ある日のトレーニング。スペ先輩は皐月賞に向けて頑張っている。...というのに...
「...うーん...」
「...」
なんで俺は芝の上で将棋を指しているのだろうか。
元はといえば、トレーナーが原因だった。
『ゴルシとトレーニングしてみろ。追い込み型同士勉強になるだろ。』
戦いという大雑把な括りで考えれば、これもトレーニングとしては有効...なのか?
それにしてもゴールドシップの奴、滅茶苦茶強い。本当によく分からん奴だ。
さっきから王手をかけ続けているのだが、仕留めることが出来ない。
「くっ...これならっ!」
「...」
クッソ、またかわされた!持ち駒ももう無い。焦りすぎたか...
次の手で王手をかけることは出来ないな。少し詰める程度で...
「王手。」
今度はゴールドシップの王手。逃げるしかない。
「王手。」
だが逃げた先に金を置かれてしまう。...詰みか。
「...負けました。お前強くないか?」
「そりゃゴルシちゃんだからな。」
「なんだよそれ。」
この謎の説得力は何なんだろう。まぁゴールドシップだし...で全部片付いてしまいそうだ。
同じ追い込み型でもこいつは参考にならないかもしれない。
「...スゥー...」
「...ああっ崩れた!」
「...フンッ!」
「16連射...だと...!?いただきます...うま。」
「フンッ!」
「(ゴキン!)...っつう...」
皐月賞の前日。ここまで皆で辛いトレーニングを乗り越えてきた。
トランプタワーは難しいし、スイカは美味かったし、拳で丸太に挑んだ時は砕けるかと思ったぜ。
G1レースは勝負服を着て戦う。今日、スペ先輩の勝負服が届いた。
...あんな服着て走りにくいと思うだろうが、そこは特注品。ベストの力を発揮できるよう作られている。かがくのちからってすげー!
「さぁ早く着替えるんだ。」
「お前は出てけよ。」
「ほら来い!」
俺はトレーナーの腕を引き、外に出た。
数分後。
「わぁぁぁ...」
「おぉ~いいねぇ~!」
「...」
「...レオ?どうしました?」
かわええええええええええ!!!!!!!!!
「...すごく...似合ってます...(あああああかわああああ!!!!)」
ダメだ...堪えるんだラウンドレオン!もしこんな場でにやけでもしたら...
『レオくん...気持ち悪いです...』
『そんな目でスぺちゃんを見ないで。』
『アンタ、ホンットキモイわ!』
『お前マジでキモイな!』
『一人で宇宙行かすぞテメェ。』
『レオ...俺と一緒に出頭しよう。』
『レオキモイよ~。』
『あら?何故こんな卑しい獣がここにいるのかしら。すぐに駆除してもらわないと。』
耐えられないィィィ!!普通な方を見て落ち着かないと!
「...?あのレオ?そんなに見つめないでくださいまし///」
(いや完全に睨まれてねぇかそれ!?)
心の中でツッコミを入れているウオッカ。だがレオの知るところではない。
「すごく嬉しいです!...あっ...」
「どうしたの?」
「あ、いえ、何でもありません!あははは...」
...?どうしたんだ?
「最後に、一番人気が登場です!8枠18番、スペシャルウィーク!」
皐月賞当日。チームメンバーが見守る中、遂にスペ先輩の登場。
でもやっぱり様子がおかしい。何やら腰の辺りを抑えている様だが。
「...何してんだぁ?」
「...!お前も気づいたか。」
隣にいたウオッカに小声で話しかける。
「おう...スペ先輩、どうしたんだろうな?」
「分からねぇ...どこかを痛めているわけではなさそうだが...」
スペ先輩の様子を不審に思っている間に、ゲートインが完了したようだ。
三冠達成の一つ目、皐月賞が今スタートする。
スペ先輩は弥生賞の時と同様、後方につけている。
「弥生賞と同じ様な展開だな。」
「またあの時の追い込みが見れるのかなぁ!」
...何だか嫌な予感がする。...あれ、セイウンスカイは,,,?
最終コーナー、ここでスペ先輩が仕掛ける...と同時に脚を溜めていたセイウンスカイが仕掛けた。
スペ先輩も負けじと追いすがるも差が縮まらない。何でだ...?
セイウンスカイが強くなっているのだろうが、それはスペ先輩も同じ事...
そしてセイウンスカイが粘り切り、スペ先輩は3着という結果になってしまった。
夜。マックイーンと共に寮への道を歩いていた。
「スペシャルウィークさんに何か言わなくて良かったのですか?慕っておられるのに。」
マックイーンが俺に問う。
「...言うことなんかねぇよ。お前は負けたら俺に慰めてほしいか?」
「...他の方だったらNOなのですが...」
なんだよ締まらねぇなぁ。
「それに...敗北を知らない奴に何を言われても説得力なんかねぇ。お前はよく知ってると思ってたが。」
「...そうでしたわね。でも、貴方に敗北を味わわせるのは私の役目です。」
「じゃあ、それまで負けないよう頑張るわ。」
次は日本ダービー。スペ先輩...頑張ってくれ...
数日後の夕方、皆で外をランニングしていた。まだ体力には余裕がある。朝練の成果が出てるな。
「よーし、そこの公園で休憩!」
みんな結構疲れてんな。少し優越感がある。
「アンタ息上がってんじゃないの?」
「お前こそ汗すごいけど?」
「はぁ!?」
喧嘩できる気力があんなら大丈夫だな。...水道で水飲んでこよ。
「(ゴク..ゴク..)...ふぅ。」
運動後の冷水ってなんでこんなに美味いんだろ。
「ねぇねぇレオ!トレーナーがたい焼き奢ってくれるって!早くいこっ!」
「マジか!?よっしゃ行くぜ!」
皆はたい焼きは何味派かな?俺は粒あんこしあんの二刀流だ。
メンバーがたい焼き屋の前に集まっている。
「オレ、ウィンナーマヨ!」
「たい焼きと言えば白あんでしょ!」
「ボクはね、カスタード!」
「私はマロンクリームでお願いします。」
「粒あんこしあん一つずつ。」
「おっちゃん、このシークレットって何?」
「お嬢ちゃん、それは秘密だよ。」
「おっちゃん、シークレット10個。」
めっちゃ頼むじゃんお前。でもシークレットも気になるなぁ。
「私はこしあん一つ。スペちゃんは?」
「...私は大丈夫です。」
あの大食いのスペ先輩が...遠慮...だと...!?ありえないッ!何かの間違いだッ!
「ダイエットぉ?」
「はい...皐月賞、勝負服のホック止まらなくて...」
...あぁ、あの怪しい挙動はそれだったのか。それよりもたい焼き美味いよ~。
「知ってたけどさぁ...ピー㎏増えたんだろ?」
「な...なんで知ってるんですか!?」
あの野郎、タブーを犯したな。教育が必要か。脚力をフルに活かしトレーナーとの距離を詰める。
「そんなの見りゃ分かるだろ。」
「普通は分かりません!」
「テンメッ!」
素早くトレーナーのシャツを掴み、背負い投げの態勢に入る。
「女性の体重を口に出すのはヤメロォォォ!!!」
「アァァァァァ!!!!!」」
怒りを込めて地面に叩きつける。
「...ふぅ...正義執行。」
さて、たい焼きが冷めちまう。早く食わねぇと。
「ねぇレオ!シェアしない?」
「いいぞ。...ほれ。」
「あっ...」
テイオーのカスタードと俺のこしあんを一口分交換する。...カスタードもいいな。
「マックイーンのもちょうだい!」
「え、えぇ...」
「...俺もいいか?」
「えぇ!?」
マロンクリーム美味しそうなのに...粒あんこしあんでは交換に値しないと?
「くっ...お前あんこダメだったっけ?」
「いえ、とんでもないです!是非シェアしましょう!」
「やったぜ。ほい。」
さっきと同じ様にたい焼きをマックイーンに差し出す。対するマックイーンも。
...何だか小さい頃を思い出す。よく駄菓子屋でアイスをシェアしていたものだ。
「...めっちゃ美味いなそれ。今度来たらそれにするわ。」
「...///」(私の食べかけの所から..)
こしあんを食べ終わり、粒あんに手を出そうとした時。トレーナーがスペ先輩の脚を懲りずに触っているのを見た。
6人で一斉にアイコンタクトを取る。皆、考えることは同じの様だ。
「「「「「「こぉぉらぁぁ!!!」」」」」」
6人分のキックがトレーナーに向けて放たれる。吹っ飛べ下衆が。
「スペ先輩、ダイエットなら私たちも手伝います!」
「本当?」
「たまにはオレ達にも手伝わせてくださいよ!」
うーん...男にダイエットしてるところはあんま見られたくないよなぁ...でも手伝いたいなぁ...
「皆...ありがとう!」
せめてメニュー考案は頑張ろう。
「そういえば、シークレットって何だったの?」
「一口ちょうだい!」
「ん。...からし。」
「ピエェェェ!!!」
「テイオー!?水、水飲んで来い!」
悪意が詰まってんなぁ...
こうして、スペ先輩のダイエットが始まった...
「やはりダイエットをするなら、素直に運動するのが一番ですわ。」
「やっ!はぁっ!」
「たぁっ!せあっ!」
「やっぱりそうですよね...あのぅ...」
「私、心を鬼にさせていただきますわ!」
「うおぉ!九頭龍閃!」
「はあぁ!アバンストラッシュ!」
「...さっきから何をやっていますの!?」
「「ん?」」
スペ先輩のダイエットとして俺とマックイーンとウオッカが提案したのは、筋トレだった。
そこで始めようとしたところまでは良かったのだが...ウオッカが何故か竹刀を持っていてな。
男子たるもの、傘を剣に見立てた事は当然あった。竹刀を見て興奮しないはずが無い。
だからついチャンバラごっこに熱くなってしまった。いやぁ、めっちゃ楽しいです。逆手持ちは基本だよなぁ!?
「それではまず腹筋100回からいきましょう。」
「はいぃ!」
「この技とかさぁ...」
「うんうん...」
「次、背筋100回!」
「はいぃ!」
「この次の動きなんだけど...」
「ほぉ...」
「腕立て伏せ100回!」
「もう許してぇぇ!」
「この構えが...」
「いやいやこっちの方が...」
「...没収です!」
「「えー」」
流石に遊び過ぎたのか、俺のキーブレードとウオッカの日輪刀は没収されてしまった。
小学生の頃は下校中にランドセルの鍵の開けっこをしてました。