「やあ、アリス。久しぶり!」
ペーターとシドニー、そしてボリスが三つ巴になって一触即発の緊迫した状況を、間の抜けた声が根こそぎ吹っ飛ばした。
「エ、エース!?」
突然現れた乱入者の姿を見て、アリスが驚きの声をあげる。
『ハートの騎士』エース。ハートの城ではビバルディに仕えているのだが、何をしているのかは、かつて城に滞在していたアリスにもよく分からない。
放浪癖と極度の方向音痴のため、いつも国のどこかをさまよっていて、城へ戻ることもまれ。たまに戻ってくれば、自分の部屋に帰れなくて部屋の廊下で野営をしたり、訓練と称して部下の兵士達を一方的な暴力で半殺しにしたり。
そんなトラブルメーカーが今、アリス達の前にいる。
「あはは、ユリウスの様子を見に行こうとしたんだけど、なぜかここに戻ってきちゃってさ」
「……あなたの方向音痴は相変わらずなのね」
アリスとボリスはユリウスのいる美術館からここに来たのだから、エースが正しい道を通っていればどこかで会っていたはずだ。
(いやエースの場合、そもそも道を通らないこともあるし)
そしてボリスは、初対面のエースに興味を引かれた様子。
「へえ、ここでは子供の騎士くんが、よその国では大人なんだ。面白いね」
「あなたは他人事だから、そんなのんきなことを言っていられるんです。子供の方だけでも厄介なのに、さらに面倒なのが増えたこちらの身にもなってください」
うんざりした様子でシドニーがつぶやく。確かにダイヤの城では子供のエースが彼を困らせていたが、大人のエースがさらにタチが悪いのは容易に想像がつく。
「まったくです。僕達は今大事な話をしているんですから、邪魔をしないでくれませんか」
シドニーの言葉に、ペーターも同調する。ハートの城では同僚にあたるペーターとエースだが、仲は決してよくない。
何しろ、互いに暗殺の刺客を送り合うような仲だ。幸か不幸か、どちらの送った刺客も成功したことは一度もないのだが(失敗した刺客がその後どうなったのかは誰も知らない)。
(シドニーと子供のエースの方が、関係としてはまだマシかも……)
「え~、冷たいなあペーターさんは。俺も会話に混ぜてよ。こんな動物大集合みたいな集まり、見てるだけで面白い、いや貴重なんだから」
「動物大集合……」
エースの直球すぎる言い分に、ボリスも若干引いている。だが言われてみれば、ペーターとシドニーはウサギでボリスは猫。少なくとも間違いではない。
(名前だけ聞くとすごくメルヘンなのに、実際はどうしてこんなに殺伐としているのかしら……)