ポケモン不思議のダンジョン ~似て非なる世界との境界線~ 作:いねっしー
「……マジか? それって……」
ライチュウのため息交じりの反応に意表を突かれつつ、聞き返す。
「言葉のままだよ、しかしまさか、こんなところにいたなんて」
気づけば、ライチュウ以外のポケモンも、疑っているような雰囲気はなかった。
「なあポカブ、このギルド、2人足りないって言ったよな?」
「えっと、遠征に行ってるとか……」
「ああ、その目的が、記憶のないポケモンの保護のためなんだ」
「……はい?」
ライチュウの言葉の意味が分からずに、まぬけな声を出す。
「この現象が始まったのがいつかなんて、詳しいことは覚えてないがな、突然この世界で連鎖的に、記憶喪失を名乗るポケモンが大量に発生したんだ」
ライチュウの過去形の言葉に、違和感を覚えつつも静かに説明を聞く。
「あまりにもその量が多くてな。一つの現象なんだと、受け入れ始めたとき……記憶喪失のポケモン達は、一斉に姿を消したんだ」
……俺と同じような、直前の記憶のないポケモンが大量発生して、そいつらが突然いなくなった? ……どういうことだ?
「ここクチバシティも同じでな。で、調査隊を派遣して、記憶喪失のポケモンたちの行方を捜してるんだ。ほかの町も似たようなことが起きて、似たようなことをしているらしい」
「……その記憶喪失のポケモンって、結局なんだったんですか?」
「それが分かってたら、苦労しないさ」
ライチュウの正論に、ポカブは納得し、黙り込む。
「実はね、記憶喪失のポケモンには、共通点があったのよ」
ライチュウの代わりにラランテスが言葉を発する。
「それはね、そのポケモンを、誰も知らないの」
「……知らない?」
すこし寒気がして、聞き返す。
「ええ、まさしく今の状態よ。あなた、ポカブっていうらしいけど、私、名前も噂も知らないわ。ほかのみんなもおんなじでしょ?」
ラランテスがギルドのみんなに語り掛けると、全員一様に頷く。
「とにかくだ。ポカブはもうギルドの一員の上に、記憶喪失のポケモンと来た。ここで預かることに異論はないな?」
ライチュウの質問に対し、ギルドのみんなは首を縦に振る。
「じゃあ、改めてよろしくな。ポカブ」
ライチュウはそう言い終えると、食べかけの料理に手を付ける。
「っと、そうだポカブ! ギルドの最初の任務としてなんだが……」
食事を取りながら、ライチュウが思い出したように言う。
「朝食を食べたら木の実を買ってきてくれないか? 丁度少なくなってきたからな」
「は、はい!」
初めて与えられた任務に、少し心を躍らせながらも、答えた。
「おーい、ポカブ君?」
にしても、記憶喪失のポケモンが多発していて、それが急に消えた。記憶喪失のポケモンは、記憶のあるポケモンには、面識がない……か。
「聞こえてる? ポカブ君?」
「あ、ああ。悪い悪い、少し考えてた」
真剣な表情を解いて、下ばかり見ていた目線を隣を歩くポッチャマの方向へ向ける。
朝食を食べ終え、早速ライチュウに言われた任務をこなすために、ポッチャマに道案内をされながら、クチバシティの商店に行き、買い物を済ませ、今はギルドへの帰路の途中だった。
街はゲームというよりかは、アニメのクチバシティに似ていた。
「ふふ、そっか。ねえ、記憶喪失ってどんな感じなの?」
ポッチャマが興味深々! とでも言いたげな表情で聞いてくる。
そんな無邪気なポッチャマと目線を合わせると、少し照れてしまい、すぐに前を向きなおす。
……というか今俺、ポケモンの顔見て照れたのか?
「そうだな、変な感じだが、慣れれば大したことないな」
だって一応、人間だったころの記憶はあるわけだから。
「ふーん、そうなんだ……でも寂しくないの? 将来やりたいこととか、好きなことを思い出せないのって?」
「どうだろうな、俺にそもそもそんなたいそうなものがあったかどうか、なくて困るものでもないしな」
人間だったころを思い返しながら、自嘲気味に言う。
「そうかな? あった方が楽しいと、私は思うよ」
「あった方が楽しいか……ポッチャマは、なんかあるのか?」
なんとなく、キラキラと語るポッチャマに聞きたくなる。
「私の夢かあ、私は――」
「ドッサイドーン!」
ポッチャマの言葉をかき消すように、2人が歩く道の奥で、叫び声が響く。
「うわ、なんだ?」
叫び声の場所には、道の中心で叫ぶドサイドンと、その隣に倒れこむヒトカゲとミズゴロウがいた。
「どこに目、つけてんだ!」
ドサイドンは叫ぶと、自らの腕を振るいあげて力の限り地面叩きつける。
それと共に地面の土がえぐれ、宙に舞う。
「ひ、その、僕たちは」
「言い訳はどうでもいいんだよ! お前たちが当たったせいで、せっかくこの俺様が買った木の実ジュースが、落ちちまったじゃねえかよ!」
道のど真ん中で荒々しく叫ぶドサイドンに対して、2匹のポケモンは今にも泣きだしそうだった。
そのほかのポケモンたちは、叫ぶドサイドンを遠巻きに眺めてはいたが、誰も何も言っていなかった。
「何見てんだ!」
ドサイドンが遠巻きに眺めるポケモン達に叫ぶ。
「ど、ドサイドン、2匹も反省しているようだから……」
「指図するなア!」
勇気を出して注意したポケモンを叫んで黙らせる。
「……ポッチャマ、あいつ……は?」
聞こうとしてポッチャマの方向を見る、するとそこには……誰もいなかった。
「あ、れ?」
「や、やめなさい!」
そして、先ほどドサイドンがいた場所から聞き慣れた声がする。
おいおいおいおい! まさかポッチャマ……
いやいやながらに視線をドサイドンの方向へ向かわせると。
「なんだ、お前」
いくら何でも無計画すぎるだろー!
ドサイドンとヒトカゲ達の間に立つ、ポッチャマがいた。
巷で話題の木の実ジュース。
タピオカ入り!