《完結》新たなHOPE! -もうひとりの戦士- 作:ねここねこねこ
こちらは短編のため、すぐに完結になると思いますがもしよろしければ少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ご……悟飯はいるか……?」
「孫くん!」
「悟空!」
心臓病に侵された孫悟空が寝ているベッドの周りにはブルマ、ウーロン、ヤムチャや親友のクリリンをはじめ、彼と関わりがあった者達で溢れていた。
原因不明の心臓病。この時代には治すための特効薬なども開発されておらず、戦闘民族であるサイヤ人の彼をもってしても抗うことが出来なかった。
先程まで昏睡状態だったのだが、薄っすらと目を開けたかと思うと、彼の一人息子である孫悟飯──育ての親より名前を貰った──を呼ぶ。
「お……おとう……さん……」
悟飯は悲しげな顔をしながら、全員が開けてくれた悟空のベッドまでの道のりを歩いていく。
自身の枕元まで悟飯が来たのを確認した悟空は、薄っすらと笑いながらほとんど動かすことすら出来なかった腕を上げ、悟飯の頭を撫でる。
その左手はかつて伝説の超サイヤ人となり、フリーザを倒したとは思えないほど弱々しかった。
「す、すまねぇな……オラはもうダメみたいだ……」
「う……うぅ……」
悟空の言葉に、悟飯は涙を溢れさせて声を出すことが出来なくなっていた。
「悟飯……手を……」
「お父さん……?」
悟空は悟飯に手を出すように伝える。不思議に思いながらも悟飯は左手を差し出す。
その悟飯の手を先程まで頭を撫でていた左手で弱々しく握りしめる。
「バトン……タッチだ……」
「バトン、タッチ……?」
悟飯は、悟空の言っている意味が分からず──言葉の意味はわかっているのだが──その言葉を繰り返す。
「これからの……地球のみ、未来は……お、おめえ達が守るんだ……チチをたのん──」
言葉を言い終えることなく、悟空の目が閉じられていく。それは、彼の最後を確信させるのには十分であった。
「……! おとうさ……!」
「ご……悟空ーーーーッ!!」
「悟空さーーッ!!」
悟飯、クリリン、チチ。それだけではない。そこにいる全員が悟空の死に対して、涙を流していた。その最後を見るだけで、彼がどれだけ周りから愛されていたのかが分かった。
しかし、そこで悟飯にしか分からない不可思議なことが起こる。悟空から悟飯へ光のようなものが移っていくのだ。それはまるで彼の魂が悟飯に注がれていくように。
「こ、これ……は……?」
悟飯は戸惑いを見せる。そして、光が悟飯へと移り終えると悟空の手から力が抜けていき、悟飯の手から零れ落ちていくのであった。
「お……とうさん……?」
全員が悟空の死に泣いている中、悟飯だけは上を向いて悟空へ何かを問いかけていた。
そしてその場にいないのが二人。彼らは家の外で腕を組みながら立っていたが、家の中から聞こえる声で悟空が亡くなったことに気付く。
「ちっ……カカロットめ……」
舌打ちをしたあと、宙に浮かび上がり飛び去っていく
ベジータが飛び去った様子を見届けた後、無言でベジータとは逆方向へと飛び去ったナメック星人。彼もまた悟空とはライバルであり、息子の悟飯の師匠であった。最強のナメック星人であるピッコロ。彼の胸中がどうだったのか、それは誰にも分からなかった。
◇
悟空の死から三年後のエイジ767の五月十二日。この日は人類にとって決して忘れられない日となった。
年若い二人の男女が出現。容姿が似た男女の人造人間は残虐非道であり、現れた場所で次々と人間を殺し回っていた。
ときにはゲームと称して、ときにはただの憂さ晴らしとして。いきなり現れた相手に対し、地球人は悪魔が降臨したと絶望した。
「なんだ。やはり人間は本当に脆いな」
「孫悟空ももういないみたいだし、なんか拍子抜けだね」
その男女は、生み出された本来の目的である〝孫悟空の抹殺〟が成し遂げられる前に孫悟空本人が心臓病で他界してしまったため、目的を見失っていた。だからこそ暇つぶしも兼ねて人間を殺し回っていたのだった。
しかし、それをいつまでも彼らが許すはずがなかった。孫悟空から未来を託された地球の戦士達が、暴れまわる人造人間達の元に辿り着く。
ベジータ、ピッコロ、天津飯、クリリン、ヤムチャ、チャオズ、そして悟飯。
「地球人を殺したくらいで、いつまでいい気になっているつもりだ?」
男女の前に降り立ったベジータ達。しかし、彼らは二人に対して違和感を覚えていた。
気がまったく感じられないのだ。普段から気を探ることで戦闘に活かしていた彼らにとっては、戸惑いしかなかった。
「貴様ら……何者だ? なぜ気を感じられない?」
ベジータが疑問をぶつける。男はベジータを一瞥すると、微かに笑う。
「ベジータか。それはそうだろう。俺達は〝人造人間〟なんだからな」
「人造人間だと!?」
男の回答を聞いたZ戦士達は驚きの声を上げる。そしてヤムチャが青年の左胸に描かれたマークを見て思い出したかのように叫ぶ。
「あのマークは……レッドリボン軍!」
「ほう、よく分かったな。俺達はレッドリボン軍の科学者であるドクター・ゲロによって作られたんだ。俺の名前は人造人間19号。こっちは20号だ」
ヤムチャの言葉に19号は感心したような顔をして、自ら名乗る。
「な、なんの目的でこんなことをしているんだ!」
クリリンが19号達に問いかける。
「目的……そうだな。元々は孫悟空を殺すために生み出されたんだがな。奴がいない今、やることがなくてな。暇潰しに人間を殺していたってわけだ」
「孫……の抹殺だと!?」
ピッコロが驚きの声を上げる。三年前に他界した孫悟空の名前がここで出てくるとは思っていなかったため、それも仕方がない。
Z戦士達が警戒する中、ベジータだけが前へと歩みだす。
「ふん……カカロットがどうだっていうんだ! あんなヤツがいようがいまいが、最強はこの俺だ!」
ベジータが19号達を威圧するように叫ぶが、19号達は特に気にした様子もないような表情をしていた。
「あいつ……うざいね。殺しちゃってもいい?」
「……まぁ好きにしろ。雑魚だが、どうせいずれは殺すんだ」
20号が19号にベジータを殺してもいいか聞き、19号はそれを了承する。そして20号が頭をかき上げながら、ベジータの前にゆっくりと歩いてくる。
「言っておくが、俺は女だからといって手加減はせんぞ? ……といっても人造人間だ。女じゃないか……」
「……いいからかかってきなよ」
「……舐めるなぁぁ!!」
20号は面倒くさそうにベジータに返答をする。その態度が気に食わなかったのか、ベジータが20号へと飛び掛かるが──。
「な……!」
「ベジータ!!」
それは一瞬だった。気が付くと、ベジータは倒れ、20号がベジータの頭を踏んでいた。
「こ、これはなんてことだ……」
ピッコロがようやく相手の強さに気付く。彼だけが見えていたのだ。
ベジータが突撃したとき、その攻撃は当たることなく20号に避けられ、腹を殴られたあと顎を蹴り飛ばされる。上空に上げられたベジータを回り込んで叩き落とし、降りてくるときにベジータの顔を踏んで今の状態となった。
「お、俺達では……か、勝てない……」
ピッコロは戦う前に心が折れかけていた。あまりの戦闘力の差に絶望していたのだ。
「あ、あいつらどれだけ強いんだよ……」
クリリンやヤムチャ、チャオズも恐怖の顔に染まり、天津飯も最大級の警戒をしていた。
20号がベジータを蹴り、ピッコロ達の方へ転がす。
「もう終わりなの?」
「やっぱり孫悟空以外は雑魚だったか」
その言葉に反応したベジータが、痛みに耐えながらもゆっくりと立ち上がる。その姿を見て19号が感心したような顔をする。
「ほう。まだ立ち上がるのか?」
「う……うるさい! き、貴様ら木偶人形なんぞに負けてたまるか!」
ベジータは怒っていたが、さすがの戦闘民族ということもあり、我を忘れていなかった。
「……続きやんの?」
「当たり前だぁぁぁ!!」
「俺達も行くぞ!!」
ベジータが再度突撃したのと同時に、ピッコロの号令で全員が攻撃を開始する。
一対一での戦いでは絶対に勝てない──そう確信したピッコロの考えは間違っていなかった。唯一間違っていたのは、
そこからは悲惨であった。いや、惨劇といった言葉のほうが正しいであろう。20号ただ一人に対し、一人、また一人と倒れていく。最初に倒されたのはピッコロだった。
「悟飯ッ!!」
20号の特大の気功波を避けられないまま硬直した悟飯を庇う。背中で受けきったその攻撃は、もはや致命傷であった。
「ピ、ピッコロさん!!」
「……無事だった、か……ご、ごは……」
そのまま倒れ、目覚めることはなかった。次にベジータ、天津飯と倒れていき、チャオズは過去にナッパに放った自爆をするも、ダメージを与えられなかった。
クリリンとヤムチャは敵わないと分かりながらも、目を合わせると頷く。
「悟飯……お前だけは生きてくれ……」
「え……かはっ……」
ベジータ達と戦っている隙に、悟飯の首の裏に手刀は放ち気絶させる。
「ヤムチャさん……俺、めちゃくちゃ怖いですよ……」
「俺もだ、クリリン……でも、今の俺達に出来ることをやるしかない!」
そう言うと、クリリンとヤムチャは覚悟を決めて20号へと突撃していく。これが自身の最後だと分かりながらも。
この作品は未来悟飯に少しでも幸せになってほしいという気持ちから作りました。
原作と描写が違うところもあると思いますが、そこは独自に書いているところだと思ってください。
※解説
原作の17号、18号は未来では19号、20号となっています。
17号→19号(男性)
18号→20号(女性)
この話を読んでいて少し混乱するかもしれませんので、先にお伝えしておきます。
よろしくお願いします。
※次話は5分後に投稿します。