贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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K is for Knight. (4)

 殺意をむき出しにして銃口を向けるペーターと、向けられている状況を把握できていない子供のエース。

 一触即発の状態で、シドニーが最初に動いた。

「待て。不本意ではあるけれど、その子は我が城で預かる身。勝手な手出しは許さない」

「はっ! おまえの許しなど必要ない。僕が許しを請うのはこの世界でただひとり、アリスだけです!」

「いやビバルディにも請いなさいよ」

 直属の上司に許可を取らないのはいかがなものか。

「さて、そろそろ移動しようかしら。クリスタとビバルディは忙しいみたいだし、帽子屋屋敷の様子も気になるし」

「え、あいつらは?」

 ボリスが指さす先では、ペーターとシドニーが熾烈な銃撃戦を繰り広げている。

「死になさい!」

「こっちの台詞だ!」

 ハートとダイヤ、それぞれの兵士達もうかつに介入できず、流れ弾をよけるので精一杯。

「あのふたりなら、実力が拮抗しているから大丈夫でしょ。どっちも大きなケガはしないわ」

「まあ、確かにそうだけど……」

 むしろ力量差のある方が危ない。強い側が圧倒的に有利だし、弱い側も死に物狂いで向かってくるから、どちらが勝ってもケガを負う可能性は高い。

 アリスは一般論で言ったつもりだったが、ボリスは違うところを指摘してきた。

「ずいぶん詳しいんだね。黒の宰相さんもそうだけど、白の宰相さんのことも同じくらい」

「……っ」

 とがめる口調ではない。気まぐれなチェシャ猫は、ただ気付いたことを口にしたにすぎない。だから余計に深く刺さる。

(クローバーの国、ダイヤの国と引越しを繰り返して、さらに名前も知らない別の国へ来ても、まだ私は……)

 ペーターのことを引きずっている。

 より正確に言えば、最初にペーターに連れてこられた、ハートの国を引きずっている。

「……行きましょう」

 深く考えると泥沼にはまりそうなので、断ち切るように争いに背を向ける。

「俺も行く」

「え?」

 アリスとボリスの間に入ったのは子供のエースだった。

「ここに残っててもヒマだから」

「……まあ、ここにいるよりは安全か」

 ボリスが同意して、アリスも拒む理由はない。

 背後からは、まだペーターとシドニーの撃ち合う音が聞こえてくる。どちらもエースがいなくなっていることには気付いていないようだ。

「それじゃ行きましょうか。戻ってくる頃には、クリスタ達の話し合いも終わっているでしょう」

「うん!」

 こうしてハート/ダイヤの城を後にした三人は改めて向かう。

 やはりハートの国の面影を強く残した場所、帽子屋屋敷へと。

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