ポケモン不思議のダンジョン ~似て非なる世界との境界線~ 作:いねっしー
してはみたいが
勇気がない
「……じゃあポカブ、信じるよ」
いつの間にか呼び捨てになっていたポッチャマの言葉を聞いて、こくんと頷く。
すでに眼前には、今にも技を放ちそうなドサイドンがいた。
「けがで済むと思うなよ。ストーンエッジ!」
一瞬のうちに――岩の剣が地を這って、ポカブ目掛けて突き出してくる。
「なんの……これしき!」
ポッチャマを真横に突き飛ばし、たねポケモン特有の小ささと4つ足の俊敏さでぎりぎりでかわす。
「そんな大雑把な攻撃、当たるわけないだろ!」
形成された岩の間を駆け抜けて、ドサイドンへと距離を詰める。
「ポッチャマ! 動きを止めるから、用意しろ!」
そう叫びながら、岩を踏み台にしてドサイドンに向かって目いっぱいジャンプする。
「ガキが! 空中に浮いたって、的になるだけだ! ロックブラスト」
刹那、ドサイドンに向かうポカブ目掛けて、岩の弾丸が発射される。
「うおっと!」
持ち前の小さな体をフルに使って身をよじり、岩をよけると、今度は岩を踏み台に加速する。
「意外とぶっつけでも――出来るもんだ!」
「調子に乗るなよ! アームハンマー!」
ドサイドンの目の前まで迫ったポカブに対して容赦なく技が飛んでくる。
「貰った! しっぽをふる!」
繰り出されたアームハンマーに対し、瞬時に自ら尻尾を振り、ドサイドンの腕に絡み付ける。
「わ、凄い」
そして、そこを起点にして、体の軌道を変えると、アームハンマーをよける。
「そんな、バカな!」
「これで三回! もう慣れた!」
完全にドサイドンの間合いに入ったポカブはそう叫ぶと、自らの口に炎を生む。ポカブの後ろでは、空振りに終わったアームハンマーが地面をえぐる音が響く。
「そんな炎、当たったところで――」
「くらえー! ひのこ! 目潰しバージョン!」
口に含んだ炎を素早く放ち、ドサイドンの眼に命中させる。
「ぐあああああああああ!」
命中したひのこは、ポカブの予想通りに、ドサイドンを大きく苦しめ、ドサイドンはその場でのたうつ。
「よし! ポッチャマ!」
「うん! ドリルくちばし!」
自らの眼を押さえてのたうつドサイドンに対し、目の前まで近づいて、ポッチャマがドリルくちばしを放つ。
「があああああああ!」
二度目の雄叫びと共に、ドサイドンの巨体が吹き飛ぶ。
「……おお、やったか」
吹き飛ばしたポッチャマは、ポカブに向かってvサインを送る。
……ポッチャマに丸顔って言わないようにしよ。
「でもこれで!」
倒した! と言おうと思い、ドサイドンの方向を見る……
「ガキ共……」
砂煙にまみれたドサイドンが、立ち上がっていた。
「あれ? やれてない」
「手加減してやったら、調子に乗りやがって……」
手加減って……いやでも、俺がアームハンマー2回も耐えられたわけだし、あながち噓じゃないかも。
「ポカブ、どうするの?」
隣でポッチャマが心配そうに言う。
「さて、どうするかね」
立ち上がったドサイドンを見ながら、ポカブが呟く。
「消え失せろ! がんせきほう!」
ものすごい速度だった。
ポカブに向かって放たれたロックブラストとは比べ物にならない速度で、巨石が宙を舞う。
攻撃されていると気づいた時にはすでに、眼前には2匹を覆い隠すほどの岩があった。
「あ、やば――」
巨石が2匹をひき殺そうとしたその瞬間――
「進化分身! でんこうせっか!」
「……あれ? いき、てる?」
「全く、ポカブは僕が見てないといっつも襲われてるね大丈夫? 2匹とも」
気づけばポカブとポッチャマは、先ほどよりも後方におりポカブはブースター、ポッチャマは、シャワーズに載せられていた。
目の前には、先ほどの巨石が地面にめり込んでおり、あれが当たったらと思い、ゾッとする。
「ありがとう、ブースター」
「礼なんていらないよ、子供2匹でよく耐えた。シャワーズ、戻って」
するとシャワーズは消えて、ポカブとポッチャマは地面におろされる。
「さて、僕の大事な仲間を怖い目に合わせてくれたようだが覚悟はできてるのかい? 今逃げるなら、見逃してあげるけど?」
ブースターはゆっくりとドサイドンとの距離を詰める。
「ギルド。丁度いい、前々からうざいと思ってたんだ」
「そうか残念だ。僕はあんまり、戦いたくなかったんだけどね」
「調子に乗るなよ!」
ドサイドンが一気に、ブースターとの距離を詰め始める。
「仕方ない、見せるか」
それに対してブースターは臆することなく、ゆっくりと深呼吸をする。
「僕の全身、全霊、全力! 熱き炎となって燃えよ!」
深呼吸の後、体中に炎をたぎらせる。
「ダイナミックフルフレイム!」
そして次の瞬間――ブースターの上空には、まごうことなき巨大な炎の球体が産まれた。
それは明らかに、炎のz技だった。
――z技?! zクリスタルはもってなかったよな? というか、ポーズもとってなかったし、トレーナーもいないのに……でも、何より……。
「なん……だと……」
ドサイドンは足を止め、ブースターの上空にある、ドサイドン5匹分はあろうか炎に、腰を抜かす。
「まだやるかい? あんまり戦いは好きじゃないんだけど?」
「ふざ――けるな! やってられるか! 覚えてやがれ!」
ドサイドンは捨て台詞を吐きながら、その場から逃げ去る。
「逃げるなら最初から向かってこなければいいのに」
ブースターはそう言い、上空の炎を、まるで最初からなかったかのように、一瞬で消す。
「すげえ」
そして、そう呟く。
「まあでも、僕たちの勝利だ」
ブースターは、圧倒されていたポカブの頭をポンと叩く。
「達って、とどめを刺したのはブースターだし、最初に助けに入ったのもポッチャマで……」
口ごもるポカブに対し、ブースターは少し笑みをこぼす。
「そうかもな、でも、ポカブがいなきゃ、ポッチャマも、そこの2匹も助からなかったんじゃないか?」
ブースターはそう言い、ポカブとポッチャマの後ろをさす。
そこでは、ヒトカゲとミズゴロウが頭を下げていた。
「「ありがとう!」」
そろった言葉に対し、ポカブの胸は少し痛くなる。
……俺1人だったら、逃げてたかもしれない。
「2匹ともけがしてないよね? 良かった」
可愛らしい微笑みを見せるポッチャマを見て、覚悟を決める。
「ブースター、俺……強くなりたい。みんなを守れる、力が欲しい」
「辛い道のりになるぞ」
ブースターの優しい微笑みが、そこにあった。
あとがき 直後のお話です 読み飛ばし可!
「お兄ちゃん助けてくれてありがとう! その、握手して?」
「あ、ずるいよミズゴロウ! 俺もしてくれ!」
ポカブに対して、無垢なヒトカゲとミズゴロウが握手を迫る。
「あっと、俺は……」
俺が進んで助けに入ったわけじゃない……俺にその資格は……
ポカブが目線を泳がせ困っていると、ポッチャマが満面の笑みでヒトカゲとミズゴロウの間に立つ。
「はい、握手してあげる」
そして、ポッチャマが2匹の手を取ろうとしたとき、とてつもない速さで2匹は手を隠した。
「あれ? どうしたの?」
ポッチャマが優しく問いただす。
「……お姉ちゃん、ゲボ臭いからいやだ」
「ゲボ臭い?!」
ヒトカゲが真顔で答えて、ミズゴロウが頷いた。
ポカブの戦う理由ですね。
あとがきというか、小話的なのを書いてみました。
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