王のもとに集いし騎士たち   作:しげもり

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記者会見

 

 

 

 

ホテルで襲撃犯の情報をサージェントレックレスと話していると調査に行っていたアオ君が部屋に飛び込んでくる。

 

「先生!ニュースを見てくださいドーピングの件です!」

 

慌ててニュースをつけるとテレビでは記者会見が始まっている。

そこでは競馬場運営大手のストロナックグループやチャーチルダウンズ社・ニューヨーク競馬協会など

主要競馬場の代表者が並んで会見を行っていた。

 

『我々はウマ娘の健康被害を防ぐためレース当日のラシックスを段階的に禁止するものである』

『そしてステロイドについてはこれを禁止するものである』

 

会見ではドーピング禁止の会見が開かれていた。これから段階的に実施されるらしいが

これは大きな一歩だ。

説明では種類によりラシックスはステークスレースのみ禁止でステロイドも一部は有効だ。

だがこれでドーピングに悩むウマ娘は大きく減ることになる。

 

「捕まった犯人の取り調べが始まったからな・・・いやハルウララのおかげか?」

「いえ・・・アメリカのウマ娘の頑張りですよ」

 

サージェントレックレスの言葉にアオ君がつぶやく。

 

今はドーピング反対派のウマ娘の規模は2万人を超えその半数のトレーナーが

契約解除で解雇されている。

その人数は加速度的に増加して、それと共に社会問題化している。

さすがにこのままではまずいと思ったのだろう。

 

反対派はセクレタリアトやシービスケットを中心としてウマ娘の自由と保護の団体に

変化していた。

俺たちに出来るのはここまでだ。活動はこれで終わりだな。

 

 

 

「終わったの?」

「そうですわ!私たちの勝利です!」

「これで苦しむ子たちは減るだろう」

 

「そっか・・・えへへ。よかったね・・・本当によかった」

 

俺たちの言葉にハルウララは静かに笑う。重荷を一つ(おろ)したように。

解放された彼女らの将来を祈るように。

 

 

「しかし奴らは抜け目がないな。今回も取り逃してしまった」

 

サージェントレックレスは悔しがるが、カジノと競馬会の元締めたちを相手に

ここまで戦ったのだ。

 

 

ウマ娘たちと会社の争いにはならずに大会社から譲歩を引き出した。

犠牲者無くして問題を解決したのだ。理想的な勝利と言えるだろう。

 

ただ、その勝利者はだれにも知られることはない。

ただレースで記録を出した日本から来たウマ娘と記事に乗るだけだ。

 

「栄光なき勝利者か・・・」

「でもこれで良かったんですよ。誰も傷つかないのがウララの望みですから」

「そうだな・・・」

 

俺たちは会見の様子を眺める。

 

「まるでおとぎ話ですね。まだ信じられません」

「そうだな。英雄としては語られないだろうが」

 

 

おとぎ話はだれも真実を知らないからおとぎ話なのだ。

これはウマ娘たちに語り継がれてゆくだけのおとぎ話。

 

 

俺達は静かにテレビに映る映像を眺めつづけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アメリカ競馬会は大きく方針を変えることになった。

2020年ステロイドに関しては一部を除きほとんどの州で禁止された。
ラシックスにおいては2歳戦で当日のラシックス使用を禁止、
更に2021年現在はすべてのステークスレースでラシックスの使用を禁じるとしている。


だがアナボリックステロイドについては馬がもともと自然に持つとしておよそ半数の州では禁止になっていない。

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