無敗の悪戯好きとコックさん   作:零課

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凱旋門賞に参加したゴルシとジャスタウェイ。ゴルシがお客さんにファンサービスしたりと自由行動し始めたとたんにジャスタウェイが見ないようにしたのが面白すぎる。他人のふりするとかほんと頭いいなあ。


今回は短めです。


レース前

 「ねえ。ゴルシちゃん」

 

 

 「なんだ? ジャスタウェイ」

 

 

 パチリ、パチリ。駒を打つ音、ちゃりちゃりと小銭とは違う駒を手の中で転がす感触が心地いい。

 

 

 「今回のレース。ターボちゃんどれくらいに仕上がると思うかしら」

 

 

 「そうだなぁ~」

 

 

 私とゴルシちゃんでのトレーニング。一見ふざけている。さぼりのように見えるけど、実はそうじゃない。ゴルシちゃんは頭がいいし、その上でふざける程度を見極める。勝負勘も鋭い。

 

 

 それと自分の肉体の限界、使いどころをわきまえているからこそ勝つときは圧勝。その才能を生かしてまるでエンターテイナー。一部は手品を見ていると思わせるような。ワープしたとしか思えない走りで年齢、性別を問わず広い人気を持つ。実はスピカでも話題に事欠かないトリックスター。その勝負勘。マルチタスクの鍛錬とイメトレをするのがこの将棋だ。

 

 

 「少なくても、タイキ、スズカ、マルゼン、タマモ、オグリレベルは来ている」

 

 

 「その心は?」

 

 

 互いの先行、逃げ、差し、追い込み。それぞれをイメージした戦術を将棋に投影して差しつつ、頭の中でそのイメージを何度も繰り返す。ゴルシちゃんは天性のセンスと知能で。私はお父さんの仕事柄作画のチェックや雑用の手伝いもあって差異を見つけたりイメージする力は養われた。

 

 

 だから今は多分ゴルシちゃんはターボちゃんの大逃げをイメージして、私はゴルシちゃんと私で追い込みを戦術に変えて駒を打つ。こういうのは意外と有効だし、走る最中も戦術の組み換えと切り替えに便利。

 

 

 将棋とレースの落とし込み。慣れると楽しいもの。

 

 

 「プールトレーニングの際に身体を見たが、仕上がり具合とバランスの良さ、バネが別もんになっていたし、あの徹底した疲労抜きをしながら精神面も良し。ちょっと気味が悪いくらいにいい仕上がりを作っていた」

 

 

 「私たちがミット打ちとか教えたし、スタミナも二重、三重底に鍛えていたのは感じていたしね。じゃー・・・スピカの中でそれに対処できそうなのは?」

 

 

 「アタシ、ジャスタ、スズカ。・・・・・ギリギリマックイーン、あとスぺ」

 

 

 全く、攻め込む布陣を作る間でも攻め込めば駒損をする守りを見せる。私の方もちゃんと手を打っているのに直感と基礎があるから攻め込めないんだよなあ・・・持ち駒で守り固めるか。

 

 

 「テイオーちゃんはレースに真摯だけど、それ以上にルドルフとリボーさんのレースに釘付け、ウオッカちゃん、スカーレットちゃんは天才肌だけど、勝気な部分が過ぎてターボちゃんの逃げに巻き込まれて潰れかねない。ついでに言えばヘリポスさんとリボーさんの二人の前で下手かきたくないと緊張もありと」

 

 

 「スぺは基本油断とかする余裕はないだろうし、真面目だ。そこは問題ない。マックイーンはスタミナもある。万が一スズカとターボの大逃げに面食らっても立て直せるだろ。スズカは基本大逃げだし回りは関係ないか」

 

 

 「そんでジャスタは世界の圧を感じているのとリボーさんを知っているから油断しない」

 

 

 「ゴルシちゃんは珍しく興味だしているし、遊び相手がいる分モチベは良しと」

 

 

 ぐ・・・痛いところを取られた・・・5手後で起点にされるか? こっちもと金と桂馬で小隊は用意しているしそれで攻めあがる用意を・・・

 

 

 「そうなってくると、私とゴルシちゃんふたりでペースメーカーになって後半攻めるほうがいいかもね」

 

 

 「だなー世界を経験して一皮むけたスズカ、そして周りを巻き込んで破滅的大逃げをするターボ。あんな個性と天才の塊二人が大逃げかますんだ。おもしれーレースだが、正直言って想定している二回りは上と考えていいだろ」

 

 

 「いずれ海外に行けばチーム戦の機会も増えるでしょうし、そういう意味ではリボーさんとターボちゃんに感謝しかないわね」

 

 

 「その分勝ったらシェフからケーキ貰いに行こうぜ? 副賞ってことでさ」

 

 

 あ・・・本命の攻めに刺された・・・くっそー・・・こうなるともうじり貧だわ。

 

 

 一つ目の攻めの起点は私たちと世間の評価。二つ目のこの攻めがターボちゃんの大逃げって再現でしょうけども・・・

 

 

 「そうね。模擬レースの打ち上げにってことで頼めないか聞きましょうか。材料費は私達で出して」

 

 

 「お。珍しい。いつもなら迷惑かけるなーっていうかと」

 

 

 「みんなで料理は楽しいし、打ち上げでしょ? スピカ、リギル、カノープス、そしてシェフにリボーさん。ヘリポスさん。楽しいじゃないですか」

 

 

 二人でのんびり話している間もぱちぱちと駒を打ち合い、勝負も大詰め。とはいえ、私負けているんだけどね。トホホ・・・

 

 

 「そうと決まれば、一つ皆のケツ叩きながら遊びに行きますかねー」

 

 

 「練習よ。ゴルシちゃん。・・・参りました」

 

 

 「うーし。今度は囲碁でもしようぜ」

 

 

 「その前に休憩終わったし、走りに行くわよー」

 

 

 休憩の合間、というよりはのびて練習時間まで食い込んだ一局も私の負けで終わり、将棋盤と駒を片付けて練習再開。

 

 

 ・・・・・・飛車まで使った超弩級の田楽刺しでゴルシちゃんの勝利。それくらい、凄い逃げを見せてくるってことかしらね・・・いったい、ゴルシちゃんのイメージするターボちゃんの仕上がり、ゾクゾクするほどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「マチちゃんは泳がないのか?」

 

 

 「私もちょっとオーバーワークで・・・あと、授業の後で少し眠気が・・・」

 

 

 「ちゃんと寝ていないと聞いたけど、大丈夫かー? 休んだほうが」

 

 

 「ターボちゃんのレースがもうすぐで緊張していたかも。あはは」

 

 

 「んふふ。ターボは絶対スピカに勝つからな! マチちゃんも応援に来てほしいぞ!」

 

 

 プールでの休憩と疲労抜きの日々も今日で一応ひと段落。明日はようやくレースに向けての練習に行けるぞ! ・・・といっても、結局それも5日。疲労を抜く休憩もまたあるから結局3日だけど。

 

 

 美柚樹さんの料理とリボー師匠のマッサージもあって疲労はないのに、もどかしい。

 

 

 「はぁー・・・・ちょっと潜るぞ」

 

 

 「気を付けてね?」

 

 

 一度雑音の中じゃなくてプールの中で考えたくて、角に移動してから水の中にターボの身体を沈める。ぶくぶくー・・・・・・

 

 

 

 (スピカの試合は、ターボのだけじゃない。支えてくれたカノープスの皆と、師匠たちにどれほど強くなったかを示すものでもある。カノープスのリーダーはネイチャだけど、エースはターボ。だから・・・・・思いきり戦う。勝ってみんなの助けてくれたことを証明して、最高のバトンパスを師匠にしたいんだぞ)

 

 

 プールの中から見える光の揺らめきと青のきれいさ。あちこちで泳いでいるウマ娘の皆の泳ぐ際に水をかいて出てくる泡。全部が綺麗だ。ネイチャたちは勝てないことを、キラキラしたものに縁がないという時がある。けど、そんなことはない。

 

 

 テイオーも、スピカの皆も天才で、努力もする。みんなすごい。けど、だからって届かないことはない。届かせていけるってのを見せたいし、ターボもサイキョーのウマ娘を目指すために頑張りたい。ずっとプールの水で頭を冷やしつつもずっと考えていた。

 

 

 (見てろよースピカ、テイオー、リギル。ターボたちも最強のチームだって、走って見せてやるんだからなー・・・!)

 

 

 水の中から見える光と水と泡の光景に見蕩れつつも気合を入れ直していると、何かマチちゃんが心配そうにして飛び込もうとしていた。

 

 

 あ、危ないよ? 待て待てと手を振ってゆっくりと上がっていく。また鼻血出したら痛いもんね。

 

 

 「ぷは・・・どうしたんだぞ? マチちゃん」

 

 

 「え? あ、あの・・・大丈夫なのターボちゃん??」

 

 

 「え~? ちょっと潜っていただけだけど」

 

 

 「ちょっとじゃないよ!? 8分はずっとぼーっとしていたから不安で不安で・・・ターボちゃん。髪の色もあって顔色も水の中じゃわかりづらいし」

 

 

 そんなに潜っていたのか・・・ついつい水の中がぼんやりできるからつい・・・でも・・・かなり肺活量も上がった。これなら・・・ずっと走り続けられる???

 

 

 「でも、凄いよターボちゃん! 素潜りの時間で世界を狙えるかも!」

 

 

 「ターボはレースで世界を狙うぞ? マチちゃんも、カノープスの皆と一緒にだ!」

 

 

 「ありがとう。でも、その前に日本だね?」

 

 

 「おー! そうだ! 美柚樹さんが今晩はカノープス皆ご飯食べに来なさいって。マチちゃんとイクノは明日レースでしょ? 元気つけなさいってからあげくれるようだぞ?」

 

 

 この後、みんなでから揚げパーティーをしたけど。今までに食べたことないくらい美味しかったぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふー・・・よし。気持ちタイムも文句なし。ヘリポス、美柚樹お姉さん。タイムとフォームはどう?」

 

 

 「タイムは1000メートル58.2。最後の上がり3ハロンは32,2。それを維持できているし、良い感じですヨ」

 

 

 「フォームもぶれ無し。日本の芝の感触もつかんだのもいいみたいだし、靴も問題なさそう?」

 

 

 体調もよし。フォームもぶれ無し。2000メートルを走ってみたけど大丈夫。骨の具合も筋肉も関節も良し。うん。これなら最高の状態でリギルと戦えるわね。少し抑えてのこれなら。

 

 

 さてさて・・・後はまあ、ターボちゃんだけど。問題はないでしょ。朝に見たけど、あれなら距離を覚えれば私が暴れたレースでもいい感じ行けそうだし。

 

 

 「それじゃ。今日はこれで。マッサージ、柔軟重点でけが防止と、芝で怪我しないようにね。日本の芝はほんとパワーの反動がそのまま来るから私には合っているかもだけど」

 

 

 「あっちもこの前イクノちゃんとマチちゃんが勝利してノリに乗っているしね。ただ、疲れもあるから多分今はターボちゃんの手伝いメインかも」

 

 

 「お二人ともナイスガッツ。無事1位を手にできてうれしかったですよ」

 

 

 なんやかんやチームを管理できるほどのトレーナーと契約できる地力。あと、ブロンズコレクターと言われているみたいだけど距離も相手も違う中であれだけ戦える。レースをこなせるのはほんと一押しさえあれば化けるのよね。

 

 

 前に世界を沸かせたキンイロリョテイ、ジャスタウェイちゃんみたいに。スズカちゃんはすでに覚醒していた感じだけど、それをより強固にして、格を上げた感じ。

 

 

 三人で話しながら反対側のコースで練習していたターボちゃんたちの方に移動。疲労回復用のスポドリ、飴がおいしいわ。

 

 

 「ヤッホー。トレーナーさん。ネイチャちゃん。どう? タイムは・・・・へえ?」

 

 

 「うわぁ・・・中等部でこれ?」

 

 

 「・・・疲労もさほどなし、歩きに関しても異常はナシ。フーム・・・レース。これは分かりませんよ」

 

 

 固まる南坂トレーナーさんの後ろから2000メートルを走っているタイムを見れば思わずニヤリと笑みがこぼれる。これはいい感じ。最高の仕上がりを見せてくれたようじゃないの。

 

 

 「リボーさーん! 美柚樹シェフ! ヘリポスさーん。へへへ! ターボ、これならいけそうだぞ!」

 

 

 「いやー・・・これにはネイチャさん驚いたわ。3日後のレースが楽しみね。日本どころか世界がわきかねないわ」

 

 

 「お疲れ二人とも。いやーこれは私も負けられないし、頑張るわよ」

 

 

 後はこのコンディションを維持。そうすればまたちょっと世間をにぎやかすには十分だわ。待ち遠しいわねーレースが。こんな気持ちをまた味合わせてくれる日本の皆に、支えてくれる皆に感謝ばかりだわ。後で神社にお礼を言いに行くべきかしらね。縁結びの神様に。

 

 

 作法。美柚樹お姉さんから聞いておくか。




次回からレースへ。まずはスピカ&ツインターボのレースへ。


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