_________放課後、藤黄学園体育館にて
「っっおぉぉぉっ!!」
雄叫びと共に響いた1つのスマッシュの音。
彼は「普通の人」では取れないスマッシュをノックで、連続で打ち続けていた。
「ふむ、相変わらず見えない速度のスマッシュだな。」
「っまだだ……!まだ行けるはずだ……あいつに勝つには……」
「鳳香無理をするな。お前がここで怪我をしても藤黄にメリットはない。」
「しかし先輩っ…!僕には……勝たなきゃならない相手が…」
「気持ちはわかるが…ここで怪我をしたら元もこうもないだろう?次の大会…団体の相手は虹ヶ咲学園だ…ここで怪我をされても困る。」
虹ヶ咲学園と言う言葉に反応しやがて1人の少年は、何かを思い出したかのように、口を開いた。
「虹ヶ咲学園……そう言えば…めちゃくちゃ強い僕と同い年の奴が入ったと風の噂で聞きました…。」
そして更に少年のその言葉にノックに付き合ってたもう1人の少年も、また何かを思い出したかのように口を開いた。
「あぁ…。青藍からの転入してきた奴だな…。そう言えばお前には詳しく言ってなかったな…。」
「とか言っても……僕に勝てる奴なんてそうはいない…。」
「そうか……ならそいつが都大会と同時に行われた神奈川の大会で、初戦から全て一球で、勝ち抜いたと言ったらどうする?」
「ははっ……そんなやついる訳……ないじゃ……」
「葉山飛鳥…」
「えっ……?」
1人の少年はその名前を聞いて、先程までの勢いが一瞬にして消えた。
「飛鳥が……神奈川で…」
「あぁ。おかげで東京都はさらに激戦区になってしまった。それにこの間の大会…お前の決勝の相手は虹ヶ咲学園の当時のエースだったからな…対抗勢力として入れたのだろうか」
「だ、ダメです……先輩…アイツに勝負をしかけちゃ…」
「何…?」
少年はただ震えていた。そして葉山飛鳥には絶対に勝負をしかけてはならないと告げていた。
これがどう言う意味なのか…分かるのは葉山飛鳥の双子の弟鳳香にしか、分からないだろう。
「あいつは…飛鳥は…中途半端な力で勝負を仕掛けてはダメです…。」
「どう言う意味だ…?」
鳳香は飛鳥について、淡々と語り始めた。
彼がどうしてあそこまで、異次元な強さを兼ね備えているのか。
「飛鳥には……僕でも絶対に取れないショットを持ってます…。」
「何だそれは…鳳香でも拾えないショットだと…?」
「はい……そのショットはまさに死を意味する技とも言っていいでしょう…打たれた相手は確実に戦意を失いますから…。」
鳳香は知っている。飛鳥はどの相手にもその技を使うが、全くと言っていいほど、本気を出していない…。
寧ろ弄んでるレベルで試合をしていることを。
「当時僕らは…ダブルスで地区内でも最強候補でした…。」
「お前ら…昔から…」
「僕と飛鳥にはそれぞれ異名が付いていて…飛鳥はスピードの奇術師と呼ばれていました」
鳳香はそれから歯を食いしばるように話し始めた。
「しかしその名前も一瞬で消えました……僕らは親の離婚でそれぞれ違う場所へ……」
鳳香のノック相手は静かに話を聞いていた。
「最後に両親と別れる前…僕らは双子の最後の試合をしました…。」
「け、結果はどうなったんだ…?」
飛鳥と鳳香の試合…間違いなくお互い異次元の試合やラリーを繰り広げただろうと、誰もがそう思うが…。
鳳香の反応は全く違った。
「シングルスで…僕は彼奴の底知れぬ力を知りました…。結果は15対2…惨敗です…」
「っ……」
圧倒的な点差…これだけでも飛鳥は強者と誰もがわかるだろう…しかし鳳香は普通の人なんて比ではないとないと言わんばかりに、飛鳥の強さをしっていた。
「しかもその2点は……全部飛鳥のサーブミスだったんです…。」
「っなっ…?!」
「きっと…目立つのが嫌だったのでそう仕向けたんでしょう。アイツは極端に目立つのを嫌いますから…いつ話しても困らないように…2点くらいやればみたいな…」
「いや…それでもお前に対して2点って…」
「まぁアイツらしいですよ。」
「話を変えるが……葉山の加わった虹ヶ咲学園…お前はどう見る…?」
「そうですね……まずシングルス…特に個人戦では勝ち目がないでしょう」
「やはり…か…」
話でも聞いて薄々はわかっていたノック相手だが、ここまでハッキリ断言されると更に自信をなくした様子でいた。
実力の底知れない相手+藤黄の絶対エースを屈服させる程の力…そんな相手と戦うとなれば普通はやる気を無くすだろう。
「ふぅ…だいぶ話しましたね……先輩…ラスト一球お願いします!」
「フッ…懲りないやつだ…良いだろう最高の一撃を決めてやれ」
彼らはそのあとも体育館で夜まで練習をした。
同日______虹ヶ咲学園
「全員集まってくれ」
パンパンと、多田部長の手を叩く音が、聞こえて部員皆は顧問と部員の前に整列をした。
どうやらなんか大事なお知らせ(笑)があるようだ。
全員集まったのを確認すると、顧問の先生は話を始めた。
「次の大会…男女混合団体戦でのメンバーと対戦相手を発表する。」
おっと、思いのほか真面目な話の様だ。
僕は聞き流そうと思ったが、ちょっと気になったので真面目に聞くことにした。
「まず…シングルス…葉山…返事をして前に出てこい」
「はい。」
おっと、これはこれは僕なんかが、選ばれるなんて。ちょっと意外と思った。
僕はそのまま前に行き顧問の横に並んだ。そして次々とメンバーが発表されて、女子のシングルスは多田部長、芳野先輩、桐村先輩の3人が選ばれた。
一方男子は僕と2年の東海林先輩そして3年の元エース掛川先輩が選ばれた。(というか男子はその3人と1年のかすみちゃんと同じクラスの人しか男子はいない)
元々男子が少なすぎる学校なので、女子の練習に力を入れてる部活が多いようだが、混合部活に関しては女子の方が強いとか。
と言うか全校生徒含めて男子が20人行くか行かないかって…
っとだいぶ話が脱線したが、気を取り直して
「それでは対戦相手を発表する…1回戦の相手は…」
一旦間が空いてその間に物凄い僕以外の人達から緊張を感じる。
そして顧問の閉じた口から一言対戦相手が伝えられた
「相手は藤黄学園だ」
えっ…とどこの部活でもありそうな騒ぎだが、別に特別な事が起きる訳でもないので、僕はそのまま適当に聞いていた。
「知っての通りだが…藤黄には今年から入った1年の化け物がいる…掛川…以前に対戦したの覚えているな?」.
「はいっ…」
掛川先輩は悔しい顔をしてこの大会で勝つ…!と意志を強くしているようだ。
僕としては自分の好きなようにやりたいけどね。
「飛鳥は知らないと思うが……そいつは全て二球で試合を終わらせた…。」
「へー」
僕は特別驚く事じゃないなと思い聞き流した。ただそんな奴もいるんだなと思い話を聞いていた。
しかし次に僕は驚く結末となる。
「藤黄で特に注意しなきゃならないのが…飛鳥…お前の相手だ…」
「え?僕ですか」
突然顧問の先生は険しい顔つきになり僕の方を見た。
「お前の相手は……」
「????」
なんか知らないけど、僕の中に緊張感が生まれた。なんだろうこの感じ、かなりまずいのか?と思いかねない程の気持ちが出てきた。
「お前の相手は……藤黄学園…絶対エースそして力の桜華こと…葉山鳳香だ」
「なっ……?!」
僕は声が出てしまった。鳳香だって……?あいつ藤黄にいたのか…とかよりもアイツがまだ続けてた事に驚きを隠せなかった。
あの日最後に試合をした時…僕がわざとミスをして…
「なんだなんだ?飛鳥でも驚くのか〜てか葉山って同じだけど…お前らなんか関係とかあんの?」
呑気な声で東海林先輩が緊迫した空気を和ませて聞いてきた。
「あいつは…鳳香…僕の…双子の弟なんです…」
「ええええええええええええ!!?!?!」
部内は部長と顧問の先生を除く全員が、驚きの声を出した。
そして掛川先輩が
「た、確かに誰かに似てると思ったら…お前葉山の兄だったのか?!」
「数秒の誤差ですが、僕が兄です。」
「ちょ、ちょっとあんた?!あの化け物の兄なの?!なんでそれを先に言わずに私と試合したわけ?!」
「いえ、それに関しては先輩の自滅行為だと僕は思いますが…。」
芳野は相変わらず僕に突っかかってくるので、正直そろそろめんどくさい。というかよくやめなかったな〜って思う。
そして一息置き掛川先輩がある事を聞いてきた。
「なぁ飛鳥、お前の弟の異名みたいなのも気になったんだが…お前にも何かあるのか?」
あぁ…大して嬉しくない異名みたいなのか…と僕は露骨にため息をしそうになったが、あえて我慢して答えることにした。
答えなかったら色々めんど臭そうだし()
「えっと…あいつは、とにかくスマッシュが、速いんです…。それを軽くヒラヒラ打ってくるんで、そう言うのがついたんです。ちなみに僕はスピードの奇術師なんて呼ばれてましたよ」
「ほえーーー!なんじゃそりゃあ!かっけぇなぁ」
「他人から見れば、そう思うかもしれませんが後々面倒ですよ…見かけられるたびに奇術師なんて…」
「でもそれって尊敬されてる証拠じゃない?私だったらちょっと嬉しいかも」
と、髪がボブくらいの長さの桐村先輩が僕と掛川先輩の間に入ってきた。しかし桐村先輩も何か聞きたい事があるようで。
というか桐村先輩…顔整ってるし絶対モテるよな…
と、んな事は置いといて。他の女性には全く興味ないので…だって僕にはしずくがいるからね!
「そしてさ葉山くん私からも聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「は、はい?」
次から次へと僕に質問尽くし、これには先生や部長も良い機会だと思ったのか、暖かい目?で僕らを見守っていた。
「葉山くんの弟の鳳香君とは過去に何回試合したの?」
「数え切れないほど、試合はしましたが」
「じゃ、じゃあどっちが…」
どうやら1番肝心な事を聞きたいようだが、聞きにくいみたいだったので僕から言うことにした。
「そうですね。全部僕が勝ってますね」
「そ、そうなんだっ」
桐村先輩は少しホットした顔をしていたが、正直鳳香はここにいる誰よりも強いと断言出来る。
いくら僕が本気でやらずとも勝てても本気でやってない僕に勝てないようじゃ到底無理だろう。
と、遠くを見てたその時だった。
「失礼します…練習見学させてもらっても良いですか…?」
「構わないよ?葉山君を見に来たのかい?」
「はいっ」
見た事あるリボンを付けた髪の長い女の子が、体育館に入ってきた。
そして何やら部長と顧問に許可を取ってるみたいだ。
そしてこっちを向いて微笑んだ事によって僕はそれが誰だかを確信する。
しずくだっ!!!練習を見に来てくれたのか!!!
僕は露骨に喜んでしまい周りから白い目で見られてしまった。
特に女子陣からの視線は死にたくなった。
そしてしずくは僕のほうへ寄ってきた。
「演劇部早く終わったから来ちゃった♪飛鳥の練習姿も気になるし」
「そっか〜良かったーめっちゃやる気出るよ!」
「じゃあ頑張ってね!飛鳥」
しずくはそう言うと体育館の隅の方に行き顧問の先生と部長達となにやら話し始めた。
そして別の場所から視線を感じるなと思い見ると桐村先輩は何やら少し落ち込んでるようにも見えた。
そして僕は掛川先輩に試合を申し込まれた。
「飛鳥〜あれ彼女かよ…めっちゃ可愛いじゃん…」
と、羨ましそうに言ってくるので僕は
「凄くいい子ですよ?」
と、追い打ちをかけた。そしてそのせいで火がついたのか…
「お?!てめっ惚気やがってよし絶対勝つ!」
「勝てたら…ですけどボソッ」
と、そんな感じで試合を始めた。しずくがいるので二球や一球で僕は最大限手を抜きかつやってる風に最後まで試合をする事にした。
下手に心を折られても困るし
「よっしゃ!来い!飛鳥あああああ!!」
「うるさいな…」
僕は伝家の宝刀照明サーブを使い試合を始めた。
「あっ!てめっ飛鳥このやろぉ!」
この技に流石の掛川先輩は反応出来ずに空振りをして、僕に点が入った。
「あらぁ…高く上げすぎてしまいました次は真面目にやりますね。」
「よし来い!」
僕はショートサーブを打ちそのままラリーが始まった。
掛川先輩はドライブが得意みたいで、中々(笑)の速度のドライブを僕に打ってくるが。
「(な、なんだコイツ……!俺の渾身のドライブラッシュを軽く返してやがる……!)」
「飛鳥…凄い…」
弾丸の飛びあってるようにも見えるこの攻防戦。徐々に僕は軌道を変えて段々と打ちにくい場所へ持っていった。
「なっ……?!(俺のドライブを利用して……)」
掛川先輩は僕のところは返すのが精一杯になってきたらしく。速度がさっきよりも落ちていた。
「そろそろ飽きたので…っと!」
僕は掛川先輩の弱りきったドライブをロブでかちあげて、 先輩に時間を作った。
すると先輩は僕の計算通りしめたとおもったらしく、体勢を直ぐに立て直して次のショットの準備をした。
「っらぁ!!」
「おおっ」
掛川先輩は持ち味の馬鹿力(笑)でスマッシュを打ってきたが、どれも僕の読み通りだったため返すのは容易だった。
「 スピードは中々ですけど…よいしょっと……」
「なっ…?!」
僕はまた更にロブで上げて先輩にスマッシュをあえて打たせる準備を作らせたが…。
「ふぅん…バレたか…」
先輩はクリアーで対処して来たが…どうやらスマッシュを打つか悩んだみたいで力が籠ってなかった。
そんな弱弱なクリアーが僕の所まで来たので僕はあるショットを打つことにした。
「ゲームの主導権は僕が握っている…生かすも殺すも僕次第だ…!!」
「(来るっ!!)」
「(その顔…警戒してるな…しかしこれは見破れない…絶対にね…)」
「あの技は……世界選手権でも使ってた…」
まぁ打たないけどね
「ほいっと」
僕は普通にスマッシュを決めて先輩勝負を決めた。
「つ……つえぇ……」
「なかなか楽しかったですよ?」
掛川先輩は驚きすぎて、若干目がいっていた。大丈夫ですかー?と手を振るが、違うところを見つめていた。
そして試合終わりにしずくがまたやってきた。
「珍しくちゃんと試合してたね飛鳥。」
「やんなきゃ怒るでしょ?それにダサいし」
「そうだよ?でも部長さんとやった時よりも手抜いてたよね…?」
「まぁ…だって本気でやったらそれこそつまらないし…」
いやなんで分かんだよ…エスパーか?って思うくらい僕の考えはしずくに読まれていた。
そしてしずくは笑顔になってこう言ってくれた。
「でも本気を出してなくてもちゃんとやってる飛鳥、かっこよかったよっ!」
「っうぉぅ…」
余りにも眩しすぎる笑顔に僕は変な声が出てしまった。
でもまぁしずくが喜んでくれたならそれでよしとしようかな。
「今日は帰り道何か買って帰ろうかな。しずくなんか食べたい物とかある?」
「飛鳥とならなんでも良いよ私は」
そんな優しい笑顔で僕にそう答えてくれるしずく。一応見に来てる時くらいはあんな感じでも良いからプレイしようと僕は思った。
ふぅ