ポケモン不思議のダンジョン ~似て非なる世界との境界線~ 作:いねっしー
ライチュウに連れられてギルドの中に入ると、そこではラランテスが食事を運んでいた。
ギルドの中は、入り口からすぐの場所に大きなテーブルがあり、最奥には階段、左右には廊下が伸びていた。
「こいつはこのギルドの給仕係、ラランテスだ」
「あら、よろしくね、新人さんかしら」
ラランテスは可愛らしくポカブに笑いかける。
「よ、よろしくお願いします」
いきなり美ポケに話しかけられて、少しおどおどする。
「このクチバギルドは、ここにいるラランテスと、俺ライチュウ。そして、そこでぐったりしてるガバイトと、それを運んでるあほずらのブースター。ついでに新人のポッチャマと、あと2匹いるんだが……生憎と遠征中でな。まあとにかくその7匹だ。ポカブ、よろしくな」
「よろしくお願いいたします!」
ライチュウの言葉に、ポカブも精いっぱい返す。
「あほずらは酷いですよ!」
「というかブースター! てめえ今日給仕係なの忘れてただろ?」
ライチュウが、まるでにらみつけるとこわいかおを発動しているかのような形相になる。
「……あ」
「幸いラランテスが朝飯を作ってるからいいけどよ、てめえ、散歩に行くって感傷に浸るのもいい加減にしろよ?」
「……すみませんでした」
背中にガバイトを乗せたままブースターが頭を地面にこすりつける。
「はあ、まあええか。朝飯は丁度5人分だ。ポカブ食うぞ」
「丁度? ライチュウさん、それ僕入ってないような……」
ブースターが頭を上げて弱々しく言う。
「黙れてめえは飯抜きだ」
「そ、そんな……」
うなだれるブースターの背中から、ラランテスがガバイトを持ち上げると、食卓へ運ぶ。
「かたじけない」
そうして、うなだれるブースターを除いた5匹が、テーブルの前につく。
「えーと、ブースターはあのままでいいのかな?」
「っは、気にするなすぐに戻る。さて、食うか。頂きます!」
ポッチャマに話しかけたつもりだったが、ライチュウが答え、みんなも一斉に食べ始める。
「……ね、ねえポカブ君、なんで私の名前――」
「あ! あの紫の敵!」
ポッチャマが意を決してポカブに話しかけようとしたとき、さきほどまでうなだれていたブースターが元気よく叫ぶ。
「あら、もう戻ったのね」
「ポカブ! あの襲われていたのは何だったんだ!」
先ほどまでの態度はどこかへ、意気揚々とポカブを問い詰める。
「ああ、そういえば俺襲われてましたね」
あまりの怒涛の展開に、ポカブ本人も忘れており、間抜けな返答をする。
「ほう、そりゃあどういうわけだ?」
「私の、質問……」
興味を持ったライチュウが、食事の手を止める。
「文字通りだよ。紫色の見かけないポケモンに襲われてた。あいつは何なんだ? 明らかにポカブを殺す気構えだったぞ」
真剣な表情のブースターに問い積められる。
「分かりません、突然森の中から現れて、それで……」
……確かに、思えばおかしいことだらけだ。ポケモンになったって気づいた直後に、ペンドラーに襲われたわけだし……あの時タイミング良くブースターが現れなければ……。
「ほう……ポカブ。その紫色のポケモンと面識はあるのか? いやそもそも、お前は何しにその森に入った?」
「えっと……」
面識はないけど、名前は知ってる。……でも、名前だけ言ってもさっきのポッチャマを怖がらせちゃったのと同じになるわけだし……
「面識はないです。というかそもそも、俺……」
「……おいまさか、記憶がないとか言わないよな?」
ライチュウが少し青ざめた顔で問いただす。
「は、はい。ブースターに助けてもらうより前のポケモンとしての記憶がありません、なんであそこにいたのかも、分かりません」
……というかそもそも、俺、いつポケモンになったんだ? 人間だったことはわかるけど、転生した時の記憶とかもなくて……本当に、最初の記憶は、あの空にいたムックルたちだ。
なんで、何のために、ポケモンになったんだ?
「噓じゃなくて、信じれないと思いますけど……」
しかし、ライチュウ達ギルドの反応は、ポカブが思っていた、信じられないという反応ではなかった。
「マジか……」
ライチュウの、ため息交じりの声が聞こえた。
ちなみにギルドは超不思議のダンジョンのあそこがモチーフです。
他にも随所にポケモン小ネタを挟んでいるので探してね!