王のもとに集いし騎士たち   作:しげもり

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最初の一歩

「・・・なんで短距離だけ伸びてるんだろうな」

 

「あなたのスケジュールが悪いんじゃないの?」

「いやいや心外な」

 

あれから学園に様子を見に来ている。

キングヘイローはメキメキとその能力を伸ばしている。

しかしやはり短距離の能力の伸びが良い。

特にパワーがどんどん伸びている。

・・・マイルまで距離を延ばすことはできてはいないが。

 

「いつも誰と並走してるんだ?」

「う~ん。スペシャルウィークさんとかセイウンスカイさんとかハルウララさんとか?あといつもの2人かしら

たまにカワカミプリンセスさんとも走るけれど」

「・・・パワー系の人たちばかりなんですがそれは」

 

俺はキングと仲の良い3人と取り巻きの2人を思い浮かべる。

この驚くばかりの成長率は優秀な友人3人の影響もあるのかもしれない。

他にはキングの取り巻きも学園に入学しているだけに能力は高い。

ただ脚質を間違えたために伸び悩んでたのでそれを教えるとえらく感謝された。

キングの友人で一緒にトレーニングしているということもあり、今では二人のスケジュールも組むようになってきている。

 

「末脚が伸びてるのはいいことだけどね。それでまだトレーナーは見つからないのか?」

「探してるんだけどいい人がいないのよねぇ」

 

キングヘイローは目をそらしながら答える。この子探してすらいないだろ・・・

 

「キングと後二人も一緒に教えてるんで関係者と勘違いされてるんだぞ

 こないだは緑の制服の受付嬢にご苦労様ですとか声をかけられたし。絶対誤解されてるだろ・・・」

「あら?学園に通いやすくなっていいんじゃない?」

 

キングヘイローは楽しげに笑うが俺の方はいつバレて追い出されるか気が気じゃない。

せめてあと3年はバレずに面倒を見てあげたいのだが。

 

「それで次のレースなんだけど・・・」

「いや問題ないだろう。なんでG3ごときに不安にならなければいけないのか」

「そ・・・そうよね!このキングにはあまりにも小さい相手にょね!」

 

キングヘイローは高笑いを上げるが噛んでる上に笑いに力がない

 

「はぁ・・・レースの組み立てのミーティングをするか」

「そう?話し合いは大切よね!」

 

俺は喜ぶキングヘイローとともに今では専用室となっている部屋に向かう。

そして当日は関係者としてレース場に行くことをキングに約束させられるのだった

 

 

 

 

 

「勝ったか・・・」

 

レース場の向うではキングヘイローが観客席に向かって手を振っている。

 

俺は汗ばんだ手をズボンで拭う。

 

「こんなレースは勝って当然だ」と俺はキングヘイローに言っていたが

これほどまでに勝利を祈ったレースは無かった。

 

「本当に良かった。今までレースを見てもこんな気持ちになったことなんてなかったのにな」

 

俺は思わず苦笑する。今までレースを見ても冷静に能力値を見るばかりで

自分の予想を確かめるだけの作業だったように思う。

 

それに思えば賭けレースは長いことしていない。

それは真剣にレースに打ち込んでいる彼女たちに失礼だと思ったからだ。

 

「しかし生活費はどうするかな・・・」

 

昨日も俺は就職活動に失敗していた。

ズボンの中の財布はずいぶん軽くなっていて心もとなかった。

 

 

 

 

「あら?あなたの部屋はトレーナー宿舎に申し込んでるわよ。行ってみたら?」

「・・・いいのかそれ。というかよく通ったな」

「いちいち何百人もいる教師たちの資格まで学園も確かめてないわよ。

 このキングに任せておきなさい!」

「いや、ふつう確かめるだろそれ・・・」

 

高笑いをしているキングヘイローはいやに頼もしい。

良くも悪くもウマ娘優先の学園だからウマ娘の届け出が優先される。

まさか一般人が入り込んでるとは学園も予想していないだろうし

それにキングヘイローの家柄の信用力もあるだろう。それが彼女の重荷にもなってはいるけれど。

 

「どうかした?」

「・・・いや、給料は出るのかな?」

 

俺の言葉にキングヘイローは不思議そうな顔をする。

 

「出るわけないでしょ」

「・・・ですよね」

 

まあ、住む場所と食事が出るだけでも儲けものだ。

お金が欲しければ部屋の中に積まれた専門書を売ればいいだろう。

・・・もう俺には不要なものだ

 

「さあ!そうと決まったら引っ越しよ!」

「そこまでしなくとも・・・ありがとう」

「いいのよ!私に任せておきなさい」

 

全く助けられてばっかりだ。

キングヘイローの高笑いに励まされるように俺は引っ越しの準備を始めていくのだった。


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