放課後僕は授業を終えて、部活に行こうとしていた。(朝練で問題を起こしたので)しずくも演劇部に行かなきゃならないらしくお互い部活終わる時間に待ち合わせをして帰ることにした。
「こんにちはー…って部長…」
「やぁ葉山くん。朝の試合では完敗だったよ。」
「バドミントン嫌いにならなかったんですね。」
「嫌い?そんなわけないだろう。私はこのスポーツが大好きだ…昔からずっと好きなこのスポーツを嫌いになんかなれる訳ないだろう。」
僕は初めて出会ったかもしれない。僕と試合をして、バドミントンを辞めないで逆に前向きになった人を見たのは。
「…ふふっ…変わってますね…部長は」
「そうか?それと一応自己紹介をしてなかったな。私は虹ヶ咲学園普通科3年、バドミントン部の部長をしている多田楓だ。」
「丁寧にありがとうございます。改めまして僕も、自己紹介をしますね。虹ヶ咲学園国際交流学科1年葉山 飛鳥です。よろしくお願いしますね。多田部長。」
僕はそのまま部長に挨拶をして体育館の中に入っていった。
中に入ると既にもう練習は始まっていて、それぞれが練習に励んでいた。よく見るも朝よりも顔つきがより険しくなっている。
「気付いたか。部員の顔付きに。朝の君と私の試合を見て皆刺激を受けたのだろう」
「にしてもここまで極端に変わるもんなんですね。」
「これも君の影響かな?」
「んな訳ないでしょう。」
そんなやり取りをしてたら、部長は手を叩き部員全員に集める合図をした。
するとすぐに大勢の部員が集まってきて僕と部長の前に集まった。
見てわかる圧倒的な男女の差だった。女子の人数9割と言ったところだろうか。
「今日から共に、この部活で一緒に活動していく仲間を紹介する。」
「 ……青藍高校からやって来ました。1年葉山 飛鳥です。よろしくお願いします。」
「おぉー!朝の試合見たよ!!すっごい無駄のないプレイでびっくりしちゃった!!」
と、一部の人は騒いでいるが逆に奥の方に目をやるとちょっと不気味がられてる事に気付き、地味にショックだった。
そして自己紹介をし終えると、何処から何か要らん言葉が飛んできた。
「部長〜この子に朝負けてたけど〜本当に強いの〜?」
「今はそんな話をする時間ではない。詳しいことは葉山君から聞くといいだろう。」
「とか言ってるけど本当は部長が手を抜いてたり〜?」
このさっきから突っかかってくる見た目のギャルっぽい女名前は知らないけど、朝に出会ったあの人よりも大分印象が悪い。
同じ部類に入るけどここまで人って差が出ることに僕は驚いてしまった。…いや着眼点違うだろって話だけどね?
「……僕は部長が、本気でやったかなんて興味ありませんが……」
「ふーん?部長は優しいからねー、新入部員の君にいい想いをさせたかったんじゃないのー?」
なんか色々と無礼な人だな…。まぁそこはいいとして何故僕に突っかかってくるのが少々理解できない…。というか早く練習したいんだが…
言いたい放題言わせてたら遂にこの女はとんでもない事を言い出した。
「じゃあさ〜?私と勝負しない?」
「はぁ…?」
言ってる事に少し理解が、出来なかった。突然突っかかってきて、好き放題言って挙げ句の果てには試合をしろ…と…。
まぁでも断る理由もないね。部長はいい人だし僕だけを貶すならまだしも、巻き込むのはちょっと許せないから遊び程度でやろうかな。
「はぁ……言っておきますが…これが最後の試合にならなきゃいいですね…。」
一応僕はギャル女にそう警告をしておいた………と言っても聞くわけないか……。
あの部長ですら聞く耳を持たなかったんだからな…。まぁでもあの人は僕に負けた事をバネにさらに強くなろうとしている。
「はぁ〜?逆にあんたの方こそ恥をかかないようにね。私これでも地区ではかなり上位にくい込んでるから。」
「芳野やめておけ。君じゃ彼には勝てない…絶対にだ…。」
「何?部長まで。いいじゃないちょっとくらい。」
部長はギャル女こと芳野に警告をするが、やはり聞く耳を持たない。一応言っておくが、この後どうなっても僕は一切の責任を取るつもりはない。
それに話してる時間も無駄だしやるならやろうかな。
「あの早くしましょう。時間の無駄ですので」
「はぁ?何あんた…その態度何…?」
「無礼には無礼で返すのが、基本だと思っているのですが…何か勘に触ってしまったでしょうか……?」
「は?絶対潰す…そして二度とこの部活に来れないようにしてあげるから…」
「肝に銘じときますね」
僕はそのまま軽く挑発をして、最後は満面の笑みを浮かべてコートに入った。
そして最後の忠告をした。
「本当に最後の試合にならなきゃいいですね?先輩…それときっと貴方は僕が二回目のサーブで心が折れるでしょう…」
「は?…何言ってんの…?早くサーブを打って…。」
さぁこの2球が、何を意味するか今の状況ではこの場の皆は絶対に理解できないだろう……
しかし…それでいい…理解できなくていいんだよ…後で分かれば…
僕はそう考えながらサーブを高く打ち上げた。
初手は朝に部長にやったあの照明をつかった、サーブで勝負に出た。
「なっ?!み、見えないっ!シャ…シャトルはどこ?!」
「葉山くん……またあれを……」
案の定反応出来る訳もなくそのままシャトルはコート内に落ちて、僕の点になった。
審判をしてる部長はやれやれと言った様子で、僕を見ているが僕はそれを気にしなかった。
「審判!あれば反則でしょ?!光を使うなんて?!」
「ルール上特に問題は無い。まぁ意図的にやってるから知らんが。」
「ちっ……」
しかし芳野は納得するはずもなく審判にイチャモンを付け始めた。まぁ普通はそうなるわな。
「ククク……行きますよ…二球目…じゃ次は見えるようにしてあげますよ…?」
おっといけないな。抑制力のしずくがいないからついつい悪い癖が出てしまう。
嫌いな相手はとことこん精神的にやられてもらいたいものでね。
「これなら見えるでしょう?」
「な?!バカにしてる訳?!」
僕は軽くショートサーブで打って仕掛けた。しかし芳野の反応速度は思った以上に早く、直ぐに打ち返して来た。
「少しはできるみたいですね。しかしそこをロブで上げたのは完全にミス……」
「嘘…?!」
芳野は反応速度は良かったものの返し方が完全に僕にこのゲームを握る主導権を渡してしまった。
かなり高く後ろへ打ったつもりだが、そこには既に僕は立っていた。
「俺に返せないショットなんて……万に1つ……ないんだよっ……」
僕はついにリミットを外して一撃を加える準備に入った。しずくがいたら僕は朝みたいな事をしているだろうが、今回はそんな事はしない。
芳野はもの凄い危険を察知したのか、構え始めた。
しかし構える頃には遅かった。
「そんな……?!」
「………(一体彼は今何をした……?!)」
場は凍りついた。
僕はやってしまった。加減はしたものの多分普通の人では分からない球を僕は芳野に打ち込んだ。
「えっ………あっ……」
芳野は未だに、何が起きたか理解出来ていなかったようだ。ただそこに落ちてるシャトルを見て、固まっているだけだった。
誰もが見て分かる完全に芳野は、戦意喪失たった一つのショットで、実力の差を思い知って膝まづいてた。
「ゲーム……セット……勝者……葉山 飛鳥……」
多田部長も今の1球にかなり驚いたのか、動揺を隠せていない。
一応かなり加減したつもりではあったがやはりあったが、やはり普通の人が見える球ではない事はこれで明白になった。
試合が終わったあと僕は休憩をしに水を飲もうと一旦体育館の外へ出た。
「………ねぇあんた……」
すると何食わぬ顔で芳野が僕に近付いてきた。
「なんですか?」
顔を見る限り決していい事がある訳では無いことを察した僕はあえて冷静に返した。
しかし残念な事に僕にはこの人が何に怒ってるか全く理解出来ずにいた。
なんでキレてるのかまるで理解出来てない僕に芳野は険しい顔で言ってきた。
「あんた……一球目の小細工…本当に汚いわね……って思ったけど…それより…!」
「それより?」
芳野は一旦間を開けたが、やがて一息付き僕に本題を突きつけてきた。
「2回目のサーブでって言ったよね?そして本当にあんたは2回目で私の心を折った…」
「それは違います。折ったのではなく先輩が勝手に折れたんじゃないんですか」
「……っ……まぁいいわ…そんな事より…あの球は何…?」
「……………」
「黙ってないで教えなさいよ!」
「断る」
「っ?!」
僕は冷静に一言拒否の一言を芳野に告げた。
あの技は…そう…知らなくていいんだ…。いや、知らない方が身のためだと言っておこうかな。きっと…後悔する…。絶対に…しかし一つだけ言えるとなれば…
「先輩から見たらあれはどう見えました…?」
「どうって……見えなかったに決まってるじゃん…」
妥当な答えだと僕は思った。
あれが見えたら普通に凄いだろう…だからあえてそう聞いた。
そして僕は
「つまりそう言う…事ですよ…。」
「は…???」
僕は芳野にそう言ってその場から去り体育館へと戻って練習を再開した。
___________その頃
体育館のある場所ではとある2人の人物が、飛鳥について話していた。
「先生……葉山君の力…あのショットは…」
「あぁ…分かっている…。あれは普通じゃない…。」
顧問の先生も飛鳥のただならぬ力を感じていたのか、動揺通り越して落ち着いていた。
逆に多田は先程起きた光景が、未だに理解出来ずに冷静ではなかった。
「一体どうやったらあんな……」
「それに打つ前に…口調が僕から…俺に変わっていました」
「きっと…リミットを外したのだろう…彼が…。」
「葉山 鳳香を凌駕するあの力……私達に扱えるのでしょうか?」
「……現時点では何も言えない…しかしあの子はまだ何か隠している…それもかなり…正直不安しかないだろう」
「多田…お前も噂では聞いていると思うが、5月の大会…都大会で葉山鳳香君の話は聞いているだろう…?」
「えぇ。多少耳には入ってきました」
「鳳香君はあの後…うちの男子と決勝で当たり……」
「まさか……」
多田は何かを察した。しかしその予想は合っているだろう。葉山鳳香も飛鳥と同様普通の選手ではない。
「同じく……たった二球で…試合を決めた……。」
「なっ……!」
そうあの後、藤黄学園は最強の1年がいると噂になり東京都内の高校は騒然とした。
そしてその対抗勢力として、当時青藍で猛威を奮っていた飛鳥を虹ヶ咲学園に編入させたのだ。
「そして同時期にだ…神奈川の県大会で…。」
「まさか……。」
多田はもう答えが見えていた。
「1回戦から……全て一球で終わらせて優勝したのが、葉山飛鳥…彼の双子の兄…そして青藍高校の絶対エースだったんだ…。」
「一球……?!」
優勝したのも凄いことだが、何より驚いたのは全て一球で終わらせていたことだった。
葉山鳳香ですら二球なのに、それに対して飛鳥は全て一球だったのだから。
それでも疑問は残る
「で、でもなぜ芳野と対戦した時は二球……」
「多分手を抜いたのだろう…いや…正確には…弄んでたのだろう…一球で決める彼の本気は誰も見た事ないと…神奈川の高校の人達は言っていた…。」
多田はもう既に、飛鳥の底知れぬ実力に恐怖をしていた。普段は一球で決めるのに、部内でも屈指の実力を持つ芳野を暇潰しにと二球…そして部内で1番の実力を持ってた多田さえも…
「そして…多田…朝横にいた子を覚えているか?」
「は、はい。すごく可愛い子でしたね。」
「あの子がきっと彼の支えてくれるはずだ…きっとこの先藤黄と当たることも多くなるだろう…その時に葉山君を支えらるのはあの子しかいない…。」
「そう…ですか…。」
多田はバドミントン部の部長なのに部員1人もまとめられない悔しさにかられた。
でも同時に彼の支えが1人でもいてよかったと安心していた。
____________そして飛鳥は……
「お?メッセージが来てる…何何しずくからだ!」
しずくからのメッセージに僕はテンションを上げた。大好きな彼女からのメッセージは、何より力が溢れる。
「何何……演劇部は長引きそうだから6時に待ち合わせ…と」
どうやら新入部員のしずくは、やる事が多いみたいで少々長引くようだ。
僕はそのメッセに無理しないで頑張って!と送ったすると秒で既読がつき「ありがとう!飛鳥も無理しないでね♪」と送られてきた。
後にこのやり取りがバレて先輩に彼女?彼女?と聞かれたのはまた別のお話。
あああああ