王のもとに集いし騎士たち   作:しげもり

1 / 34
王への道
挫折


「またダメだったか・・・」

 

俺は届いた通知を見て深々とため息を吐く。

そこには不合格の文字。

全国から集まる応募者の中から数少ないトレーナーへの資格試験。

それは年々難関となり必死で勉強したものの5回目の試験もあえなく不合格となった。

全国2万人以上となる応募者から合格者はわずか100人。筆記だけではなく面接などでも厳しく審査される。

もっとも俺は1次試験すら通過できなかったが。

 

昔は資格なんかなかった。セクハラ問題やいじめ問題が問題視されトレーナーは資格試験になり難易度は年々高くなっている。

昔と違いウマ娘が普通に暮らせているのは女性の権利と種族の被差別が法律で決められたからだ。

 

「もうはや5年か・・・」

 

俺は参考書が積まれた狭い部屋の中を見回す。

今回で心がぽっきり折れた感じがする。もはやどんなことをしてもトレーナーになる道が思い浮かばない。

 

「もう別の道を探すべきなのかもな」

 

俺には昔からウマ娘の能力がなんとなくわかった。熟年トレーナーが長年の経験で持つといわれるそれをすでに持っていた。

だからこそウマ娘のトレーナーになるという目標を持った。

 

「思えば大学に行かず地方の専門学校や養成学校から下積みするべきだったのかもな・・・」

しかしそれではしょせん下積みで終わる。長い時間かけても才能のある一部の者しかトレーナーになれない。

しかしせめてウマ娘に関係する仕事につけたのではないか。

そんなとりとりとめもないことを考えるといつしか部屋の中は暗くなっていた。

 

「もうこんな時間か。行くか…」

 

俺は重たい足を引きずるようにゆっくりと部屋の外に歩き出した。

 

 

 

 

「やあ、先生!いらっしゃい!」

 

行きつけの酒場の中に入ると若い男が明るく声をかけてくる。

 

「これを」

「ああ、今回も儲けたようですね。さすがの博識です」

 

俺が紙の束を男に渡すと男は代わりに札束を俺に渡してくる。

 

「先生はメインしかしないんですか?今度のマイル第2レースの話も聞きたいんですが」

「あれはやめておいた方がいい・・・八百長だから」

「へえ!やっぱりですか!」

 

俺の言葉に男は大げさにうなづく。

 

「新人のあの子は顔がいいからな。新しいアイドルを出したいんだろう」

「お偉いさんが八百長レースやるとこっちが困るんですがねぇ」

「違いない。ああ、何か食べるものを」

「いつものやつでいいですか?」

 

そういって男は厨房に引っ込んでいく。

ここはよくある”賭場”だ。

賭けレースは表向きには禁止されているが昔から裏では多くの人がレースに賭けている。

国も賭け専用の大会に限り賭けレースが許可されてはいるものの。

還元率が低すぎ税金もかかり絶対に儲からないようになっている。

 

俺はここで金を稼いでいたので勉強にひたすら時間を費やせた。

もっともそのせいでずいぶん長い間苦しむことになったが・・・

皮肉なことにレースでの的中率の高さから一部では先生ともいわれて持ち上げられている。

 

「だけどそれも終わりか・・・」

 

ぼんやりと店内を見ていた俺のもとに食事が運ばれる。

 

「先生お待たせしました」

「・・・その先生はやめてくれ」

「いやいや先生ほど博識な方はいませんからね!次のレースのお話を聞かせてくださいよ!」

「仕方ないな。まあ今の理事長になってまともなレースも増えただろうけど次のレースは・・・」

 

ニコニコと笑う男を適当にあしらいながら俺はゆっくりと食事を始めた。

 

 

 

 

 

 

帰り道の商店街で桃色の髪を見て俺は足を止める。

 

その店先ではかわいらしい少女と人のよさそうな青年が売り子をしていた。

 

「そのニンジンせんべいをもらえるか?」

「あっいらっしゃい!」

「先生。こんにちは」

「先生はやめてくれ」

 

二人が明るく挨拶を返してくる

 

「昨日のレースは良かったな」

「これも先生のおかげですよ」

「うんうん。みんなも喜んでくれたんだよ!」

 

この間のレースで勝ったハルウララたちが明るく笑うのを見て思わず申し訳ない気持ちになってしまう。

初めて会ったときは偉そうに講釈を垂れたが今にして思えば恥ずかしいことをした

 

「いや何も知らない素人が偉そうなことを言ってすまなかった」

「いえいえ、ダートの適性があるなんてわかりませんでしたから。おかげで助かりました」

「ウララもみんな喜んでくれてすっごく楽しいよ。ウララのこと応援してくれる人がまた増えたんだ!」

 

明るく笑う二人を見て嬉しく思うと同時に胸の奥が痛くなる。

もし試験に受かっていれば俺もウマ娘と笑い合うことができたのだろうか?

 

「そうか。二人の助けになったなら何よりだ。次も頑張ってくれ応援している」

「ありがとうございます」

「次のレースも見ててね!かんばるから」

 

にこやかに笑う二人に代金を払い菓子袋を受け取ると俺は足早に立ち去る。

 

 

「少し話しただけでもあのトレーナーは優秀だ。俺なんかが言わなくてもいずれ気づいただろう」

 

彼は少し話しただけでも相棒のウマ娘のことを大切に考えていたのが良くわかる。

ああいった気持ちの良い若者がトレーナーにふさわしいのだろう。

 

・・・俺なんかではなく

 

ふと手に持った菓子袋をいつの間にか強く握りしめていたことに気づいて苦笑する。

 

「・・・ああこれは中身がすっかり割れてしまったな」

 

俺はゆっくりと明かりが落ちて暗くなった道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガチャ爆死記念の爆死系主人公 
ガチャで引き当てれなければそもそも育成すらできないよねという話

誤字脱字が多すぎて申し訳ないです・・・
何か変な文章があればお知らせ下さい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。