王のもとに集いし騎士たち   作:しげもり

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新たな道

「落ち着いたか。今日のレースはよく頑張ったな」

「落ち着いたのはあなたの方でしょ?」

「それもそうだな」

 

俺は目の前のお茶を飲みながらぽつぽつと語り始める。

 

「・・・何から話そうか。母親グッバイヘイローはG1を7勝した有名なモデルでもありデザイナー。

父は伝説と言われるダンシングブレーヴの家系でイギリス名家の子孫。

日本に来て知り合った二人のロマンスはいまだに小説の題材になるほどだ。

親戚の子供たちにはキョウエイマーチ・ジョウテンブレーヴ・テイエムオーシャンといてどの子も将来を嘱望されている」

 

「ちょっと・・・」

「母親の戦績はデモワゼルステークス、ハリウッドスターレットステークス、ラスヴァージ・・・」

 

「ちょっと!」

「なんだ、間違いがあったか?」

「いや違わないけどなんであなたが私の家のこと調べてるのよ!」

 

「俺は戦う相手のことをとことん調べる主義だ」

「戦う相手って・・・母様に何かしたらいくらあなたでも許さないわよ!」

 

キングヘイローはこちらをにらみつけてくるがそれは戦う意味が違う。

 

「俺はキングの家族を尊敬している。調べれば調べるほど偉大さに打ちのめされる。

今ならまわりの人たちが騒ぎたてるのがわかる。キングは奇跡の存在だ。」

 

「いや・・・まあ、それほどでもあるわね」

 

褒められてまんざらでもない顔をするキングヘイロー。

 

その顔を見て、血筋だけは生まれながらに王だねという言葉を飲み込み資料の束を渡す。

 

「なによこれ?」

 

「今後・・・将来的に出てもらうレースの資料だ」

 

まとめた資料をめくりながら説明を行う。

 

「高松宮記念でもいいが世界を狙うなら・・・」

 

2月 ブラックキャビアライトニング      オーストラリア

3月 アルクオーツスプリント         UAE

4月 チェアマンズスプリントプライズ     中国香港

6月 キングズスタンドステークス        英

6月 ダイアモンドジュビリーステークス     英

7月 ジュライカップ              英

10月 スプリンターズステークス        日本

12月 香港スプリント             中国香港

 

「これで1年でG1を8勝できる。2年で16勝だ3年なら24勝になる」

 

その後強力な海外勢と大型新人の出る日本勢に目を付けられるときつくなるかもだが・・・

今なら敵は少ない。

 

「ちょっとちょっと!」

 

「他の人は海外に目を向けていない。今がチャンスでもある」

 

手続きが恐ろしいほどめんどくさいうえに海外勢は強いというイメージもある。

縛りも厳しく大きなレースの前に事前に出るレースもある。

またドーピングなどの薬物検査などに引っかかれば国内でも出場停止になる恐れがある。

コースも日本とヨーロッパでは真逆と言って良い馬場だ。

エルコンドルパサーやウオッカなど海外に行きたいと言ってはいるようだが具体的な資料集めなどの行動は起こしていない。

 

「海外を意識している人も多い。俺たちも海外に行くべきだろう。国内ではG1の数が足りない」

「・・・あなた怒ってる?」

 

キングヘイローは俺を見て困ったように尋ねる。

 

「いや、一番許せないのは俺自身にだ」

 

キングヘイローを悲しませるような自分自身に一番怒りを感じる。

 

なんでたかがか1敗したぐらいで誰もかれもそんなにキングヘイローのことを悪く言えるんだ。

勝負は時の運もある。いくら完璧にレースを組み立てても負ける時は負ける。

 

最初に海外で賞を取るのは一流であるキングヘイローとその仲間たちだろう。仲間だからという欲目もあるが。

 

「あの時のアメリカよりも今の日本の方がよほど厳しい!」

「あなた・・・アメリカも強い人多いわよ・・・」

 

「強いと言っていただろう。デビューが早すぎたとも。おびえてるんだよ。いまのウマ娘たちに」

「母様はそんな人じゃないわ!」

 

怒ったキングヘイローを慌ててなだめる。

 

「・・・すまん。おとしめるつもりじゃないんだ」

 

正確に言えば本当に怖いのは娘が傷つくことなのだろう。

だからキングヘイローをレースの世界に行かせたくはなかったのだ。

娘を大切に思っているのは確かだろう。ただ母娘共にすれ違いが多いが。

 

――だが(キング)がその程度のことで膝を屈するものか

 

「不屈の闘志を持って立ち向かっていくキングの方が素晴らしいと俺は思う

 だがそれとともに実績が見たいというなら見せてやる」

「は・・ははっ。そうよね!」

 

キングヘイローは俺の言葉に高笑いをする。

いつもの調子に戻ったキングヘイローを見てほっとするが・・・

 

 

・・・今思ったが将来的に俺捨てられないよね?

 

「・・・な、なあ。俺が学園から追い出されてもキングについていっていいよな?」

「なんでそんな捨てられそうな子犬の眼をしてるのよ・・・

 あなたにはこれからもきちんとトレーナとしてついてきてもらうわよ!」

「そ、そうか。良かった・・・」

 

俺はほっと胸をなでおろす。

 

 

力のない俺だがせめてキングヘイローの盾となろう。

 

俺はそんな決意を新たにした。

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