「あれ……私…生きてるの…それとも」
私は、目を覚ますと辺り一面光に覆われた見慣れない場所にいた。
「一体ここは……」
確か私は、桐村さんの襲撃を受けて…そこから飛鳥が…。
「飛鳥………」
その名前を口にした途端、私の目からは涙が溢れてきた。私が大好きで大切だった人…いや今もずっと大切な人…。
「飛鳥…飛鳥に会いたいよぉ……」
飛鳥はとても優しくて…明るくて…普段はクールだけど、それでも時々見せる笑顔が眩しくて…いつも私の事を守ってくれた…
それなのに私は……飛鳥に何も出来ないまま、こんな所へ……
「ごめんね…ごめんね…飛鳥……」
私は後悔で胸が押しつぶされそうで仕方がなかった。もっと楽しい思い出を作りたかった…飛鳥ともっと一緒にいたかった…
何も出来ずに……
ほんとに涙が止まらなかった…
「何泣いてんの、桜坂」
突然声がした。聞き覚えのある声と呼び方だけど、ちょっとだけ子供っぽさを感じた。
私は、ゆっくりと顔を上げて見た。
「なにか悲しいことでもあったの?」
そこには、なんと飛鳥がいた。しかし私の知っている今の飛鳥よりは体が、一回り小さく見えた。
「飛鳥……?どうしてここに…」
「どうしてって…急にいなくなったから、どうせいつもの事でここにいると思って来たんだよ」
「いつもの場所って…あれ、さっきといた場所が…」
周りを見ると、先程光に覆われていた場所が学校の屋上みたいな場所になっていた。
え……、これは夢?
私は少し困惑した、目の前に飛鳥がいることもそうだけど何故過去の世界へ…?
「さっきから、様子が変だよ…?体調悪い?保健室行く?」
飛鳥は心配そうな目で私を見てきた。
「あ、ううん…大丈夫です…」
私がそう言うと飛鳥はそっかっと言って勝手に横に座ってきた。
「飛鳥……」
「どうしたの…桜坂…」
私が飛鳥の名前を呼ぶと、飛鳥は優しい笑顔で私に返事をしてくれた。
その笑顔はとても眩しくてとても優しい笑顔だった。
「飛鳥の笑顔……素敵だよ…」
「な、ど、どうしたの?ほんとに…何時もの桜坂らしくないよ〜!」
飛鳥は少し顔を赤くしながら、そう反応してくれた。動きはまだ少し子供っぽさがあるけど、飛鳥らしい反応で思わずクスリと私も笑ってしまった。
「突然だけどさ…飛鳥って好きな女の子とかいる…?」
「えっ………」
飛鳥は凄く驚いた顔をした。そして顔も少し赤くなっていた。
私は自分でも、ビックリする質問を飛鳥に投げかけた。 私はあっちの世界では意識がない。 せめて少しは過去…別の世界の世界の飛鳥の気持ちが知りたい。
「……分からない……」
飛鳥は下を向き、そう答えた。
しかし、その顔は全く好きな人がいないというわけでは、なさそうだった。
「そっか……そう…だよね…」
私は少し胸がチクッとした。 本当は少し期待してた、あっちの世界の飛鳥とは恋人同士で私は飛鳥の事が大好きでたまらなかったから、余計に辛かった。
「ごめん…上手くいえなくて…こんな気持ちは初めてだから…桜坂…いや、しずくのその顔を見てようやく分かったよ…僕は…」
飛鳥は、顔を上げて真剣な目で私の顔を見た。 その青い瞳には真っ直ぐな気持ちを感じた。
そして
「僕は…しずくの事が…好きだっ…!」
なんの迷いも無く、私にそう言ってくれた。 一瞬だけど、私の頭の中は真っ白になった。しかし、直ぐに私は
「飛鳥……私も…飛鳥の事が好き…違う世界の飛鳥でも…私は好き…大好きだよっ…」
私は涙を流しながら、飛鳥に抱きついた。 飛鳥はとても温かく優しく抱き締め返してくれた。
「違う世界のしずくでも、やっぱりしずくはしずくのままだな…」
「飛鳥…気付いてたの…?」
「勿論、すぐに分かったよ、君が違う世界のしずくだって…でも、きっと君は未来のしずくなんだって同時に思ったりもした」
「…未来のこと…知りたい?」
私がそう聞くと飛鳥はうーん、知りたいけど〜みたいな顔をして悩み出したけど、直ぐに
「ううん、大丈夫…今のしずくの顔を見て分かった、未来の僕は幸せ者だって…。だから、大丈夫だよ。ありがとう」
優しい声でそう言いながら、飛鳥は私を抱きしめた。
やっぱり、飛鳥は気付いてたみたい。でも、今はそんなの関係なしに、飛鳥と過ごせるこの時間が幸せだった。
しかし、そんな時間は長く続かず飛鳥は
「君はここにいては行けない。必ず幸せになって欲しい…だからしずく…最後に」
「え…飛鳥…いやだ…私…離れたくないよう…もっと飛鳥と…」
飛鳥は少し悲しさ交じりの笑顔で首を横に振り
少しずつ身体が光に包まれながら、最後の一言と言わんばかりに
「僕も、どの世界でもどんな桜坂しずくでも…大好きだ…」
そう言って私の視界は一瞬で眩しい光に包まれた。
_______________
現実世界
しずくが搬送されてから、数時間が経過した。
桐村は直ぐに現行犯でそのまま警察に連れてかれた。しずくは今集中治療室で、治療を受けている。
医者いわくだけど、出血の量が酷くあと少しでも失血していたら本当に危なかったらしい。
でもそんなことより僕は、自分の無力さを今回の事件で思い知らされた。
…守れなかった…最愛の人を…
自分への怒りで、本当に押し潰されそうだった。
「情けないな……ホントに……」
考えなくなったと思ったら、しずくの優しい笑顔が僕の頭の中を過って、もし手術に失敗したらと言う最悪の事態を考えてしまうの連続だ。
もしかしたらこの辛い時間が永遠に続くのでは?と考えてしまう。
「しずく……頼む…生きていてくれ……」
僕には祈ることしか出来ない。僕に怪我を治せる力があるなら…しずくを救える力があるなら…
そんな事まで考えていた。
「飛鳥…ちょっとこっちへ来い」
突然凰香に呼ばれたしかし、今の僕は返事をする気も起きなかった。
「……飛鳥……」
凰香はもう一度僕の名前を呼んだ、先程よりも冷たく低い声で。しかしやはり今の僕には返事をする気が起きなかった。
そのまま下を向いてると
「っ…この…バカヤロウがっ!」
「っ…!」
突然凰香は僕の胸ぐらを掴み頬を殴った、顎が吹き飛ぶかと思うレベルで痛かった。
「なんでそんな沈んでんだよ!なんで、自分のせいだって責めてんだよ!」
凰香は怒っていた、今までにないくらい僕に怒っていた。
「飛鳥は昔からそうだ…自分の近くにいる人に何かあるとすぐ自分のせいにして…自分を追い込む……」
「っ…僕は……また…俺はしずくを助ける事が出来なかったんだぞ…俺がもっとしっかりしてれば…」
「しずくちゃんが、ホントに飛鳥のことを弱いって思ってるの…?」
「え…」
凰香は冷静に僕に聞いてきた。しかしその顔は真剣な眼差しで僕の方を見ていた。
「どんな時でもしずくちゃんは飛鳥を信じてくれてたはずだよ…思い出してみなよ…」
「しずくが……僕を……」
僕は確かにしずくのことを心の底から信頼しているし愛している。
しかし逆の事は考えたことは無かった。
僕はしずくと過ごした日々を思い出した
初めて大好きと伝えた日、一緒に学校へ行き一緒に帰ったり、何気ない日々だけど毎日が楽しかった。しずくがいたからこそ、今の僕が形成されているんだと思う。
穏やかで優しいあの笑顔、頑固なところもあるけど、誰よりも思いやりがある優しいしずく…
あの子がいなければ今の僕は多分存在してない、そう断言出来る。
「大好き……だ…しずく……」
「よく言った…飛鳥…それでこそ僕の兄だよ…」
「あいつがいなければ今の僕はないよ……」
凰香はよかったと言わんばかりに僕に笑いかけてくれた。大丈夫しずくはきっと助かる。しずくが僕を信じてくれたように僕もしずくを信じる。
_______しずく
目が覚めた
しかし、天井は真っ白だった。
もしかして私はもう死んじゃったのかな…?そう思ったりもした。
しかしどうやら違うみたいです。
「先生!患者さんが、患者さんが目を覚ましました!」
看護婦さんの声かな…?部屋中に響いてる…飛鳥…いないのかな…会いたいな…
「しずく!」
そう思ってたら私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
視界は少しぼんやりしてるけど、誰の姿かはすぐに分かった。
「しずく…よかった……それと、ごめんなぁ……」
暖かい…抱きしめられてるのかな…暖かいなぁ…ほんとに安心する…
「しずく…痛い所はないか…?」
「うん……今は大丈夫だよ………ありがとう…飛鳥」
ハッキリとは見えないけど、すぐに分かった。
この声と顔の形は間違いなく飛鳥だ。
私の大好きで大切な人…
「飛鳥……顔近づけて……」
私は飛鳥にそう頼んだ、こう?と言わんばかりに近づけてくれた。
すると私は
「んっ……」
「っ………!!」
唇を重ねた
短い時間なのに永遠に感じるこの瞬間、私はずっとこの時間が続けばいいと思った。
飛鳥と二人でずっと…
ひさびさ