「ハルウララ様ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
「えへへ、みんなよかったよ~」
ハルウララがウマ娘たちに抱き着かれている。
「ううっウララ様またいつでも来てくださいね」
「そうです。私たちはいつでも歓迎します!」
ゼンデンとビッグブラウンがハルウララとの別れを惜しんでいる。
「うん!二人も元気でね」
空港では大勢のウマ娘が見送りにやってきていた。全員は空港内に入りきれずあふれ出ている。
次の日の新聞にはドーピング問題と大会社の決定が大きく取りざたされていたが
ハルウララたちの名前はどこにもなかった。
彼女達の活躍があったことは確かだ。そのことはウマ娘だけが知っている。そして俺たちも。
だが彼女の笑顔を見るとそれでいいのだと思ってしまう。
「助かったわ。だけど一緒に帰らないの?」
「ウオッカがもらったバイクで走り出していったからね。
あのバカを引きずってこないといけないのよ」
そう言ってダイワスカーレットは肩をすくめる。
ウオッカはサージェントレックレスのコネでタダ同然で陸軍の中古のバイクを手に入れた。
バイクにテンションの上がったウオッカはアメリカ横断だと言ってトレーナーを引きずって飛び出していったらしい。
サイドカーをつけているのでバイク初心者でも大丈夫なはずだ。たぶん。
「それに色々片付けないといけないからね。学園にはよろしく言っておいて」
裁判で狙撃犯の弁護に回る予定らしい。
銃を向けられた犯人を助けようなんて本当に人が良すぎる。
ダイワスカーレットらしいともいえるが。
「きっと、また来てくださいね。こんどは街を案内します!」
「うん!楽しみにしてる!」
ハルウララは多くのウマ娘に抱き着かれて別れを惜しまれているが
あちらも挨拶は終わったようだ。
「ここでお別れだな」
「ありがとう助かった。できればもう少しお礼をしたかったのだが・・・」
調査も大部分はサージェントレックレスの好意に甘えた形になった。
軍や警察の話し合いでもほとんどお世話になりっぱなしだ。
「いや、そんなことは無いぞ」
サージェントレックレスは笑って胸から取り出した紙切れをヒラヒラさせる。
「あ、それはレースの!」
「ああ、たくさん貰いすぎてどうしようかと思ってたところだ」
サージェントレックレスが手に持つのはウオッカのレースの馬券だ。
万馬券となるだろうがいつの間に・・・
「キングの嬢ちゃん。いい旅だったな」
「ええ、おかげでいい旅だったわ。また案内させてあげてもよくってよ!」
キングヘイローは高笑いを上げる。
「また次があればだがな。元気でな」
俺たちはにこやかに笑うサージェントレックレスと握手して別れ搭乗口に向かう。
「やれやれしばらくはアメリカに来れないな。暴れすぎた」
俺はため息をつく。
今回で良くも悪くもあまりにも目立ちすぎた。しばらくはほとぼりをさますべきだろう。
「何弱気なこと言ってるのよ!まだまだ世界のレースを回るわよ!」
キングヘイローは高らかに宣言する。
「世界は広いのよ!まだまだ私たちの活躍を知るべき人は多いのよ!」
そう言ってキングは高笑いをする。
その高笑いはアメリカの青空にどこまでも響いていった。