《完結》新たなHOPE! -もうひとりの戦士-   作:ねここねこねこ

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二話目です。
良ければご覧くださいませ。



第二話 喪失と覚醒……そして喪失

「服が少し汚れたわ」

 

 20号が服に付いた埃を払いながら、冷たい口調で19号に愚痴を言う。

 

「お前がやりたいと言ったんだぞ……ところで()()の奴はどうするんだ?」

 

 19号は気絶している悟飯を見る。クリリンは気付かれないようにしていたつもりだったのだが、19号達には気付かれてしまっていた。

 

「ふん……あんな子供なんてどうでも良いよ。それよりもシャワー浴びにいこうよ」

「それもそうだな」

 

 19号達は宙に浮かび上がり、その場から飛び去っていく。その場には瓦礫の山とZ戦士達の無残な姿だけが取り残されていたのだった。

 そのことに悟飯が気付いたのは、19号達が飛び去ってから数時間後。日没間近の時間帯であった。

 

「ん……あれ……ぼ、僕は……」

 

 目をゆっくりと開けた悟飯。寝ぼけ(まなこ)をこすりながら起きた彼は、目の前の光景を見て全てを思い出し、全てを察した。

 

「あ……あ……」

 

 目に見える一番近くにはクリリンとヤムチャが倒れていた。その先に天津飯、そしてベジータも。

 その光景が信じられず後ろに座りながら後ろに下がろうとすると、何かを掴んだ。それは冷たくなっていたが、今まで何度も触ったことがあるものであった。

 

「あ……ピ……ピッコロ、さん……」

 

 自分を庇って倒れたピッコロの腕を掴んでいた悟飯。己の師として、いつも厳しくも暖かく見守ってくれた人物。第二の父と呼んでもおかしくないほど懐いていた彼に、悟飯は()()()()()()()のであった。

 

「ピッコロさん……クリリンさん……みんな、みんな……」

 

 そこで思い出す。それはドラゴンボールの存在だった。しかし、ピッコロが死んだ今、ドラゴンボールも永遠に戻ってこないことに気付き、そして全てを失った。

 

「う……う……うわあああああ!!」

 

 ピッコロを抱え、泣き叫ぶ悟飯。三年前、死に際の悟空から伝えられた言葉が脳裏によぎる。

 

(ぼ……僕には大切な人を守る力すらないのか……)

 

 自身の無力を嘆く悟飯。何よりも許せないのは、父の最後の言葉を守れない自分自身。

その日、その場には後悔を抱いたままの悟飯ただ一人が残されていたのだった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 紫色の髪をした少年が、悟飯へと突撃していく。悟飯は、その少年が繰り出す攻撃を紙一重で全て躱す。何十発と打ち合ったあと、これでは勝てないと判断した少年が距離を取り、両手を広げて額に置き、気を集中させる。

 

「む……あれは……!」

「くらえ! 魔閃光ーーッ!!」

 

 前に突き出した両手から、凄まじい威力の光線が悟飯へと向かっていく。その攻撃を悟飯は避けずに待ち構えた。

 

「はぁぁぁぁ……」

 

 悟飯が全身に力を込めて、気を練り上げる。その纏っている気は徐々に変質し、黄金色に染まっていく。

 

「ずりゃああああ!!」

 

 魔閃光が当たる直前、練り上げた気を一気に爆発させた悟飯。舞い上がった土煙が晴れたとき、そこには気の性質と同じ髪色になった金色(こんじき)の戦士が立っていた。

 

「はぁ……はぁ……うう……」

 

 少年は力の限りの魔閃光を使ったせいで体力を消耗しており、片膝をついて座り込んでしまう。

 その姿を見た悟飯は元の姿に戻り、ゆっくりと少年の元へと歩いていった。

 

「さ……さすがですね……ご、悟飯さんにはまだまだ勝てそうにないです……」

「いやぁ、お前も随分強くなったさ、トランクス。まさか俺が超サイヤ人にさせられてしまうとはな」

 

 ピッコロ達を失ってから十二年後のエイジ779。悟飯は、ベジータの遺児であるトランクスと修行をしていた。悟飯は髪を短くし、山吹色の道着に身を纏っていた。

 この十二年の間に悟飯は超サイヤ人となることが出来ていた。

 

「それでも……僕はもっともっと強くならなきゃ……」

 

 十三歳になったトランクスは焦っていた。超サイヤ人になることは出来ていたのだが、自身と悟飯の力の差をどうしても感じてしまっていたのだった。

 なぜなら自身が全力で戦ってもまだ悟飯は超サイヤ人にならない状態でほぼ互角であったからだ。

 

「そんなに焦る必要はないさ。お前は本当に強くなっている」

「で、でも! 僕がもっと強くなれれば、悟飯さんの足を引っ張ることもないのに……!」

 

 焦る必要はないと(なだ)める悟飯に、トランクスは早く悟飯の役に立ちたいという気持ちをぶつける。その気持ちが嬉しかったのか、悟飯は笑みを浮かべてトランクスの頭を撫でていた。

 

(トランクスは確実に強くなっている……それよりも不味いのは……俺の方か……)

 

 決して表には出していなかったが、トランクス以上に焦りを感じていたのは悟飯だった。初めて超サイヤ人になってから約十年。初めは急激に強くなった気をコントロールしたり、自由に超サイヤ人になる訓練をするために試行錯誤を重ねていたお陰もあり、戦闘力は日増しに上がっている実感があった。

 しかし、直近の二、三年ほどは戦闘力の上がり方が明らかに鈍化しており、自身に限界を感じてしまっていた。

 それでもいつか人造人間を倒してみせるという意気込みのみで、ここまで修行を重ねていたのだった。

 

「それじゃあこれからも厳しい修行を積んでいこ──」

 

 トランクスに慰めの言葉を掛けようとしたとき、悟飯は遠くで小さな気が大量に失われていくのを感じた。

 

「こ、これは……悟飯さん!」

「……ああ。人造人間(やつら)だ」

 

 悟飯は人造人間が襲っているであろう街の方角を睨みつける。彼らは以前から明らかに楽しんで人殺しを行っていたため、悟飯としても許しがたいことであった。

 

「とりあえず俺が行ってくる。トランクスはここで待っていてくれ」

「で、でも! 僕だって強くなりました! 奴らを倒すことは出来なくても、足止めくらいは──」

 

 トランクスが一緒に行きたいと言い出したが、悟飯は黙って首を横に振った。

 

「今はまだダメだ。今のままのトランクスでは奴らの足止めすら出来ない」

「ご……悟飯さん……」

「なに、俺だってやばくなりそうだったら逃げるさ。……今地球上には俺とトランクス(お前)しか、戦士はいないんだからな」

 

 そう言うと、悟飯は舞空術で宙に浮き、常人には目にも見えないスピードで飛んでいくのであった。

 

「ご、悟飯さん……ぼ、僕は……」

 

 トランクスはただその場で立ち尽くすしか出来ないのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「あはははははっ! さっさと逃げなよ!」

「そうだ。十秒だけ時間をやろう。それで逃げられるだけ逃げてみろ」

 

 19号の言葉に市民が一斉に駆け出す。彼は薄く笑いながら、壊滅した街を逃げ惑う市民の姿を眺めているのであった。

 

「三、二、一……ゲームオーバーだ」

 

 カウントが終わったところで、19号が気功波を大量に打ち出す。それは寸分の狂いもなく、逃げ惑う市民に当たろうとしていたのだが。

 

「させるかぁぁぁ!!」

 

 上空から同じ量の気功波が打ち込まれ、全てかき消されたのであった。

 

「誰だ……?」

 

 19号は自身の楽しみを邪魔されたことに対して、不機嫌そうな声を出しながら上空を見上げる。そこには超サイヤ人となった孫悟飯が宙に浮きながら立っていた。

 

「またお前か……」

「お前達、今度こそ許さないぞ!」

 

 呆れた声を出す19号の前に降り立った悟飯は、いつ戦いが起きても大丈夫なように構えていた。

 

「多少強くなったところで、意味はないだろう。お前ほど無駄な努力が似合うやつも珍しいもんだな」

「ねぇ。こいつ、もう()っちゃっていいだろ? いい加減、面倒臭くなってきちゃった」

 

 20号はイライラした様子で19号に話しかける。

 

「ふむ……俺としてはまだまだ楽しみたいのだがな。20号が一人でやるのなら止めはしないさ」

 

 止めても無駄だと分かっている19号は、諦めたように後ろへ下がると、瓦礫の一つに腰をかける。20号は髪をかき上げると、悟飯に向かって構える。

 

「さぁ、掛かってきな」

 

 数瞬の後、二人の姿が消える。否、彼らは目に見えないほどの高速移動をしているのだった。上空で数回激しくぶつかる音が聞こえ、隙を突いた悟飯が20号の顔を殴る。

 

「ッ!! 良くもやったわね!」

 

 20号もお返しとばかりに悟飯に肘打ちを喰らわせ、仰け反ったところを踵落としで叩き落とす。大きな衝撃とともに悟飯は地面にぶつかるが、すぐに立ち上がる。

 

「へぇ……少しはやるようになったじゃないか。20号と互角に戦えるなんてな」

「うるさい! 今のはまだ本気でやっちゃいないんだよ!」

 

 感心したような19号の声に、20号は怒りが混じった声で反論する。19号は肩をすくめて軽く笑うと、勝負の続きを見守ることにした、

 

(く……あんなに修行したのに、まだ力が足りないというのか……)

 

 悟飯は自身の力不足を痛感していた。20号はまだ手加減をしていたが、悟飯は全力で戦っていたからだ。

 このままでは負ける。そう思った悟飯は、気を探って周りの人間が逃げたことを確認するが──

 

(あ! ()()()に気配が……!)

 

「……何をしているのか知らないけど、逃さないよ?」

 

 不意に背後から20号の声が聞こえたと思うと、背中を思い切り蹴られて吹き飛ぶ悟飯。その飛んでいく悟飯目掛けて、20号は気功波を打ち込んでいく。

 

「はぁぁぁぁ────」

「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 悟飯に気功波を打ち込む20号に向かって蹴りが放たれ、20号はその勢いのまま吹き飛んでいく。

 

「……ほう?」

「ト……トランクス!?」

 

 そこに現れたのは、超サイヤ人に変身したトランクスであった。悟飯に残れと言われたトランクスはその場で立ち尽くしていたのだが、悟飯との修行で得た力で自分にも何かできることがあるはずだと思い、悟飯を追いかけてきていたのだった。

 19号は不意打ちとはいえ、悟飯以外に20号を蹴り飛ばせる存在がいたことに微かな驚きを見せる。

 

「…………」

 

 吹き飛ばされた20号が起き上がり、無言で服についた埃をはたく。

 ダメージを一切受けていないことが分かったトランクスは身構えるが、そんなことは気にする素振りを見せない20号はトランクスの方へゆっくりと歩いていく。

 悟飯はトランクスの方へと助けに行こうとするが、20号から放たれた気功波のダメージですぐに動くことが出来なかった。

 

「…………」

「はぁぁぁ!!」

 

 トランクスは目の前まで近付いてきた20号に殴りかかるが、彼女は避ける素振りもせずに受ける。

 そこからトランクスは連続攻撃をする。しかし、20号は一切動くことはなかった。

 

「ガキが……良い気になるんじゃないよ!」

 

 20号はトランクスの顔面を殴ると、左側面蹴りを顔に放つ。トランクスはその勢いで崩れた瓦礫に突っ込む。

 土煙が晴れる前にトランクスがその中から出て20号に突っ込んでいく。

 トランクスの攻撃は20号に当たるが一切のダメージはなく、トランクスが攻撃をされて吹き飛ぶという事が繰り返される。

 

「ぐっ……が、あああ……」

 

 何度目かの同じやり取りのあと、ダメージが蓄積されたトランクスの動きが鈍り、立ち上がることが出来なくなっていた。

 しかし20号がそれで手を緩めることはなく、座ったまま起き上がれないトランクスの髪の毛を掴んで持ち上げる。

 超サイヤ人の変身は解けてしまっていた。

 

「20号、あんまり弱い者いじめをするもんじゃないぞ」

「19号。あんたにだけは言われたくないよ」

 

 笑いながらからかうように話す19号に、不意打ちとはいえ子供に吹き飛ばされたことに不機嫌さを隠さない20号。

 髪の毛掴み持ち上げられたトランクスは、20号との身長差もあり宙に浮いていた。

 20号は右手をトランクスのお腹に当て、気を溜めていく。

 

(く……そ……)

 

 やられる──そう思ったトランクスは目を瞑る。悟飯を助けに来たのに、結局何も出来ずに20号に負けてしまった。

 悔しさで涙が溢れそうになっていた。

 強い衝撃を感じ、自身が20号の気功波でやられてしまったと思ったトランクスであったが、抱えられた感覚を不思議に思い、目を開けると目の前には兄とも呼べる存在の顔があった。

 

「悟飯……さん……」

「トランクス、大丈夫か?」

 

 悟飯はトランクスにとどめを刺そうとしていた20号を蹴り飛ばし、トランクスを救出していた。

 しかし自分の攻撃が20号に効いているとは思っていなかった。

 

(ここまで差があるとは……このままではダメだ……なんとか逃げないと……)

 

 悟飯は今のままでは決して勝てないと理解して逃げようと隙を伺うが、果たして()()を連れて逃げられるのかと思っていた。

 だが20号が吹き飛ばされて、19号が油断している今しかチャンスは無かった。

 悟飯はトランクスに小さな声で「目を瞑っておけ」と呟く。

 

「孫悟飯────ッ!」

 

 20号が何度も吹き飛ばされ、お気に入りの服をボロボロにされたことを怒っていた。

 19号はその様子を面白そうに見ていた。()()()()()()()()()()──そう思った悟飯はこの最後のチャンスを逃さないように、孫悟空含めてかつてのZ戦士が愛用していたあの技を放つ。

 

「今だ!! ────()()()!!」

 

 悟飯は全身からまばゆい光を放つ。太陽拳とは天津飯が編み出した新鶴仙流の技で、気を放って相手の目をくらませる技である。

 サングラスがあれば防げるような光量なのだが、使いようによっては格上にも通用する。

 油断をしていた19号と20号から逃げるのには最適な技であった。

 

「なっ!」

「くっ!?」

 

 19号と20号は光を直接目に受けてしまい、視界が光で覆われてしまう。

 そして、光が無くなり、二人の視界が戻ったときには誰もいなくなっていたのであった。

 

「……逃げたのか?」

 

 19号は20号に問いかける。

 

「分かんないよ。けど、()()()()()()()()()()ことにするよ」

 

 20号はゆっくりと浮き上がっていき、地上へ右手を向ける。そして、気を集中させると、特大のエネルギー弾を放つのであった。その威力で辺り一帯が吹き飛ぶ。

 

「あらら。こりゃあもう生きていないかもな」

「……ふん。もう行くよ」

 

 19号と20号は悟飯の生死をきちんと確かめることもせず、飛び去っていく。

 そして、吹き飛ばされた周辺のある場所には血塗れで倒れていた孫悟飯の姿があった。

 

「く……くそ……」

 

 まさか20号が辺り一帯を吹き飛ばすとは思っていなかったため、隠れて気を消してやり過ごそうとしていた。

 しかし思っていた以上の威力の気功波が飛んできたため、悟飯は()()を守るので精一杯になってしまった。

 

「せ……仙豆を……」

 

 道着の帯に入れてあった袋をなんとか右手で取り出して、仙豆をその中から取り出す。

 地面に落ちた仙豆は()()()()だった。

 悟飯は一瞬戸惑いを見せたが、すぐにそれをトランクスと事前に助けていた黒髪の女の子に食べさせる。

 二人が飲み込んだのを確認した悟飯は安心した表情をして、気を失うのであった。

 




次話は5分後に投稿します。
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