ウマ娘外伝 大河ウマ女優への道?    作:国津真史

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第一幕 『鎌倉殿のふたり』 その壱~参

【その壱】

 

 

とある日のトレセン学園、理事長室。

 ここに秋川学園理事長のほか理事長秘書の駿川たづな、桐生院葵など複数の有力トレーナー、教師たちが集まり鳩首協議がおこなわれていた。

 内容は、テレビドラマ出演者の推薦依頼への対応についてである。

 

理事長「諸君! 冠レースの有力スポンサーでもあるNHKから来たこの依頼、我々は全力で応えなければならない! 好評だった『鬼神がくる』に続き、大河ドラマのメインヒロインにふさわしいウマ娘を、我らトレセン学園の生徒から選定するのだ!! URAの名声をより一層高めるためにもな!」

 

 ちなみについこの間、最終話を迎えた大河ドラマ『鬼神がくる』は人気の戦国モノで、ライスシャワーがメインヒロインを演じた。

 しかしこのドラマ、昨年から色々なトラブルに巻き込まれ、撮影、放映が延びに延び、もしかしてこれは「ライスの呪い」ではないかとさえ言われていた(本人が一番怯えていた)。

 とはいうものの、今年の年明けには好評のうちに無事最終話を迎えることができた。

  特に最終話のライス演じる明智家の宇摩(うま)娘「大鹿毛」の迫力がすさまじく、視聴者から「青白く光るオーラが見えた」とさえ言われ、ネットでも話題になっている。

 次の大河ドラマは幕末・維新モノで、特にウマ娘の出番は無かったのだが…

 

 葵 「来年の大河ドラマは源平時代が舞台のようですね。となると主役は…」

 

理事長「ウム! どうやら生食(いけずき)と磨墨(するすみ)のダブル主演となるようだ。 この歴史的に有名なライバル関係を演じきれる、優れたコンビはこの学園にいないものか…」

 

たづな「でしたら、あの二人がよろしいのでは…」

 

理事長「フムフム…成程!あの二人なら! では、クランクインも差し迫っているからな、早速二人に連絡を…」

 

たづな「彼女たちなら、今日は中山レース場へ応援として出掛けてますが…」

 

 

【その弐】

 

 

ウオッカは走っていた。

 

 中山レース場から北東方向へ延びる一筋の道。通称、木下(きおろし)街道。目的地は、その先にあると噂で聞いた、とある神社だ。

 

 この日ウオッカは、チームメイトの応援に中山レース場まで駆けつけていたのだが、レース後のウイニングライブ観賞はそこそこに「今日はちっと野暮用があるから、じゃあな」と言ってそそくさとその場を離れた。そして…

 

ウオッカ「うぉ~、カッコわりぃ!カッコわりぃ!!カッコわりぃ~!!! この期に及んで神頼みしか思いつかないなんてよ~!」

 

…と、叫びつつも、噂の神社に向かってひた走る。レースで勝つとか、いかにカッコよく走るかといった話であれば、こんな神頼みなんて考えもしなかったであろう。

 しかし、最近心の中でむくむくともたげてきた「ある思い」に関しては、一体どうすればいいのか、さっぱり分からぬまま、結局後から小耳にはさんだその神社にお参りをして、それから考えようと、こうして走っている。

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

 その「ある思い」が生まれた…ウオッカの心に新たな火を点けた最初のきっかけは、ライスシャワーが主役を演じた、あの大河ドラマである。

 

ウオッカ「うぉ~、ライス先輩カッケェ! いっつもおどおどしているイメージしか思い浮かばない(失礼)あのライス先輩が… いっつもセリフかみかみのイメージしか思い浮かばない(度々失礼)あのライス先輩が… なんて…なんてカッケェんだ!!」

 

 「天下泰平」の理想に燃え、最後は日本史上最も有名なクーデターにおよんだ明智一族に殉じた悲劇の宇摩(うま)娘「大鹿毛」。その大役を、ライスは見事に演じきったのだ。

 (それでも当初は、裏でライスが「やっぱり私、悪役なんですか~?」と涙目になりかけた…という噂もあったりしたのだが、それはそれでまた別の話)

 ウオッカは、レースでの勝利とか、その後のウイニングライブとは違った意味の、これまで感じたことのないカッコよさをそこに見出したのだ。

 すでに学園内には、ウマドルとして芸能界でも活躍するウマ娘がいることも知ってはいる。しかし、それに対してはあまり心を動かされることのなかったウオッカであったのだが、

 

ウオッカ「やっぱ大河ウマ女優ってスゲ~よな~。 俺もなれるかな~?」

    

 そんな折も折、来年の大河ドラマは源平時代を舞台にした、古の宇摩娘が主役のストーリーになるらしいというニュースが飛び込んできた。

 ライスシャワーの演技にすっかり魅了され、「キラキラ」を通り越して何か「ギラギラ」としたものを胸に刻み込まれたウオッカにしてみれば、このニュースを無視することなどできなかった。

 

ウオッカ「何が何でも来年の大河ドラマの主演の座を射止め、日本一カッコいいウマ娘になってやる!」

 

 と、心に決めてはみたものの、どうすれば大河ドラマの主演女優に選ばれるのか、皆目見当がつかない。今から女優としての特訓をしようにも、とても間に合いそうにはない。まだ誰から聞いたというわけでもないが、ライスの実績を考えると次の主演女優候補について、もうすでにトレセン学園に話がきているかもしれない。

 

ウオッカ「ひょっとして、もう裏で誰か選ばれているんじゃ…」

 

??? 「ふふん、大河ドラマの主演女優にふさわしいのは、全てにおいて1番のウマ娘であるこの私よ」

 

ウオッカ「…って、何でアイツの顔が頭ん中に浮かんでくるんだよ!!! くっそ~、ムシャクシャしやがる~!」

 

 ちょうどそんな頃である。とある神社の噂を耳にしたのは。

 中山レース場から北東へ車(もしくはウマ娘の全力疾走)で20~30分ほど走った所にトレセン学園とは別の機関「URAトレーナー学校」が置かれている。そこからさらに川を下った先にある「天神八幡神社」には、古の宇摩娘「生食(いけずき)」が菅原道真公と一緒にお祀りされてるという。

 「生食」といえば、源平時代に無類の活躍をしたとされる、日本のウマ娘界におけるいわばレジェンド。

 

ウオッカ「そういえば、来年の大河ドラマって源平時代が舞台だったよな。 だとすると、今度の主役ってほぼ「生食」で間違いないんじゃねぇか? だったら、その天神八幡神社ってところにお参り…っておいおい、俺はそんな神頼みって柄じゃね~だろ… いや、でも、しかし…」

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

 そうこう悩んでいるうちに、今日へと至る。

 

 中山レース場を出たウオッカは、噂に聞いた「天神八幡神社」を目指し、自分の足で木下街道を北上する。しかし、並みの人間以上の瞬発力とスタミナを誇るウマ娘といえども、そこは生身の身体。途中、栄養補給と小休止を兼ね、「鎌ヶ谷大仏」という鉄道駅の近くにある、これまた「大仏交差点」という名前の十字路に面したラーメン屋に入った。ちなみにそのラーメン屋の店名も「大仏」の二文字を冠しているのだが…

 

ウオッカ「一体、どれだけ大仏推しなんだよ、この辺りは…」

 

 麺をすすりながら、このあたりの光景を思い返す。

 

ウオッカ「そういや、やたら大仏推しな割に、肝心の大仏自体が見当たらねぇなあ~。 ここへ来るまでに、見上げるようなデッカイ仏様とか、それっぽいのあったかな?」

 

 ウオッカは、

 「日本一小さな大仏」を見つけられなかったようだ

 賢さが2減った

 「視界良好!異常なし!」のヒントが消滅した!!

 

 

 果たして、ウオッカは無事「天神八幡神社」までたどり着けるのか?

 

 

【その参】

 

 

 再び、ウオッカは走っていた。

 

 中山レース場から北東方向へ延びる一筋の道。通称、木下(きおろし)街道。目的地は、その先にあると噂で耳にした「天神八幡神社」だ。

 

 ウオッカは、次のNHK大河ドラマのメインヒロインの座を射止めんと、柄にもなくその神社へ願掛けに行こうとしている。

 ちなみに次の大河の時代設定は源平モノと言われていて、メインヒロインとなる古の宇摩(うま)娘は、当時において比類なき活躍、すなわち宇治川の先陣争いを制したことにより「日本一の名宇摩娘」「元祖勝ち宇摩娘」と謳われた「生食(いけずき)」となることが予想された。

 「天神八幡神社」は、その「生食」を祭神としてお祀りしていて、今回のウオッカの願掛けにはある意味うってつけともいえる。

 

 中山レース場を発ち、途中鎌ヶ谷大仏駅近くのラーメン屋で小休止していたウオッカは、名物の大仏ラーメン(豚骨しょうゆ味)を2,3杯かっ込むと再び木下街道を北上し始めた。

 道を飛ばしたウオッカには見物する余裕などなかったが、出立したラーメン屋から少し先の三叉路に「魚文の碑」というものが建っていて、その解説看板には、江戸時代この周辺で幕府によって数多くの「宇摩娘」が保護されていた歴史も記されている。

 ウオッカは、図らずもかつての「宇摩娘の里」ともいうべき地域を走っていたのだ。

 

 さらに先を進み、住宅街を抜け、街道沿いに梨園や林の緑が増えてきたあたりに「URAトレーナー学校」がある。

 その入り口のすぐ脇にあある神社は「天神八幡神社」と間違えられがちで(名前も「天神社」と紛らわしい)、ウオッカもここを参拝したら帰ろうと考え、危うく「賢さ」を再び下げるところだった。

 すぐ間違いに気づきはしたものの、せっかくの行きがけの駄賃だからとあえてここにもお参りをし、さらに街道を北へ。

 

 やがて片側1車線だった街道が片側2車線に広がり、底に鉄道が走る100m幅の広い堀割りに架かる橋を渡った先で、脇道へと入っていく。

 くねくねとつづらおりの坂を下りきり、神崎川に架かる七次橋を渡れば、目的地の「天神八幡神社」はすぐそこだ。

 

ウオッカ「やっと着いた~。 結構な道のりだったぜ」

 

 狭い田舎道に寺と神社が並んでいる。

 奥に見えるのは、その寺が運営している幼稚園か。

 田舎道から神社の敷地を覗くと、細い石畳の参道の先に、石造りの鳥居と、その両脇に大きい溶岩みたいな台座の上から、にらみつけるようにしている一対の狛犬が見える。

 

ウオッカ「へ~。 それ程大きくもない神社だけど、この狛犬は立派なもんだし、結構雰囲気あるな~」

 

 参道を歩き、その石造りの鳥居に近づき、掲げられた額を見てみると…

 

ウオッカ「大・日・神・社…大日神社か。 よし、間違いない」

 

 元々の目的地である「天神八幡神社」、実はこの太陽神をお祀りしている「大日(おおひ)神社」の境内の中に取り込まれた、いわゆる境内社である。

 ウォッカは、鳥居をくぐり、石段を登って、とりあえず大日神社の拝殿をお参りした。

 

ウオッカ「よし、あとは本命の天神八幡神社でじっくり願掛けを…右手の奥にあるあれがそぅ…ありゃ?」

 

 見れば、天神八幡神社らしき二回りほど小振りな社の前で、一生懸命お祈りをしているような人影が見える。

 さらによくよく見ると、真上にぴんと立った耳、腰の辺りには尻尾、そして…

 

ウオッカ「あ~、先客がいたんだ~。 ひょっとして地元のウマ娘さんかい? …ってその恰好!トレセン学園の制服!?」

 

 ウオッカの声に「先客」が振り返る。ウオッカにとって、それはとても見慣れた顔だった。

 

ウオッカ「ど、ど…どうしてお前がここにいるんだよぉ!?」

 

続く

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