《完結》新たなHOPE! -もうひとりの戦士-   作:ねここねこねこ

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第五話です。
よろしくお願いします。


第五話 神の神殿

「ここか」

 

 悟飯は舞空術で神の神殿があると言われる場所の地上に降り立った。

 そこには武術の神様と呼ばれるカリンの塔があり、その塔は雲を突っ切ってしまうほどの高さであった。

 

(よしっ!)

 

 悟飯は気持ちを引き締めると、舞空術で真上へと飛び始める。

 途中の建物に杖を持った二足歩行の白い猫がいたが、気にせず更に上へと飛んでいく。

 白い猫がいた場所からすぐに円状の建物が見え、それが神の神殿であると確信する。

 

 円に沿って更に上へと飛んでいくと、その建物は円ではなく、半円で降り立つ場所を見つけることが出来た。

 悟飯はそこに降り立つと、キョロキョロと辺りを見渡した。

 

(ここが神様の神殿……誰かいないのかな?)

 

 悟飯はシンプルで殺風景な場所に誰もいないため、目の前の宮殿へと向かおうとすると──。

 

「お前……孫悟飯か?」

「うわあ!!」

 

 悟飯は後ろから急に話し掛けられて驚きのあまり飛び上がる。

 そこには肌が黒く、頭にターバンを巻き、ずんぐりむっくりの体型、丸い眼に厚い唇でほとんど表情の変化を見せない男は、神の神殿の管理人をしているミスター・ポポであった。

 

「こ、こんにちは。あなたは……ミスター・ポポさんですか?」

「そう。孫悟飯、久しぶり。神様、お前に会いたがってた」

「神様が……?」

「ついてこい」

 

 ミスター・ポポは少しそっけない態度で宮殿へと向かっていく。

 悟飯もそれについていこうとしたところで、宮殿から緑色の肌に触覚を生やした男が出てきた。

 

「神様。ポポ、孫悟飯を連れてきた」

「ええ、ありがとうございます」

「ナ……ナメック星人……?」

 

 悟飯は地球の神がピッコロの片割れであるナメック星人だということは聞いていたが、ピッコロ大魔王時代からずっと神だったはずなので、目の前にいる神様の若々しい見た目がどうしてもピッコロの片割れには思えなかった。

 

「やだな、悟飯さ……ん……。本当に、悟飯さん……ですか?」

 

 神と(おぼ)しきナメック星人は、悟飯のことを知っているかのように話しかけようとしたのだが、明らかに纏っている雰囲気や見た目なども自身が知っている悟飯と違っていたため、疑問を持っていた。

 しかし、それでも目の前の男は孫悟飯本人に間違いがないようだった。

 

「え、ええ。孫悟飯です。実はクリリンさんにここに行くように言われまして……」

「クリリンさんに……? どういうことなのか詳しくお聞きしてもいいですか?」

 

 クリリンの名前を聞いて、神と(おぼ)しきナメック星人は悟飯に詳細を伺う。

 悟飯としても事情を話したクリリンから神の神殿に行くように言われていたため、彼を信じて目の前にいるナメック星人に正直に事情を話すことにした。

 

「……そういうことでしたか。それであれば僕のことも分からないのは仕方ないですね。でも、僕のことを本当に覚えていませんか?」

「そう言われても……ナメック星人はピッコロさんと、あとはナメック星に行ったときに……!」

 

 悟飯は途中まで言いかけて、言葉が途切れる。目の前にいるナメック星人を思い出のある()とダブって見えたのだ。

 記憶に残っている彼はまだ幼く、当時の悟飯と同世代と言ってもいいくらいだったため、すぐには気が付かなかった。

 しかし一度当たりをつけると、悟飯の頭の中に確信めいたものが広がっていく。

 

「も、も、もしかして……」

「はい、デンデです」

 

 デンデはようやく思い出してくれた悟飯に嬉しそうな笑みを浮かべる。

 平行世界とはいえ、()()()()()()()()()()()()()ということは嫌だったのだ。

 悟飯は「どひゃあ〜!」と驚いた素振りを見せ、その様子をデンデは悟空に似ているなと思い、心の中で苦笑していた。

 

「お、驚いた! 本当にデンデなのか!?」

「ええ。今の悟飯さんからすると……お久しぶりですと言えばいいのでしょうか?」

 

 デンデは見た目や雰囲気が変わっていても、やはり悟飯は悟飯なのだと実感する。

 世界は違っていても、その中身は変わっていないのだと分かり、嬉しい気持ちになっていた。

 

「……っと、再会を喜ぶのも良いのですが、ここに来たのはおそらく何か元の世界に戻る手立てがあるのではと思っていたということでよろしいのでしょうか?」

「…………そうか、俺はこの世界の人間ではないんだよな」

 

 悟飯はクリリン、デンデと懐かしい人たちに会えたことで忘れてしまっていたが、ここは悟飯が元々いた世界ではない。

 つまり、悟空もピッコロもベジータでさえもいるのだが、同時に()()()()()()()()()()()()()

 

「この世界の俺、孫悟飯は何をしているのか聞いてもいいかい?」

「……ええ。それはもちろん」

 

 この世界に来て、まずは元の世界がトランクスによって救われたことを知った悟飯。

 そしてこの世界があることで、悟空たちが死ななかった世界もあることを知った。

 デンデはこの世界の悟飯について語りだす。

 

「そうですね。まず今はエイジ780です。そこはおそらく悟飯さんが向こうの世界で亡くなった年と同じなので、こちらの世界の悟飯さんと貴方は同い年ということになります」

 

 悟飯は今が何年であるかという基本的なことすら聞き忘れていたことに気付く。そして平行世界の同じ時間軸に移動してきたということをデンデの話で知る。

 この世界の孫悟飯についてデンデはゆっくりと語っていく。

 

「この世界の悟飯さんは、今学者となっています。結婚もされて、一児のパパになっていますよ」

「学者……結婚……」

 

 悟飯はデンデの言葉を繰り返し呟いていた。〝学者〟は悟飯が小さい頃から憧れていた職業であった。

 そして、恐らくだが戦いに明け暮れる日々がなかったのだとしたら、自身もこの世界の悟飯と同じく勉強をして学者業を全うしていたのだろうと想像していた。

 俯きながら考え込む悟飯だったが、実はクリリンやデンデは、彼に敢えて詳細を語ってはいなかった。

 

 クリリンは未来の世界でトランクスが19号と20号、そしてセルを倒して、世界を救ったということまで話していたが、それ以降の魔人ブウや悟空ブラックの話などは一切していない。

 デンデも学者になったということや結婚もしているとは話したが、相手が誰であるのか、そして子供の名前はおろか性別すらも伝えていなかった。

 これは彼らの中で元の世界に戻った時の悟飯のことを考えてのことだったのかもしれない。

 

「それで、元の世界に戻る方法なのですが……」

「……それについてはちょっと待って欲しいんだ」

 

 デンデが元の世界に戻るための方法について悟飯に話そうとしたところで、ちょっと待つように伝える。

 

「今のまま元の世界に戻っても、俺はきっとトランクスの足手まといになったままやられてしまうに決まっている。それなら、少しでも強くなってから戻りたいんだ!」

「……ふふ。悟飯さんならそういうと思っていました。」

「……え?」

 デンデが悟飯の言葉に笑いながら答えたとき、近くで大きな声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────良く言った悟飯! それでこそ()()()()だ!

 

 

 

 

 

 

 

「…………あ……」

 

 それは懐かしくも嬉しい声。二度と聞くことはないと思っていた声。

 優しく、時に厳しく。言われたことを出来た時は黙って頭を撫でてくれたこともあった。

 そんな、そんな彼にただの一度も恩返しできずに別れてしまったことが、彼の中で後悔として残ったままだったのだ。

 

 

 

 

 ────ピッコロ…………さん……

 

 

 

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 懐かしいターバンとマントを身に纏ったナメック星人が悟飯の前に降り立った。

 ピッコロ──悟飯の師匠であり、悟飯によって性格を良い意味で変えてもらえた男。

 ナメック星人最強の男であり、彼のストイックに修行に打ち込む姿は悟飯に多大なる影響を与えたであろう。

 

「……ど、どうしてここに」

「僕がテレパシーで呼んだんですよ」

 

 涙目で困惑していた悟飯に対し、デンデはテレパシーを使ってピッコロに語りかけて神の神殿まで来てもらったことを話す。

 

「ある程度の事情はデンデから聞いている……俺の修行はあの頃とは比べ物にならんほど厳しいぞ?」

「…………は、はい! よろしくお願いします!」

 

 悟飯は懐かしい思いに胸を馳せ、姿勢を正してピッコロに頭を下げる。

 その様子を見たピッコロは、デンデに向かって口を開く。

 

「それで、悟飯を元の世界に帰す方法はあるのか?」

「……いえ、それがまだ分からないんです。そもそもなぜ悟飯さんがこの世界に来てしまったのかの原因を突き止めないと行けないので」

「そうか。それならそれまではまだ時間があるな……神の神殿(ここ)に来たのもタイミングがいいし、丁度いいか」

 

 ピッコロは(あご)に手をやり、考える仕草をしていた。

 悟飯は修行するための時間があるというのは分かったのだが、ここに来たことのタイミングが良いとはどういうことなのか分かっていなかった。

 しかし、デンデとミスター・ポポにはすぐに気が付く。

 

「ああ! ()()()()()()()を使うのですね!」

「そうだ。お前が改造してくれたお陰でより使いやすくなったからな。少しでも強くなるために、使わせてもらうがいいな?」

「ええ、もちろんです! 自由に使ってください!」

 

 〝精神と時の部屋〟というのは悟飯には聞き覚えがない言葉なのだが、神の神殿のどこかにある修行に適した場所なのだと推測していた。

 

「……その前に。お前のその腕をなんとかしないとな」

「ええ、僕の能力を使えば可能だと思います。悟飯さん、ちょっといいですか?」

 

 デンデは悟飯に近づくと、悟飯の左腕に両手を置き集中する。

 両手が光り出すと、悟飯の左腕が少しずつ再生し始めていた。そして数分もしないうちに、悟飯の左腕は完璧に復活したのだった。

 悟飯は手を開いたり閉じたりしながら、久しぶりの左手の感覚を確かめていた。

 

「デンデ、ありがとう。まさか俺の腕が元に戻るとは思っていなかったから、純粋に驚いたよ」

「いえ、僕も腕を再生させるまでの治癒をしたのは初めてだったので、上手くいって良かったです」

 

 悟飯とデンデが目を合わせて笑い合った。悟飯としてもここまで純粋に笑えたのはいつぶりだっただろうか。

 そんな様子を横で見ていたピッコロだったが、修行の話をするために口を開く。

 

「ではこれから精神と時の部屋で悟飯と修行をする。デンデ、お前は元の世界に戻す方法を考えつつ、悟空もここに呼んでおけ」

「ええ、分かりました」

「お、お父さん……!」

 

 ピッコロは悟空の名を聞いて驚いた表情をした悟飯を見て、意外そうな顔をしていた。

 

「お前を強くするためなら、俺だけでなく悟空(あいつ)も必要だからな。……ただそれだけだ」

「……は、はい! ありがとうございます!」

 

 悟飯はまた目に涙を浮かべながら、ピッコロへ頭を下げるのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 精神と時の部屋──部屋の中央に出入り口と居住スペースがある以外は、真っ白な空間が広がっている特殊な部屋である。

 その広さは地球と同じくらいのため、一度遠くまで行ってしまうと戻ってくることはほぼ不可能だと思われる危険な場所。

 そして環境はより過酷であり、居住スペースを除いた全ての場所は地球の十倍の重力が掛かっている。

 

 気温変化も激しく、最大五十度から最低でマイナス四十度まであり、しかも空気が外の約四分の一という一種の拷問部屋と言っても良いのではないかとも思われる場所である。

 なにより一番の特徴は、この部屋での一年間は現実世界での一日だということであった。

 

 精神と時の部屋に入ると、ピッコロは悟飯に部屋の特徴を説明する。

 この過酷な環境を今まで経験したことがない悟飯は地面に降り立ち、十倍の重力に少しだけよろめきそうになった。

 ピッコロはその姿を見ていたが、そのことに関しては特に何も言わず、黙っていた。

 

「とりあえずここで一年間過ごしてもらうぞ。現世では一日しか経っていないからな。お前の心身を鍛え直すにはもってこいだろう」

「……は、はい! お願いします!」

「よし、それでは今のお前の全力を見せてみろ」

 

 ピッコロの言葉に悟飯は少し戸惑う。超サイヤ人になってもいいのだが、それでピッコロと戦っても大丈夫なのかということであった。

 悟飯の知る限りのピッコロは、超サイヤ人の実力には到底達していなかったのだ。

 悟飯が気を遣っているのに気付いたピッコロは、微かに笑うとすぐに真剣な表情となって気を高め始める。

 

「はああああぁぁぁぁああ!!」

「こ、この気は……!?」

 

 明らかに自身よりも上の戦闘力を目の当たりにした悟飯は、驚愕の顔でピッコロを見ていた。

 

「……これで分かったか。今のお前は俺の戦闘力すら測れない程度の実力なのだ!」

「す、すみませんでした……改めてお願いします! 俺を、俺を強くしてください!」

「それならば早く超サイヤ人になってみせろ!」

 

 ピッコロの言葉に触発され、超サイヤ人へと変身する悟飯。

 超サイヤ人に変身した悟飯の戦闘力を大体で予測するピッコロ。

 

(ふむ。昔フリーザが地球に攻めてきたときの悟空よりは弱いな。あの時のトランクス以下ということか)

 

 予想していたとはいえ、()()()()()がここまでの弱さであったことに失望を隠せなかった。

 悟空が心臓病で死に、自分達がやられてしまうだけで、同じ悟飯でも戦闘力にここまでの差が出てしまっていたのだ。

 そして、そのことは悟飯に対してだけでなく、未来の世界の自分自身の不甲斐なさに苛立ちも覚えていたのだった。

 

(しかし、いつまでも嘆いていても仕方がない。今は悟飯を少しでも鍛えてやらないとな)

 

 不甲斐なくは思っていたが、それでも今の自分であればやれることは多いはずと信じ、ピッコロは構える。

 

「よし、ではかかってこい!」

「はい! いきます!」

 

 二十三歳にして、もう二度と行われるとは思っていなかった最愛の師との修行が始まるのだった。

 




>「お前を強くするためなら、俺だけでなく悟空(あいつ)も必要だからな。……ただそれだけだ」

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【解説】
・17号達が未来世界で19号、20号と名前が変わっていることについて
 →これは原作設定上の仕様みたいですね。未来トランクスが原作世界に来てしまった影響で、ラピスとラズリの二人の改造が早まったというのが定説とのことです。

・未来編でもナメック星のポルンガを使えばいけるのではないか?
 →これは事実上不可能みたいです。そもそもナメック星人が地球から新ナメック星に移動した際に、ポルンガが以前のナメック星に近い環境の星を無作為に選んだため、悟空たちはおろか、ナメック星人本人達すらどこの場所にあるか分からないということです。
 実際の新ナメック星の場所は、当時の地球の技術では一生掛かってもナメック星に到達できない距離だったため、ポルンガに頼ることが出来ないみたいですね。
 ただ、ポルンガに頼れば病死した悟空を生き返らせることは出来ません(ドラゴンボールの設定上)が、心臓病のウイルスを除くことは可能になっていたかもしれませんね。
 実際に十数年以内に特効薬が作られるくらいのレベルのウイルスだったってことですし。

・デンデの回復能力について
 →これはナメック星時にベジータがクリリンにお腹を貫かれても復活させることができたという点から、再生能力はあると判断しました。
 そのため、未来悟飯の腕を再生できるくらいは出来ると。まぁ駄目なら仙豆かドラゴンボールでいけますよね。

・ピッコロのツンデレについて
 →仕様です。
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