「...入部テスト?」
「そ!レオは行かないのかなーって。」
休み時間、隣の席のテイオーに聞かれる。
学園最強の名をほしいままにしているチーム、『チームリギル』。
今日の放課後、そのチームの入部テストがあるらしい。
うーん...
「...俺はいいわ。学園最強ってだけで、息が詰まりそうだ。」
「ボクも~。カイチョーがいるのは魅力的だけど、楽しくやりたいし。」
「そうそう、何事も楽しくないとな。」
でもそんな入部テスト、受けるのはやっぱり強いやつらなんだよな。
...参考になるやつが居るかもしれん。見に行こう。
放課後、俺は入部テストが行われる競技場に向かった。
...何やってんだ?あの人。
競技場から少し離れたところに、双眼鏡を持った男が座っていた。
...怪しいな。もしや、ウマ娘の脚を求める変態なのでは...?
牽制のために俺は声をかけることにした。
「...アンタ、何見てんだ?返答によっちゃ、痛い目見てもらうが...」
「ん?...お、期待のルーキー君じゃないか。」
あ、この人トレーナーバッジ着けてる。トレーナーだったのか。
てか期待のルーキー?えなに、俺ってトレーナー達の間でそう認識されてる感じ!?
...期待のルーキーかぁ...デュフフ...
「ちょっと気になるやつがいてな。お前も座れよ。」
そう言って二つ目の双眼鏡を俺に渡してくる。今どっから出した。
男の隣に腰を下ろし、レースの開始を待つ。
「...もっと近くで見ないんです?」
「おハナさんがうるせぇからな。お、始まるぞ。」
受験するウマ娘達が並び始める。そしてスタートした。
やっぱりいい走りをするやつがいた。あの変なマスクをしてるやつとか。
「そういや、あなたの気になるやつってどいつなんですか?」
「最後尾から2番目。」
「...あの子...」
男の気になるやつというのは昨日の子、スペシャルウィークのことだったようだ。
...だいぶ離されちゃってるな。最初出遅れてたのはあの子だったか。
最終コーナー手前辺りに差し掛かった時、彼女のスピードが急に上がる。
「...!」
「速い...!」
前にいたやつらをどんどん抜いていく。それに...楽しそうだ。
あ、マスクの女がゴールした。正に圧倒的だな。
その後ろで熾烈な2着争いが繰り広げられている。
そして、あの子が差し切って2着。
最初の出遅れがなければ、あるいは...
「へぇ...マジかよ...」
心の中でもしもを考えていると、横で男が呟く。
ストップウォッチでタイムを取ってたみたいだ。
「...それじゃあ、俺はこれで。双眼鏡ありがとうございました。」
双眼鏡を男に返し、その場を後にする。
「おう、俺のチームも検討していてくれよな。」
検討?...もしかして、この人も俺の事スカウトしようとしてた...?
...あの子をスカウトする気なのかな。気になる。
...あの人のチーム、チェックしておくか。断じて、あの子が入るかもしれないからとかそんなのではない。
寮への帰り道、正門への道を歩いていると前にあの子の姿が見えた。
「...!」
咄嗟に草むらに隠れてしまう。...何やってんだろ俺。
あの子の隣にはピンク色の女がいる。
...あいつ確かさっきのレースでぶっちぎりのビリだったやつ...
あんなに遅いと、適正レースを間違えたとしか思えない。
ダート一択なのに芝を走るようなもんだ。
あ、ピンクがどっかいった。
...どうする。話してみたい。
でもいきなり草むらから飛び出すなんて、そんなポケモンみたいなことは...!
あぁ~なんで隠れちまったんだ俺はッ!情けねぇッ!
...というかさっきから触れなかったけど、何なんだあの看板は...
『チームスピカ 入部しない奴はダートに埋めるぞ』と物騒なことが書かれている。
あんなのよっぽどの物好きじゃねえと入らないだろ!
...ほら、あの子もめっちゃ引いてんじゃん!でもその顔いいなぁ...
...ダメだダメだ。この学園にいる以上、そんなふしだらな感情は捨てねぇと...
バレないようにその場を離れようとした時、事件は起こった。
「スカーレット!ウオッカ!やっておしま~い!」
!?何ィッ!?
振り返ると、怪しい格好をした三人組...ダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップらしきやつらがあの子をズタ袋を被せて拉致しようとしている。
...助けないと!
「お前ら何やってんだ!?」
あっ!やせいのラウンドレオンがとびだしてきた!
「げっ!レオ!」
「不味い見られたッ!」
「その子を離せッ!」
あの子を抱えたウオッカとスカーレットに詰め寄る。
...あれっ?...ゴールドシップは...?
「お前もじゃい!」
!?しまっ...!?
背後を取られたことに気付かず、俺はゴールドシップにズタ袋を被せられる。てか何個持ってんだ!?
しかも俺は油断してなかったはずだっ!?それなりに戦い慣れしてるはずなのに...こいつマジで何者だ!?
こうして、俺とスペシャルウィークは不審者達に拉致された。
...うぅ...揺れるぅ...酔うぅ...
「さぁ連れてきたぞ!この子でいいんだよな?」
「アダッ!?」
「あぁ。...なんか多くね?ま、好都合だな。」
あの子はちゃんと椅子に降ろされてんのに、なんで俺は地べた!?しかも乱暴だし!
「...もっと優しく降ろせや...」
「...ここはどこですか...?」
「よう。」
...!こいつはさっきの...
「あー!?痴漢の人!?」
「「「痴漢?」」」
許せん...やはり変態だったか...
「いやぁ違う違う違う、勘違い。トレーナーって言ってくれよ。...さぁ、皆挨拶だ。」
「「「ようこそ!チームスピカへ!」」」
チームスピカ!?あのアホみたいな看板の!?
「今日からお前等はこのチームのメンバーだ。」
「そんなの勝手に決めないでくださいよ!」
「...」
「勝手に決める。お前らは俺が磨く。」
...この風格、トレーナー歴はそれなりに長そうだな。
「2着だったのに?」
「てかこいつも?」
「上がり3ハロン33.8は立派だ。走った後の息の入りも早い。それにこいつの模擬レース見たろ。欲しいに決まってる。」
期待のルーキーって言うぐらいだしな。
「...スズカさん!?どうしてここに!?」
「スズカは今日付けでリギルからウチに移籍したんだよな?」
「えぇ。」
サイレンススズカ...まさかこの人がいるなんてな...
彼女のスタイルは俺とは真逆の大逃げ。正に異次元の速さだ。...俺も負けないが。
...やっぱりリギルって堅苦しそうだし、移籍する人もいるんやなぁ。
「日本一のウマ娘ってなんだ。」
俺が考えている間に話が進んでいたようだ。...日本一のウマ娘か...
「そりゃG1で勝つことだろ!」
「俺はダービーかなぁ。」
「有マ記念だって!」
「...スズカはなんだと思う?」
「...夢。」
「夢?」
「...見ている人に夢を与えられるような、そんなウマ娘。」
...なるほどな。俺的には模範解答だと思う。
「...お前はどうだ?」
俺は...
「...勝って勝って勝ちまくる。そうすりゃ日本一です。」
「そうだな。それもいい。」
そうして、トレーナーはあの子の方に向き直る。
「お母ちゃんと約束した日本一、お前の日本一を俺と一緒に叶えようぜ。」
「...トレーナーさん、笑わないんですね。日本一って言っても。」
...むしろなんで笑うのか分かんねぇよ。...いたんか!?笑うやつがいたんか!?世の中許せねぇやつばっかだな。
「私...私、頑張りたいです!ここで!」
「よぉし!...で、お前はどうする?」
...さっきから見てて思った。このチーム、空気がいい。何というか...楽しそうだ...
それに磨くって言われたしな。
「...断る流れじゃないでしょう。...よろしくお願いしますよ。」
「よっしゃ!部員ゲットぉ!」
「ようやくこれで人数も揃ったし!」
「来週からトゥインクルシリーズに乗り込んで行くぞ!」
「おぉ!」
チームをノリで決めちまったかもしんねぇが、まぁなるようになるだろ。
...決してあの子が入るからではない。決してッ!!
「で、お前名前は?レオは知ってるからいいぞ。」
「スペシャルウィークです!よろしくお願いします!」
...この子なんて呼べばいいんだろう。スペシャル先輩?ウィーク先輩?
なんかいまいちなんだよなぁ。...スペ先輩?
「じゃ、登録しておくんで来週は頑張れ。」
「来週?」
...おいおいまさか。
「トレーナーさん...もしかして...」
どうやらスズカ先輩も察したらしい。頑張れ...スペ先輩。
「...来週デビュー戦だ!」
...鬼か...こいつ...
ゴールデンウィークは黒バス一気見してました
緑間対赤司は熱過ぎる