贋作 スペードの国のアリス   作:汐留ライス

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E is for Enemy. (2)

 そんな状態に変化が生じたのは、ある任務がきっかけだった。

 ファミリー傘下の組織から、上納金を回収する。雑用に近い簡単な任務で、わざわざブラッドにさせるほどのことでもない。

 だが、ボスはブラッドを直々に指名して行かせた。

 その時点でおかしいとブラッドも思ったが、予感はすぐに的中する。

 組織の本拠地である屋敷へ入ろうとすると、門番に止められる。

「ここを通すなって言われてるんだ」

「給料分は働いとかないとね」

 斧を持った双子の門番に言われるが、そこで引き下がっては仕事にならない。

「それは本部への反抗と考えていいんだな?」

「知らないよ、本部のことなんて」

「そうだよ、僕たちは雇用主の命令で動いてるだけだから、ねっと!」

 二人が同時に斧を振るう。とっさに後ろへ跳んでかわすと、さらに追撃してくる。ブラッドは攻撃を杖で受け流しつつ、地面を蹴って跳躍。双子の片方に襲い掛かる。

「くっ」

 攻撃は防がれるが、連携を乱すのには成功。あとはほころびをつつくように拡大していけば、素人が二人いるのと変わらない。

「こいつ思ったよりやるね、兄弟」

「ちょっと本気出さないと、査定に響いちゃうね」

 双子はいったん攻撃を止めると、唐突にその姿が変化(へんげ)した。

 少年から青年へと。

「!?」

 突然姿を変えた双子に驚くブラッドに、体が大きくなって身体能力も上がった双子の斧が迫る。

「!」

 回避する余裕はない。

 

 左右から振りかかる双子の斧が、ブラッドの首と腰を同時に襲う。

 逃げ場はない。

 しかしブラッドの脳裏に浮かぶのは絶望ではなく、怒り。

 

 私はこんなところで死ぬのか。

 復讐も果たせないまま。

 姉も救えないまま。

 

 雪の降る朝。

 遠ざかる馬車。

 

(私は、まだ死ぬわけには……!)

 

 すると、不意にブラッドの視界が歪んだ。

「!?」

 視界に続いて身体が浮き上がるような感覚があり――

 気が付くと二本の斧は空を切り、ブラッドは離れた場所に立っていた。

「驚いたね、兄弟」

「さすがは『余所者』ってことかな」

「……」

 何が起きたのかわからず、立ち尽くすブラッド。そこへ双子の片方が声をかける。

「面白くなってきたね。もっと戦ってみたいけど――」

 唐突に斧をしまい、少年の姿へと戻った。

「この時間帯は休憩なんだ」

「頑張っても残業代出ないからね」

 いつの間にか、時間帯が昼から夕方に変わっている。

「……いいのか、通って」

「うん、今の時間帯は僕達は門番じゃないから」

「代わりをよこさない雇用主が悪いよね」

「……」

 釈然としないものを感じつつ、ブラッドは双子の前を素通りして屋敷の中へと向かった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 そしてブラッドは、組織の顔なしたちを殺して、殺して、殺し尽くした。

「『ブラッディ・ツインズ』の攻撃を受けて、生き延びたのか!?」

「俺達が勝てるはずがねえ……!」

 双子との戦いを通して、ブラッドの中で何かが目覚めた。それは、自分の組織のボスを倒すために欠かせないものだった。

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