「やあ、傑トレーナー君、今日はこの薬を飲んでほしいのだが」
「断る」
朝から早々出会い頭に薬を飲んでほしいと言われても、副作用で光るのがオチ。
まともな効果など出る物でもないものを飲んでもこちらに全くメリットはない、むしろ飲みたくない、てかタキトレはどこに行った。
「大丈夫さ、今回のは光るといった副作用はない、ただランダムで副作用が出るだけで、どうなるのか私にもわからない」
「猶更飲みたくないな」
「えーー、いいじゃないかー、はーやーくー、飲んでくれよー」
タキオンにせがまれても絶対に飲まない、あいにくモルモットになるつもりはない。
つーか自分で飲め、実験に俺を使うな。
「この薬は普段見えないものが見えるようになる薬さ、いったい何が見えるのか分からないがトレーナー君にとってはいいものではないのかな?」
「見えないものって、なに?啓蒙でも得た狩人みたいに上位者でも見えるようになるのか?」
「いったい何を言っているのか理解はできないが、まあ大体そんな感じだよ」
「なら他の奴に飲ませろ、俺は嫌だ」
あいにく化け物になるつもりはない、悪夢にもとらわれるつもりはない、自分で実験しろよ。
てきとーにあしらいつつトレーナー室に向かう。向かってからは各自のトレーニングメニューを考えるだけでなく、蹄鉄などの必要経費の計算も同時に行う。
ひたすらパソコンのキーボードをたたく音が室内に響き、時間が過ぎていく。
一息入れるためコーヒーでも入れようとしたところ、いつからいたのかタキオンがコーヒーを入れて差し出してきた。
「お前授業はどうした」
「私には不必要なものさ」
「怒られるのはあいつなんだが、今ここで見られたら俺が怒られる、まったく、相変わらず自由というか、実験中毒者というか」
差し出されたコーヒーを飲みながら、ブラック特有の苦みが頭をさえさせる。少しばかり休憩をここで入れて、作業を再開させることにしよう。
それにしてもコーヒーを入れてくれるとは気が利くじゃないか、こいつもタキトレなしに成長したんだなーと思っていると、わずかにタキオンの口が二ヤついているのが分かった。
「お前まさか・・・・・入れたな」
「おや、意外と早く気が付いたね、なーに少し混ぜただけだから効果は短いはずさ」
「まず薬を盛るな」
よくよく考えたらこいつが入れた飲み物に薬を混入することを考えられたはずだ。
なぜ考えなかったのか、いや、もうすでに手遅れだから、あきらめよう。
「・・・・カフェに呪って貰うか」
「えーーー、それはやめてくれないか、私が死んでしまう」
「知るか」
もういっそ、呪われるどころか悪夢にとらわれて向こうの住人と仲良くやってくれ。
「ところで効果の方はどうだい?」
そんなことを言われても効果内容がランダムでタキオンが知らないのだから俺が知るはずないだろう。変に光り輝いて生活するよりかははるかにましだが、あー、なんか眼が熱くなってきた。
軽く眼を抑えると熱い状態でまるで蒸しタオルを乗せられているみたいだ、少し時間がたつと熱さは消え、なぜか冴えているような気がした。
「なんか、眼が熱くなった」
「ほほーう、それはそれは、こちらを向いてはくれないか?」
タキオンの方に顔を向けた瞬間、とんでもないものが見えてしまったのですぐに目を伏せた。
「おやおや、急にどうしたんだい?少し顔も赤い、いったいどのような効果が出たのか、実に興味深い」
無理やり顔を上げさせようとしてくるが、ウマ娘の力に勝てるはずもなく、なすすべなく顔を上げられてしまった。
「タキオン頼む、今は、お前を見たくない」
「いったい何を言っているんだ、どのような効果が出ているのか知りたいんだ、無理やりでも見てもらうからな」
言いたくはないが、いうべきなのか、それとも、黙っているべきか、正直物凄い効果が出てはいる。もちろん悪い意味で、それはとてつもなくまずい効果が。
「さっきから黙ってばかりでどうしたんだ、いったいどのような効果が出たのか教えてくれたまえ」
タキオンが早く早くとまくし立ててくるが、言えない、というか言ってしまえばまずいことになるのは間違いないからだ。
そう、この薬の効果は、服が透けて見えるという、男なら、どこかの海賊のコックなら喉から手が出るほど欲しい効果だろう。今俺の目の前には下着姿のタキオンが見えてしまっている。これは非常にまずい。いろいろな意味でまずい。
普段は制服で見えない部分があらわになっていて、見た目とは裏腹に黒の下着というなんとも煽情的なものを着ている。そして大きい、正直見ていていかがわしい気持ちどころか、本気で死を覚悟しなければならない気持ちが出てきている。
「はやく、いいたまえ、時間は有限、これ以上私に時間を取らせないでくれたまえ」
あー、なんかイラっとしてきた。もういいや、関係ない。
「タキオン」
「なんだい」
「なかなかエロい下着を着ているじゃないか、黒とはなー」
「!!?」
からかうように告げると、驚きからみるみると顔が真っ赤になっていくタキオン。
しまいには胸を隠すようにしゃがみ込み上目で見ながら口を少しパクパクさせている。ふむ、この姿は何とも・・貴重なシーンだな。
「まさか、そのような効果が出るとは、トレーナー君、君は今日一日目隠しをして生活してもらおうか」
「ふざけんな、仕事にも支障が出るわ」
「しかしだね、その、見えてしまっているというのは、いささかかなり恥ずかしくて、軽蔑すべきだと思うのだが、何分、私の薬の効果であるため、何も言えない、けど・・・・・・・見ないでくれ」
「ほう、恥じらうタキオンとは珍しいものが見れて少し得した気分だ」
「君にとっては得したのはそれだけでないだろう」
そうだが、さすがにこのまま外に出れば笑えない光景が一気に目に入って来るだろう。もしエアグルーヴにバレてみろ、説教どころかつるし上げまで食らいそうな気がしてきたぞ、万が一、たずなさんにバレたら・・・・・殺される。
とにかく、グラサンでも何でもいい、少しでも透けて見える可能性を消しておかなければいけない。命を守るためにも!!!!!!
いや、でも正直何人か見てみたい気持ちもある。だが、もしばれたら、テイオーなどの中等部組にでもバレてみろ、社会的に死ぬ・・・くそう、何か策はないか!
机の中などを探し、何か対策できる物を探し始めるトレーナーであった。タキオンはそのすきに自分のラボへと急いで帰っていった。
スポーツ選手が使ってそうなグラサンがあったのでそれをかけて外に出て試しにてきとーに歩いている子を見ると普段通り制服姿が目に入った。
「よし、グラサンならいけるが、このままだと声が桐生ちゃんの黒沼トレーナーと
キャラ被りしてしまうな、いっそ眼帯にするか?」
もし眼帯にすればそれこそ、どこぞの粘着気質ストーカーヤクザと一緒になってしまうのでやめよう。しかも片方で見えるから大して意味はないな、うん。
これで大丈夫であろう、流石にお昼なので昼食を取りたいが、カフェテリアはまずい、パラダイス過ぎて死んでしまう。外さなければ問題ないのだが、やっぱり見たくなってしまったら終わりだからな~、どうするべきか、覚悟を持っていくべきか、一歩間違えれば国際問題にまで発展するからな、仕方ない、後輩を使うか。
「買ってきましたよ先輩」
「おう、悪いな」
「災難でしたね」
「ああ、本当にな」
後輩に事情を話し昼飯を買ってきてもらった。最初はその効果がずるいと言っていたが社会的に死ぬか物理的に死ぬ羽目になるのか、究極に近いデメリットがあるけどそれでもかと聞くと黙った。
「男からしたら喉から手が出るほど欲しいっすね」
「特にトレセン学園、ウマ娘は容姿端麗、世の中の男どもに殺されそうだな」
「その前に教え子や愛バに殺されそうですけどね」
「いうな、だからグラサンしてんだよ」
「……………その薬ってもうないんですか?」
「ランダムだからな、あいつのラボにはあるだろうが、副作用が怖い」
「あ~それはなんともっすね」
「おまけになんと男は透けて見えない」
「うわ、ずるいっすよそれ」
「バレたら命がないぞ」
「物理的にですね」
「…………お前まさか」
「………………」
「欲しいのか?」
「まぁ、欲しいっすね」
「チームのみんなにバレたら終わりだぞ?」
「人ってスリルを求めたくなる時があるんですよ」
何がスリルだ、絶対見たいだけじゃん、お前んとこのカレンチャンにバレてみろ、ファンから叩かれるぞ、下手したら好意を持ってるやつには責任の名の下ウマぴょいされるぞ、まったく。
「そのうち俺のは効果が切れるだろうから、好きにしろ」
「問題は副作用っすね」
「でもそれ光らないんでしょう?他は場合によっては嫌ですけど」
「とりあえず安全に安心に過ごしたい」
「でも安全には過ごせませんよ?」
「なんで?」
「今日会議がありますよ?」
完全に忘れていた~、さすがにグラサンかけながらはまずいだろ、たづなさんはともかく理事長は犯罪臭が凄いことになる、あの見た目だぞ?見た目幼女、完全にアウト!
イエスロリータノウタッチ!あ、違うそうじゃない、それならニシノフラワーの方が大問題だ。
仕方なくサングラスをかけながら会議に出席する。勿論サングラスのことを追求されたがタキオンの薬の副作用で光っているということでなんとかなった。もし外したら人としてだけでなく物理的に首も飛んでいただろう。首たっちだ!
ロリコン認定されたり、資格剥奪からのブタバコ行きはなんとか免れた。後は仕事を終わらせて帰るだけ、今日はオフにしているから問題も起きない!
書類仕事をしながらパソコンに必要な備品の個数を打ち込んでいく、スムーズに仕事が進むおかげで家には早めに帰れそうだ。
「やぁトレーナー」
「嘘だろ」
「ん?」
何でお前がここにいるんだシービー、最後の最後になんかフラグ回収したみたいになってんじゃねーか、自由人め、こんな時に来るなよ!
「イメチェン?」
「タキオンの薬の副作用」
「盛られちゃったか」
「そうだ、だから帰れ、ほれほれ」
「冷たいな~けど帰らないよ」
どうしてですかシービーさん。帰ってください、平和に過ごしたいんです。勘弁してください。ラーメンでも今度奢るから!300円あげるから!ソファーでくつろがないで!あ、ちょっと近づかないで!
サングラスを取られてしまった。しかし見なければいい!パソコンを見ればいい!お前を見なければいいだけだ!あ、待ってやめて!
「・・・・・なんで?」
「ん~特に何にも変わってないね」
無理矢理顔を上げられ目を開けさせられたが、効果が切れたのか、服は透けて見えなかった。九死に一生、なんとか助かった。
長めのため息をつき天を仰ぐ、緊張が解けたのか全身から力が抜ける。
「・・・なんでそんなに疲れているの?」
「・・・いろいろあるんだよ、本当に」
「・・大変だね、そうだ!」
「・・・・・・・」
なぜか頭を撫でられている。優しく丁寧にまるで子供をあやすかのように優しい手つきで頭を撫でている。なんというか難しい、教え子にこのようなことをされているのもそうだが、変な気持ちである。これを平然と受けながら甘やかされているクリトレは凄いと思う。
顔も近い、綺麗な顔立ちでその瞳に視線が吸い寄せられる。甘やかされているがもどかしい気持ちだ。慣れていないせいか少し、なんか、嫌だ。
「もういいぞ」
「え?やだ!なんかクリークの気持ちが分かるかも♪」
「よし今すぐやめろ!」
危ないでちゅねされるところだった。俺もおしゃぶりとよだれかけを身につけて学園の中を歩き回るつもりはないぞ!赤ちゃんにはならないぞ!
それにしても・・・・・うん、やばいかも
「どうしたの?急に目をそらして?」
やばい、効果がレベルアップした。え、なに?レベルアップしたの?それとも戻ったの?見えてはいけないものがみえてしまったんだけど。なんで?なんで何にも身につけてないの?
今ここでバレたら人生が終わる。本当に見えてはいけないものが見えてしまっている。凄く綺麗で目が離せなくなりそうだが・・・・大きかった。そして綺麗だった。
「あ、もしかして?あはは」
「あん?」
「ちょっと今は花壇のところで水浴びしたから何もつけてないんだ、それが分かっちゃったかな?」
「ごふっ」
「トレーナー?」
やばいやばいやばい、なんでよりによってそんなラッキースケベに会うんだよ、普段は何も感じないが、はっきり見えるせいで結構やばいんだよ!一点に全集中、ハロン棒の呼吸しちゃうよ!ちょっと何言ってるかわからないけど
頼む誰か助けてくれ!
「先輩、どうです・・・か」
神よ~三女神よ!ゴース、あるいはゴスムか我らの祈りが聞こえたか!
「あ、サングラス外してるって事は効果が切れたんですね!」
「あ、おい!」
「へ~効果って?」
「ま、待て」
「タキオンの薬の効果で服が透けて見えてしまうって効果なんですよ・・・あれ?」
最後の最後に救いはないのですか~、もうどうするんだよ、シービーがゆっくりと顔を真っ赤にしながらコッチ見てくるじゃん!
「もしかしてさっき目をそらしたのも」
「・・・・・・・」
「・・・・・トレーナー見た?」
「いいえ」
「失礼します」
「あ、逃げるな!「トレーナー」・・・はい」
大事な部分を隠すように手で隠しながらこちらを睨みつけるシービー、顔を真っ赤にしながら少し涙目、うん可愛い、なんかそそる気持ちが~
結局全ての事情を話し、怒られた。途中から全てを見てしまった感想を求められて、あげくにもうお嫁に行けないと言われ責任を取ってくれるよね?と言われる始末だ。今回は事故ということで処理をすることにしたが、次の日から耳元で
「あたしの裸を見たくせに」
と言われ、連れて行きたいところに連れて行ったり、食べたいものを買ってきてあげたり、家に泊まらせたり、泊まりに行ったりとしばらくこき使われたりした。もしかしたら卒業する頃にはもう逃げ場はないのかもしれない。
最後の最後にやらかしたあいつは夢の世界に送っておいた。しばらくヤーナムで暮らせ、ちょっとした大人のどう○つの森だ。獣を狩るのでも狩人を狩るのでも好きにしろ、全ては悪夢だ。夢から覚めれば全て悪い夢なんだ。ちょっとナメクジにでもなれ!
嫁候補が出来てしまった。ブラボ最高