ウマ娘外伝 大河ウマ女優への道?    作:国津真史

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第一幕 『鎌倉殿のふたり』 その肆~陸

【その肆】

 

 

ウオッカ「ど、ど…どうしてお前がここにいるんだよぉ!?」

 

 中山レース場と同じ千葉県の某所にある「天神八幡神社」(祭神として、源平時代の宇摩(うま)娘で「日本一」「元祖勝ち宇摩娘」と称えられた「生食(いけずき)」を祀る)の境内に、自分だけでなく、他のウマ娘もここまで来ているとは…。

 いや、次の大河ドラマのメインヒロインが、古の、それも源平時代の宇摩娘だという情報が流れている時点で、こうした可能性は十分考えられた、だが…。

 

ウオッカ(それにしても、よりによってこいつだなんて…。)

 

ダイワスカーレット「あらぁ、私がここにいたら、何か悪いわけ?」

 

ウオッカ「べ、別に悪くなんかね~よ。 ただ、何となく…」

 

 何気に目をそらしたウォッカ。すると、ダイワスカーレットの立っているすぐそばの木に竹ぼうきが立てかけられているのが見えた。

 さらに辺りを見渡すと、ここら辺は樹木が生い茂る割に、地面にはほとんど…いや、全くと言っていいほど落ち葉が見当たらないような…。

 

ウオッカ(こいつ、俺より先回りしたばかりか掃き掃除までしてたのか!?)

 

ダスカ「私はほら、この辺りは宇摩娘の古い歴史があるから、その勉強に…」

 

ウオッカ「へへぇ~、勉強ねぇ。 で、そこにある竹ぼうきは?」

 

ダスカ(な…何よ、今日のウオッカ。妙に勘が鋭いじゃない。)

   「ぼ…ボランティアの清掃…かしら?」

 

 ウオッカの疑いの視線がダイワスカーレットに突き刺さる。

 

ダスカ「いちいち隠す事でもないわね… お参りついでの掃除よ。それが?」

 

ウオッカ「ついでにしては丁寧な掃除ぶりじゃねぇか。 何お願いしたんだ?」

 

ダスカ「それは秘密よ。 口に出しちゃダメとも言うし。 そういうあんたは?」

 

ウオッカ「え、ああ…有名な昔の宇摩娘がここに祀られているって聞いたんで…」

 

 ダイワスカーレットの疑いの視線がウオッカに突き刺さる。

 

ウオッカ「…まぁ、お参りだ、お参り。 これからお参りするところだよ!」

 

 そう言いながら、ダイワスカーレットとお社との間に割って入るようにして、鈴を鳴らし、ぎこちなく二礼二柏手一礼をした。二拍手の直後の手を合わせている間だけ、何かもにょもにょと言いながら少々時間をかけているようにも、ダイワスカーレットの目には見えたのだが。

 

ダスカ「あんたにはあまり神頼みのイメージってないけど、何をお願いしたの?」

 

ウオッカ「べ、別にいいだろ! さっきお前も言ってただろ、秘密だよ、秘密!!」

 

ダスカ「ふうん、願い事があること自体は否定しないのね」

 

ウオッカ「わ…悪りぃか!! (うわ~、人に一番見られたくねぇ所をよりによって一番見られたくねぇヤツに!) そ…そういやお前、俺たちと一緒に中山レース場にいなかったっけ?」

 

ダスカ「ええ、いたわよ。 それが何か?」

 

ウオッカ「いや、お前、妙に早くここに着いたんだなぁと思って…」

 

ダスカ「別に。 電車で乗り継ぎが良ければ普通よ…電車賃やけに高かったけど」

 

ウオッカ「お前、ウマ娘のくせに電車でここまで来たのかよ!?」

 

ダスカ「何よ。 ウマ娘が電車に乗ってはいけないっていう法律でもあるわけ?」

 

ウオッカ「え、いや…別に……ねぇけど」

 

 ウオッカには、どうやら無意識のうちに、願掛けに神社へお参りするのなら、自分の足で行かなくてはというこだわりがあったみたいで、何かしらの交通手段を用いるという発想が、これまで全く思い浮かばなかった。もし仮に、運転免許証を持っていたなら、あるいはバイクで飛ばして来たのかもしれないが。

 

ダスカ「そういうあんたはジャージ姿で、少し息が荒いようにも見えるけど…」

 

 ダイワスカーレットは、ウオッカの全身をまじまじと見ている。

 

ダスカ「まさか、中山レース場からここまで走って来たの? ホントご苦労様」

 

ウオッカ「悪りぃか?」

 

ダスカ「別に…。 じゃあここに来る途中、鎌ヶ谷大仏とかもお参りしたの?」

 

ウオッカ「え? そういや、そんな駅とか…でもあの辺に大仏なんてあったか?」

 

ダスカ「…はぁ。 …あんたも大概よね」

 

ウオッカ「な、何だよ! その人を馬鹿にしたような、憐れむような目は!」

 

 その時ほぼ同時に、ウオッカとダイワスカーレットとの、2つのスマートフォンの着信音が鳴り響いた。

 

 

 

【その伍】

 

 

千葉県某所にある「天神八幡神社」の境内で鉢合わせした、ウオッカとダイワスカーレット。何やかんや言い争っているうちに、二人のスマートホンの着信音がほぼ同時に鳴った。

 二人は、それぞれ距離を取りつつ電話に出た。

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

駿川たづな《もしもし、駿川です。ウオッカさんの電話で間違いありませんか?》

 

ウオッカ「あ、たづなさん。 ウオッカです。 お疲れ様ッス」

 

たづな《あなたはまだ外出先かしら?》

 

ウオッカ「はい、中山レース場とは違いますがまだ千葉のほうに… あっ、一応、寮長の方には今日は遅くなるかもって伝えてますんで…」

 

たづな《あら、意外と真面目なんですね》

 

ウオッカ「…たづなさん、冷やかしなら切りますよ?」

 

たづな《ふふっ、それは困りましたねぇ。 ウオッカさんに、至急お伝えする事がありお電話を差し上げたのですが》

 

ウオッカ「至急? と言いうと…」

 

たづな《実は、NHKから、来年の大河ドラマの出演者を何名か推薦してほしいと依頼がありまして、そのうちの一人に、ウオッカさんを推薦することが先ほど決まりました。 ちなみに、今度のドラマの舞台は源平~鎌倉時代ということでして、タイトルは『鎌倉殿のふたり』。 役としては、生食(いけずき)、磨墨(するすみ)、あと脇役で、ウマ娘なのに、仕えた武将におんぶされて崖から降りていったという…え~っと、何て言いましたっけ?》

 

ウオッカ「えっ! 俺、大河ウマ女優になれるんスか!?」

 

たづな《はい。ですからその心づもりで…》

 

ウオッカ「俺、生食の役を頂けるんですね?」

 

たづな《あ、いえ、そこまでは…。 具体的な配役については、先方の、監督さんとかとこれから相談して… でも、時間もありませんのでここ2、3日で決める予定です。》

 

ウオッカ「ぜひ俺に!!! おっと、声が大きく…ごにょごにょ。 俺に…生食役やらせたください!お願いしますっ!一生のお願いッス!」

 

たづな《は…配役の件についてはまた後日、連絡を差し上げますね》

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

ウオッカ「よっしゃ~」

 

 ウオッカは思わず、小声と小振りながらもキレのある動きでガッツポーズ。そして今の自分の姿を誰かに見られていないだろうなと、これまたつい辺りをキョロキョロ見渡す。「誰か」といっても、周辺には少し離れた所にダイワスカーレットがいるだけのようだ。それも、まだ電話中らしい。ただ、何だかこちらをチラチラ見ているような…。

 

ウオッカ(あの猫を被ったような声…相手はシンボリルドルフ生徒会長あたりかな? あいつは口調や言葉使いで、誰と話しているのか大体判るな。)

 

 ウマ娘は、基本、普通の人間より耳がいい。だから多少遠くても、声音で何となく、誰とどんな(真面目なのか、くだけているのか)話をしているのかぐらいは想像がつく。ただし、話の具体的な内容までは聞き取れていない。

 

ウオッカ(しかし、ほとんど同時に電話が来るなんて、これって偶然か? そういや、ドラマ出演者の推薦って一人じゃないみたいだったな。 生食と磨墨と…あと誰って言ったっけ? そういえばどっかで聞いたことあるな。 一の谷の合戦の、鵯越の逆落としだっけ? ウマ娘のくせに仕えている武将から「お前の足が心配だ」なんて言われて山の斜面を下るときにおんぶをされ…って、どんだけマックスコーヒーもビックリのベタベタ激甘恋愛展開だよ!? …なんて、想像してたら…うっ…)

 

 ブファッ!!

 

ウオッカ「うおーっ! はな…鼻血がああああ!!」

 

 そんな役だけは絶対無理ーッ!!と頭を抱えつつ、同時に、今日の服装が赤色ジャージで本当によかったなぁとも思うウオッカであった。

 

 

【その陸】

 

 

千葉県某所にある「天神八幡神社」の境内で鉢合わせした、ウオッカとダイワスカーレット。何やかんや言い争っているうちに、二人のスマートホンの着信音がほぼ同時に鳴った。

 二人は、それぞれ距離を取りつつ電話に出た。

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

シンボリルドルフ《もしもし。トレセン学園生徒会長、シンボリルドルフだ。 そちらは、ダイワスカーレットの電話で間違いないかな?》

 

ダイワスカーレット「生徒会長ですか。 はい、ダイワスカーレットです。 お疲れ様です」

 

ルドルフ《今日は、中山レース場へチームメイトの応援に行ったと話に聞いたが、まだ帰ってきてはいないのか?》

 

ダスカ「あっ、はい。 中山レース場の周辺は、古の宇摩(うま)娘に関して、様々な伝承が残っているじゃないですか。そういった歴史も勉強したいと思いまして、少々より道をさせていただいてます。寮には、少し遅い時間に帰る予定を申し出ていて、寮長からご許可もいただいていますわ」

 

ルドルフ《うむ、相変わらず勉強熱心で良いな。そういえば最近、本学園の生徒たちの間で噂されている「天神八幡神社」には行ったのかな?》

 

ダスカ「(え~っ!? もしかして、ここに来ている事バレてるっ!?) え~、あはっ、そうですね。時間があればそこにも寄りたいかなあ、と」

 

ルドルフ《あそこのご祭神のうち一柱は、かの有名な古の宇摩娘、八幡・生食(いけずき)だと聞いている。 ひょっとすると、我々ウマ娘の願いであれば、何でも聞いてくださるかもしれんぞ》

 

ダスカ「へ~、そうなんですか? 勉強になりますぅ」

 

ルドルフ《許可を得ているとはいえ、帰りが遅くなりすぎないよう気を付けるのだぞ…おっと、小言を言いに電話したのではなかったな。 実は大至急、君に伝えなければいけないことがあってな》

 

ダスカ「至急ですか…。 どのようなご用件でしょうか」

 

ルドルフ《これもすでに、皆の間でも噂になっていると思うのだが… 実は、NHKから、次回の大河ドラマの出演者を何名か推薦してほしいという依頼が本学園に舞い込んで来ていてな。 これについて 秋川理事長以下、経営陣が協議した結果、そのうちの一人にダイワスカーレット、君を推薦することが先ほど決まったそうだ。 ちなみに、今度のドラマの舞台は源平~鎌倉時代ということで、タイトルは『鎌倉殿のふたり』というらしい。 役としては、生食(いけずき)、磨墨(するすみ)、あと脇役として、ウマ娘でありながら、彼女が仕えた武将におんぶをされながら、戦場の崖を降りていったという…うむ、何と言ったかな?》

 

ダスカ「えっ! じゃあ私、大河ウマ女優になれるんですか!?」

 

ルドルフ《うむ。本日から早速、そうした心づもりで…》

 

ダスカ「もちろん私が、「日本一の宇摩娘」生食の役を頂戴出来るのですよね?」

 

ルドルフ《いや、残念ながらそこまではまだ聞いていない。 具体的な配役については、もう少しばかり調整が必要みたいでな… しかし、時間もあまり無いようだから、ここ数日の間に決まるだろう》

 

ダスカ「そうですか。 わかりました、連絡ありがとうございます。 皆さんの期待に応えられるよう、ベストを尽くしてまいります。 しかし、こうなってくると、カメラの前に立つ日が待ち遠しいですわ。 何だかこう、体がムズムズして…」

 

ルドルフ《大河~、大河~、じれっ大河~(byタイガー&ドラゴン)といった気分かな?》

 

ダスカ「………」

 

ルドルフ《………》

 

ダスカ「…あの、生徒会長?」

 

ルドルフ《…すまない、今のは忘れてくれ》

 

~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~

 

 ダイワスカーレットがまだ電話をしている最中、少し離れた所にいるウオッカは通話を終えたみたいだが、その動きが怪しい。なんだかそわそわしているかと思えば、急に辺りをキョロキョロ見渡したりして、とにかく怪しい。

 

ダスカ「(ちょっと、アイツどうしちゃったのよ? あれじゃまるで不審者じゃない。 やめてよね、近くに幼稚園もあるんだし。 通報されたらどうするのよ) …あ、生徒会長、何でもありませんわ。どうぞお話をお続け下さい。 (おまけに、生徒会長もどうしちゃったのかしら、さっきのアレって一体…)」

    

続く

 

 

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