無敗の悪戯好きとコックさん   作:零課

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ゴルシちゃんとハルウララと悟空のイラストや漫画に元気をもらったのと続かないと言っていたので続編の初投稿です。

ドラゴンボール組の皆さんがウマ娘のトレーナーになるマンガが面白くて。ベジータとピッコロはトレーナーとしても大成しそうですよね。


リボーの重量は一番重い時でも410キロ。対してキタサンブラックは530キロ、ヒシアケボノは560キロ。改めて体格差がすごい。この重量差で同じレースに出れるんですから面白い


トリコ本編にて小松がセンチュリースープ再現で使用していた食材。その味を引き出す独自の調理技法を出しちゃいますのでご了承ください。


居着いてしまう無敗の王者。ただし、学園の負担は考えない

 「さて・・・かの王者と美柚樹さんのことについてだが・・・」

 

 

 「最悪・・・の一歩手前で踏みとどまっているのが正直な感想。といったところでしょうか」

 

 

 「その通りだ・・・」

 

 

 生徒会室。そこに腰かけて心底疲れたと言わんばかりの顔を見せるエアグルーヴ。そして、普段は凛として毅然。皆の支えとなる頼もしい背中を見せるシンボリルドルフ。なのだが今回の件ばかりは流石に不安を覚えるものがあり、どうしたものやらと頭を抱えていた。

 

 

 その悩みの種は当然。突如来た無敗の王者リボー、そして美柚樹との関係と美柚樹の過去、トレセン学園どころか日本のウマ娘は愚か業界そのものが危ういかもな厄ダネの爆発が迫っていることに頭をうならせる。

 

 

 「リボー氏は聡い。同時に、気分屋で感情屋の部分もあるが、同時に人懐っこいことでも有名だ・・・その王者の・・・今なお追いかける。王者の原点の美柚樹さんの過去を知れば・・・」

 

 

 「トレセン学園から美柚樹さんを連れ出す、自分の元に置くためにその過去を公表。地元のイタリアと既に第二の拠点たるアメリカに根回しをしたりすれば間違いなくこのトレセン、ひいては日本のトレーナーの評価は地に堕ちますね」

 

 

 ウマ娘であり、頂点を目指すのなら必ず聞く、何なら耳にタコができるほど聞く存在。シンザン、セクレタリアト、シーバード、そしてリボー。誰もかれもが魅了する走りや強さを見せ、その戦いぶりに、美しさに伝説として刻まれたまさしく世界に君臨する王者たち。その一角のリボーと幼いころ約束を交わした美柚樹。

 

 

 彼女のトレーナーと料理人としての二足の草鞋を目指し、そして見事に資格を獲得して鳴り物入りとしてトレセン学園の職員となったのはシンボリルドルフたち高等部の生徒たちが当時中等部に入りたての頃。明るい未来を見れるだろう。食育とトレーナーの観点からも食べすぎるウマ娘たちの増量過多対策、よりワンランク上の肉体づくりへの道を拓く。そう思われていた。

 

 

 心優しく。そしてツッコミを欠かさない苦労人気質。支えたくもなるが、気が付けば支えているその人柄に当時のウマ娘たちは彼女に選ばれたウマ娘たちが羨ましかった。まだまだ新米ゆえに拙さはあったが、その努力が見え隠れする説明や、料理で頑張る姿に発奮した。が・・・それなりに経験を積み、馬娘たちを世に送り出した先輩のトレーナーたちにそのウマ娘たちの指導権を裏から取られ、取り返す間もなくあれよあれよと手元から離れていく。

 

 

 その後も多彩な才能に妬みとチームの維持のためのあれこれがあったのだろう。ウマ娘のトレーナ―になろうとしても次の日にはすでに先約済み、チーム結成どころか、ウマ娘一人も取れないという異常事態を当時のシンボリルドルフたちは鮮明に覚えている。

 

 

 「ちゃんとウマ娘の才能を見る目があったし、説明下手は否めないが、絵にかいて、あるいは自分で実践したりして説明し、二人三脚で歩こうとした。自然、料理も腕をかけたゆえに惹かれる人が多かったが・・・」

 

 

 「それを妬み、うまく当時の理事会を動かしての干しを敢行・・・トレセン所属トレーナーで誰一人として長く続かなかったという悪評もついてとうとう料理だけを専念・・・」

 

 

 今でこそ明るいが、料理のおばちゃんになってもよろしくね。そう言って笑う美柚樹の煤けた笑顔に当時の皆がいぶかしむがすでにチームに所属して頭角を現していたシンボリルドルフたちは移籍もままならずに見るしかできず、結局理事長やたづなが動くことでそのトレーナーたちと理事会の一部は処分を受けることで終了。

 

 

 多才な若き女性によって自分たちの地位が脅かされるかもという心理もあって動いたとされるその事の顛末はトレセン学園高等部のメンバーは話したがらない暗い話であり、教師、トレーナーたちも口を紡ぐ。

 

 

 それゆえに外部には漏れていなかったことだが、今は違う。

 

 

 トレセン学園にいながら世間の評価を集める料理人であり、実家も農園として成功している美柚樹。彼女との約束を起点に伝説へと上り詰めた王者がいる。王者、リボーからすればまさしく美柚樹の料理と言葉は宝物であり、大切なもの。その恩人の道を閉ざし、歪めたやつらがいると知れば怒るだろう。そして、やもすればそれを見逃した学園を許さないかもしれない。今の日本のようになめられていたイタリアの競バ界のイメージをその実力で欧州、そして世界の見る目を変え、掌ドリルさせた世界のトップスターの怒りだ。

 

 

 間違いなく世界中のファンはブちぎれる。王者の道の出発点であり求めていた思い人を汚した学園。と。

 

 

 「私たちが事情を説明しつつ、美柚樹さんからも説得、最悪この話をしないように頼んだりするのがいいだろう・・・しかし」

 

 

 「駄目ですね。もうこの話で持ち切り。口の軽い高等部生がもう話しているかも・・・」

 

 

 それがどれほどのものかと想像すると思わず小さく肩を震わせるふたり。リボーが美柚樹がトレーナーとしての道を断念したことを問い詰め、そこをどうにかごまかす、正直に話したとしても、宥めてもらえるように説得することも考える。けど、その時間はあまりないかもしれない。あの衝撃的な登場からのプロポーズのような専属料理人へのスカウト。

 

 

 しかもまあ、ご丁寧にリボーと美柚樹の写真を撮るウマ娘もいれば既に学園はこの話で持ち切り。十数年越しの再会。一応は料理人とトレーナーとして動ける美柚樹と、欧州最強どころか世界最強の一角に上り詰めたリボー。ロマンチックな話かつその当事者たちが片や学園中の胃袋をつかむ人気者。片や生きる伝説だ。人の口に戸は立てられぬ。それはウマ娘も同様で既にうわさとして広まっている。

 

 

 ここから過去を知るウマ娘が話を盛り上げるためにぽろっとこぼし、そこから伝言ゲームでどんどん話が盛り上がり、リボーに伝わり、美柚樹へ伝われば・・・今でさえパパラッチや記者の対処に理事長たちが追われているのに記者が増え、更にはトレセンの過去をほじくり返す輩も増える。間違いなく。結果がどうであれ、学園に余計な負担と気苦労が増えるの白日。

 

 

 「今度私から美柚樹さんに伝えておく。汚点なのは確かだし、対処はしたと言えども怒るのも分かる過去だ。だが・・・関係のない中等部の生徒、トレーナーまでこのせいで練習に支障が出ては申し訳がない」

 

 

 「私の方でもあまり過去の話であることない事話さないよう伝えておきます。リボー氏もしばらく学園にいるそうですが、美柚樹さんのそば。すぐにあれこれすることはない・・・と思います」

 

 

 その対処は結局当事者の美由柚樹に何かあった際にリボーの対応を頼むことと、過去の事で余計な尾ひれをつけるな、確かなこと以外は話すな。それでなくても必要以上に言うなと生徒たちに伝えるしかなく、優秀な二人の頭脳ではそれが何度目かの結論であることもあって重いため息をついた。

 

 

 「後は・・・できれば全部ひと段落した後にリボー氏が我が学園にいてほしいのだがな。あの実力と指導力。そして美柚樹さんもいてくれる。彼女の料理と人柄は癒しだ」

 

 

 「そこは同意です。昔練習終わりにこっそりくれたあのデザートの詰め合わせセットの味は今でも・・・」

 

 

 「む? もしかしてあの・・・」

 

 

 「はい。プロテインバー、野菜ジュース。そしてハーブティーセット。日持ちするカップケーキ各種。あれ以上のスイーツはとてもとても」

 

 

 「ああ・・・あれは素晴らしいものだ・・・リボー氏も魅了されたのだろうな」

 

 

 二人とも学園のダメージへの話はどこへやら。もう頭も心も疲れたせいで話をするのも嫌になったか、その後は自然とスイーツの話となり、いつか頼みに行くことになった。皇帝と女帝と言われようともまだうら若い乙女。ましてやよく食べるウマ娘。甘いスイーツの誘惑は強敵なのであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大変なことになっちゃったねー美柚樹お姉ちゃん」

 

 

 「互いに互いだから何とも言えないけど、そうねー」

 

 

 あの後、すぐさま私を専属料理人にしようとはしゃいでいたリボーに学園のメンバー、特に世界でも注目され始めているウマ娘たちと理事長の引き留めと、私自身もトレセン学園に愛着がわいているからしばらく考えさせて。と説得をした。

 

 

 リボーは私といられるならいいよとOKサインを出したけど、同時にこのトレセン学園への滞在許可をもぎ取った。まあ、実際にブロワイエも認めた実力者、多くの超新星。皇帝の後を継ぐかもしれない才能。そしてリボーの推薦でドバイのレースに出た際に覚醒して勝利をもぎ取ってきたジャスタウェイ。まさしく黄金時代といえるこの学園を見るのは引退してもウマ娘としての、トレーナーとしての感性もあるからなのだろう。

 

 

 未だ皇帝シンボリルドルフの強さとレースも強いが何よりもライブでの多芸ぶりと自分のレース、ハリボテ記念を作り上げたハリボテエレジーなど世界に知られている才能は知らないが、リボーの口から広がればさらに面白いことになるとは思う。

 

 

 「で? 今夜は何を作ってくれるの? デザート楽しみだよ~♪」

 

 

 「焦らない焦らない。今夜はシュークリームとドーナッツよ♪ んふふ~♪」

 

 

 そしてまあ、ひと悶着が終わり、授業が終わる間理事長たちとリボーはトレセン学園を見学。私は晩御飯の仕込みで忙しく、晩御飯になれば私とリボーへの質問攻めで楽しいではあるが落ち着いた食事をとれはしなかった。なのでここでデザートの時間を過ごそうということに。

 

 

 「じゃ・・・食再現・・・ん・・・よし・・・」

 

 

 私の能力でグルメ時代の食材を再現。今回使う食材は当然ゴールドにんじん。本当に金色に光るどころか金塊そのものなニンジンで癖のない甘みが特徴だが、私が再現したゴールドにんじんはちょっと違う。上空2万メートルにある野菜の楽園ベジタブルスカイで自生していた特別製。あれを使って簡単なおやつにする。私も疲れているのと、まさかリボーが来るとは思わなくて仕込みもしていないしね。

 

 

 ちなみに、あそこには自分でどうにかたどり着いて生還する際にオゾン草以外の野菜の味を全部再現できるようにしたのと土壌の火山灰を収穫。後日私のレストランで再現できるようにしておき、この世界でもそれをしたのでうちの野菜の栄養価は頭二つ、三つ飛びぬけている。

 

 

 まずはゴールドにんじんを千切りにして、それをミキサーにかけて細かく、それこそスムージーよりも細かく砕く、シェイクする。そして次にそれを濾していくのだがその際に甘味を引き出すために湯せんを使いつつする。大体60度前後だろうか。その温度に2分ほどつけておくと甘さが一層強まる。節乃様に教えていただいた工夫だ。

 

 

 その間に搾りかすのにんじんだが、これはまだ栄養も甘味も十二分残っている。なのでこれは後日パウンドケーキの生地に練り込むために一日冷蔵庫で寝かせておく。砂糖も使わずに普通のパウンドケーキよりも甘く、栄養もまんべんなく取れるのだからこのにんじんはありがたい。

 

 

 湯せんであっためたにんじんエキスを一度ゆっくりと冷ましている間に今度はチョコの油田で薄味かつ、ミルク風味の強いものを再現。溶かしていく。そして次は少しレベルは落ちるが実は作っていた生クリームとシュー生地を取り出す。その間にドーナッツを揚げていく。揚げ物は赤子、あるいは手間のかかる子供のようだというがまさしくそうだろう。何せ手を抜けば焦げて美味しくならず、早すぎても食べられない。程よいタイミングと温度を見極めねばいけない。けれどそれが出来ればまさしく伸びしろも味の工夫もできる。

 

 

 「ん~いい香り♪ ねえねえ。あの農園も今いい感じなの?」

 

 

 「ええ。トレセン学園御用達になって兄弟も両親も儲けているといつも言うわ。だけど人手が足りないからトレセン学園でバイトのできる子に短期バイトの募集をかけてと収穫時期はよく言われちゃうのよ」

 

 

 「あーフランスとかで農夫募集、農耕用トラクターのCMの撮影したけど、大きな農園はやっぱりそうなんだね~」

 

 

 「ふふ。機械化が進んでいるけど、やっぱり人手、それもウマ娘の皆の体力は頼りになるもの」

 

 

 部屋を満たしていく揚げ物の香りとチョコ、そしてこの世界じゃ私とその農園でしか味わえないにんじんの匂いに耳もしっぽも期待で揺れるリボー。もう少し時間がかかるのでその間話していると農園の話に。やはりというか、ウマ娘、リボーほどの有名人だとその手合いの話もよくあるそうだ。人より並外れたパワーを持つウマ娘。力強さやレース場の手入れなどでこの手の機械を使う時があるのでアピールするキャラクターとしてはいいものなのだろう。しかも基本彼女たちは見目麗しい。

 

 

 力強く、綺麗で、そしてよく食べる彼女たちは結構食品や農業関連のCMに出る機会は多い、ついでに言えばバイトも。私自身もあの世界の体力を引き継いでいるから人の数十倍は働けるし、ウマ娘たちなら人基準で辛い重量ですら軽々と動かすので収穫作業は本当に助かる。なので収穫時期は土日、レースの無い日程の日に短期、日雇いバイトを募集するし、よくゴルシちゃんとジャスタウェイちゃん、サイレンススズカちゃんとスペシャルウィークちゃんは参加してくれる。

 

 

 その際にジャスタウェイちゃんからはこけし・・・こけし? のような何かをもらったり、腰を痛めたお父さんのためにギプスをその場で作り始めたゴルシちゃん(お代はにんじんで請求された)などなどネタには事欠かないし、楽しい。

 

 

 バイト代とどうしても規格外、傷などが原因で出荷できない野菜などはおまけでつけてあげるのだが、これをみんな喜んでもらってくれるのでうれしい。あと、最近はハルウララちゃんも来たりで賑やかだ。

 

 

 しかし、リボーのCMか・・・アメリカのはちょこちょこ見るし、前の特番で見たが、トラクターのCMはまだ見ていない。後で動画サイトでチェックしておこう

 

 

 「所でリボー。貴女、私といるためにトレーナーとしても動くと言ったけど、いいの?」

 

 

 「いいのいいの。どうせ一時だし、アメリカ、イタリア、あっちでのトレーニング技術の基礎とかくらいだし、模擬レース溶かしながらアドバイスをするくらいよ。だめでも美柚樹お姉さんの居候しつつ農園の手伝いをすればいいし」

 

 

 「あの大騒ぎをしてまで日本に来たものね。ちょっとした長期休暇ということで羽休めしつつのんびりここのレースを見てもいいと思うわ。あと、商店街周辺もおいしいご飯が多いのよ? おっと・・完成♪」

 

 

 リボーの指導なんて短期だとしてもみんな受けたいと思うのだけど・・・大丈夫なのだろうか? 短気だとしてもトレーニング法。それも世界を認めさせた選手のものだ。凄いことになりそうなものだが。まあ、その際は私も手を貸せばいいだろう。なんやかんやトレーナー資格はまだ持っているし、治療用の食材も多く再現できるから助けにはなれる。

 

 

 話している間に完成したドーナッツにチョコ油田とゴールドにんじんエキスを混ぜた専用のものを上から塗り、そこに色とりどりのビターチョコチップをパラパラ。生クリームとこれにもにんじんエキスを混ぜたものをシュー生地の中に注入してしまえば完成。

 

 

 「ゴールドチョコドーナッツと、激甘にんじんシュークリーム。どうぞ召し上がれ♪」

 

 

 

 

 

 改めて、この香りと見た目、私の本能にガツンと殴りつけてくるこの料理は心を躍らせてくれる。スポンサーやお偉いさんに招かれて食べた三ツ星レストランのデザートよりもずっと。

 

 

 綺麗に焼けたドーナツの上にかかる金色のチョコクリームに色とりどりのチョコの欠片。揚げたてのチリチリと聞こえる音に、しっかりと鼻腔に入ってくる甘い誘惑。いわゆるジャンクフード、手軽なお菓子の一つのドーナッツのはずなのに、その香りと音、見た目の良さは高級スイーツに引けを取らない。

 

 

 そして、もう一つのシュークリームはふわふわとした雲のような生地の見た目に冷気に混じってくる匂いと、食べればその冷たさとまろやかなクリームと生地の味わいを楽しめそうなのが想像できてしまう。しばらく眺めていたくなるデザートに思わず見入るが、ドーナツは冷めてしまうともったいないし、シュークリームも中身が温まるよりは冷たいうちに食べるのが一番。

 

 

 「いただきます。ん・・・・っ! んっ、んうぅ~~~♡」

 

 

 「ふふ。美味しい?」

 

 

 まずはドーナッツからと食べたが、口の中がうま味の情報でパンクしてしまう。そう思えるほどのいくつもの風味が駆け抜け、熱々のうまみが口の中で踊る。歯を立てればザクザクと音を立てるほどに歯ごたえがあるのにすぐ砕けて程よい食感を与え、油と小麦粉の心地よい香りと風味が来る。その後に私の知っているにんじんではありえない。けどにんじんとしか言えない味。まさしく次元の違う甘さのにんじんの味が強く口に響く。

 

 

 にんじんの強烈な旨さと甘さの下地を整えてくれるのは甘さ控えめなチョコの部分。アメリカでは甘すぎるチョコが多かった故にこの素朴さとカカオの風味を際立てるビターのチョイスがとてもおいしい。ドーナツの食感、溶けたにんじんエキス配合チョコの液体、そして両方の風味、香りのうま味のトリプルパンチが立て続けにヒットして、それぞれの良さを損なわずに引き立てる。にんじんエキスを主役としているが全員が名助演賞をもらえると言っていいだろう。

 

 

 おいしすぎてすぐに呑み込むが、その後も必要以上に甘味が口に残らずにさわやかな後味を残す。味は残りすぎないが記憶にはいつまでも残る最高のドーナッツ。あっという間に一つ平らげ、残るのはもう一つ。

 

 

 「おいしい! こんなさわやかなにんじんスイーツ初めてよ! このドーナツだけで一週間いけちゃうくらい」

 

 

 「うふふ。虫歯と太るのは注意よ? さてさて・・・お茶もわいたし、どうぞ」

 

 

 「はーい。じゃ、次はシュークリームを・・・っと・・・はぁああー・・・♡ 幸せぇ・・・」

 

 

 そのままドーナッツを食べたい衝動を抑え、今度はシュークリームに手を伸ばす。指先に感じる冷気は先ほど出来立てのドーナッツを食べた私手に心地よい感触と冷えをくれる。暑い日の練習や仕事を終えた後にこれと冷えた紅茶、もしくはコーラなどをグイっと一杯など最高だし、はまるだろう。

 

 

 シュークリームをかじれば先ほどのザクザクとしたドーナッツの心地よい歯ごたえとは別で歯を立てればすぐに沈むのだが、その際になる音が心地よい。

 

 

 もう少し深く歯を立ててクリームをこぼさないようにかじってクリームを口に入れれば先ほどのにんじんの甘味がまた私を襲うが、先ほどのインパクトとは違う。ファンクで強い味を叩き込んですぐに去っていく嵐のような感触とは違う、緩やかな川の流れのように緩やかに、でも力強く味が残るし、何よりチョコ以上に優しく味を引き立てていきながらカスタードクリーム以上に口の中に居残りするこのクリームが何時までもその余韻に浸らせてくれる。

 

 

 合間に舌と歯で生地を潰せば優しく生地の香りもふんわりと広がっていつまでも幸せな味の音楽を演奏してくれる。最高のコンサートではないか。しかもこのシュークリームがある間は何度もアンコールが可能。これはファンが増えるだろう。

 

 

 「甘さが何時までも残るのに、嫌じゃない・・・さっきのドーナッツとは真逆なのに。しゅごい」

 

 

 「わざとクリームの粘度を強めましたが、どちらもお口にあったようで」

 

 

 私が一息ついていると美柚樹お姉ちゃんは紅茶を入れてくれた。優しい紅茶の香りは先ほどまで甘味一色に満たされていた私の気分を切り替えてくれる。甘さを続けては麻痺する。切り替えるという意味でも紅茶という存在はデザートには欠かせない。

 

 

 「んっ・・・ふぅ・・・落ち着く・・・そして、またすぐにドーナツを食べたくなっちゃった」

 

 

 「のどに詰まらせないでね? ふむ・・・今度は生地をもう少し固くして食感を増してもいいかな・・・・」

 

 

 淹れてくれた紅茶を飲めば甘味よりも香りと少しの苦みが来るが、逆にこれがいい。この香りと味が甘味に浸された私の舌をリセットしてくれる。リセットされれば当然記憶に刻まれた甘味たちを欲しくなってしまう。

 

 

 ドーナッツ、紅茶、シュークリーム、紅茶の順番で食べていき、あっという間に完食。

 

 

 「はぁー・・・おいしかったぁ・・・こんなのをいつもトレセン学園の皆は食べているの? ずるいなあ」

 

 

 「これからは毎日料理をしてあげる。ふふ。あ。そう言えば最近トレセン学園で減量や体重調整のためにサボテンステーキなどもやろうかと考えているけど、どうかしら・・・」

 

 

 「い、いやーあれは癖も強いよ? 専用のソースもあるけど、日本のウマ娘たちの舌に合うかなーって。テレビの企画で食べたけど、好みは分かれちゃうから食堂ではちょっと」

 

 

 この後、美柚樹お姉さんと夜中まで色々語り尽くし、その中で久しぶりにご家族の方に電話をして、臨時バイトとして農園の手伝いに受かった。そして、時差ボケ矯正とはしゃいだせいかな。すぐに寝ちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけで、美柚樹シェフにはトレセン学園にいてもらうためにゴルシちゃんの魂の叫びを聞いてもらおうと思ったんですよ」

 

 

 「うん・・・そのことはよくわかったわ」

 

 

 深夜。急遽スマホの通信が鳴りやまず取ろうとした瞬間に私の部屋の蛍光灯から開けられて入ってきたのはゴールドシップことゴルシちゃん。私の料理を良く出店に出したり、歩き売りしていることがあるし、その奇人ぶりは滅茶苦茶で周りを振り回しまくるハジケリストかつ天才ウマ娘だ。

 

 

 で、まあ、すっかり寝ているリボーを起こさぬように別室に移動すればゴルシは私をトレセン学園に留めるために演奏をするみたい。だけど・・・

 

 

 「でもね、なんで・・・なんで、木魚?」

 

 

 「それはゴルシちゃん百八式の秘密・・・乙女のひめゴト・・・それを聞くなんて・・・エッチ・・・」

 

 

 「え? え? え?」

 

 

 木魚で魂の叫びと言ってもそれはむしろ魂の安寧のための曲ではないか。そう思ったのだが何かに触れたのかゴルシちゃんはほほを染めて口元を隠してもじもじし始めた。

 

 

 本当に見目麗しい。ウマ娘界でもトップランク。世界を回ったリボーも認める美貌でそれをされればきっと世の男性陣はイチコロだろう。・・・中身を知らなければ。

 

 

 「ご、ごめんなさい・・・そ、それじゃあ」

 

 

 「そう・・・知るには相応の手順が必要・・・だから・・・クイズで応えてもらいましょー! さーぁ始まりましたゴルシちゃんクイズ~~!! イェーイドンドンパフパフー!!」

 

 

 一応、彼女も何らかのことがあったのだろうと素直に木魚の音色を聞こうと思ったら私にクイズ帽をつけて、そばに「へぇ~ボタン」を起き、何か商品を置き始めた。え? あれ? そんな安っぽく晒しちゃっていいの? ねえ?

 

 

 「え!? あの、クイズでさらしちゃっていいの? てか今丑三つ時!」

 

 

 「なーに言ってんの。乙女の秘密と木魚がどう関係するんだよ。晒していいだろ。商品はこのメロンパン入れ。さあ。早速クイズに・・・デデン!

 

 

 

 第一問。生徒会長のシンボリルドルフですが今日はなったダジャレ・・・あぁああ! クイズなんかやめだやめええ! 今すぐ中止だぁあっ!! それより私の木魚もってこい! ゴルシちゃんの荒ぶるパッションで演奏してやらあ!」

 

 

「メロンパン入れとクイズカードぶん投げたー!? ああっ! ガラスが!!」

 

 

 あの番組の商品を用意して着替えたと思えばクイズを読む途中で頭を掻きむしってクイズカードとメロンパン入れをそりゃあ見事な蝦ぞりでぶん投げて私の部屋も窓ガラスを破壊。ああ・・・! また。もう、これで何度目かの臨時出費。むなしく用をなさなくなった窓から隙間風が入り込み、そして始まった木魚の演奏会の音色が夜空に溶けていく。

 

 

 ピタゴラスもアルキメデスも計算できないこの流れに呆然としていたが、本当に木魚の音色と演奏はうまい。はぁ・・・もう、今夜はこれを聞いた後に間違いなく押しかけてくるウマ娘の皆に事情を説明して寝よう。窓は・・・その後で・・・

 

 

 「って本気で僧衣を纏っているし! そして・・・マックイーンちゃんを弔っているー!!! 死んでない。死んでないからマックイーンちゃん!!」

 

 

 「うぅ・・・! 止めねえでくれ! ゴルシちゃんの悲しい真実を知った慰みの木魚を止めねえでくれ! あれはそう・・・どうやって美柚樹を引き留めつつ一緒にお遍路さんに行こうか考えていた時だ・・・」

 

 

 なぜか片手に数珠を持ち、木魚を撃つ手を止めないのですが線香を焚き、メジロマックイーンが以前撮った(ゴルシちゃんが盗撮した)くるっと回ってワオ! な写真を遺影に見立てていてもうお葬式のそれだ。不謹慎にもほどがある。そしてぶっ飛んでいる。

 

 

 今度は涙を流しながらも木魚を叩くのをやめないゴルシちゃん。なんでグルメ時代の料理人の私でも抑えきれないのよ・・・! あと、学園に留めようとしながらお遍路さんの企画を考えている当たりで既に学園は離れちゃうし・・・!

 

 

 「そのメンバーにマックイーンを入れようとしていた時に、俺の頭の中に赤と黒のチャラいマスクの男がささやいたんだ「ゴルシちゃんがマックイーンと側にいておじいちゃんちの畳のように落ち着くのは、実はゴルシちゃんのおじいちゃんの生まれ変わりなんだよ。俺ちゃん嘘つかない」と言ってな・・・あたしの大好きなおばあちゃんの生まれ変わり・・・」

 

 

 「おじいちゃんどっか行っちゃった!? てかそのマスク誰!?」

 

 

 割と意味不明かつマックイーンちゃんへとよく側にいる理由がわか・・・いや分からない・・・分かってたまるか。流石に防音効果も高い社員寮とはいえ、私の方は栗東寮に近いし、窓ガラスも割れて音は駄々洩れ。・・・・なんでかスクリーンとガムテで応急処置されているけど・・・どたどたと音が近づいていくる。

 

 

 間違いなく足の力強さでウマ娘だろう。そして、声からして・・・

 

 

 「美柚樹さん! 大丈夫ですか!? ゴルシちゃん! またこんなことして!」

 

 

 「ゴールドシップさん! うるさいですわよ! 一体何時だと・・・な!? なんでその写真をもって・・・! わ、私に寄越しなさい!!」

 

 

 「またかゴールドシップ! 美柚樹さんの部屋にいたが今度は社員寮の床を全部音の鳴る床にでもしに来たか!!」

 

 

 「今何時だと思っているのよー・・・」

 

 

 まずはジャスタウェイちゃん。その後にマックイーンちゃん・・はあのポーズの写真に赤面。すぐさま見事なヘッドスライディングで写真を奪取。そこからエアグルーヴちゃんにダイワスカーレットちゃんとワイワイ来た。もう、深夜だというのに大騒ぎに発展中。あはは・・・・もう眠気とこのテンションのせいでどうにでもなーれな自分になってきているのがわかっていく。

 

 

 「よーしみんな集まったな! 美柚樹シェフを引き留めるために皆で一緒にこれを見て応援するぞ! ライトアップ!!」

 

 

 「「「そこ光るの!!?」」」

 

 

 そして、どんどん集まる人を見てゴルシちゃんは急に立ち上がり、耳当て? がぱかりと開いて光をスクリーンにあてて何かを見せていく。そのアイテムは一体何なのだろうかと小一時間問いたいが遠慮なく映像は流れていく。

 

 

 『ゴルシちゃんシアター 二人の床屋さん』

 

 

 「なんか変なの始まった!?」

 

 

 

 ゴルシ「はぁー・・・お客さん来ないわねえ~・・・ゴルシちゃん憂鬱~」

 

 

 ジャス「もうゴルシったら。昨日もたくさんきたでしょ?」

 

 

 ゴルシ「あんなスポーツ刈りで終わる奴ら客じゃねーよ。仏様のパンチレベルのガッツのある髪か、貞子レベルの髪じゃなきゃうどんを打つよりも詰まらねー仕事だー・・・あーメケメケメケメケメケ・・・ピロッチ・・・! 客の予感」

 

 

 お客さん「すいませーん。カットお願いします~!」

 

 

 ゴルシ「お前元からハゲじゃねーか!! オラアカットしてやるところねーんだよ! カットしてやる前に植毛だおらあ!!」

 

 

 お客さん「ぎゃぁああああ!!」

 

 

 ジャスタ「シャー芯が頭に刺さっていくー!! あ、ああ・・・えーと・・お客さん。どれくらいで・・・?」

 

 

 お客さん「うぅ・・・ご、5ミリカットでお願いします・・・」

 

 

           完

 

 

 『次回、二人の床屋第二話。情熱のバラ へ続く』

 

 

 

 

 

 

 「ぜんっぜんわからん!!」

 

 

 「私、こんな撮影した覚えないわよ? え、CGなの? そしてシャー芯で植毛してのカットだけど自作自演なの? この謎のシネマムービーと内容合わせての意味なの? そして情熱のバラの次回予告と映像がまるで噛み合わない。ときめきやくざハイスクールって何よ!」

 

 

 次回予告の絵面すらも分からない、滅茶苦茶過ぎる映像と私たちの会話内容に一ミリもかすりもしないないようにリボーが寝ているのを忘れて思わず声を荒げ、ジャスタウェイちゃんもいよいよスイッチが入ったかツッコミが入る。ほんと、普段は真面目で聞き訳がいいし大人しいジャスタウェイちゃんとゴルシちゃん。真逆なのになんで仲がいいのかしらね。マブダチレベルで。

 

 

 「何言っているんだよ美柚樹シェフ! わかるだろゴルシちゃんのパッションを! 一緒にうまいからしラーメンを食べるために残ってほしいんだって!」

 

 

 「いらんわそんなラーメン! おでんにでもねじ込んできた方がいいって! 食べるたびにむせそうなラーメン激辛ラー油マシマシ系でオッケイだよ!」

 

 

 「こんな怪文書と毒電波を流す前に帰りましょうゴールドシップさん。もう・・・あふぁわ・・・何時だと・・・」

 

 

 「そうよぉ・・・もー・・・んにゃぁ・・・眠い・・・」

 

 

 すすれば麵を吹き出しそうなラーメンのために涙目で懇願するゴルシちゃんとスイッチ入ったジャスタウェイちゃん。中等部組のスカーレットちゃんとマックイーンちゃんは目をこすって早く戻ろうという。そりゃあ、夜中の三時なんで眠いですよ。私も眠い。リボーは多分熟睡しているせいで起きないだけ。

 

 

 「いやいや、もうひと押しだって! イタリアかアメリカかわからないけど、シェフに私たちの情熱をお見舞いするぞし続ければいずれ」

 

 

 「んーゴルシちゃん。じゃあ、今夜は一緒に寝るということで、もう休まない? ここで寝ていいように布団もあるし、欲しがっていたルービックキューブもあるよ?」

 

 

 このミッドナイトゴルシちゃん劇場をどうしたものかと考えていたらジャスタウェイちゃんがいつの間にやら予備の布団を取り出して敷いていた。

 

 

 「わっほーい! みんなでパジャマパーティーだな? 任せろ。ちゃんと眠るためにこのルービック百物語で・・・・え?」

 

 

 そこに飛び込み、何時仕入れていたのか8×8×8のルービックキューブを手に取るゴルシちゃん。その直後にすぐさまジャスタウェイちゃんがゴルシちゃんを毛布で巻き、その上からいつの間にやらエアグルーヴちゃんがロープを持ってきてその上からグルグル巻きにしていく。

 

 

 「では、お願いします副会長」

 

 

 「エアグルーヴでいい。ジャスタウェイ。私は悪いがゴールドシップを自室に押し戻して休むが、メジロマックイーンとダイワスカーレットの二人を送ってもらっていいか?」

 

 

 「了解です。それと、ゴルシちゃんが迷惑をかけました。私もあとでしっかり言っておきますので・・・」

 

 

 芋虫のようになってじたばた暴れるゴルシちゃんの口にガムテープを貼りつけてから私の部屋を後にするエアグルーヴちゃん。まあ、これ以上の騒ぎでのご近所迷惑は駄目だからね。ぱっと見、誘拐事案にしか見えないけど。

 

 

 そして、ジャスタウェイちゃんもマックイーンちゃんとスカーレットちゃんにもう大丈夫だからと伝えて二人の背中を押しながら部屋を出て、最後に私に一礼してから退出。台風一過。そうとしか言えないほどに暴れまわった。正直寝たいのだけど、今から寝たらたぶん起きれない、そして食堂の朝は早いのだ。

 

 

 「・・・起きていよ」

 

 

 しょうがないのでそのままリボーの弁当とケーキを作ることにして、紅茶をキメながらの過ごしての徹夜敢行。その後は半日有休をもらい、昼前までに夜の分の仕込みも終わらせてからベッドに沈み、気が付いたら夜まで爆睡していたわ。

 

 

 リボーが起こしに来て、ほっぺを膨らませる姿がかわいかった。




 ジャスタウェイは普段はスズカレベルで大人しく、聞き分けもいい優等生ですがゴルシに振り回され続けると長いツッコミと割と容赦のない手段で鎮静化を選ぶときがあります。銀魂成分ですね。あと、工場で生産されていたジャスタウェイを作る趣味。プラモ作りが得意。

 すでに覚醒しており実力は学園でも上位。親と一緒に凱旋門賞の見学の際にリボーに出会い、推薦でドバイのレースに出て優勝。名前を売った後にお土産を持って帰国。
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