《完結》新たなHOPE! -もうひとりの戦士- 作:ねここねこねこ
悟飯とピッコロが精神と時の部屋の部屋に入り、一年半が経った。
現実世界では一日半しか経っていないのだが、悟飯にとっては濃厚で充実した時間を送ることが出来ていた。
「悟飯さん! ピッコロさん!」
「デンデ……! なんだか久しぶりに会った気がするなぁ」
「そりゃあこちらでは一日半しか時間が経っていないですが、そちらでは一年半ほど時間が経っていますからね」
デンデは一日半ぶりに会った悟飯を上から下まで眺めた。
身長は流石に伸びてはいなかったが、髪の毛は伸び、この世界に来たときに着ていた服はボロボロになっていた。
「それで、元の世界に戻る方法は分かったのか?」
「そ、それが……」
ピッコロは悟飯が元の世界に戻るための方法を尋ねるが、デンデは申し訳無さそうな顔をして俯く。
「すみません。色々と調べたのですが、全く分からなくて……もしかしたら界王様や界王神様であれば分かるかもしれないのですが……」
「……界王神様?」
悟飯は聞いたことがない名前に疑問に思い、繰り返す。
「えっと、まず地球のようにそれぞれの星には僕のような神がいるのですが、それを四つの銀河で束ねるのが界王様、更にそれを束ねるのが大界王様。そして、更に上位に四人の界王神様がおり、それを大界王神様が束ねているのです」
「一応宇宙も大きく十二個に分かれていてな、それぞれに界王神様達がいるのだ」
デンデとピッコロの説明に対し、界王神が途轍もなく偉い人だということは分かったのだが、あまりにスケールがでかすぎたせいで、驚くことが出来ていなかった。
「そ、それでその界王神様だったら分かるのかい?」
「恐らくとしか……界王神様でも分からないようであれば……
「む、むぅぅぅ」
「……?」
デンデがいう
悟飯は先程から話についていけず、首を傾げるしか出来ないのだった。
「ピッコロさん、どういうことですか? あの方々とは……?」
「む……あ、ああ。この世界には界王神様と表裏一体の存在である〝破壊神様〟という存在がいるのだ。その付き人である天使であれば、色々と解決策も持っていそうなのだがな……」
「……はい、可能性は高いと思います。でも……」
要領を得ない二人の話しぶりによく分からない気持ちになる悟飯。
「何かあるのですか?」
「あの方々はなかなかに気難しくてな……特に破壊神様は機嫌を損ねると、問答無用で星を破壊しかねん……」
「ほ、星を!?」
悟飯は驚きの声を上げる。
破壊神が星を壊すということに驚いたのではない。それならば今の自分でもやろうと思えば簡単に出来る。
そう、当たり前なのだが
それを機嫌が悪くなった程度で簡単に破壊してしまうという、名前通りの
「で、でも……どうにかならないのですか?」
「いずれにしても破壊神様には会うことになるであろうな」
「ええ、今悟空さんは破壊神様のところで修行をされているのですから」
悟飯は更に驚く。父である悟空──ベジータもだが──が、星を簡単に破壊してしまう破壊神のもとで修行をしているということに対して。
いくら強くなりたいと言っても、命の方が先に無くなるのではないか。
だが、誰とでも仲良くなってしまう自分の父であれば、破壊神と仲良くなっていても不思議ではないとも逆に思っていた。
「先に界王神様のところへ行こう。幸いにも悟飯、この世界のお前は界王神様達に気に入られている。もしかしたらお前の力にもなってくれるかもしれない」
「お……俺が界王神様に……!?」
更に驚きは続いた。
界王神や破壊神のような存在と仲良くなれるのは父である悟空くらいなものかと思っていたのだが、自分もその血をきちんと受け継いでいたということに。
「ええ。悟飯さんは界王神様のもとで、物凄い強くなったのですよ!」
「強くなったって……」
ピッコロの方を見て、「今の俺よりもですか?」と言葉を続けようとしたが、「今よりもだ」と先に伝えられ、この世界の自分は一体どこまで強くなっているのかと思う悟飯。
この一年半の修業のお陰で、悟飯は超サイヤ人の壁を超えることが出来ていた。
それだけでなく、気のコントロールの仕方などもより
しかし、戦闘力でいうと確実にこの世界の悟飯の方が圧倒的に上だと断言されてしまう。
少し悔しい気持ちにはなるが、それは自分がもっと強くなれるのだということの証明でもあるので、その気持ちは表に出さないようにするのだった。
『ピッコロさん』
『む、デンデか? どうした?』
不意に目の前にいるデンデからテレパシーを送られるピッコロ。
『目の前にいる悟飯さんは、やはりこの世界の悟飯さんとは似て非なる存在なのですね……』
『ああ。俺もそう思う。この世界の悟飯は、ここまで強さに対してのこだわりはなかった。力の大会前後で意識はだいぶ変わったようだが、ここにいる悟飯は甘さや驕りといった感情とも無縁のようだ』
この世界の悟飯はピッコロや他の者からも度々、甘さや驕りがあると指摘されていた。
サイヤ人特有なのかもしれないが、強くなりすぎた時に相手を舐めて掛かるということも悟飯は受け継いでいるようだった。
しかし、ここにいる悟飯は戦うということに関して、甘さも驕りも一切なかった。
誰かと戦うとなった場合、全力で相手が戦闘不能になるまで戦い続ける。
そこにはサイヤ人特有の舐めて掛かるということは一切していなかった。
これは幼少期に実の父を心臓病で亡くし、その後に人造人間に仲間を殺されたという経験が今の彼を作っている可能性があった。
その後、母親とも縁を切った彼は、誰かに甘えることもせず一人で生きていくしかなかった。
そのように過ごしていうるうちに、自然と性格も変わっていってしまい、この世界の悟飯とは違う性格になってしまった。
(これは戦士としては良かったことなのかもしれんが……しかし……)
ピッコロは複雑な表情で悟飯を見つめる。
少年期に自分の仲間が全員殺されてしまう絶望を味わったこと、それは彼にしか気持ちが分からないことである。
それでも歯を食いしばって、全てを捨てて生きてきた悟飯を心から抱きしめたい衝動に駆られるが────。
(……いや、だめだ)
ピッコロは手を握りしめ、自分の気持ちを抑えた。
今ではない。今の悟飯はまだ半ばなのだ。それを邪魔してはならない。
そう思うことで優先度を明確にし、今やらなくてはいけないことを考えることにした。
「それで……まず界王神様との連絡を取らなければならな──」
「その必要はありませんよ」
ピッコロの言葉を遮り、彼らの後ろから現れたのは先程から話に上がっていた界王神本人であった。
◇
「フンフンフーン、フフーン、フーーン」
悟飯はその場にずっと立っていた。それも一言も話すことすら許されず。
その周りには現界王神の先祖と名乗る者が変な踊りを踊ったまま、
悟飯はため息をつき、ここに至るまでのことを思い出していた。
ピッコロ達の前に現れたのはこの宇宙の界王神。
詳細を話すこともなく、彼は様子を見てある程度の事情を知っているようであった。
最初、悟飯の気が二つになったこと──この世界に悟飯が転移してきたとき──がきっかけで様子を見るようにしていた。
クリリンやデンデとの話、そしてピッコロとの修行を見つつも悟飯がこの世界に転移してきた原因を探っていた。
同じ世界に同じ人物が二人いることは別に駄目なことではないのだが、出来ることであれば元いた世界にいるほうが望ましい。
そのため調べていたのだが、界王神を持ってしても未だ分からずにいた。
どうしようか考えているうちにピッコロ達が自分達に連絡を取ろうとしていることを知り、地球でクリリンのように変な誤解を受けるよりは界王神界にいた方が良いと判断され、界王神がキビトを連れてやってきたのだった。
(強くなりたいとは言ったけど……本当にこの世界の俺は
聖地・界王神界。界王神とその付き人だけが住まうことが許されている世界。
そこで待っていた老界王神による〝潜在能力解放の儀式〟というのが行われていた。
最初、老界王神は「面倒だし疲れるから嫌だ」とごねていたのだが、界王神達による
そして今のこの状況となっているのだった。
「えっと……これっていつまでやるんでした──」
「儀式に五時間! そのあとのパワーアップの処置に二十時間じゃ! いいから黙って立っておれ!」
悟飯は老界王神の怒鳴り声に驚き、直立不動で立ち続けていた。
その様子を見て、界王神はクスリと笑っていた。
「界王神様……?」
「ああ、懐かしいと思いましてね。あのときの悟飯さんも、今のようにご先祖様に叱られていましたよね」
「……フッ、そうでしたな」
キビトと界王神は魔人ブウが現れたときのことを思い出し、懐かしく思っていた。
あのときは本当に死を覚悟するほど──実際にキビトは死んでいる──厳しい戦いであった。
「あのときの孫悟飯を真の戦士だと思ったものですが、そこの孫悟飯もあの当時と変わらぬ強さを持っているようですな」
「ええ。下手な強さだと、貴方が
「……ですな」
お互いに笑いながら話しているが、界王神はキビトであれば本当にあり得ると思っていた。
厳格な性格であるキビトのため、同じ悟飯であったとしても腑抜けた強さだった場合、認めない可能性が高かった。
横で黙っていたピッコロは、精神と時の部屋で悟飯を鍛えておいて正解であったと冷や汗をかいていたのだが、それは誰にも気付かれることはなかった。
◇
「超なんちゃらになる要領で気合を入れればええ」
「気合いを──」
「ちょっと待て! この場でやるなよ!」
潜在能力解放の儀式が開始してから、約二十五時間後。不眠不休──老界王神は確実に寝ていたが──で儀式を終えた悟飯が気合いを入れようとしたところで必死になって止める。
前回のことで学んだ老界王神は自分が吹き飛ばされないように、事前に釘を差したのだった。
「……や、やだなぁ。やるわけないじゃないですかぁ」
「ふん、どうじゃかな。あとは
老界王神は誤魔化すように笑って頭を掻いている悟飯をジト目で見たあと、界王神を見る。
しかし、界王神は首を横に振るだけであった。
「恐らくビルス様は寝ていらっしゃるのかと思います。ウイスさんに連絡を取っているところなのですが、恐らくまだ悟空さん達と修行中なのでしょう」
「それではどうすれば……」
「今は待つしかないですね。キビトに連れて行ってもらうこともできるのですが……」
そう言ってキビトを見ると、慌てた様子で両手を前に出し、首と一緒に横に振って拒否の姿勢を示す。
「い、いやいやいやいやいや! 私が破壊神様の許可無しに行くなど、恐ろしくて出来ません!!」
「……ずっとこの調子なのですよ」
ため息をついた界王神。悟飯は話の流れでビルスが破壊神なのだということを理解する。
そこにピッコロが前へと出てきて、界王神達に提案をする。
「それではビルス様との連絡が取れるまでの間、悟飯と修行をしていてもよいでしょうか? この強さに慣れる修行も大切だと思いますので」
「え、ええ! それは問題ないですよ。それでは連絡が取れたら、ピッコロさんにお伝えするようにしますね」
待っている間、やることが決まった悟飯達は一度地球に帰ろうとキビトにお願いしようとしたとき、テレパシーが届く。
『界王神様、話は聞きましたぞ。ビルス様から連絡が来るまでの間、わしのところで悟空の息子を預かってもよろしいでしょうか?』
「あ、貴方は……!」
声を掛けてきたのは、
◇
悟飯が界王神のところで儀式をしてから一週間の月日が流れた。
ようやく連絡が取れたとき、ウイスは「忙しかった」と言っていたが、後々地球に美味しいご飯を食べに来たりしていて、折り返すのを忘れていたという事実が発覚することになるのは余談である。
しかし、それは悟飯にとっては逆に都合が良かった。
ビルスと連絡が取れなかった間、悟飯は北の界王のところで修行をしていたのだが、ある程度の形になるまでちょうど一週間の時間を要したからである。
「界王様、ありがとうございました」
「大丈夫じゃよ。わしも久々に楽しめたしな。さすが悟空の息子といったところだ」
悟空以来の才能の持ち主が自分のもとで修行をしてくれたことに、界王は久しぶりにワクワクが止まらなくなっていた。
悟空を初めて修行を付けたのは、約四十年前。そのときにも彼を鍛え上げることに夢中になったのだが、その息子を少しだけとはいえ育てることが出来たのは界王にとっても感慨深いものがあったのだ。
「……ふん、俺には
「ええい、まだお前はその時のことを根に持っているのか!」
ピッコロは悟空と入れ替わりで界王星に行ったとき、悟空に教えたものを自分には教えなかったことを根に持っていた。
二人のやり取りを見て、悟飯は笑っていた。それは少しずつ彼の中で、
「では行くぞ」
「……はい、お願いします」
界王に改めてお礼を言いながら、ピッコロと悟飯はキビト達とともに破壊神ビルスのところへと向かうのであった。
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