贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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K is for Knight. (2)

 アリスの困惑をよそに、動物大集合とエースのやり取りは険悪さを増していく。

「事情はだいたい分かった。けどアンタらが後から引っ越してきたんだ、ここは宰相さん――そっちも宰相さんか、黒の宰相さんに従うのが筋なんじゃねえの?」

「くだらないですね。それに僕達の方がアリスとの付き合いは長いんです。新参者はおとなしく引っ込んでいなさい」

「……」

 ボリスとペーターはどちらも臨戦態勢で、一触即発の状態。シドニーとエースも互いを牽制しながら身構えて、いつ撃ち合いが始まってもいいように備えている。

 その一方で、アリスはボリスの言葉が引っ掛かっている。

(黒の宰相さん……)

 もちろん白ウサギで宰相でもあるペーターとの対比で言ったのだろうが、その言葉にアリスは強い既視感を覚える。

(黒……ブラック……)

 考えてはいけない。思い出してはいけない。思考のどこかで警鐘が鳴る。しかしそう思えば思うほど、頭の中では強く意識されてしまう。負のスパイラル。

(…………)

「危ないから、アリスはこっち」

 思考の渦からアリスを引っ張り出したのは、ボリスだった。

「あ……」

 気が付くといつの間にかボリスとシドニー、ペーターとエースの二陣営に分かれていて、本格的な衝突は避けられない状況。

「ちょっと、何するつもりなのよあなた達!?」

「何って、見りゃ分かるだろ。危ないことだよ」

(そりゃ、この世界にいたら嫌でも分かるけれど……!)

 危ないことなら日常的に起きている世界だ。アリスだってこれまでに何度も巻き込まれている。

(だからって……)

 これまで親しくしてきたボリス達やペーター達が争うところを見たくない。そしてそれ以上に、傷つくところを見たくない。

(止めなきゃ!)

 手を引くボリスに抗おうとしたところで、逆の手をペーターに掴まれる。

「勝手なことをしないでください。アリスを守るのはこの僕です」

 血走った目でボリスを睨む。ペーターの目は元々赤いが、今はそれ以上に殺気が伝わってくる。

「離せよ。嫌がってるだろ」

「あなたが掴んでいるからです」

(ど、どっちも嫌なんだけれど……)

 正確には両手を引かれている状況が嫌なのだが、とても言える空気ではない。

「あはは、男の嫉妬は醜いぜ?」

「それは同意します」

「あんた達は止めなさいよ!」

 横で傍観しているエースとシドニーに怒鳴るけれど、肝心なところで役に立たない。ましてそれぞれの兵士達が割って入れるはずもなく。

(痛いって言ったら、手を離してくれるかしら)

 一瞬思うが、そんな大岡裁きを期待できる連中ではない。

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