成人したウマ娘たちにアンケートとか撮ると面白い意見が出そうですね。
~リボーSide~
「おし。俺も経費の3000円を入れてと・・・それじゃ、おかわり!! くっはぁー! 刺身にうまい飯が多いぜ。それににんじんステーキがうめえ・・・うめえ!」
「はむ・・・あー気持ちは分かるけどのどに詰まったら大変よー・・・でも、うん止まらない・・・おかわり―」
ギガントキャロットとかいう。これまた化け物激うま人参のハーブ蒸しステーキの特性ソース掛けを食べながらのビールで一杯。風呂上がりにこれはたまらない。人参の甘味とうま味が段違いな上にそこに来るハーブの香りが程よい薬味となって味を引き立てるし、絡んでくるハニーバターの塩味と蜂蜜のまろやかさがたまらない。
今度は柚子塩でお代りもいいなあ。サンデーも明日以降のチーム戦で賞品として出すパフェやそのほかの賞品の経費を受け取って飯に舌鼓を打つ。
「うふふ・・・朝から昼までは汗をかいた分染みるわ」
「ですねえ。んぐ・・・ぷはぁー・・そういえば、皆さんはどこの国への遠征をいくので? 私たちカノープスはオーストラリアです」
「俺は六平さんと一緒にフランス経由してからオランダとイギリスですね。何でも爆逃げコンビにいい場所があるのもありまして」
「こっちはイタリアだな。ミラノ大賞やそこら辺でひと暴れしてからできれば香港の方でも一つ暴れてくる」
「私はイギリスからちょっと別の場所に行くみたいねえん。ドトウちゃんとライスちゃんと私に良い師匠つけてくれるみたいよ」
二人のトレーナーをしている京水さんもすっかり日本酒で出来上がっているらしくすごくいい笑顔で応えてくれる。うんうん私の師匠にあの二人はちょうどいいだろうなあと。そしてまあ、同時にこれで世界のケツぶったたくにはちょうどいいでしょ。
ちゃんと前もって私と美柚樹お姉さんで手紙と贈り物沢山送ったし、うん。大丈夫かな。
「いやーしかしまあ、ほんと考えられないことになったなあ。うちのスピカでもジャスタとゴルシだけだったのに、一斉に世界への遠征と殴り込みだなんて。こっちはドバイ。もう一度ジャスタが世界最強の称号をもらってくるわ! あはは!!」
「リギルの方はフランス・・・私のリギルだってみんな強いわ。スピカやほかのチームも追い上げてきていますが最強の格は揺らがないです。凱旋門賞を日本に初めて持って帰るのはリギルです」
「あらぁーみんな燃えちゃって。お酒もあって熱くなっちゃうじゃない。でも、ドトウちゃんやライスちゃんもそこに入れちゃうわよ。あんないい燃料をくれたリボーさんたちには感謝してるわ」
「わっははは。シンザンを越えろ。を思い出すような熱だな。ま、前にブロワイエが日本に乗り込んできたんだ。それを俺たちがやって挑戦しつつ実力を測るいい機会だ。ほんと嬢ちゃんらには感謝している」
「よしよし・・・酒の交代とお代りのにんじんステーキ・・・ふふ。私達はその間は日本にとどまってほかのメンバーの指導ですね」
おうおう。いい空気になって盛り上がっている。世界で戦える。近いようで遠い世界のトロフィーや盾を手にできる。その栄冠を自分達のウマ娘たちに与えられるともなればそうなるかあ。
遠征って大変だしねー場所に早く慣れるために私、ヘリポスの欧州の経験と、サンデーのアメリカの経験からそれぞれの芝、ダートの特徴に合わせられるようにしないと。オーストラリアはピーピードーナッツに頼んでいるけど・・・まあ大丈夫か。現世界最強格と日本の最強個性派軍団でのマッチアップできるぞと言えば絶対乗ってくれるし。カノープスの皆面白いと言ってくれたし。
「はぁー・・・・・」
「ん? どうしたよキタハラジョーンズ」
「き、北原ですサンデーさん。いやー中央にどうにか来た。日本の頂点の戦いを見れている、選手たちと関われている今も夢のように思えている俺には、世界だとか色々遠い出来事に思えちゃって」
「わはは。そんなもんだよな。でも、オグリキャップやここにきている皆は間違いなくそれが狙える器だし、正直つぶし合いしているよりはそうしているほうがおもしれえことになる」
「と・・・いいますと?」
「おっと北原さん。サンデー、それは後でね?」
「はぁー・・・下処理と片付け終わり・・・私もビールを・・あー・・・・からあげと濃い味のにんじんステーキと合う”~」
北原さんにはまだ言っていないのだとしたら、それは内緒にしておこう。世界に遠征して戦う。この超大規模の戦いがどういう結果を生み出すか。それに関しては後でわかったほうが衝撃が大きいだろう。
こういうサプライズは残して後で驚くさまを見て笑いつつ、それほどに衝撃を受けてくれる方がやったことを実感できるしね。そして美柚樹お姉さんはお疲れ様。なんやかんや一人で100名近いメンバーの食事を一人で切り盛りってやっぱ頭おかしいわ。トレセンの料理主任といい調理場には私らとは別ベクトルの怪物と女傑しかいないのか。腕力なら私らに張り合えそうだしさあのおばちゃんとか。
「う”ぇーい・・・ああー・・・酒が進む・・・こんないい酒久しぶりだぜ」
「飲みすぎよ? 貴方酒はそこそこ飲めなかったっけ?」
「いやーなんやかんやスピカのメンバーの前では酒は抑えていたからなあ。こんなに飲むのは久しぶりだ。合同合宿様様、そしてプラン様様だぜ!」
横では久しぶりのお酒の痛飲ぶりに酔いが回りに回り始めたスピカのトレーナー。あーあの悪癖&割と無遠慮な部分あるし、失言しないようにいろいろ気を使っていたんでしょうねえ。
「しかしなあ。こんな酒を味わえて、世界に皆をいかせられるのならほんと美柚樹がトレーナーを続けられるように俺らでかばえればよかったぜ。そうすればもっと早くこんな酒が味わえるかもだったし」
「バッ・・・! ちょっと!?」
「いいいぃ・・・今それを言ったらやばいですよ!?」
「何言っているんだよおハナさんに美柚樹。お前のケア技術と指導ならもっと早くリボーの目に留まっていただろうし、あんなことさえなければ・・・」
え? こいつらいまなんつった? お姉さん進んで料理に進んだんじゃないの? 何があったんだろうか? しかもトレーナーの道を断念するほどのものが。
「・・・・・・ハァー・・・逃げ場はねえからな」
「おいお前ら。残らず知っていること吐け」
とりあえず聞かせてもらおう。ちょうど酒が入って色々聞けそうだし、日本に来てずっと気になっていたことがわかりそうだ。事と次第によっては・・・学園。軽くやばい状況になりかねないけど。
~おハナSide~
私たちは今宴会ムードも吹っ飛ぶほどの殺気と威圧感にあてられている。美柚樹さんがトレーナーの道をあきらめて料理人として進むきっかけになった彼女が指導していた有望株の子たちを裏から先輩トレーナー、ベテランたちが引き抜きしていた件。更には根回しをして彼女がトレーナーとして動けないほどになったことを一切合切話すことになった。
結果。怪物二人がとんでもない覇気と殺意、怒気を放っていた。正直ここの近くに誰かウマ娘が、いや人でも近づきたくないと思えるほどのこのオーラにあてられると思えばトレーナー。スタッフと学生たちの部屋が離れていたのは不幸中の幸いか。
「・・・あー・・・これつまり。あれよね。自分よりも人望や選別眼を持っている美柚樹お姉さんを利用して有望株引き抜いたあげくに最後は妬みで干したと・・・まじかー・・・・・これ、まじかぁー・・・・」
「かはぁー・・・分かりたくなかったが分かってよかったか・・・」
そして、その中でその威圧感が終わりをつげ、今度は二人とも腰を下ろして頭を抱える。助かったわけではないが少し緊張が緩む。ルドルフの持つオーラ、覇気ですらまだ未熟。成長した戦士の持つそれが向けられないだけでも心臓の負担が減った気がする。
「・・・・・・・美柚樹お姉さんはもうこれを恨んでいないのよね?」
「過ぎたことだし、料理の腕を磨いての今があるのも確かだしね。リボーには心配かけたくないから黙っていてごめんなさい」
「あー・・・いいのいいの・・・・で、六平さん。その野郎ども。もう今はいないのよね?」
「お、おう。理事会の一部とそのトレーナーは資格はく奪と給料の一部を返納。地方に飛ばしたがその後は一切この業界に関わっちゃいねえ」
「それならと言いたいがなあ・・・私らもこれは公言しねえから。少なくても処分済んだのと数年前だからいいが・・・ほんとタイミング次第では大騒ぎだぞこれ」
「世界大規模遠征すら取りやめになりかねなかったわマジで」
遠征が取りやめになるかもしれなかった。その発言に驚く私達だが、その理由も何となく察しが付く。
「北原さんも中央トレセンに来れたからよかったけど、地方のトップレースを目指そうとしていたトレーナーとウマ娘を『皇帝』ルドルフの勧めでチームメンバー根こそぎ引き抜いて中央に来たらダービーは忙しいのに手伝いせずに手続き自分でしていないから出さねえよと言う・・・・・そしてこの件。いや・・・もうこれがばれたら世界の恥だわ」
「第三者から見れば生徒もトレーナーも強権振り回して地方や中央で芽を出そうとした人材を奪ったり潰したりする上にそいつらが学園のメンバーが遠征したら・・・と見られれば世界各地で有望株取られると変な目で見られるからなあ・・・マジでこういう情報は洒落にならんよ・・・」
美柚樹さんの件とオグリキャップの移籍のあれこれ。しっかりとケリをつけたし、当事者たちはそれでよかったと言っているが傍から見ると確かにそうなのだ。それをこの日本メンバーが世界各国への一斉遠征と噛み合わせるとそれは悪く見るだろう。
こんな強引なスカウトをしていいのかとか言われるのは確かだし、今留学している学園のメンバーへの風評被害。今後の学園の運営にも何かすれば煙が立つようになりかねない。ルドルフの件は悪意あっての事ではないが、それでも他者の目からどう映るかは別。
「はぁー・・・とりあえず後日理事長からもきかせてもらうけど、こういうことしていないのよね? もう」
「は、はいもちろんです! というかそんなことをしても本当の信頼は出来ないし意味がねえ!!」
「それをお前らの職場でやっていたから聞いてんだろうがスカポンタン。私らの姉貴分かばいきれなかったやつがよく言うぜ」
「あー・・・あー・・・学生たちにはこの件は言わない。ちょうど皆あのニュースに夢中だろうし。それに遠征への熱もやばいことになっているだろうしね。ただ、ほんと再発防止はしてよ皆さん。今後の日本ウマ娘業界に関わる一大事なんだから」
頭が痛い。眉間に深くしわを寄せて渋い表情でイラつきを隠せないリボーさんと文字通り人を殺せそうなほどに鋭い視線で全員をにらみつけるサンデーさん自身らも楽しみにしていた遠征の前にこのニュース。ハルウララとキングヘイローのニュースもあった分落差に相当参っているようだ。
二人の言うことももっともだし。そうなのだ。流石にルドルフももうしないとは思うが似たようなことをして、オグリキャップのことを知っている海外の人から中央へ行く際の件を想起されればそれだけで悪評が飛びかねない。些細なこと一つでも学園と国の評価につながりかねないのだからそれを企画していた二人の心労は相当と分かる。
「う”ぁ~・・・もう・・・私屋上で飲み直してくる。美柚樹お姉さん付き合って~・・・」
「了解。つまみ持ってくるから」
「私も行くぜ。ったく。後でスピカの皆と絡んでくるかねえ」
遠征のためと、もう起きないということに期待をかけて話を切り、出ていくリボーさんとサンデーさん。その二人についていく美柚樹。アイコンタクトで「二人をお願いします」と訴えれば「もちろんですよー」と返してくれた。
理事長たちの言う懸念は解消されたけど、下手にこれでリボーさんが本気で遠征取りやめにして、この件を表にばらしたらと思うと・・・それだけで酔いがさめた頭に痛みが、身体に悪寒と冷や汗が噴き出る。
「やれやれ・・・一応、一難去ったか・・・?」
「こ、腰が抜けた・・・」
「ふぅ・・・ひとまずあの事件をもう起こさないように気をつけつつ飲み直しましょう。今日はなんやかんや目出度い日ですから」
「そうね。私達が元気じゃないとウマ娘ちゃんたちも不安がるし、もう一度元気入れましょう」
京水トレーナーの言葉でひとまずもう一度食事を再開。お互いに気を付けて、遠征中は特に彼女たちに目を光らせておくと誓いつつ酒を飲み直したが、先ほどよりうま味が減っている気がした。
~スペシャルウィークSide~
日本一のウマ娘に、凱旋門賞制覇のブロワイエさんに勝てた。あのレースで会長たちとも負けないレースが出来た。その時点でどこか私は頑張っていたが少し緩んでいたかもしれない。
『キングヘイローバ群を叩き割ってど真ん中直線加速していく!! ほかのウマ娘も追うが追いつけない! キングヘイローまだ伸びる! 王の走りに追随できるものはない!! 今ゴォール!!』
『キングヘイローユナイテッドネイションズSを勝利! これでGⅠレース3連勝! GⅡ、Ⅲ、オープン戦を含めれば6連勝! アメリカの芝で日本からやってきた麗しのキングの連勝街道は止まらない!!』
海外を舞台に戦い、連勝記録を伸ばすキングさんの強さに、短距離も中距離も問わず一週間間隔でレースに挑んで勝利し続けるその姿は前とは別物。
特にアメリカから来た留学生組。エルちゃんにグラスちゃん。そしてタイキ先輩は目が点になっているくらいだ。
「ワオ・・・夏の一大レースの一つでレコード2秒更新・・・? 遠征してから2か月も立っていないですヨ?」
「参加メンバーも弱くなく、しかもレコード出されて周りも反論できない。まさしく完封をしています・・・とんでもない」
「オーゥ・・・エルとスぺちゃんと一緒にリギルのテストを受けていたキングちゃんと同一人物だと思えないデース」
アメリカの芝のレースは少ない。スズカさんも言っていたがアメリカはダートメイン。文字通り砂と土のレース王国。その中でレースの格を選ばず、長距離以外とはいえそれ以下は全てを選んでの戦いの日々。日本ではそうそうないほどのハイペース。ルドルフ生徒会長のハイペースローテーションが有名だが長さでいえばキングさんはそれを超えるほど。彼女の元気な高笑いが響きそれに続くレース場のキングコールが出たところで場面が切り替わってコメンテーターの場に。
『いやー日本から来たフォグさんの弟子。彼女日本ではいまいち勝ち切れていなかったって信じきれないですねえ。つまりは日本には彼女以上に強い子たちがあと4人いるんだろう?』
『世界レコードをたたき出したセイウンスカイ 凱旋門賞二位のエルコンドルパサー、ブロワイエを下したスペシャルウィーク、そのスペシャルウィークを倒したグラスワンダーで黄金世代と言われているようですよ?』
『まいったね。私の娘にウマ娘がいたら留学を選んじゃうほどだ。そして、その黄金世代はさらにダートの舞台でもいたらしく、しかもアメリカで旋風を巻き起こしているんだから驚きだ。映像頼むよ』
『もちろん。では次の日本から殴りこんできたウマ娘のニュースです。アメリカの準三冠セクレタリアト杯に殴り込んできたハルウララ。彼女もまたアメリカのウマ娘の歴史に刻まれる偉業を成しました』
そして、次はハルウララちゃんの番。動画で見ているアメリカで昨日放送されたこのニュースに目が離せない。ウララちゃんはすごくいい子だ。ただ、自分の記憶を掘り返しても最下位の方が多いし、前向きで強いメンタルと優しい心を持っていたが実力じゃ・・・その。晩成かなあと思っていた。
しかしアメリカではそんなウララちゃんを信じられないという声が多数。フロックではない強さを持っている。アメリカにさわやかな春と勝利を運ぶ最強の一角とまで動画感想欄にも書かれている。
「アナザー三冠・・・ここにウララちゃんは挑んだんですか・・・」
「あ、あのー・・・アメリカの準三冠ってなんですか?」
ただ、準三冠と言われても正直よくわからない。海外遠征を考えていなかったのもあるし、スズカさんも芝で戦いに行ってきた。セクレタリアト杯とかもここ数年で来たGⅠレースだけど人気があるくらいしか知らないのです。うう・・・勉強頑張らないと。
「アー私たちの母国アメリカの三冠はケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントSなんですが。それとは別で大統領選挙に出れば当選確実と言われた人気と強さを持ったセクレタリアト、初代ビッグレッド。アメリカの殿堂入りになるのなら彼女の称号を持つのは条件の一つと言われるほどの強さを見せたマンノウォー、伝説のJWCでアメリカ代表になるほどの実力を持ち、大女優としても有名なハリウッドリムジン」
「この三名の名前を関した3つのレースで夏場に短い間隔で戦うレース。より暑い季節で行うのもそうですが賞金の高さと出走枠の多さ、何よりアメリカで最強と呼ばれるメンバーたちの名前の格もあって毎年25名以上のウマ娘たちが戦う世界レベルの大会がこの準三冠」
「手にできたものは莫大な賞金と名誉。三冠を手にできれば三つのレースの合計賞金を更にもう一度もらえてアメリカのいかなるレースでも優先出走権を手にできる。まさしくアメリカンドリームを凝縮した国際ダートレースデース!!」
タイキ先輩。グラスちゃん。エルちゃんの三人がかわるがわる分かりやすく説明してくれるので理解できたが、なるほど歴史は浅いが賞金の高さと伝説のウマ娘の名前を背負うレース。しかも三冠を達成すれば名誉も賞金も次の舞台も何もかもが手に入る。とんでもないとしか言えない。そんなレースにウララちゃんは挑んでいるんだ・・・
そうこうしていたら目の前で行われているレース。今始まったばかりでよかったあ。
ウララちゃんの新勝負服は桜色を基調とした浴衣で背中に桜の大樹と桜吹雪が舞う模様がとっても美しい。ウララちゃんは後方につけてじりじりと外に移動。その際に見ていてすごいのがぴたりと最後尾と自分の前のウマ娘の距離をつけている。
なのに気配はほかのウマ娘たちに紛れて周りは意識することもなく前の方への意識が強い。その間にウララちゃんはじりじりと外へと移動していよいよ大外枠へと移動。
「・・・おそらく、現在二番手の子をマークしていますね」
「フム。確かにそうですね。彼女に合わせて出ていますし、最後の追い込みの際に自分はルートがつぶされないようになっていますよ」
「確かー・・・この二番手の選手はステイヤー気質の選手でロングスパートとトップスピードで長距離を主戦場にしていますネ」
「それもだけど・・・ウララちゃんのフォーム。すっごく奇麗」
真夏日に行われている中距離レースということもあってどのウマ娘たちも汗の量がすごい。特に前で走っている逃げ、先行組の表情は最前線のカメラから見ても辛そうでありフォームも少し、ほんの少しだけど最初に比べると鈍っていた。けどウララちゃんのフォームは崩れていない。表情も汗をかきつつも心底楽しそうに笑っていて余裕の走りでバ群の最後尾付近を離れない。
だけど第3コーナーについたその瞬間。ウララちゃんが仕掛けに行ったのだが・・・地面が爆発した。そうとしか言えないほどの砂が吹っ飛び、そこからウララちゃんが加速を仕掛けていく。桜色の髪としっぽと勝負服なのもあって桜色の流星が地面を踏むたびに地面が爆発したように砂が舞い上がりぐんぐん距離をつめて第4コーナーに行くころには先頭に立っていた。
キングさんの走りは軽やかに風を纏っていくどちらかと言えば軽やかで優美なもの。だけどウララちゃんのは違う。地面を砕きながら力強く。そして誰よりも早く駆け抜けていく。直線になったところでようやく全員が仕掛けていくけど大外回りから減速をほぼほぼしないでトップスピードに乗っていたウララちゃんはここでさらにスパートをかけて周りとの距離を開ける。
「What!!? ちょちょちょ・・・この速度でタイムは!!」
「周りの加速が止まって見える」
「おーぅ・・・ファンタスティック・・・・」
「凄い。これが今のウララちゃん・・・!」
大外からの距離のロスも消耗もものともしない。地面が爆ぜて砂が舞っているのを見ている次の瞬間には何メートルも先へと行く。後ろのウマ娘たちが追い付けているのはその砂の爆発の後だけ。しかも追いつけたとしてもウララちゃんは第4コーナーからの加速をしつつ一番走りやすいであろう場所を走り抜けているので打つ手がない。
そのままウララちゃんは大差で勝利。レコードも4秒縮めるという誰も文句のつけようのない内容で勝利を決めた。ここからまた場面がスタジオに切り替わり、コメンテーターたちのテンポのいい会話が続き、最後にキングさんとウララちゃんのインタビューに変わる。
「・・・・・・まさしくBIGREDの名前を関するレースにふさわしい勝利。みんな訳が分からないという顔しているワ」
「遠征して慣れないはずのダートレースを炎天下の中で大外からの仕掛けをして、大差勝ちかつレコード4秒更新。アメリカではウララさんの実力は最強候補筆頭どころかこのままいけば殿堂入りも狙えるでしょう」
「みんなどんどん進化して・・・あ。始まりますね!」
『一流のウマ娘であるのは私の使命であり目標。ですがそんな私を応援してくれたアメリカの皆様にまず感謝を。勝負の場をくれたことへの感謝を。だからこそ、応援してくれるファンの方々のためにも、何より私の同期のライバルたちと更に戦えるよう高みを目指すために今度はBCターフを目指しますわ! アメリカ芝レースでの最強は誰かを決める! そこで私はようやくアメリカ最強のキングとして胸を張れます!! ここはまだ途中。我こそはというウマ娘の皆様!! 秋に会いましょう』
『ウララはねー今まで一番遅かったし、勝てなかったけど走れれば楽しかったの。だけど、一位を取って私を応援してくれる皆と一緒に一位の喜びを味わいたいし、トレーナーたちと頑張って、でも負けていたの。それでも頑張って、リボーさんたちがマンノウォーさんたちと会わせてくれて、こうして走って勝利できました。だからね。商店街の皆―! スぺちゃん、エルちゃん、グラスちゃん、スカイちゃん、キングちゃん!! ウララ頑張って三冠目指すから応援してねー!!』
あまりにもらしいと言える二人のインタビュー。だけどアメリカのショー? というか盛り上げるような言葉を加えているのは二人ともアメリカンらしいのが混じっているのだろうか? 商店街のタオルを見せてピースサインを見せるウララちゃん。観客とテレビに向かって頭を下げた後に腕を組んで仁王立ちで力強く言い切って去っていくキングさん。どっちの方も大盛り上がりの中で映像は終わり、直後に動画も終わった。
「くぅぁああー!! あああ”ー!!キングもウララもずるいデース!! こんなカッコいマイクパフォーマンスされてアメリカで燃えないわけないじゃないですカー!! 間違いなく今年の後半で盛り上がることナンバー1待ったなし!」
「うふふ。これは楽しみですね。一度こっちに戻ってきてから是非とも手合わせ願いたいです。8月半ばくらいにに帰ってくるとしたらアメリカ最強格となった二人が、天皇賞やジャパンカップ、ダートマイルでどれほど暴れるか」
「ぜひとも戦ってみたいデース!! あと私がいたころの芝と今のアメリカの芝の変化とかもきいたりできればおハナさんも喜びマース!! そして何よりレース結果も二人もグレイト!! リギルに入れておきたかったくらいデース!!」
「キングさんもウララちゃんも強くなって帰ってくる。私も・・・もっともっと・・・上を目指さないと!」
心の中に熱い火がついて、カッカと体が熱くなって武者震いをしてしまう。二人とも日本を離れて戦い続けて強くなった。その二人からライバルだって言ってくれているのにこのままではいけない。強く鋭く。それこそ今度は世界一の。アメリカ最強となったキングさんでも戦えるくらいに強くならないと。
今からでも外で走り込みをしたいがそれは怒られちゃうし明日トレーナーさんに頼まないと。もっとハードなトレーニングを。私もより早くなれるようなものを!!
走りたくて、燃え上がる感情を体を動かして発散したくてたまらない。合宿の最初あたりでこれを見れてよかった。この勢いで必ず合宿をやり切って、帰ってきた二人にふさわしい強さになるんだ!!
~メイショウドトウSide~
「アメリカの芝の頂点に足を進めて、ダートの準三冠の一冠を手にした・・・」
「ああ、これはすごい! まさしく旅路の果てに自分を磨き、王者としての武器と器を手にしたアーサー王! 桜吹雪と春一番を運んだ風神!! カノープスもそうだったがどんどんみんなが化けてきている!! ここにきてまた盛り上がりどころが来るなんて!!」
練習が終わり、お風呂もすごくおいしかった食事も終わっての夜の自由時間。そこで全員に通達されたこの動画を見ろというサンデーサイレンスさんの指示で見た動画。キングヘイローさんは連勝街道をハイペースで走り抜けてアメリカでも一躍スター。ハルウララさんもその明るさとやさしさ、そしてレースでは圧倒的な走りのギャップで期待の星。
カノープスのツインターボちゃんがリボーさんの弟子になってから始まったように私の回りでどんどんみんな強くなっていく。上のステージへと、前へ前へと進んでいく。
(わ、私なんかじゃ相手にならない・・・芝のレコードも私のベストを越えている。アメリカの固いダートであれなら日本でも慣らせばウララちゃんとも戦うかもだし・・・う・・・ぅう)
「ドトウ! これはボクらも負けられないな!! 改めて鍛え上げて帰ってくる二人を迎え撃つようにしないと」
「ふえ!? え、で、でも私じゃ敵わないですよ!? あんな走りを私は」
「それはキングたちもできなかった。でもできるようにしたんだろう? ボクらだってできるよ!」
「で、でもぉ・・」
どうしたって後ろ向きに考えてしまう。誰も付いていけない異次元の末脚のキングさん。2000メートルなら常にスパートをかけて大逃げでやり切ってしまうターボちゃん。地面を破壊するような速度とパワーで大外からコースを奪っていくウララちゃん。私の知っている皆との変化の速さに気持ちも身体も追いつかない。
オペラオーさんのように負けられないとは思うけどそれ以上にしり込みしてしまう。あんな怪物たちにどうしろと思ってしまうのだ。
「・・・大丈夫だよ。ボクの認めたシンデレラなら必ずあの王様にも、美しい春の風神にも負けない強さと輝きを見せるはずさ。それにね」
「それに?」
「君がいつも言っている救いはある。今ここにはリギル、スピカ、カノープス、六平さん、そして僕たちを支えている。あのカノープス、スピカを化けさせたリボーさん、サンデーさん。そしてあの人たちが知っている怪物たちがいる。君一人で辛くとも手を取ってリードしてくれる人は必ずいる。運命を手繰り寄せてくれるよ」
「あ・・・」
「まあ、ボクはおハナさんやリギルで最高の環境だから問題ないがね。ドトウも彼女たちのように環境を変えてみるのも一考じゃないかい?」
「はい。ぜひ後で京水トレーナーとも相談してきます。もう美柚樹さんからも私も実は遠征を考えていて」
そうだった。私もまた遠征先で京水さんと一緒に鍛えてくれる人を用意してくれていると。霧のようにとらえきれない短距離の王者に二着と100バ身を着け、レコードを6秒以上縮めたた伝説の怪物。そんな人たちがジュピターについて近藤トレーナーさんにキングさんもウララちゃんも鍛えられた。
私達にも欧州の怪物が師匠と仰ぐ人がついてくれる。もしかしたら・・・もしかしたら私にもチャンスが来たかもしれない。
「おお? 流石じゃないか。もう次の用意をしているなんてね。ボクのライバル。最強なのは君だからね。より美しく強くなっているのが楽しみにしているよ。だからこそ勝つボクの強さと美しさが輝くのだけど」
「私も負けないよう頑張ります。よろしくお願いします」
この夏と、遠征でオペラオーさんたちに負けないように・・・同級生たちに置いていかれないように私も頑張らないと。
この作品で一番化けたのはハルウララかもしれない。加速した後はブラキディオスが粘菌を爆発させながら拳のラッシュをしているようなイメージをしてくれれば。走った場所は足跡とクレーターが出来ている。
キングはアメリカで芝最強候補に名乗り出ている様子。一応ここからは休憩を入れていきますがウララが準三冠挑戦を終了するまではアメリカにいるので合間合間にレースを走ります。
近藤さんは涙もよだれも鼻水も垂れ流して感動している。後日その様子が面白すぎたために動画に出されてある意味世界でも有名なトレーナーに。
アメリカの記者の反応は「え? これで無冠!? しかもウララに至っては勝ちが一回すらなし!? やべえ日本のウマ娘たちのレベルどうなってんだ」
シンデレラグレイの会長さんって地方のトップレースを目指していたチームから期待の星を中央にぶっこぬいたあげくに編入手続き以外にもレース路線変更などのあれこれでドタバタしていたこともあってクラシック登録とか教えたりサポートせずに「中央を無礼るなよ」で済ませちゃう。
一歩間違えれば目指していた東海ダービーを諦めて日本ダービーに夢を移したのに日本ダービーに出してもらえず、傍から見れば奮起してトレーナーとして頑張っていた北原さんからオグリもベルノも奪ってさらに逸材を引き抜いてクラシック三冠への手伝いもしないという。
この世界では中央でも食育とケアでウマ娘を支えようとしていた新人(美柚樹)をベテラントレーナーがチームメンバーヘッドハントして干すということまでしている状況なのでこれが世界にばれれば遠征受け入れもちょっと怖い事態に。
よければ感想。評価よろしくお願いします。