《完結》新たなHOPE! -もうひとりの戦士- 作:ねここねこねこ
良ければご覧くださいませ。
「…………ん、ここは……!」
悟飯が目を覚ますと、そこは見覚えのある場所であった。
徐々に覚醒をし、気を失う前に何があったのかを思い出す。
(19号と20号との戦いで逃げ遅れた女の子とトランクスを助けようとして……はっ! 二人は……!?)
起き上がろうとするも身体が思うように動かない悟飯。しかし、気配を感じて横を見ると、そこに悟飯が助けた黒髪の女の子が寝ていて安心する。
(よ……よかった……)
悟飯は身を挺して守った女の子が無事でいたことに心の底からホッとしていた。
「悟飯さん!! 目を覚ましたんですね!」
悟飯と女の子が寝ている部屋に入ってきたのはトランクスだった。
トランクスは悟飯に仙豆を食べさせて貰ったあと、比較的すぐに目を覚ます。
女の子と一緒に倒れていた悟飯を見つけたトランクスはすぐに二人を自宅へと運び、ブルマと一緒に手当をしたのであった。
「トランクス……お前が運んでくれたのか……?」
「悟飯さん……勝手なことをして……ごめんなさい……」
トランクスは俯きながら悟飯に謝罪をする。
「いいさ。むしろお前が来てくれていなかったら、俺やあの子は助からなかったかもしれない……」
「でも……でも……僕が未熟なせいで悟飯さんの…………腕……が……」
トランクスは自身の無力さを嘆き、目に涙を浮かべていた。
悟飯も二人に仙豆を食べさせた時に気付いていた。
「……気にするな。全員生き延びることが出来たことの方が大切さ」
悟飯はゆっくりとトランクスの頭に手を伸ばして撫でていた。
その手の力強さと暖かさに記憶にない父を感じていた。トランクスはまだ十三歳の少年だ。父の愛情を知らない彼は、悟飯にその感情を求めても仕方がない。
「悟飯さん……僕は……僕は……」
「う、う〜ん……」
トランクスが涙を溢れさせていたとき、悟飯の隣のベッドで女の子が目を覚ました。
彼はすぐに涙を拭うと、少女の方へ目をやる。
「え……え……? ここ……は……?」
「あ、目を覚ましたんだね! ここは俺の家だよ。君の街は人造人間に……」
「────ッ!」
起きた時に知らない天井を見た少女はどこにいるのかと呟く。
トランクスはすぐに少女の隣に行き状況を説明しようとするが、少女が思い出したのか辛い顔をしたため言葉を止める。
「あ……っと、その……ごめん……」
「…………ううん、大丈夫」
「あ、僕の名前はトランクス」
「私は……マイよ」
マイは動揺していたが、すぐに落ち着いた表情を見せる。年齢でいえば見た目的にもトランクスと同じくらいのはずだが、落ち着くまでの早さは明らかに彼と同年代とは思えないほどであった。
「あの……私と一緒にいた顔色が悪い少年と犬の獣人はいませんでしたか……?」
「い……いや……俺が見たのは……君……だけだったよ」
マイは自分と一緒にいた者達の行方を聞くが、途中で来たトランクスには分からず、悟飯も逃げ遅れていたのはマイだけだったと伝える。
その言葉を聞いたマイは「そう……ですか……」とだけ呟き、疲れていたのかまた寝てしまった。
「あら悟飯君、目を覚ましたの?」
部屋のドアから顔を出したのはトランクスの母親のブルマ。彼女は悟空と出会った後からずっとヤムチャと付き合っていたのだが、彼の浮気癖に嫌気が差し、ナメック星から戻って来た後にベジータと結婚することになる。
トランクスはベジータとの子供であり、サイヤ人の血を引くトランクスがベジータの二の舞になることを不安に思っていた。
「ブルマさん……手当していただいて、ありがとうございます……」
「いいのよ。元気になるまでうちにいなさい……チチさんには内緒にしておくから」
「……ありがとうございます」
「大丈夫よ……トランクスを助けてくれてありがとね」
ブルマはそのまま部屋を去っていく。
悟飯はピッコロ達を失ったあの日、一度チチのもとへ報告に戻った後から帰っていない。
チチ本人にも「もう戻らない」と伝え、泣き崩れるチチを背に飛び去っていた。
すくなくとも19号と20号を倒すまでは家に帰ることはないだろう。そう思いながら十数年の月日が流れてしまっていた。
当時の悟飯はそれほどまでに追い詰められており、仇を取ることしか考えていなかった。
「トランクス、今回は完敗だったなぁ」
「悟飯さん……」
トランクスに気を遣わせないように笑いながら呟く悟飯。
「
「……は、はいっ!!」
トランクスは嬉しそうな顔をして両手を握りしめるのであった。
◇
悟飯がマイを助けてから一年半のときが経ったエイジ780。二十三歳になった悟飯と十四歳になったトランクスは変わらず修行を重ねていた。
助けられた黒髪の少女マイはそのままトランクスの家に居候するようになり、家事などの手伝いをするようになっていた。
この一年半で変わったことは、トランクスが戦うことに反対していたブルマが渋々認めるようになったことと、悟飯が片腕でもある程度戦えるようになったことである。
ブルマが反対していた頃は内緒で修行をしていた──彼女にはバレバレだったが──のだが、公認を貰ってからは堂々と修行が出来るため、修行効率も良くなっていた。
(この一年半でトランクスは随分強くなったな。あと数ヶ月もすれば追い抜かれてしまいそうだ。……しかし……やはり俺は……)
トランクスはこの一年半でかなり強くなっていた。
あと数ヶ月で追いつかれ、数年もすれば自分などには遠く及ばない存在になるかもしれないとまで感じていたのだった。
「なぁトランク──」
いつもの岩山で修行していた悟飯がトランクスに話しかけようとしたとき、トランクスの住んでいた西の都に大きな爆発音が鳴る。
異変に気付いた二人は驚いて立ち上がる。
「な……! ま、まさか……!」
「じ、人造人間め……とうとうこの街まで……!」
人造人間が西の都を衝撃していたのであった。
悟飯はこの一年半で出来ることをやってはいたが、片腕を失ったことと、そしてやはり修行をつけてくれる存在がいないことが大きな原因となり、実力がほとんど伸びていなかった。
(だが……だが……! 今度こそ!!)
「はああぁぁああ!!」
悟飯は超サイヤ人へと変化する。トランクスは悟飯が人造人間と戦う気であると理解する。
「悟飯さん……その身体じゃ──」
「トランクス! 君はここにいるんだ! いいな?」
トランクスの悟飯のことを心配した言葉を遮り、この場に残るように指示する。
しかしトランクスはその指示を聞こうとしなかった。
「嫌だ! 悟飯さんが行くなら僕も行く! もう随分強くなったはずだ!!」
「トランクス! 人造人間の力を甘く見るな!!」
「もう足手まといにはなりません! 僕、悟飯さんと一緒に戦いたいんです!」
強めにトランクスに言う悟飯の言葉に抵抗するトランクス。
一年半前に悟飯が腕を失うことになったきっかけになった彼は、どうしても強くなった自分の力で悟飯を手助けしたかったのだった。
トランクスを厳しい目で睨みつける悟飯。しかし、トランクスも怯むことなく睨み返す。少しの間睨み合っていた二人だったが、根負けした悟飯が「そうか」と言って穏やかな顔へと戻る。
「……分かった。トランクス、行くか」
「──! は、はいっ!」
悟飯についに認めてもらった。そう思ったトランクスは拳を握りしめて嬉しそうな顔をする。
そして二人は西の都のある方向へと向く。
「相手は前回完膚なきまでにやられた人造人間だ……絶対に油断するなよ」
「はいっ──」
悟飯は返事をしたトランクスの首に後ろから手刀を放ち気絶させる。
前のめりに倒れていくトランクスの服を掴むと、ゆっくりと地面へと寝かせてやる。
そして気絶したトランクスのことを穏やかな目で見るのであった。
(トランクス、君は最後の希望だ。もし君まで死んでしまったら、地球を守る戦士は誰もいなくなってしまう。何年か先、あの人造人間を倒す可能性を持った最後の戦士が……!)
悟飯はこの戦いで死ぬ可能性が高いと分かっていた。だからこそこの戦いにまだ未熟なトランクスを巻き込むわけにはいかなかった。
いずれ自分を超えたトランクスが人造人間を倒してくれるであろうことを信じていた。
自身が犠牲になる。そのことで時間を稼ぐことが出来るため、西の都の人間を少しでも救うことが出来る。そうして救った先に新たな希望が来るのを望んでいる悟飯であった。
◇
「あはははははっ! 逃げろ逃げろ逃げろ!」
「さっさと逃げないと死んじゃうよー?」
人造人間19号と 20号は他の都市と同じく人間を虫けらのようにして殺し回っていた。
その姿はまるでおもちゃで遊ぶ子供のようであった。
「やめろぉぉぉ!!」
悟飯は逃げ惑う市民と二人の前に降り立つ。攻撃を止めて悟飯の方を向く二人。その行為だけで市民が逃げる時間を稼ぐことが出来ていた。
「孫……悟飯か……まだ生きていたとはな」
「あれから修行も積んだ。もうお前達には負けないぞ!」
悟飯の言葉はハッタリだった。あれだけの重症を負い、片腕を失っている。一年半という歳月では治療と片腕でなんとか戦うことが出来るようになったレベルでしかなかった。
しかし人造人間達には気に入らない言葉だったようであった。
「もう……いい加減にしなよ」
「そうだな。いい加減お前とやり合うのも飽きてきたな」
20号はゆっくりと浮かび上がると、悟飯の背後に降り立つ。
「……今度こそ逃しはしないよ。こちらもフルパワーを出して殺す」
前後に囲まれた悟飯。悟飯は身構えながら二人の様子を伺っていた。
19号がゆっくりと前に歩いてくる。
「お前は今日で死ぬんだ」
「……俺は死なない! 例えこの肉体は滅んでも……俺の意志を継ぐ者が必ず立ち上がり……そして、お前達人造人間を必ず倒してみせる!!」
悟飯の言葉を合図に19号と20号が一斉に襲いかかってくる。
その連携を見抜いた悟飯は気功波を地面に放ち、土煙に紛れて空に逃げる。
人造人間達は一瞬だけ悟飯を見失うが、すぐに上空へと追っていく。
上空で19号と20号に挟まれる悟飯。二人は連携して両手から気功波を悟飯へと放つ。
悟飯は咄嗟に気の膜でバリアを張り、気功波を防ぐがその隙をついて20号が突撃してくる。
20号の攻撃を片手で防ぎ、反撃をしようとしたところで背後から19号に裏拳を喰らい、怯んだところを20号に殴られて地面へと落ちていく。
瓦礫に埋まる悟飯。痛みで一瞬だけ動きが固まるが、人造人間達が追撃してくるのが分かり、起き上がって距離を取る。
「はあぁぁああ!!」
悟飯は片手で魔閃光を放ち、19号と20号は追ってこないようにしようとしたが、二人はそれに対抗するように同時に気功波を悟飯に向けて放つ。
お互いの気功波の力は拮抗していた。しかし、気を練ることについては悟飯の方が一日の長があった。
「ぐぐぐ……」
「ぬぬ……だああぁぁぁあ!!」
悟飯が体内に練っていた気を魔閃光に乗せて放つと、人造人間達の気功波の威力を上回り二人を吹き飛ばす。
それをチャンスだと見た悟飯。上空に上がり更に追撃をしようとするが、19号がすぐに起き上がり先に気功波を打つことで追撃のチャンスを潰す。
上空に追ってきた19号に連続気功波で牽制しつつ、背後から攻撃してきた20号を避けて一撃を加えた後に足を掴んで、向かってきた19号もろともそのまま下にある建物へと叩きつけるのであった。
地面に降り立つ悟飯。この程度でやられる二人ではないと確信したその目には、油断という文字はなかった。
案の定、19号と20号は起き上がる。しかし、その表情はいつもの余裕さは無かった。
「……ふん」
「はああああ!」
悟飯は再度気合を入れて黄金の気を纏う。その気に当てられたのか、雷が鳴り響き、ポツポツと雨が降ってきていた。
人造人間達は強くなっていく雨の中、悟飯の前へと歩くとお互いの目を合わせて頷く。
そして二人が一人になったかのように重なると、同時に突撃してくる。
「なっ──!?」
悟飯はその流れるような連携に驚くが、19号の攻撃を避けて蹴りを入れる。その隙を付いて背後から20号が悟飯を殴る。
一旦バックステップで距離を取る悟飯だったが、二人は悟飯から離れないように動き、片方が悟飯の隙をついては攻撃するということを繰り返す。
悟飯は急に勢いの増した人造人間達の攻撃にたまらず空を飛んで距離を取ろうとするも、二人はしつこく追ってくる。
19号と20号は後ろから気功波を放ち、悟飯の前で爆発させる。悟飯は突然のことに衝撃に備えて防御を取るが、後ろから追ってきた人造人間達の体当たりをまともに喰らい、倒れた建物の壁に激突する。
「…………」
「…………」
人造人間達は悟飯の上空に上がると、両手を地面に向ける。手には気を溜めていた。
「し、しま──」
悟飯が気付いたときには遅かった。19号と20号は両手から大量の気功波を悟飯に向けて放っていく。
その攻撃が目の前に来る直前。悟飯は今まで過ごした出来事が脳裏に浮かんでいた。
パオズ山で産まれて育ったときのこと。四歳で悟空の兄であるラディッツに攫われるも、悟空とピッコロに助けられたこと。
そこから約一年間、ピッコロに厳しくも温かい修行をつけてもらったこと。
そしてピッコロが自分を庇ってナッパにやられてしまったこと。
なんとかベジータ達を撃退し、ピッコロを蘇らせるためにナメック星に行ったこと。そのとき生まれて初めてチチに反抗したことは今でも覚えていた。
一ヶ月掛けて向かったナメック星でのフリーザとの戦い。結局自身はほとんど役に立つことなかった。
ドラゴンボールで地球に戻り、全員を蘇らせたが悟空は戻ってこなかった。
フリーザの再襲撃。あのときは悟空が瞬間移動で戻ってこなかったら、地球は全滅していたことであろう。
そこから悟空の心臓病での死去。彼から渡されたバトンは、悟飯にとって今でも荷が重いものであった。
Z戦士の全滅。これが悟飯を超サイヤ人に変化させるきっかけとなっていた。
そして今────
(俺は…………僕は……誰一人として救えていない……。いつもみんなの足を引っ張って、いつもみんなに助けてもらって……。こんな……こんなところで死ぬわけには────)
悟飯は光に飲み込まれていくのであった。
◇
「ん…………はっ! ご、悟飯さん!?」
トランクスは雨が自分に当たる感触で目を覚ます。すぐに辺りを見回すがそこに悟飯の姿はなかった。
そして手刀で気絶させられたことに気付いたのだった。
(悟飯さん…………気が……悟飯さんの気が感じられない……!)
トランクスは急いで人造人間に襲われた西の都へと向かっていく。
「な、なんて酷いことを……」
西の都に降り立ったトランクスは、被害が多くなっているところを見て呟いていた。
破壊されたのは全てではないが、半壊している状態であった。
(母さんやマイは大丈夫だ。だが悟飯さんの気が────)
トランクスはブルマとマイの気を感じていたため、生きていることは分かっていた。しかし悟飯の気だけは感じ取ることが出来ていなかった。
雨がどんどん強くなっていく。それに嫌な予感を覚えながら、必死に、必死に悟飯を探す。
(悟飯さん、どこだ!? どこにいるんだ!?)
走り回るトランクス。雨で髪や服が濡れることなど構うことはなかった。
嫌な予感が頭から離れない。だが、もしかしたらという可能性に賭けるしか今のトランクスには出来なかった。
そして瓦礫に手を掛けてふと横を見たとき──
「悟……飯……さん……?」
水溜りに顔を半分ほど埋めて、傷だらけになった悟飯を発見する。
目の前の現実が受け入れられず、呆然と立ち尽くすトランクス。顔から流れていたのは雨なのか、涙なのかもう分からなかった。
「う……嘘だ……」
どうしても信じられず倒れている悟飯のもとへと駆け寄る。そして何度も悟飯の名前を呼ぶが、全身が冷え切った悟飯が返事をすることはなかった。
悟飯を抱きかかえて叫ぶも、彼の声以外は雨の音だけがその場には響き渡るのであった。
「う……うあああああああああ!!!!!」
トランクスはあまりのショックに声にならない声で叫んでいた。母であるブルマ以外で、家族という感情を抱かせてくれた大切な人。
時に厳しく、時に優しく。悟飯の言葉は、全て自身を思って言ってくれていた。彼がいなかったらトランクスはここまで純粋に育っていなかったであろう。
兄と慕い、あるいは物心ついた頃には既にいなかった父の代わりと言っても過言ではなかった。
そんな、そんな存在を失ってしまった彼には喪失感とともに、激しい怒りがこみ上げていた。
『トランクス、超サイヤ人になるためにはな、
悟飯の言葉がトランクスの頭の中に思い出される。
言いようのない怒りが彼を支配し、それを発散しようと叫ぶが、何の効果もなかった。
悟飯を殺した人造人間への怒りもあるが、それ以上に自分自身への不甲斐なさに対しての怒りが勝っていた。
もし自分がもっと強くなっていれば、このようなことにはなっていなかったであろう。
大雨が降りしきる中、悟飯を抱くのはこの世界に唯一人残された最後の戦士であった。
次話は10分後に投稿します。