贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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K is for Knight. (1)

「やあ、アリス。久しぶり!」

 ペーターとシドニー、そしてボリスが三つ巴になって一触即発の緊迫した状況を、間の抜けた声が根こそぎ吹っ飛ばした。

「エ、エース!?」

 突然現れた乱入者の姿を見て、アリスが驚きの声をあげる。

 『ハートの騎士』エース。ハートの城ではビバルディに仕えているのだが、何をしているのかは、かつて城に滞在していたアリスにもよく分からない。

 放浪癖と極度の方向音痴のため、いつも国のどこかをさまよっていて、城へ戻ることもまれ。たまに戻ってくれば、自分の部屋に帰れなくて部屋の廊下で野営をしたり、訓練と称して部下の兵士達を一方的な暴力で半殺しにしたり。

 そんなトラブルメーカーが今、アリス達の前にいる。

「あはは、ユリウスの様子を見に行こうとしたんだけど、なぜかここに戻ってきちゃってさ」

「……あなたの方向音痴は相変わらずなのね」

 アリスとボリスはユリウスのいる美術館からここに来たのだから、エースが正しい道を通っていればどこかで会っていたはずだ。

(いやエースの場合、そもそも道を通らないこともあるし)

 そしてボリスは、初対面のエースに興味を引かれた様子。

「へえ、ここでは子供の騎士くんが、よその国では大人なんだ。面白いね」

「あなたは他人事だから、そんなのんきなことを言っていられるんです。子供の方だけでも厄介なのに、さらに面倒なのが増えたこちらの身にもなってください」

 うんざりした様子でシドニーがつぶやく。確かにダイヤの城では子供のエースが彼を困らせていたが、大人のエースがさらにタチが悪いのは容易に想像がつく。

「まったくです。僕達は今大事な話をしているんですから、邪魔をしないでくれませんか」

 シドニーの言葉に、ペーターも同調する。ハートの城では同僚にあたるペーターとエースだが、仲は決してよくない。

 何しろ、互いに暗殺の刺客を送り合うような仲だ。幸か不幸か、どちらの送った刺客も成功したことは一度もないのだが(失敗した刺客がその後どうなったのかは誰も知らない)。

(シドニーと子供のエースの方が、関係としてはまだマシかも……)

「え~、冷たいなあペーターさんは。俺も会話に混ぜてよ。こんな動物大集合みたいな集まり、見てるだけで面白い、いや貴重なんだから」

「動物大集合……」

 エースの直球すぎる言い分に、ボリスも若干引いている。だが言われてみれば、ペーターとシドニーはウサギでボリスは猫。少なくとも間違いではない。

(名前だけ聞くとすごくメルヘンなのに、実際はどうしてこんなに殺伐としているのかしら……)

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