贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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I is for Intercept. (1)

「落ち着きなよアリス、ダイヤの城は逃げないから」

 ボリスの呆れた声が聞こえても、アリスは走るのをやめない。

「だって、心配だから」

 逃げないとボリスは言うけれど、何が起こるか分からないのが引越しだ。これまでの経験からアリスは学んできた。

(クリスタもシドニーも、それにエースも。直接会って無事を確かめないと安心できない……!)

 そして急いだ甲斐もあってか、視界の先に城が見えてきた。

「よかった! 引越しでも、ダイヤの城は無事……」

 言いかけで固まったアリスの代わりに、ボリスが続ける。

「……じゃ、なさそうだね。こりゃ」

 ボリスの言う通り、ダイヤの国で見慣れた城とは明らかに様子が違う。

 具体的に言うと、大きい。

「増築でもしたのかな」

「こんな急に?」

 引越しの前にもアリスは何度も城に出入りしていたのだから、もしそんな予定があったのなら事前の準備段階でアリスも気付くはずだ。

 それに、こんな大規模な工事がほんの数時間帯でできるとも思えない。

(あと、増築された部分、どこかで見たことがある気もするのよね……)

 分からないことはたくさんあるが、どれもクリスタに直接会って話せばはっきりするに違いない。

「とにかく、行ってみるしかなさそうね」

「そうだね。面白そうだから俺も付き合うよ」

 気まぐれな猫を連れて、アリスはダイヤの城へ歩みを進める。

 

 森を出て城門まで来た二人だが、城への違和感は消えるどころかますます強くなるばかり。

 そして門前は、普段なら門番の兵士が待機していて入れてもらうのだが、今は誰もいないし開いたままになっている。

「勝手に入ってもいいってこと?」

「そうみたいだね。もし何かあっても、俺がいるから安心しな」

 ボリスがそう言った矢先。

「!」

 銃声。

 とっさにアリスをかばってボリスが前に出る。警戒しながらおそるおそる門をくぐると。

 庭園で戦争が起きている。

 兵たちが銃を連射している一団に、別の兵が抜刀して襲いかかっている。

「こ、これどういうこと?」

 これまでに領地同士の抗争はアリスも何度も見てきたが、同じ領地内で争うのは前例がない。

(ていうか、この兵士達って……)

 片方は見慣れた黄色い装備。そしてもう片方は。

「赤い装備……、あ!」

「何? どうしたの?」

 突然声をあげたアリスに、ボリスが驚く。同時に、別の声が響く。

「攻撃を止めなさい!」

 その声を合図に、両軍が戦いの手を止めてその場に立ち尽くす。そして二人の前に現れたのは。

「……シドニー!」

 『黒ウサギ』シドニー=ブラック。

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