王のもとに集いし騎士たち   作:しげもり

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トウカイテイオー

「ぐあああっ!俺はゴミだ!ミジンコ以下だ!メダカに食われて死ねばいいんだ!」

 

俺の大声が部屋に響く。

 

「またどうしたのよ?」

 

キングヘイローがジト目で俺を見てくるが・・・

 

「俺の無能さに嫌気がさしてな・・・無能な俺がキングたちのトレーナーを続けるとどうなると思う」

 

「どうなるの?」

 

「日本に居場所がなくなる」

 

「えええっ!?」

 

ハルウララが大声を上げる。

 

 

「まあ、聞け。この後の予想だがキングはイギリス中心に海外で連勝を続けるが、7年後には強い後輩も多く勝てなくなる。

学園卒業後は海外のハリウッドで役者でもするしかない。もしくはイギリスに名誉勲章もらって向うで暮らすしかない」

 

「はぁ?」

 

キングが呆けたような顔をする。俺の無能さにあきれているのだろう。

 

「ウララさんは卒業までアメリカでG1を連勝し続ける、小さいレースの勝利は数えきれない。

大統領にすら称えられるが国内であまり勝てない。アメリカでは映画の題材になるが日本では店の店長がいいとこだ。

英語が出来れば外交官という手もあるが・・・」

 

「ウララは店番得意だよ~」

「十分だと思いますが・・・まあ日本では適応G1レースがないですからね・・・」

 

ハルウララたちはニンジンせんべいをかじりながらのんびりしている。その気楽さが憎い・・・

 

俺は机に突っ伏してため息をつく。

 

「俺は無能だ・・・こんな結末でなんで続けようと思うのか。もうここを出ていくべきだ」

「出ていっても当てなんてないでしょ」

「・・・ぬぐぅ」

 

冷静なキングヘイローのツッコミにぐうの音も出ない。

 

 

「キングさんどうします?」

「・・・何時もの発作だからほっておきましょう」

 

キングヘイローはあきれたように言う。

 

「忙しかったから先生疲れてるんですよ。少し休んだらどうです?」

 

アオ君が気遣う言葉をかけてくれる。人の情けが骨身に染みる。

 

「すまんな・・・そうか休みか・・・」

 

思えば近くのトレーナー寮と学園の往復しかしていない。

 

「すまないが少し休ませてもらう」

「ええ、一流のトレーナーは休息もおろそかにしないものよ。しっかり休んで来なさい」

 

俺はキングヘイローに声をかけられながら寮に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「結局ここに来てしまったか・・・」

 

目の前では練習コースを走っているウマ娘たちがいる。

 

映画やアニメ見て部屋の中で羽を伸ばしていたが、3日目には気になって学園の練習場の前に立っていた。

 

 

「こんにちは!おじさん!一人でいるのってめずらしいね!」

「今日は先生!」

 

トウカイテイオーと後輩君が声をかけてくる。

トウカイテイオーはケガをしたこともありチームから一時離脱中だ。

今はチームとは別に専属トレーナーを見つけたらしい。さすがにチームからは抜けないと思うが・・・

キングによると最近はいつも機嫌が良いとのことだ。

 

「(おじさん・・・)体調がよさそうだな」

「いつでも絶好調だよ!」

 

地味にショックを受けながら俺はふとテイオーの足を見る。

 

「休んだ方がいいな・・・足を痛める恐れがある」

「ええっ!?」

 

トレーナーの後輩君が盛大に顔を青くした。

 

 

 

 

 

「くすぐったいってば!うひゃぁ」

「ここですか?」

「そう、そこの筋だ。次はふとももの・・・」

 

保健室に向かい後輩君にマッサージの指導を行う。

 

「機械じゃダメなんですか?他のマッサージ師も?」

「機械ではどうしても不十分だしウマ娘の筋肉は一般人とは違うからな・・・」

「プールでの水中ウォーキングはどうでしょうか?」

「故障リスクゼロだがウマ娘は胸と臀筋の筋肉中心に鍛えることになるからな。パワー系になる」

 

説明をしながら足をもむ場所と足首の稼働範囲を説明する

 

「ウマ娘は一般の人と関節の稼働が微妙に違うのでわかりにくい」

「テイオーは軽い走りなのにばねが利いてますからね・・・」

「テイオーは小柄な体格のわりに筋力と関節の可動域が優れているからな」

「うひゃひやくすぐったい・・・」

 

テイオーはひどくくすぐったがって暴れる。でもこれは必要なことなのだが・・・

 

「骨密度や筋肉密度も測るべきだな・・・」

「食事療法も必要ですね。最近は一般のスポーツ理論が通用しなくて戸惑います」

「・・・ウマ娘用に学問の系統一つ増やすべきだとは思うな」

「あっそこはっ・・・うう・・・」

 

 

 

 

マッサージを終えて顔色が良くなって気分の良いトウカイテイオーにふと尋ねる。

 

「なあ、テイオーの言う最強ってなんだ?」

 

「サイきょーはサイきょーだよ!僕の強さを見てもらうことさ!」

 

「だが、試合に勝つばかりとは限らないだろう」

 

学園の中距離が得意なウマ娘は優秀な選手ばかりだ。

 

「そうだね。目指しているのはカイチョーなんだ。僕はあれ以上の走りをしたいんだ」

 

 

トウカイテイオーは眼を輝かせてシンボリルドルフのことを語る。

 

トウカイテイオーのタイムはそれほどでもない。だが一番外枠を走って勝利などとんでもなく力強い走りをする。

レースにドラマがあるとすればドラマを作れるというのがトウカイテイオーなのだろう。

 

「みんな強い子たちばっかりなんだよ。みんなと走っていればサイキョーに近づけると思う」

 

後輩君の尽力もあるのだろうが、一度足を痛めたものの今は奇跡の復活を遂げたトウカイテイオー。

そしてライバルと競い合い高め合うなんてそれこそドラマだ。

 

「勝利を超えた先にある、目指すべき背中か・・・」

 

走ることの意味や目的は人それぞれ違う。

 

 

・・・そうか、俺は勝ちにこだわりすぎていたのかもしれない。彼女たちを勝たせなければと変な使命感に燃えていた。

 

その重圧感に俺はまいっていたのだろう。

 

勝利などという結果なんて後からついてくる。

 

「教えられたな・・・そうだ、これを渡しておこう」

 

俺は胸ポケットから旅行券を取り出す。

 

「これは?」

「温泉旅行ご招待券?」

 

「商店街の人たちにもらったが俺にはいっしょに行く相手もいないしな・・・」

 

ペア券って相手いないのだが嫌がらせなんだろうか。アオ君たちは喜んでいたが・・・

 

「湯治にでも行ってくればいいだろう。体を大切にな」

 

「ありがとう!おじさん!」

 

トウカイテイオーは大喜びだ。その無邪気な笑顔に思わず笑ってしまう。

 

最近は俺もキングヘイローのお人よしがうつってしまったようだ。

 

「・・・ああ、活躍を期待している・・・だがサイキョーの道のりは遠いぞ」

 

俺はにやりと笑う。

 

「キングたちもいるからな」

 

「うん!負けないよ!にしし」

 

トウカイテイオーは不敵に笑う。

 

 

 

俺は笑ってその場を立ち去った。

 

彼女とは適正の違いからキングヘイローと戦うことはないだろう。

 

だが帝王に他にも(キング)がいることを知って欲しかった。たまには仲間を自慢したいじゃないか。

 

――さあ、俺の仕事を始めようか

 

「・・・愛想をつかされないうちにな」

 

俺はいつものトレーナー室に足取り軽く向かって行った。

 

 

 

 

 

――後日

 

「そういえば・・・商店街から何かもらったとか」

「何か・・・ああ、新しい商品のハルウララ印豆腐もらったぞ。ヘルシー志向のアメリカで売り出すんだと」

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




トウカイテイオーは順調にフラグ回収中の巻。

短距離ではバクシン”王”がいずれ出てきますからね。あとカレンチャンとか。

ガチャで爆死すると叫び声をあげることはよくあります・・・


かがち様誤字報告ありがとうございます!感謝です!

ちょっと見返さないとあまりにも誤字が多すぎました・・・

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