「ふわあー・・・かふ・・・よし・・・時間通り・・・うん・・・うん・・・」
朝、いつもより少し早めに起きて身だしなみを整え、正直何度目かのチェックかわからないけど鏡の前で髪型と顔を確認する。
「汚れも無し・・・髪艶よし・・うん・・・うん・・・」
レース前、インタビュー以上に見た目を気にしてしまうが、本当にこればっかりはしょうがないのだ。自分のミスであの人の評価を落とせない。ミスパーフェクト、緋色の女王と世間は呼んでくれるが、パーフェクトはきっとあの人にあると思う。
その背中を追いかけて、教えをもらえ、こうして今日は一緒に出掛ける。舞い上がるのも無理がないはず・・・よね?
「よっし・・・行くわ!」
準備は大丈夫。香水もいいものをつけた。どこもおかしくはないはず。それを確認し終えると白のワンピースとそれに合わせたサンダル。薄麦色の帽子をかぶってからまだ爆睡しているウオッカを見る。
こいつも普段はかっこいいウマ娘になるため、アタシに負けないためにと日々の鍛錬を欠かさない・・・欠かさな過ぎて授業のトレーニングがぬるいとさぼって自主練に励むほどだ。
その練習の虫が爆睡するのは・・・アタシが今日デートする相手。リボーさんにしごかれたからに他ならない。
こいつと一緒に弟子入りしたのだが、アタシはいわゆるコントロール型の逃げ、先行を鍛えてもらっている一方で、ウオッカは追い込み、追い込みに近い差し型を鍛えてもらっているのだが、なんやかんや繊細な部分がある。リボーさん曰くウオッカは「器用な不器用」
アタシはこのスタイルをきわめてスズカ先輩とは別の逃げでねじ伏せるがウオッカは器用な分どれをしようか迷う部分があるゆえにその戦法とパターンを散々に叩き込みまくった結果、最後はへばって一人じゃ動けないほどになり、風呂と食事を終えれば爆睡。目覚ましもしばらく放置したが起きる様子がない。
「・・・まあ、ぐっすり休んでいなさい」
リボーさんに何度も戦術を叩き込まれ、実践するためにターボにリボーさん、サンデーさんと併せで散々走り回らされていた。オーバーワークを越えたところで美柚樹さんたちのケアと料理で回復したとはいえ今日は爆睡、筋肉痛は確定なこいつを見つつ私は部屋を出る。
リボーさんとのデートを差し引いても久しぶりの買い物だ。心がウキウキしてしまう。
「あらー早いわねえ。スカーレットちゃん」
「い、いえ! お待たせして申し訳ないです」
待ち合わせの場所に行けばリボーさんは既についており、黒のへそ出しの服に、ロングのジーンズときまっている。細い腰の括れとその肢体、美貌は周りの人達も男女問わずで見るほどで注目の的になっていた。
私よりも早く来ていて笑顔で手をひらひらと振って迎えてくれるのが嬉しく、私も釣られて笑顔で返す。
「大丈夫よ。私も今来たばかり。それじゃーまずは荷物にならない小物から買いに行きましょうか」
「あの、それはいいのですが眼鏡とかで隠したりしないでいいのです?」
「ここらへんはウマ娘の子たちも多いでしょ? 意識しなければそこまで目立つほどじゃないわ。ささ。エスコートしますよ女王様」
リボーさんだと気づかずともそのスタイルと顔で注目を浴びているんだけどなあと思っていたら私の手を引いて手の甲にキスをしてくれたのだ。
世界のスター、ウマ娘として、レースで勝利を目指すものなら憧れないのが嘘なほどの英傑がアタシに・・・!
「ひょぇっ!? い、いいい・・・!」
「うふふ。かわいい。それじゃ、えーと・・・まずはたしかいい小道具、アクセサリーショップがあったからここに・・・」
にっかりといたずらっぽい笑顔を見せつつ私の手を引いて歩きだすリボーさん。アタシは・・・あー・・・もう、思考が定まらずにそのまましばらく呆然としていた。
「あーあったあった。このティアラシリーズ。スカーレットちゃんのものでよさげなものがあったからどうかって」
「オリーブの冠に・・・花冠・・・赤、青のリンゴのものもあるの? ほえー・・・」
「スカーレットちゃんと同じものもあるわね。あらあら」
さっきまで真っ赤になってあわあわしていた可愛いスカーレットちゃんと一緒に移動してついたのはウマ娘たちの勝負服などのアクセサリー、そして小道具などを売るお店。海外の名デザイナーの作品なども置いてあるということで来たのだがあたりのようだ。
私達イタリア、欧州周辺のウマ娘のレースではオリンピア、そしてローマなどの影響もあって優勝トロフィーや盾以外にも冠などをもらうこともある。そしてそれをつけてレースに臨む者もいれば冠に合わせた新しい勝負服を新調することも。
日本だとそういうノリは薄いと思っていたのだが、スカーレットちゃんやマチちゃんなど帽子やティアラの人気も伸びてきている様子。
「あ、あったあった。このティアラどうかなーって」
「オリオンベルトティアラ・・・って高!? ちょ、ちょっとこれは・・・」
「ああ。今日は私の奢りだから気にしないでいいわよ?」
で、せっかくの愛弟子なのだ。ターボちゃんたちには専用の靴と技術。もろもろを渡していたがこの子たちには何もしていないなーということでプレゼント。大粒のルビーが3つはめ込まれたプラチナのティアラ。デザインとその名前も私の知る名匠で間違いないので即買い。
「い、いやそれでも・・・」
「こういう時は大人に頼りなさい。デザインも悪くないんじゃない?」
「もちろんいいものですけども・・・」
「なら決まり。ま、飾るなり使うなりは任せるわー」
「ありがとうございます! 大切にします!」
それ以外でもオリーブの冠とかも買ってから今度は髪の毛としっぽの手入れに使うブラシの購入。私とスカーレットちゃんは髪を伸ばしている。その分髪の手入れには時間がかかるし、冬は静電気の問題もある。なのでまあ、豚の毛を使った猫のブラッシングに使うものの人間、ウマ娘用のものを数点購入。
あとはアロマでウオッカちゃんにも合いそうなものを数点選んで次の場所に。
「んー・・・この靴もオシャレ・・・あーでもヒール高いなあ」
「ヒールが高いのは怪我もあるかもだし、後は壊れちゃうしねえ。あ。これはどうかしら?」
「あ・・・確かにいいかも♪ ふふ。じゃあこの靴と。後は・・・外出用の予備で・・・」
今度は靴屋さん。なんやかんや普段は制服やらジャージ。靴も運動靴か学生の靴。とはいえなんやかんや外出もあるしウマ娘はアイドルの面もある。学園でもアイドルかつ優等生のスカーレットちゃんだし、色々外聞も気にしているんでしょうねえ。
でも背伸びをしすぎて変に奇をてらうのは避けつついいものをちょいちょい。ここら辺。ウオッカちゃんと言い合いをしつつ逆の声を聞いたりして選択するから磨かれているのでしょう。
「じゃあ、これを買ってと・・・あ。そうそう。よければちょっとクレーンゲームしに行かない?」
「大丈夫ですよ?」
「ありがと。それじゃースピカの皆の人形集めに行きますか」
「うふふふ・・・これで芦毛コレクションコンプリート・・・後は・・・あ、ゴルシちゃんとマックイーンちゃんの運動着バージョン! これ取ってゴルシちゃん!」
「飽きちゃったでゴルシ~・・・」
「うーん。あそこで取るのは後にしましょう」
「そ、そうですね。そのほうが」
何やらゴルシちゃんとジャスタちゃんがカバン一杯に芦毛のウマ娘のぬいぐるみを取りまくっているので私たちは別の台に移動。
スカーレットちゃんも「下手に絡まれたら何が起こるかわからない」と言われたのでそれに甘えつつ、スピカの皆のぬいぐるみの取れそうな台を探す。あ。ちなみにカノープスの方は既に保存用含めてコンプリートしている。
「さてと・・・じゃあまずはスカーレットちゃんから・・・」
「あ、あのー・・・」
「ん? どうしたの?」
「良ければですけど、あれも取ってくれないです?」
ちょっと台を変えるだけでスピカ、カノープス、リギルのメンバーのぬいぐるみがわんさかある台があるのだからやっぱりこのチームの人気がうかがえる。どれから行こうか。そう思っていたらスカーレットちゃんが私の裾をひいて隣の台を見ると。あったのは私とサンデーのぬいぐるみがある台だった。「世界の名バシリーズ」と銘打たれている。
あーそういえば前に許可したわね。ダテ・ナオトバージョンまでご丁寧にあるのだから驚く。後、何気にヘリポスまであるのはいいのだろうか?
「いいわよ。ふふふ・・・今度セクレタリアトとか、うちの世代たちもどんどん出てくるかもねー」
日本の技術は高いし、いやはやどうなることかと思いつつお金を入れてクレーンを動かして私たちのぬいぐるみをゲット。
「よしよし・・・ほい。スカーレットちゃん」
「ありがとうございます! ぜひとも部屋に飾りますね!」
「ありがと♪ さてさて・・・ぬいぐるみの方はと・・・・」
喜ぶスカーレットちゃんを見つつ今度はスピカのメンバーのぬいぐるみを集めにかかる私。私らの世代のぬいぐるみを頑張って集めていたのでクレーンゲームの腕前はそこそこあるとは思う。
で、まあいくつかのぬいぐるみを取っていたのだけど、妙に視線を感じるようになってきた。ざわざわと何か噂しているのと、スマホと私を交互に見比べている感じ・・・あー・・・おそらく私に気づいた人が出始めたか。ぬいぐるみとかあるから私の特徴を見たうえで判断しやすいし、ここに来る以上意識しちゃうわよね。
ウマ娘のぬいぐるみ、グッズ関連のクレーンゲームだらけだしここ。
「よし・・・最後にスぺちゃん取れたし。帰ろっか。荷物も多いし」
「え? あー了解です。じゃあ、私がこれを・・・」
私が目標をこなし、アイコンタクトで周りを見ろと言いつつ荷物をまとめればスカーレットちゃんも意図を理解してくれたので一緒にそそくさと移動。私はともかくスカーレットちゃんにもあれこれと付き合わせて疲れさせるのもねえー
その後は一緒にレース生活送っているとめったに味わえないジャンクフードに舌鼓を打ちつつサンデーが以前これを注文した際に「これでLサイズとかふざけんじゃねー!!」とアメリカンサイズとジャパンサイズの格差に怒ったのを思い出したり。
美柚樹お姉さんの料理のアイデアになるかなと人参ケーキを買いに行けばマックイーンちゃんが店の前で懊悩している様子をサンデーがびっくりするくらいに穏やかな顔で見ている様子を見たり。うん。賑やかな時間だったわ。
「えへへ・・・」
「ちぇーいいなあーリボーさんからのプレゼントだらけか・・・」
デートが終わって、リボーさんと選んだティアラと靴、ぬいぐるみを並べて悦に浸る。隣でウオッカが何か言っているが気にしないし気にならない。
「そういわないの。アンタこそ昨日は散々にしごいて戦術を叩き込んでもらったんでしょ? それこそ何百万も積まないともらえないものよ?」
「そりゃそうだけどさー・・・あー・・・でもなー」
気持ちは分かる。世界のスターとの二人きりの時間。しかもアタシも見惚れる美貌。ゴールドシップに負けないレベルなのだ。それが優しく過ごしてくれるのだから。普段は練習でビシバシ指示を飛ばすし、やりたいことをやらせてもらえつつもそのトレーニングで不必要なゆるみがあればすぐ。
そんな人との時間。羨ましがる声も今日は流してあげよう。それにまあ、抑えるための材料もあるのだ。
「あんたも今度頼めばいいわよ。それにほら、これ二人からのプレゼントよ」
「え? おおっ!!? いいのか!?」
「二人からむしろ喜んでくれるのならって」
そういってウオッカに渡すのはサンデーさん、リボーさんのぬいぐるみ。サンデーさんのサイン。そしてデビュー当時の勝負服の一つである黒のロングレザージャケット。
本人曰く「お古だが軍に頼んだ特注品だし頑丈。バイクのる際にも使えるからやる」とのことで中々いいデザインをしている。
「ヒャッホー!! これいいなあ、いいなあ!! いい感じに年季が入ってヴィンテージ、ダメージの入った感じがいいじゃんかよ!」
「大事にしなさいよ? サンデーさんの名前もジャケット裏に刺繍されているし、多分百万はくだらないものよそれ」
「もちろんよ! アメリカの英雄の一品だぜ? 大切にするって」
子供のようにはしゃぐウオッカを横目で見つつ、ティアラとリボーさんのぬいぐるみを見る。
もうあの人のように無敗ではない。まだ世界に飛び立てるほど実力があるとも思っていない。だけど、あの人たちと、スピカの皆と強くなってアタシもいつかあの人たちのように世界にも名をとどろかせる選手として立ちたい。今日の一日は改めてそう思えた。
スカーレットは素の状態でウオッカ、スピカ以外のメンバーに見せる対応をしちゃっています。年上かつ、目標足りえる人。トレーナーとしてもウマ娘としても一流なので惚れそうよねって。
史実だとウオッカが大和撫子かつ戦術理解も高いし吸収力もある。だけど器用すぎるせいで決まった戦術がないのでここではサンデーとリボーで追い込み、追い込み気味の先行策をガンガン叩き込んでいます。スカーレットの逃げに翻弄されないためにウオッカ以外のウマ娘でスカーレットの逃げに翻弄されてスタミナ潰された映像を俯瞰で見たり、サンデー仕込みの我慢と足の爆発力を鍛える(因子継承)したり。
サンデーサイレンスは我慢をトレーナーに仕込まれて大成して。リボーは逆にレースは自分でやって暴れまわる。ダートと芝と専門も違ったりで改めて対照的トレーナータッグだなあと。互いに調整とすり合わせもして教えられるので問題も無し。ここら辺でもウオッカ、スカーレットに教える立場としてはいいかも。
次回、多分勇者兼変態が来るかも・・・・?
良ければ感想、評価よろしくお願いします。