いつの間にかカーテンは薄く光り、外ではスズメたちが1日の始まりをかしましく知らせている。クローゼットから取り出した制服を身に纏いつつ、なぜかバッグから逃げ出した数1のノートを探す。
行ってきます!!!と、今にも転びそうな勢いで出勤する両親を見送り、急に静まり返ったリビングで1人トーストを食べる。食べ終えると着々と朝のルーティーンを済ませていく。
あの鬼生徒会長に怒られない程度にメイクして
先輩に買ってもらった月の形の髪留めをつけて
よしっいつもの可愛いかすみんの完成♪
バッグに練習着、数1のノート、教科書、包丁、化粧ポーチを詰め込み、準備完了!
・・・
私は学校へ着くやいなや先輩の教室に向かった。早く会いたかった。
でもまだ学校に来てないみたい。
授業が終わり休み時間に会いに行きたかったが、どうしてみんなかすみんの邪魔ばっかするんだろう。こういう時に限って何か頼み事をされてしまう。
これも愛の試練だったりするのかな。なんてね。
退屈だった今日の授業が終わり、私は急いで部室に向かう。
部室の中から賑やかな声が聞こえてくる。
扉の向こうには楽しい日常が待っているはずなのに、どうしても不安が押し寄せる。
なぜ自分がこんな気持ちにならなければならないんだろう。
…いや、それも今日で最後だ。
「わお、かすかすじゃーん」
部室にはすでに私以外のメンバーが集まっていて、私をいつも通りに出迎えてくれる。
この7人の普段通りが、私をかすみんへと引き戻してくれる。
「だーかーら!かすかすじゃなくて、かすみんでs…」
ガチャッ
…ああ、やっと会える。
どんな反応をしてくれるんだろう、扉の方に顔を向けるまでの刹那、先輩に対しての感情が一気に溢れだしてくる。
「先輩!」
言いたいこと、聞きたいことが数え切れないほど浮かぶ中、先輩の顔を見ると、ただただ呼ぶことしかできなかった。
急に大きな声出したら先輩驚いちゃうかもしれない。でも、かすみんだってずっと会いたかったんだもん。そのくらい許してくれますよね?
先輩は、喜ぶ反応を待つかすみんを…
無視した。
…は?
目が合ったのにすぐ視線を私からそらしたのだ。
「・・・せ、先輩?」
近づこうとした瞬間
先輩の後ろから一番見たくなかった姿が目に飛び込んできた。
「果林~!愛さん見てたけどー入る直前まで手つないでたよねぇー初々しいね~このー!」
愛先輩の声で気付いたのか好奇心や物珍しさからか続々と二人の元に集まっていった。
「果林ちゃ~ん、おめでとぉ~」
「果林さん!羨ましいですっ!」
二人を囲み祝福の言葉だったり各々の質問を投げかける。
困惑しながらも時に頬を赤めながら嬉しそうに話していた。
「あ。あぁ。。。」
足が固まり、声が出ない。
みんなが盛り上がっているのを
私はただ、眺めることしかできなかった。
その後練習をしたがずっと上の空だった。なんのメニューだったかも覚えていない。
下校時刻を迎え各自帰る準備を始める。
そんな夕暮れの中、作り笑顔を顔に張り付け私は近づく。
「・・・二人っきりで相談がしたいことがあるんですけど、この後いいですかぁ~果林せんぱ~い?」