ウマ娘外伝 大河ウマ女優への道?    作:国津真史

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第一幕 『鎌倉殿のふたり』 その拾壱

その日、チームスピカメンバー+αの面々がトレセン学園の視聴覚室に集められた。

 

 

◆第1回 大河ドラマ『鎌倉殿のふたり』試写会。

 

 

 トレセン学園に通うウマ娘達は、トレーニングに、勉学に、テレビ出演を含めた各種活動にと、学生でありながら、並の人間よりも多忙な日々を送っている。普段は(レースを除き)テレビの視聴に割ける時間はあまり多くない。

 

 しかし、学園生徒が出演する国民的人気ドラマの内容について、当の出演者を始めとした関係者が「何も知りません」という訳にもいかないので、タイミングとしては一般放映よりも2,3日くらい前の平日、トレーニングが終わった夕飯時に時間を作り、みんなでNHKから提供された映像を見ている。

 

 今回は、第一話(15分拡大版)と第二話をまとめて見ることになっている。ウマ娘3人よれば…どころか10人前後も集うと、姦しいを通り越してちょっとしたお祭り騒ぎである。そして、喧騒と同時にスパイスの利いた香りも部屋中に漂う。

 

サイレンススズカ「えっと… ここでの飲食って大丈夫でしたっけ?」

 

シンボリルドルフ「生徒会もこの件は了承している。 問題無い。」

 

トウカイテイオー「ねえねえ、早く食べよう。 ボクもう、お腹ペコペコだよ~」

 

スペシャルウィーク「私もですぅ~」

 

スーパークリーク「はぁい皆さん、出来上がりましたよ~」

 

ゴールドシップ「こっちもいい感じで焼けてるぜ!」

 

 スーパークリークとゴールドシップの二人は、いつの頃からか大河ドラマの撮影現場で屋台を出し、それぞれカレーライスと焼きそばを無償で提供している。それらのプロ顔負けの美味しさは、関係者の間でも評判となり、顔を広く知られるようになったスーパークリークは、後に大河ドラマのメインヒロインに抜擢されることとなる。

 

 そして、こうして学園内で試写会が行われる際も、スーパークリークの「具材がごろりたっぷり、とろりと煮込んだ優しいカレー」と、ゴールドシップの「難波の魂が蘇る、ゴルシ印のソース焼きそば」が提供され、大河ドラマに関わるウマ娘の間では、「大河=カレー、焼きそば」のイメージが、海上自衛隊の「金曜カレー」よろしく定着しつつある。

 

ウオッカ「体を冷やしがちな現場では、マジでこういうのが有難いっすよね」

 

ライスシャワー「ライスもそういう感じ、分かる。 琵琶湖畔で体中ずぶ濡れになった日に食べた熱々のカレー、美味しかったなぁ…。 あっ、もちろん今食べてるカレーも美味しいよ。」

 

ウオッカ「しかし話は変わるんすけど、大河経験者のライス先輩がここに居るのは分かるんす。 分かるんすけど… …どうして、ネイチャ先輩がここに居るんすか?」

 

ナイスネイチャ「…一応、アタシも大河経験者なんですけど…」

 

ウォッカ「えっ、ネイチャ先輩大河に出てましたっけ?」

 

ネイチャ「出てたよ!」

 

ダイワスカーレット「ちょっと、ウオッカ…それはいくら何でも失礼でしょう。 でも、私も失礼ながらネイチャ先輩の役名だけが何故か思い出せないんですよね… 確か『鬼神がくる』で将軍か何かの周りに居たのは覚えてるんですけど… 何て役名でしたっけ?」

 

ネイチャ(ぐはぁっ…!!)

 

 ナイスネイチャのやる気が下がった

 ナイスネイチャのやる気は絶不調だ

 

 ダイワスカーレットが、かつてのナイスネイチャの役名を覚えていないのも当然である。そもそもあの時、ナイスネイチャの役柄は「宇摩(うま)娘その1」的な扱いで、具体的な役名は無かったのだから。

 

ネイチャ「そ、それはともかく、今年もアタシ出演するんで、そこんとこヨロシク」

 

ウオッカ「へ~、どんな役なんすか?」

 

 基本、台本は自分の所以外、ほとんど読まないウオッカがたずねる。

 

ネイチャ「それは三日月といって…えっと、何て説明したらいいのかな…ゴニョゴニョ」

 

ダスカ「多分、ウオッカはあまり知らない方がいいわね。 詳しく知りたいなら、あんたの場合出血(鼻血)を覚悟しないと」

 

 努力家で、自分の所だけでなく、台本の全てに一通り目を通している(それ以前に、図書室で三日月の事も含め色々予習済みの)ダイワスカーレットが横から口をはさむ。

 

ウオッカ「???」

 

トレーナー「お~いみんな、そろそろ始めるぞ」

 

 トレーナーの一声で、一同の視線はテレビ画面に集まり、ナイスネイチャの役に関する話は中断した。

 

 

 因みにこの試写会が終わり、各々が寮の自室へ帰った後のこと。就寝時間を迎え、布団へと潜り込んだウオッカが、たまたま断片的に持っていた「三日月」に関する知識(しかし、それらが三日月という名前と結びついていなかった)を思い出し、遅まきながらナイスネイチャの役柄に思い至ることとなる。と同時に、ウオッカが盛大に鼻血を吹き出し、相部屋のダイワスカーレットと一緒に大騒ぎとなるのは、また別の話である。

 

 

 テレビ画面では第一話の本編が終わり、「鎌倉殿のふたり紀行」というおまけコーナーが流れている。そこでは名宇摩娘、生食の地元として千葉県の笹塚や天神八幡神社などが紹介されていた。

 天神八幡神社の本殿の画像がテレビ画面に映ると、ナイスネイチャ、ウオッカ、そしてダイワスカーレットの3名は、思わず両手を合わせてしまう。

 

ルドルフ「やはりあの日、参詣していたか…」

 

 シンボリルドルフに微笑みながら声をかけられたダイワスカーレットは、「しまった!」とでもいう様なばつの悪い表情で、こっそり合わせていた両手を引っ込める。

 

ダスカ「そういえば、生徒会長やキング先輩も今回出演なさるそうですね? どんな役柄ですか?」

 

キングヘイロー「お~っほっほっほっ。 私はキングの名にふさわしく“治天の君”の役を演じることになりましたわ」

 

一同(あ~、あの役ね…)

 

 その場にいる皆が何となく納得した。源平時代の中でも特にアクの強いキャラクターをした、諦めという言葉を知らないあの法皇様なのだろう。そうした中シンボリルドルフは独り、今一つ浮かない表情をしている。

 

テイオー「カイチョー、どうしたの? 何か役に不満があるとか」

 

ルドルフ「いや、個人的に不満があるとかではい。 要望とあらば、いかなる役でも全力で演じきるつもりだが… この役が果たして、ウマ娘全体にとって良いものかどうか…」

 

キング「一体どんな役ですの?」

 

ルドルフ「…………北条政子だ」

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