贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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I is for Intercept. (2)

「シドニー、あなた無事だったのね!」

 シドニー=ブラック。ダイヤの城の宰相。アリスに対しては険悪な態度を取り続けているが、それでも安否は気になる。

「おや、アリス。あなたでしたか」

 そっけない口調だが、それなりに丁寧。だがその事務的な態度が、冷淡さを際立たせているともいえる。

「あの兵士達、ハートの国の兵よね? どうしてここにいるの?」

「よくご存知で。ああ、あなたはあそこから来たんでしたっけ」

 赤い装備の兵士達。アリスが以前滞在していたハートの国の兵士だ。

「どうしても何もありません。連中がいきなり我々の領地に攻め込んできたんです。そのせいで、ご覧なさい」

 シドニーは忌々しそうに城を示す。改めて見ると、先刻(さっき)からの既視感にも説明がつく。

「ハートの城と一緒になっていたのね……」

 どこかで見覚えがあると思ったら、ハートの城とダイヤの城が混ざり合っていたのだ。

「ただでさえ悪趣味な城が、さらに酷くなってしまった」

「……それは同意するわ」

 どちらの城も派手な装飾だったが、混ざることで派手さが倍増している。

「全部真っ黒に塗ってしまえば、少しはマシになるのでしょうが」

「それは同意できないわ」

 シドニーの嗜好は別の意味で特殊なので、アリスには理解しかねる部分も多い。

「じゃあ、クリスタとエースも無事なのね?」

「陛下は城内で、ハートの女王と交渉中です。エースは知りません」

「ハートのって……、ビバルディ!?」

 

 『ハートの女王』ビバルディ。

 アリスがハートの国とクローバーの国で滞在していたハートの城の城主で、気に食わない相手は誰でも処刑してしまう残酷な女王様。

 ダイヤの国へ強制的に引っ越してきてからは当然会っておらず、もし会えるならずいぶん久しぶりの再会となる。

(あれ? でも……)

 ここでアリスの頭に疑問が浮かぶ。

 そのビバルディは、同じビバルディなのか。

 アリスがダイヤの国に来た時、ボリスやグレイ、帽子屋屋敷の面々は前にいた彼らと同じ姿でありながら、アリスと過ごした記憶を共有していない別の存在だった。

(エースやナイトメアに至っては、年齢から変わっていたし……)

 それでも新しい関係を一から築き直して、以前と同様、もしくはそれ以上に親しく付き合えるようになった。

 とはいえ、ビバルディ達は過ごした密度が違う。もし彼女達が自分のことを覚えていなかったら、ショックは他の面々よりも大きいに違いない。

 そんなことを思って落ち込みかけたアリスだが、不意にどこかから別の声が聞こえてきた。

「――」

 声と同時に、地響きが近づいてくる。

「何か急に嫌な予感がしてきた」

「奇遇ですね。私もです」

「俺も」

 アリスとシドニー、そしてボリスまでうんざりしたところで、もうその声と姿は無視できないほどに迫っていた。

「アリス、ああ、アリス!」

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