするとうれしそうになるシービー、これ以上機嫌を損ねると後が怖くなってきたので、もうやけくそである。自由にさせることにした。
一度別れてから家にやってきたので、2人でのんびりと過ごす。テレビを見ている間お互い時間をずらして風呂に入り、寝るための準備を整える。寝る場所も別々にしたかったが一緒に寝なきゃ機嫌を悪くすると言うので仕方なく一緒に寝ることにした。
もうここまで来たら何をされてもいいことにした。腕枕をしたり脚を絡めてきたり、体をこすりつけたり、自由にさせているがこっちは理性との戦いが始まっている。暗い部屋の中、月明かりが差し込むわずかな明かり、横にいるシービーが月明かりに照らされてとても綺麗だ。
「ねぇ、トレーナー」
「なんだ」
「静かだからかな、キミの声がよく聞こえる」
「2人だしな、それに近いし」
「今日プレゼント何を貰おうか考えてたけど思いつかなかったんだ」
「そうか」
「だからプレゼントを貰って中身を見たとき凄くうれしかった」
「それは良かった」
「てっきりプロポーズされたのかと」
「あ~、うんごめん」
いや本当ごめんなさい、ルドルフ達があんな風になったのもよく分かったよ、よくよく考えたら夜景の見えるレストランで指輪ではないけど箱に入ったリング渡されたら、そらプロポーズだと思う。もてあそんだわけじゃないけど、考えが足らなかった。
天井を見上げながら申し訳ないと思う。シービーはもぞもぞと動き出して体の上に抱きついてきた。自身の胸の方を見るとシービーの頭があり、耳で頬をペシペシしてくる。これが耳ペシ、最高じゃないかよく寝られそうだ。
シービーの重みを感じながら耳ペシを受ける。何というか至福の時間である。腕を取られ抱きしめるような形を取らせられているが、眠たくなってきたので力が入らない
「キミは本当に何も思わないの?」
「なにが?」
「ここまでしてるんだから、アタシの考えてること」
「・・・・抱き枕?」
「違うよ」
違ったか、抱きしめたらいいのか?それとも~うん眠たいから頭が回らない。このまま寝ようかな、それにしても柔らかいし、いい匂いもする。だっちしてないのが奇跡的だ。
ここまで無防備にされていると襲いそうになる気持ちもなくはないが、関係が悪くなることは避けたい
「ま、いいけどいつか分かるよ」
「そうか、じゃあおやすみ」
「おやすみ」
互いに抱きしめ合いながら夜を過ごす。朝になればカーテンの隙間から日差しがこぼれ目を覚ます。目を開けるとそこにはシービーの寝顔があり、なぜか愛おしく感じる。目を覚ましたシービーはこちらを見て微笑む。破壊力が高い。
「おはよう」
「おはよう」
「よく寝られたか?」
「もちろん」
体を起こし背伸びをする。体からバキバキと音が鳴り凝り固まった体がほぐれる。目を覚ますために顔を洗いに行こうとするが腕を取られ制止させられる。
「これは昨日の誕生日のお礼」
「え?」
不意に顔を近づけられ頬に柔らかな感触がした。してやったりとした顔で微笑みながらその場から動けず固まっている俺を見て顔を洗いに行くシービー、これは流石になんと言えばいいのかわからない。
だけど勘違いでなければそういうことなんだろう。いつかわかるといった言葉はすぐに分かってしまった。これは一波乱ありそうでなんか怖い。だけどいつもの日常は始まる、少しばかり違った日常になりそうだがそれも醍醐味だろう。
学園に来てからチームメンバーに冷たい視線を向けられたが1人だけニコニコしている。首にはチェーンを通したリングの首飾りとして使われている。それを彼女は愛おしそうに見ながらいつもの日常が始まる。
難しすぎて分からない~