ウマ常   作:バイク

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別れ

 

 

 私は地元では負け知らずだった。地元では天才と呼ばれて天狗になっていた。ここトレセン学園に来てからは違った。私は天才でも何でも無かった。ただの才能の原石を磨くための捨て石に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 全国からやってくるライバル達と同じ土俵に立っていたと思っていた。周りと同じようにデビュー勝ちし、重賞で勝てるようにトレーナーと頑張って走ってきた。

 

 

 

 

 

 負けることもあったが負けない方が難しい世界と知っていたからこそダメージはそこまでなかった。けれど歴史に名を残すウマ娘達は怪物だ。化け物だ。

 

 

 

 

 

 後に名を残すウマ娘達と走ったが一回も勝つことは出来なかった。悔しかった。悲しかった。苦しかった。走るのがとても苦しかった。

 

 

 

 

 

 それでも諦められなかったトレーナーと頑張り未勝利を抜け、重賞レースでは勝つことは出来なかったが奮闘したおかげかG1レースの優先出走権を手に入れることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迎えた本番、子供の頃から考えた私だけの勝負服を身に纏いターフに立った。競い合い私という存在を目に焼き付けて欲しかった。けれどそれは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 きっと今日この日、このレースでの敗北が完全に私の心をへし折った。走る意欲を完全になくしてしまった。だってそうでしょう?誰も私を見ていないのだから

 

 

 

 

 

 この言い方は少し違うかな?誰も最初から私たちを見ていなかった。彼女が勝つことが当たり前のような雰囲気、彼女を見るために集まった人たちばかり、きっとその中には私たちのファンもいただろう。

 

 

 

 

 

 それでも彼女の名前が響き渡る。だから私たちは折れてしまったレースが始まる前からこの雰囲気に負けてしまった。勝てるはずがないと思ってしまった。実力も人気もだ。

 

 

 

 

 

 勝利した彼女の名前が響き渡る。会場からあふれんばかりのコールの大合唱が、ああ羨ましいなずるいな、かっこいいな様々な感情があふれ出し涙もあふれ出す。

 

 

 

 

 

 きっと今日という日は忘れないだろう。ただの嫉妬と受け取って貰って叶わない、歴史に名を刻むウマ娘の捨て石になった私たちをどうか忘れないで欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後レースに対する気力も湧かなく完全にバーンアウトした私は学園を辞めることにした。正確には逃げることにしたんだろう。もうこれ以上この場にいたくなかった。好きだったレースが嫌いになりそうだったから

 

 

 

 

 

 努力すれば報われると言うが全くではないが報われなかった。努力という言葉が今では一番嫌いな言葉だ。退学届を出したその日の夜、まるで夜逃げのように量から荷物を纏めて出て行った。

 

 

 

 

 

「もう行くのかい?」

 

 

 

 

 

「はい、今までお世話になりましたフジ寮長」

 

 

 

 

 

「なにも辞めなくても君は」

 

 

 

 

 

「もうこれ以上は無理なんです」

 

 

 

 

 

「無理だなんてそんな」

 

 

 

 

 

「すみません、もうレースが走るのが楽しくないんです」

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

「ここに来てから誰にも負けないように努力しました。けれどその努力は報われなかった。すみませんもう行きます。今までお世話になりました。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 徐々に小さくなっていく背中をただ無言で完全に見えなくなるまでその場から動かず見届けたフジキセキ、一体これで何度目なのか彼女たちを見送るのは、走れないことよりも絶望した表情や、泣きながらなど様々なウマ娘を見送ってきた。

 

 

 

 

 

 どれだけ見送っても慣れなかった。きっとヒシアマゾンの方でも同じようなことになっているだろう。

 

 

 

 

 

「よう、フジ」

 

 

 

 

 

「トレーナーさん」

 

 

 

 

 

「また誰か去ったのか?」

 

 

 

 

 

「最初から見てたくせに」

 

 

 

 

 

「バレてたか」

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

「努力すれば報われるか」

 

 

 

 

 

「うん、まだまだ時間はあったはず。きっと」

 

 

 

 

 

「努力しても報われることはないさ」

 

 

 

 

 

 ポケットから取り出した煙草に火をつけ一口吸いながら煙を空に向かって吐く、努力して報われるなら誰だってそうする。けれど現実は甘くない、努力すれば報われるなんて嘘っぱちな名言だと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「努力すれば報われる?違うだろ?報われるまで努力するこれが正解だ」

 

 

 

 

 

「そうかもしれないけど」

 

 

 

 

 

「レースの世界は甘くないそれは社会もだ、努力なんてものは誰にだって出来る。その努力の仕方に問題があるだけでそこをどうにかするのがトレーナーの役目でもある」

 

 

 

 

 

「報われるまで努力することはとてもしんどいんだよ」

 

 

 

 

 

「それでも走りたいという気持ちがあるなら報われるまで努力するしかない」

 

 

 

 

 

「矛盾してないかい?」

 

 

 

 

 

「知らん。ぶっちゃけ心が折れた時点でワンアウト、トレーナーもサポートできてないならツーアウト、退学でスリーアウト」

 

 

 

 

 

 

 

 

「退学はスリーアウトなんだ」

 

 

 

 

 

「テイオーの時みたいに様々な要因が重なれば今回のようなことはなかったかもな」

 

 

 

 

 

 これ以上去っていた彼女のことを考えていても仕方ない、ここに帰ってくることがない以上時間を使うのは得策ではない、冷たいかもしれないが仕方が無いことだ。

 

 

 

 

 

 去って行くウマ娘は沢山見てきた。サブトレ時代からずっと見てきた。圧倒的な才能達に負けて折れる者、怪我でいなくなる者、レースが嫌いになる者、沢山見てきた。

 

 

 

「人間だってスポーツにおける挫折は数多いそれこそプロの選手なんて一握り、そもそも個人・チームスポーツであれ年間数百人程度しか夢は叶えられない、叶えたとしても消えていくのが半数」

 

 

 

「あの子は凄く頑張ってた朝から遅くまで誰よりも」

 

 

 

「それはほとんどの生徒もそうだ」

 

 

 

「厳しいね」

 

 

 

「勝負の世界は厳しいものさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰よりも頑張っていても結果が全ての世界、18人のフルゲートを組まれたとしても勝者は常に一人だけ、そして敗者は数え切れないほどいる。それでも栄光に手を伸ばしてあらがい続ける者がいる

 

 

 

 弱肉強食……勝者は全てを敗者は手に入れられるはずだった物を全て奪われる。勝負の世界は酷く残酷だ。

 

 

 

「こんな日があるときはルドルフがよく言う言葉を思い出すよ」

 

 

 

「幸福を願うだけなら誰だって出来るさ、問題はその幸福をどんな形で掴むかは本人次第」

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

「それに学園を去る前にひとケアはさせてもらうさ、そこで特別屋台をあいつがしてる」

 

 

 

「ああ、どうりでいい香りがするわけだ」

 

 

 

「分かったらベットに戻って寝ろ」

 

 

 

「そこは傷心しているか弱い女の子を優しくしてひとときの夢を見せてくれるんじゃないの?」

 

 

 

「バカなことを言うな、緑のギガンテスに棍棒で殴り殺される」

 

 

 

「そんなことは無いと思うけど」

 

 

 

 甘く見るなよどこに潜んでいるのか分からないレベルで出現するんだぞ、姿は見えなくてもそこに潜んでいるアメンドーズと一緒だ。別世界という名の天国に送られるぞ

 

 

 

 煙を吐き出しながらただ去って行った彼女の方を見続ける。きっと今頃美味いラーメンでも食って溜まった物を吐き出して涙を流してぐちゃぐちゃになった感情やらなんやらを冷えた水で流し込んで、おかわりしてとかやってるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きっと私もあの子みたいになるはずだった」

 

 

 

「そうだったな」

 

 

 

「怪我で走れなくなって本来ならでれたレースも出ることが出来なくって」

 

 

 

「ああ」

 

 

 

「全てを呪った」

 

 

 

「知ってる。見てきたからな」

 

 

 

「治してあがいて苦しんで今も走ることが出来てる」

 

 

 

「頑張ったよほんと、あの時は死ぬんじゃないかって顔してたからな」

 

 

 

「そんな酷い顔してた?」

 

 

 

「普段のキザな王子様ブームすら違和感を感じるほどにな」

 

 

 

「けど君が救ってくれた。あの子もトレーナーに救ってもらえたら」

 

 

 

 どうなるのかそれはわからない、彼女の夢が何だったのかそれを支えてきたのはあいつのトレーナー、今は酔い潰れて他の奴に介抱されながらずっと謝罪の言葉を口から垂れ流しているだけ

 

 

 

 結局は追いかけることが出来なかったのか彼女が拒んだのか当人達の問題に外野が口を出す気は無い、無責任なことでもあるからだ。しかしおれ達を育てた先生なら尻を蹴り飛ばすなり拳骨するなり早く追いかけてこいだなとなんだと言って、向かわせるだろう。

 

 

 

 吸い終えた煙草を処理し携帯灰皿にしまう。きっと人間には聞こえないが彼女には聞こえてるんだろうな去って行った彼女の泣き声が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ私も戻るね」

 

 

 

「寂しいなら添い寝でもしてやろうか?」

 

 

 

「素敵な提案だけど遠慮しとくよ……それにね」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「いい匂いに連れられて2人ほど走って行ったよ」

 

 

 

「よーしわかったとっ捕まえて明日は地獄の減量メニューだ」

 

 

 

 SとOを捕まえるべく創真の方へ向かう。どうせたらふく飯食って帰って寝るだけだからなそこに説教を増やしてやる!

 

 

 

 自身の部屋に戻ったフジキセキは部屋のテーブルに置かれている皿を見つけた。それは一見普通のチャーハン、しかしそれは懐かしき思い出の一品であった。一口食べればあの頃のことを鮮明に思い出すことが出来る一品

 

 

 

 思い出の味とも言えるだろう。一体いつから置いてあったのかは知らないがこのチャーハンを作れるのは1人しかいない、ゆえに懐かしさと彼の温かさを知ることが出来る。

 

 

 

 心地よい満足感と懐かしい思い出に浸ることで悪夢を見ることなく安らかに眠ることが出来るだろう

 

 




チャーハン

しかしそれは懐かしき思い出の一品であった。一口食べればあの頃のことを鮮明に思い出すことが出来る一品

 思い出の味とも言えるだろう。一体いつから置いてあったのかは知らないがこのチャーハンを作れるのは1人しかいない、ゆえに懐かしさと彼の温かさを知ることが出来る。

 心地よい満足感と懐かしい思い出に浸ることで悪夢を見ることなく安らかに眠ることが出来るだろう


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