そんな状態に変化が生じたのは、ある任務がきっかけだった。
ファミリー傘下の組織から、上納金を回収する。雑用に近い簡単な任務で、わざわざブラッドにさせるほどのことでもない。
だが、ボスはブラッドを直々に指名して行かせた。
その時点でおかしいとブラッドも思ったが、予感はすぐに的中する。
組織の本拠地である屋敷へ入ろうとすると、門番に止められる。
「ここを通すなって言われてるんだ」
「給料分は働いとかないとね」
斧を持った双子の門番に言われるが、そこで引き下がっては仕事にならない。
「それは本部への反抗と考えていいんだな?」
「知らないよ、本部のことなんて」
「そうだよ、僕たちは雇用主の命令で動いてるだけだから、ねっと!」
二人が同時に斧を振るう。とっさに後ろへ跳んでかわすと、さらに追撃してくる。ブラッドは攻撃を杖で受け流しつつ、地面を蹴って跳躍。双子の片方に襲い掛かる。
「くっ」
攻撃は防がれるが、連携を乱すのには成功。あとはほころびをつつくように拡大していけば、素人が二人いるのと変わらない。
「こいつ思ったよりやるね、兄弟」
「ちょっと本気出さないと、査定に響いちゃうね」
双子はいったん攻撃を止めると、唐突にその姿が
少年から青年へと。
「!?」
突然姿を変えた双子に驚くブラッドに、体が大きくなって身体能力も上がった双子の斧が迫る。
「!」
回避する余裕はない。
左右から振りかかる双子の斧が、ブラッドの首と腰を同時に襲う。
逃げ場はない。
しかしブラッドの脳裏に浮かぶのは絶望ではなく、怒り。
私はこんなところで死ぬのか。
復讐も果たせないまま。
姉も救えないまま。
雪の降る朝。
遠ざかる馬車。
(私は、まだ死ぬわけには……!)
すると、不意にブラッドの視界が歪んだ。
「!?」
視界に続いて身体が浮き上がるような感覚があり――
気が付くと二本の斧は空を切り、ブラッドは離れた場所に立っていた。
「驚いたね、兄弟」
「さすがは『余所者』ってことかな」
「……」
何が起きたのかわからず、立ち尽くすブラッド。そこへ双子の片方が声をかける。
「面白くなってきたね。もっと戦ってみたいけど――」
唐突に斧をしまい、少年の姿へと戻った。
「この時間帯は休憩なんだ」
「頑張っても残業代出ないからね」
いつの間にか、時間帯が昼から夕方に変わっている。
「……いいのか、通って」
「うん、今の時間帯は僕達は門番じゃないから」
「代わりをよこさない雇用主が悪いよね」
「……」
釈然としないものを感じつつ、ブラッドは双子の前を素通りして屋敷の中へと向かった。
……
…………
………………
そしてブラッドは、組織の顔なしたちを殺して、殺して、殺し尽くした。
「『ブラッディ・ツインズ』の攻撃を受けて、生き延びたのか!?」
「俺達が勝てるはずがねえ……!」
双子との戦いを通して、ブラッドの中で何かが目覚めた。それは、自分の組織のボスを倒すために欠かせないものだった。