「せーんぱいっ」
夕暮れ時、夜に溶け込んでしまいそうなグレーのブレザーに身を包んだ生徒達が帰宅し始める中、私は見慣れた背中に飛びついてみる。
さぞ驚いた顔をしているだろうと顔を覗き込むと、
「おせー。」
なんとも軽い、憂鬱そうな返事が返ってきた。
なぜだ、こんなに可愛くてキュートなかすみんに対してこの反応。
どんな話をしていてもどこか上の空で返事は一辺倒。
分かってる。別れるきっかけが無いだけで、先輩はきっと・・・私のことを好きじゃない。
かすみんには、一つ上の彼氏がいる。
きっかけはいわゆる一目惚れで、気づいたらかすみんから声をかけていた。
自分の行動力には感心するが、今となっては押しの強い女と思われていないか不安でしかない。
実際、先輩はかすみんを好きだったと思う。かすみんのために怒って、かすみんのために笑ってくれる、そんな人だった。
あの日だ、あの日から先輩は変わってしまったんだ。
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「スクールアイドル…なんだそれ?」
「知らないんですか?すっごく可愛くて、すっごくキラキラしてるんですよ!…かすみんの次くらいには」
「まあ、かすみが見たいなら付いてくけど…」
先輩が高校に進学してすぐの頃、近くのショッピングモールでスクールアイドルのステージが行われると知り、2人で行くことになった。
ついでにアクセサリーでも買ってもらおうなどと企みつつ、呑気に足を運ぶ。
「今の子可愛かったな」「ぐぬぬ…かすみんだって…」などと軽口を叩きながらステージを見ていた。
「先輩、この人のダンスすごくないですか?!」
「・・・」
「…先輩?」
顔を見上げると、そこには舞台上に釘付けになっている先輩がいた。
「…先輩っ!そろそろ行きませんか」
「あ、うん…」
なぜだろう、これ以上先輩がこの場にいるとまずいと感じ、急いでその場を後にした。
一瞬しか見ていないはずなのに、舞台上の彼女の顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。
思えば、あの会場に先輩を連れて行ったことが間違いだったのだ。
この日から、先輩の私への態度が少しずつ変わっていった。
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「帰りにコンビニ寄ってっていいですか?」
「おー。」
時は経ち、かすみんは先輩と同じ虹ヶ咲学園に入学した。
これで先輩と毎日一緒に居られると心を踊らせ、それでいて新しい学校に対する緊張に当てられていると、
「あら、君も何か買いに来たのかしら?」
「あ、朝香先輩!」
先輩の知り合いかな?それにしては緊張しているような…などと思いながら顔を上げると、見覚えのある顔が目に入ってくる。
その顔が誰のものなのかを思い出した途端、心臓がギュッと締め付けられるの感じた。
…あぁこの人なんだ、先輩のことを盗っちゃったのは。