新しい職場が体力的にきつくてなかなか筆が走らないです・・・つらい。
~リボーSide~
9月になって夏休みも終了。私の弟子が宿題の回答をミスりまくっていたので勉強を教えたり、美柚樹お姉さんとサンデーのダブル講習会でみんなの宿題を手伝ったりとで合宿が終わっても忙しなかった。
そしてまあ、日本もアメリカも、世界もこのニュースで連日もちきりだ。
『日本から来た春ノ風神 真夏のアメリカに春一番をもたらし準三冠制覇!』
『三レースすべてを大差勝ち、レコード更新平均3秒以上! 日本総大将の同期組世界に旋風を巻き起こす!』
『キングヘイロー、ハーリング大統領と会食。BCターフ優先権獲得。今年と来年のアメリカ芝レースの覇権を狙う』
『黄金世代さらに増える!? 日本総大将スペシャルウィーク、怪鳥エルコンドルパサー、栗毛の怪物グラスワンダー、トリックスターセイウンスカイ、ターフの女王キングヘイロー、春ノ風神ハルウララ。彼女たちの実績を再調査』
とまあこんな感じでどのニュースを見てもスポーツ関連では必ず彼女たちの名前が載り、そして特番も組まれている有様。改めて考えてみると凱旋門賞二位のエルコンドルパサーにブロワイエを倒したスペシャルウィーク。3000メートルレースでワールドレコードを出したセイウンスカイ。彼女らを倒しているグラスワンダー。
負けはあるが先着、順位では上の経験もあるキングヘイローにダート路線とはいえ準三冠レース。真夏のハードで厳しい季節と日程の中すべて大差勝ち、レコード更新を果たしたハルウララ。うん。これはやばいわね。間違いなくかかわったレースが違えば先の4名はその国で無敵を思うままだったろうなあ。いや、磨き合っているからこその強さもあるかも?
「みんなー! 来てくれてありがとー!」
そしてただいまアメリカで大暴れして世界ランキングにも割り込むこと確実とされたウララちゃんが商店街でミニライブを開いているのだけどこれがまー大盛況。
美柚樹お姉さんと商店街のメンバーで用意していたグッズや屋台料理。となぜか屋台を出しているゴルシちゃんたちも飛ぶように売れているようで忙しそう。このライブは2週間のうち週末土曜日に行う予定で既にテレビスタッフも詰めかけての大忙し。
「キングヘイローさん! ハーリング大統領との会談で一言!!」
「え、ええ。そうですわね。やはりあの方は優しい方でしたし、レースへの理解も深い方。BCターフに来るであろう有力メンバーの戦い方。意見交換で盛り上がりましたわ」
そのなかでアメリカ遠征組、芝レースで6連勝。しかも週ごとにレースに挑み、非公式レースも含めれば10連勝。フォグの後継者と言われているキングちゃんはアメリカ歴代でも有数の優和派。聖人君子でナイスミドルなハーリング大統領家族と食事会。最後はサイン交換と握手をしてウマッターも交換したりとで名家のお嬢様だったけど国の頂点からファンです公言されることもあっていろいろ凄いことに。
「マンノウォーとフォグの後継者とアメリカから認められるとはやっぱ持つもん持っていた。いや磨いて、アメリカで見つけてきたか。見ろよこの記事」
「あらサンデー。貴方もよ? あの会談で大統領サンデーの名前を出してファンだし、日本で楽しそうにしていてすごくうれしかったと」
「キングから聞いたぜ。そんでサインできればほしいとも言っていたしなー年末、新年過ぎたら一度あっちに出向いていくかねえ。私が現役のころ、病気になっていた時に議員時代のあの人が応援してくれたんだわ」
記者からのインタビューを終えたサンデーも戻ってきて嬉しそうに週刊誌、ウマ娘のレース、情報雑誌を片手にバシバシと叩いて喜ぶ。アメリカで送り出した子たちがしっかりと成果を出して笑顔で錦を飾る。トレーナーとしてアメリカじゃ干されていたサンデーがそれを見れたんだしそりゃ嬉しいわよね。
「う”お”お”お”~~~!!ウ”ラ”ラ”-!!」
「「「「ウララちゃーん! おめでとぉお!!」」」」
「はふぅー・・・はぁ・・・ああ・・・尊い。風神ライブの熱風マヂ死ぬ・・・尊さに導かれて昇天しちゃう。ホヒョォ!!」
ライヴも2曲目。自身もトレーナーとして経験を積み、二人の栄光を目の前で追い続けた近藤トレーナーが鼻水も涙も垂れ流して男泣きしながら応援し、商店街の皆さんも泣きながら応援。隣でデジタルちゃんが尊死した。ばっちりカメラを置いている当たり録画して見直すのだろうけど。
「ウララはアメリカからダートレースの招待状が山のように来ているし、キングはBCターフに向けて今から番組がアメリカで製作。アメリカの短~中距離業界が盛り上がっているし、それが来年まで行く。この間に有望株が増えれば面白いだろうよ」
「アメリカの名伯楽たちに若き芽が出てくるかしらね。あーそれとサンデー。私もう少ししたらちょっと外すわ」
「? どうした。実家に帰るのか?」
「いやいや。美柚樹お姉さんの農園で人参が収穫シーズンになったみたいでね。あのギガントキャロットも収穫できるのとなんでも親戚のウマ娘で海外とかで活躍できないかって子がいるようだから見に行くの」
あの美味い人参の収穫だし人手もいる。ちょっとした息抜きと有望株かもしれないしいやあ楽しみ楽しみ。
「ほーん? お。海外メディアまで来ているわ。こりゃー面白いことになるなあ。ダート路線で今後アメリカのメンバーが来てくれるかもだし」
日本に挑戦してくるメンバーも増えそうだし、こっちは賞金もいいしねえ。逆にこちらからダートの本場アメリカに殴り込んであのお祭り騒ぎの頂点ともいえるレースを味わうのもいいし、うんうん。私達の時代、ギンシャリ先輩らの時代になりそうだし、場合によってはこれも越えてくれそう。
「後はまあ、来年か。来年の暴れ方次第では世界の尻に火がついて慌てふためくだろーぜ。日本のウマ娘のレベルは高いけど、芝やレース場の関係で内弁慶だって意見も多いから」
「実際少し前まではそうだったしねージャパンカップの賞金の高さもあるからオーストラリアからの日本ッてルートも普通にあったし」
今後はどうなるかしらね。オーストラリアも私を超える器がちらほらいるし、日本は今絶頂期。キタサトコンビも来年来るから鍛えれば化けるしでむしろやべーやつらの巣窟扱いになるかしら。
春の女神、風神と呼ばれ、アメリカの土に桜を咲かせた大和撫子とウララちゃんが言われていたり、姿がかすむほどの速度、走りを見せる王者と呼ばれて心底嬉しそうに大笑いするキングちゃん。夕暮れ時まで人の波は引かず、いやあー商店街の賞品がすっからかんなるほど売れるとはね。これは八百屋とか食品店以外明日の仕入れ大変そうだわ。
「さて・・・と。私の方の仕事もしましょうか・・・じゃ、準備はいいかしらキングちゃん。ウララちゃん。ターボちゃん」
「もっちろん!」
「当然ですわ」
「楽しみだぞ! アメリカで修業を終えた二人と師匠と走れるなんて」
一通りやることが終わり、仮眠を取った二人とターボちゃんを呼んでトレセン学園の芝での夜間併走。ナイターもつけてくれたので気兼ねなく走れる。
芝を主戦場にしているキングちゃんだけならまだしもウララちゃんを何で呼んだかというと、マンノウォーさんのメールにあった。
『アメリカのダートに慣らしつつ芝に近い状態を作って適正あげておいたからいったん見てあげて』という割とふざけた、ぶっとんだ内容。ただまあ、あちらのダートもぶっ飛び高速バ場。お祭り騒ぎ、ガチンコレースがメインのアメリカなので日本の芝に近い部分があるっちゃあるのでやれないことはないだろうけど・・・
さすがアメリカは愚か世界最強のトップ。今でも下手な現役相手じゃ千切るからなああの人。どんな鍛え方したのやら。
「疲れもある、加えてしばらく三人は忙しくなること確定なので距離は短めマイルで。ウララちゃんは基本ダートが主戦場なので脚に違和感、痛みがあればすぐに休むこと。本当ならあのキチガイ準三冠に出た後は最低でも一月は休みを与えたいくらいだしね。キングちゃんもあのフォグのしごきは堪えただろうし」
「あ、あはは・・・キチガイ世代の短距離、そしてアメリカ横断してのレコード連続更新の覇者。・・・確かにつらかったですが・・・でも、それでも今は愛しい日々だと思えますわ」
「うん! マンノウォーさんは怒ると怖かったけど、凄く優しくて、近藤さんとも一緒に頑張ったよ!」
「よし。なら思いきりその成果を私に見せなさい。日本でも戦えるか見せなさい。うまくいけばだけど・・・ふふ。全員有馬記念、ジャパンカップやマイルで年末大暴れできるわよ」
そしてその成果を見るのは私。みんなが文句なし、もっと早くで会えればこっちのトレセン学園にスカウトしたかったと言う覚醒を見せたこの子たちの結果や如何に。
「今回は私達だけでの練習だし、私が合図を出すわ。よーい・・・・スタート!」
私の合図で始まる模擬レース。まず先頭に出たのはやっぱりというかターボちゃん。マイルなら大逃げを維持したまま逃げるスタミナを持っているからいい選択。そして私は今回は先行気味の距離を維持。
追い込みを得手とするウララちゃんとキングちゃんは私の後ろ、4バ身くらいの距離を開けているけどなるほど悪くない。
(ついてきているし、このペースも驚く感じはなし。アメリカのお祭り騒ぎのノリのレース運び、観客たちになれてきているのがよくわかる)
あの国のレース場で走り回っていたからわかるが、私の故郷、イタリア、欧州とは対極、芝もダートもレース運びが真逆もいい所なのだ。
欧州最後の直線が長いこともあって基本スローペースで運んで、最後の方でいかに脚を使うかという戦術が重きを占める部分がある。しかしアメリカは最後の直線が短いレース場が多く、そしてダートは高速バ場。そういうことがあって兎にも角にも最後の直線、コーナー付近で先頭に立っていないと化け物みたいな末脚がない限り、それほどに脚が無くてもいい場所につけて前にいないと勝つことは難しい。
必然、スローペースとは基本無縁。誰もかれもが前に出てのガチンコのスピード勝負での先頭争いを中盤に差し掛かるところから、早ければ最序盤から始まる。だからこそ、この二人の戦いぶりはすさまじくアメリカでも高く評価された。
(高速バ場、短い直線のレース場で最後に仕掛けてまくる『追い込み』や『差し』であの連勝記録とレコードを持ってくるのは異常も異常。アメリカでも追い込みで大成、怪物的強さを見せたものは少なめ・・・どうなるか・・・)
目の前で気持ちよさげに走っているターボちゃんを見ながら早くも第二コーナーからの直線。どれ・・・耳をしぼって後ろの様子は・・・うん。ふっつーについてくるわね。あっちのダートも高速、反発強めだし問題なし。キングちゃんも来ている。
で・・・来る! ここから仕掛けてくるわね。
「・・・・シッ!」
「な!? し・・・え!? 二人も!!?」
ここから前に出ての直線勝負で有利に持ち込み始めるのだろうけども・・・この速度は予想の一つ上ね! 既にギアを90%引き出しているのに差が思った以上にのびない・・・ほんとあの連中どうやればここまで短期間で魔改造したのよ!! 私だってターボちゃんを今の形に変えるには一月二月必要だったってのに。
私、が先頭。後ろでは三名が叩き合いをしながらあっという間にもう最後の直線。コーナリングも良し。そして足音が三つ。高い背丈からくる長い手足を活かした軽やかな走りはキングちゃん。しっかりと地面を踏みしめつつも接地の時間を最短にして加速を続けるのがターボちゃん。そして、地面を砕く、踏み込む音を出して走ってくるのがウララちゃん。
速度に乗って加速を続けていく私とターボちゃん。逃げと先行以上に脚を溜めてくる。自分以上に力強い踏み込みと加速で追い込んでくるのはいつだってヒリつく緊張とプレッシャーが来る。けどこのレベルは世界でもそうはない! 様子見だとかそんなのはもう捨ててギアを最大まで入れて思いきり最後の加速。
「っ・・・は・・・! はぁ・・・はぁー・・・・・・ぁあ・・・・~~きっつう」
「くっそー・・・粘ったけど、どうにか二着かあ」
「ふ・・・だ、ダメでしたわね。流石・・・世界最強の一角と、その技を継承したターボさんですわ・・・」
「はぁ・・・あはは! でもすっごく楽しかった! 二人の背中が縮まらなかったなー」
「はぁー・・・えーと・・カメラの映像だと・・・」
私が一着。二着はターボちゃん。三着はウララちゃんで四着はキングちゃん。着差も1~4着で2バ身しかなし。タイムも、おお。ワールドレコード一歩手前か。
この内容を帰国して、記者対応やライブ、イベントをこなしたうえで出来るフィジカルとメンタル。しかもそれを夜にできる。・・・うーん。これは文句なしの百点だということでマンノウォーさんにメールで映像つけて送りましょう。
「ふーむ・・・これはすごいわね。私からもみんなに走ってくれたお礼と、コーナリングとか追い込みでも使える技術を後日教えるわ。ターボも私の技を教えるから、ふふ。いいレースさせてくれたお礼よ」
「さっすが師匠! 太ももだ!!」
「それを言うのであれば太っ腹ですわよ。・・・・その極地のくびれの腰の細さですけども。しかし、いいのですか?」
「いいのいいの。引退した老兵の技が役立つのならあんた等には教えるわ。どのみち主戦場が海外にも行けそうだし尚更けが防止とベストを出せるようにね」
「おお! 師匠もリボーさんの技術は盗んでおきなさいと言っていたしありがとうございます!」
「アメリカの皆なに吹き込んでいたのよウララちゃんに・・・まあいいわ。今夜はもう帰りましょう。寮長と保護者の皆さんにも連絡しているから今日は帰って、しばらく二人は養生・・・とはいかないでしょうけど、まあ記者対応に追われたりしつつ練習は軽めにね」
話題性ばっちりの二人だしねーここからもしばらくトレーナーさんも大変だろうし、気を付けてほしいわ。
てこてこ4人でゆっくり帰ってから自分も社員寮に戻っていく中で思い返すはあのさっきの模擬レース。1バ身だけの着差なんてあのエキシビジョンとまだデビューしてしばらくの時期以外ではない。それがあの三名にされた。
肉体のほうは機材や走りの記録、データ、自覚も含めて衰えはない。日本芝もなれている。経験と引き出し、戦歴を考えても私は大体の子たちが18~20で引退するのに今も動ける肉体を維持している分、戦歴は5年分プラスされている。その上でこれだ。
日本でのレースだから、歳だから。そんな言い訳はなしであの子たちは追いついてきた。私の、私たちの世代の速度と走りについてこれている。しかもこのコンディションで。
「・・・世代交代をようやく実感した気持ちねー」
いやはや、指導者としてもいろいろしていた傍ら走っていたけどもようやくそれが心から実感できてストンと落ちた気持ちがする。まず3名がここに来た。後は残りの子たちがどれほど上ってくれるか。世界の荒波と怪物たちの指導を経験して、揉まれて一皮むけるかどうか。
「早いところ来年にならないかしらね~」
こんなにワクワクした気持ちで先を考えるのはいつ頃だろうと考えながらの帰宅。ひとっ走りした後もあってぐっすりと眠れたわ
二人の遠征組の成果でトレセン学園メンバーの海外遠征へのやる気アップと秋から冬にかけての一大レースへの発奮材料へ。